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迷宮都市編

11.依頼を達成。兄の正体が気になる

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 俺達は依頼を二つ終えて、残り一つの依頼である、アシッドピオンを討伐するために、砂漠を歩いていた。

「アシッドピオンが見つかる前にアシッドピオンについて説明しようかな」
 とシリルさんが言った。

 シリルさんの説明はとてもためになる。

「おぉ!お願いします!」

「まず、アシッドピオンという魔物は夜行性の魔物でね、非常に獰猛で狡猾な魔物なんだ。
 昼は土の中に潜っていることが多いんだけど、夜になると姿を現わすんだ。
 アシッドピオンは尻尾が特徴的でね、尻尾から色んなものを溶かす毒液を出すんだ。
 夜に砂漠で寝ている冒険者がアシッドピオンに気づかずに死んじゃったって話もあるし、アシッドピオンは狡猾だからね、相手をわざと逃げさせて油断した隙に後ろから…ってこともあるんだよ。
 別名デスストーカーって言われているよ」

 いや、めちゃくちゃ怖いな!忍者か!忍者なのか!

「怖いですね…」

「そうだねー。まぁ、僕達が気づかないことは有り得ないと思うけど、夜になられると厄介だからね。明るいうちに見つけられるといいね」

「そうですね」

 夜はやだなぁ。砂漠の夜は寒いって聞いたしな。

 なんて考えているとサニーの足が止まった。

「サニー?」
 と俺が話しかけると、手でシッてやられた。
 どうやら精霊と会話をしているらしい。

 しばらくすると、精霊との会話が終わったのか、サニーはこっちを向いて口を開いた。

「アシッドピオンを精霊さんが見つけたよ!
 場所はここから東へしばらく進んだところの土の中で寝ているらしいよ!」

 え、サニーも探してたんだ。しかも索敵能力も高いな。俺もまだまだ足りてないなぁ。

「ありがとうサニア。じゃあ、行こうか!」
 とシリルさんが言って東へしばらく走って行くと、俺も、気配がわかるようになった。

「サニーはすごいな。索敵もできるのか」

「索敵してるのも、精霊さんだから私は何もしてないよ。それになかもりくんみたいに完璧にできているわけじゃないから。
 精霊さんに探してもらっているから探し忘れちゃうところもあるから。
 逆にどうしてなかもりくんは気配がわかるの?」

 すごい謙遜している。精霊が見えて精霊と話せて精霊と契約できるのは十分すごいのになぁ。

「俺は、そうだな、なんて言ったらいんだろう。うーーん。
 一回死にかけて、三年くらいしたら気配がわかるようになってたんだよね」

「なにそれ、三年も死にかけてたの?」

「うーん、実際は一年死にかけてたんだけど、三年だと思ってたんだよね。
 いやなんて言えばいいかわかんねぇわ!」

「わけわからないけど、死にかけたのはわかったよ」

「思い出したら、俺も訳がわからない」

 化け物に殺されかけて暗闇に行って鬼と戦い、力を得るってなんだよ。

 改めて思い返してみるとめちゃくちゃかっこいいじゃねーか俺!

 あ、ここだ。

 会話をしているうちに目的地へ着いた。

「着きましたね。暗くなる前に見つかって良かったです」
 とシリルさんが言った。

「まぁもう、ほとんど夕方ですけどね」
 俺が言う。

「セーフだな!俺は早く宿に戻って飯が食いてぇよ。そろそろ食べ物以外なにも考えられなくなりそうだ」

「そんなことを話してないで早く倒そうよ!」

「では、どうしましょうか。最初にゆうたくん、2匹目はサニアとアシルが、となると最後は僕ですよね」

「順番的にそうですね。俺がやります?」

「いやいや、僕がやりますよ。最近はサニアとアシルの修行ばかりさせてましたから、いい運動になりそうです」

 そう言ってシリルさんはアシッドピオンの前に近づいていった。

 アシッドピオンは寝ているようでシリルさんが近づいても全く気配が動かない。

「なにをしようかな…そうだな……あれにしよう!」

 シリルさんは何かをするみたいだ。

「ゆうたくん、サニア、アシル!少し離れててくれないかい?」

 え、何するの?やばいやつ?

「やべぇ、シリルにいちゃんが張り切ってる。早く離れるぞ!」

「そうだね!早く行かなきゃ!」

「え?なになに?」

 サニーや、アシルが急いで離れている中俺は状況が掴めずにちょっと戸惑っていた。なんでそんな慌ててるの?

「ゆうたも早く離れとけって!巻き込まれるぞ!」

 なんだ、巻き込まれるって!

 わからないがとりあえずアシルのいるところまで走って離れてシリルさんを眺めていた。

 シリルさんは俺たちが離れたのを確認して何かの集中の姿勢に入った。

「アシル、シリルさんはこれから何をするんだ?」

「すごいことだよ。みとけって」

 そう言われたので、黙ってシリルさんを見ていた。

 シリルさんはしばらく呼吸をして息を整えて拳をぐっと天にあげた。
 その態勢からまた動かなくなった。

 長いな。何するんだろう、めっちゃ気になってきた。ビームとか出すのかな。

 そう思っていたら、シリルさんから爆発的な気配を感じた。

 その瞬間、拳を一気に地面に叩き落とした。

 ドゴゴゴゴゴゴゴ!!

 シリルさんが拳を叩きつけたところから砂漠が水たまりの波紋のように揺れ、シリルさんの半径10メートル程が凹んだ。
 時間が少し遅れて風がここまで吹いてきた。

 いやいやいやいや!シリルさんって魔法使いじゃないの!?

 バチバチの武闘家かよ!!!

 えぇぇ、怖い!エルフ怖い!
 本で読んだのと内容が全然違うじゃん!

 エルフって森に住んでいて、魔法や弓術に長けていて、薬学にも精通しているとても高貴で知性的な種族なんじゃないの!?

 近接戦闘が得意なバトルマスターなんてどこにも書いてなかったぞ!

 しかもシリルさん銀級冒険者だった!あれは間違いなく金級以上だろ!詐欺だ!

 あぁ、アシッドピオンが無傷のまま死んでるよ。ショック死してるよ。

 そこから少ししたら、普通のシリルさんが死んだアシッドピオンを担いでここまできた。
 アシッドピオンは2メートルくらいの黒いサソリだった。

「お待たせ!依頼も達成したし報告しに行こうか!」
 笑顔のシリルさんが俺に言ってきた。

「はい」

 気力を振り絞り返事をした。


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