上 下
39 / 133
豊穣の町(仮)に行く編

閑話.王都受付の苦難。いそがしいわ!

しおりを挟む
 ここはレノス王国の王都。

 私はギルド受付で昇進して、王都のギルドの受付になった。

 ここまで来るのに色々あった。

 馬車の長旅で、とっても色々なことがあった。
 ダニエルは開拓途中の村で近くに村も街もないので、王国に行くのに時間がかかる。

 ある時なんて、魔物の群れに襲われたりなんかした。
 もちろん冒険者の人達が守ってくれるのだけど、冒険者の攻撃をかいくぐって馬車までやってくる魔物もいる。
 
 そんな時は私が結界魔法を使って、馬車を守って、風魔法で魔物を倒したりもした。中で見ていた人達からはすごい感謝された。

 山賊に襲われることはなかった。

 噂では身なりのいい馬車を襲って、金品を盗んだり、人をさらってどこかへ売ったりするらしい。
 乗っていた馬車は、身なりのいいわけじゃないし、守ってくれる冒険者は、銅級冒険者パーティの『確固たる意志』が守ってくれていたので、安全に王都まで到着した。

 そこから私は王都に着いたのだけれど、初めて王都を見た私はとっても驚いた。

 人がいっぱい!見たことない服!建物!しかも広い!!

 それはもう、まるで都会に来た田舎の人のようにはしゃいだ。
 事実、田舎から来ているわけだし、そんなことよりもキラキラした王都に興奮していた。

 そこから、冒険者ギルドへ人に聞きながら向かった。

 私は冒険者ギルドに着いた時にさらに驚いた。

 今まで見たことがないくらいに大きい建物に冒険者ギルドと書いてあったからだ。
 ダニエルもかなり大きいギルドだと思っていたけど、素材も、レベルも大きさも段違いだった。

 中もすごい賑やかで、これから私もここに働くのか。と思いながら受付に向かって、軽く面接見たいのをして、晴れて王都受付になったのだ。

 
 いやー、本当に色々あったなぁ。

 と思っていると。話をかけられた。

「ニルファさん、手止まってるよ!王都は田舎と違って忙しいんだから!手は休めない!」

「すみません!先輩!」

 先輩のナルニさんに怒られてしまった。
 別に田舎とか言わなくてもいいのになー!ダニエルもいい村だよ!

 まだ王都に来て私は冒険者の対応をしていない。
 王都について勉強はしているがやはり現地と本では違うものがある。
 だから、依頼書などを作ったり、資料を作ったりしながら、王都の冒険者の様子を見ていた。


 一週間、裏で見ていてわかったことがある。

 まず冒険者の治安について。
 王都には冒険者が沢山いる。
 沢山稼げるからだ。
 王都には貴族がいるし、少し離れたところに迷宮というものがあるからだ。

 なので、多くの冒険者が王都にいた。
 ただ、冒険者が多い分、素行の悪い人もいる。『新人潰し』をする人もいるらしい。
 早くその人から冒険者ライセンスを剥奪して!
 と思うかもしれないが、やり方がとても巧妙で、捕まえるに捕まえれないらしいのだ。

 結果、王都の冒険者ギルドの治安は若干悪い。

 説明し忘れていたが、迷宮とは、
 なんらかの理由でそこに魔力がたまって、誰が作ったわけでもなく、建物になったり、洞窟になったりする場所である。
 そこには、魔物が出てきたり、宝箱が出てきたりするのだ。
 迷宮ができる原理は解明されていない。
 そんな、魔物が出て怖い場所に誰が行くんだよー!ってなるかもしれない。

 しかし、迷宮を攻略するものには、莫大な富が手に入る。

 と言われているので、怖いもの知らずな冒険者は迷宮に入って稼いでいくのだ。

 王都には近くに迷宮が二つある。

 なんでそんなところに王都があるのかというと、王国ができた後に迷宮ができたからだ。
 しかも、調査をすると、かなりの経済効果をもたらすことがわかったので、冒険者に任せているのだ。

 王都にいるのは冒険者だけではない。
 王国には騎士がいる。騎士は王を守るためにいるので、王都に住んでいるのだ。

 騎士に見初められれば、女にとって最高な暮らしができる!と同僚のカナーニちゃんに、凄い勢いで言われたのを覚えている。

 ただ、冒険者ギルドに騎士が来ることなんてあるのかな?
 噂では騎士は冒険者を嫌っているらしいし。……カナーニちゃんには言わないでおこう。

 一週間でわかったことはこのくらいだった。
 後は、王都に住むに当たって借りたアパートの近くにあるパン屋さんは美味しいということくらいだ。

 そしてついに、ナルニ先輩に「来週から冒険者の対応を任した」と言われた。

 
 そして一週間があっという間に過ぎた。

 私は受付で座っている。

 滑り出しが重要だ!ここで周りの冒険者にもいい印象を与えておかないと、この仕事は後からきつい!優しい人!優しい人が来て!

 そんなことを願っていた。

「おい、ネェちゃん。ゲヘヘ、この依頼を頼むよ。ぐへへ」

 願いは叶わなかったみたいだ。

 話しかけてきたのは髪の毛がかろうじて生えている不潔な大男。

 最悪だー!よりにもよって、受付が勝手に決める、話しかけられたくない冒険者ランキング3位の男に話しかけられたーー!

 いや、大丈夫だ!ここは笑顔に冷静に!

「はい、薬草採取とバニユン討伐ですね。承りました。では気をつけて行ってらっしゃいませ」

 さあ!行ってください!お願いします!

 ちなみにバニユンは1.5メートルくらいのトカゲでまあまあ強い。

「ところでネェちゃん俺の名前わかるか?ぐへへ」

 えぇー…まだ話すの…

「はい、ケガナイド様ですよね。有名ですよ」
 気持ち悪いで。

「やっぱり、有名か!ぐへへ、ペロッそんで俺の名前を覚えているのか。そんなに俺のことがきになるのか。
 そうかそうか。ペロッまあ俺くらいになると誰でも知っているのかな?」

「そうですね、知ってるんじゃないでしょうか?」
 気持ち悪いで。

「そうかぁ、ペロッでは依頼に行ってくるかなぁ!ぐへへ」

「お気をつけないでください」

 なんだ!!!なんだ、あの人は!気持ち悪い!途中から変な目で見てくるし、ペロッが気持ち悪い。
 あぁ、幸先悪いなー。はじめて、受付した冒険者がケガナイドなんて。


 受付して昼休みに入った。
 ケガナイド以外はちゃんとした冒険者の受付ができた。

「おつかれニルファ!朝のやつみたよ!最初の受付がケガナイドだったのね!ニルファってば、ついてないねー!」

「本当だよー、本当についてない。受付やっていけるかなー、ケガナイドの受付を毎回していたら、私受付やめてるかもしれないよ」

「たしかに、あの気持ち悪さは触りたくないし、喋りたくないよねー」

「カナーニは最初に受付した人は誰だったの?」

 悪口の話になりそうなので話を変えた。

「え?私?私はねー!なんと!なんと!王都で有名な銀級冒険者の叫びの剣だったの!」

 知っている名前がでた。

「へぇ、そうなんだ」

「そうなの!マード様かっこよかったよー!」

 そこからカナーニはずっと叫びの剣の話をし出してお昼休みは終わった。

 お昼をすぎると、冒険者ギルドはかなり空いていて、だいたい、新人冒険者だったり、王都の手伝いをしてお金を稼いでいる冒険者がいる。夜になると、冒険者が依頼達成して、帰ってくるので混む。

 夕方になって、そろそろ混む時間帯になった。

 私は変わらず受付で座っていると、会いたくない大男が現れた。

 いや、まだギルドも空いている!窓口は五つあるし!私みたいな新人のところに来る確率の方が低い!!来るな!来るな!

「ぐへへ、よう、ネェちゃん!ネェちゃんのために早く帰ってきたんだ。ぐへへ、夜は空けとかないと行けないからなぁ!ペロッ」

「ありがとうございます。依頼、お疲れ様でした。依頼達成を確認しましたので、こちらが報酬です。ではまたのご活躍を期待しております」

 ちょっと冷たい対応してみた。
 あんまりこうゆうことはしたくないけど、なんか危険を感じるから。

「ネェちゃん、夜は暇なんだろ?ぐへへいっしょに酒でも飲もうや!なんもしないぜ!ペロッ」

 嘘つくなー!そんな目で見てる人が何もしないわけないだろー!ペロッてするなー!

「すみません。夜は別の方と予定がありまして」
 私も嘘をついてみた。

「そうか、そんなことよりも俺の方が楽しいのは顔で見てわかるだろ?ぐへへ」

「いえ、予定があるので」

「そうか、女ってやつは王子様に連れ出されるのが好きなんだよな!ぐへへ、悪い悪い!俺が連れ出してやるよ」

「あの仕事中ですので、困ります」

 ちょっと怖くなって、ギルドのあたりを見回した、まだ新人冒険がいっぱいいて、目が合うけれどすぐそらされてしまう。

 ケガナイドに喧嘩を売るのは流石に新人としてはきついのだろう。

「いいから来いよ!グフフ!」

「きゃっ!」

 私は受付の窓口から腕を引っ張られて外へ出されそうになった。
 怖い。魔法を使おうとしても、人間に向かって放つのは躊躇ってしまった。

 やばい、と思ったその瞬間。

 私のブレスレットが光って、私の体を結界が覆った。

「なんだ?それは」

 ケガナイドはそう言ってわたしから手を離したその瞬間。
 ブレスレットからケガナイドに向かって雷が放たれた。

「アワワワワワワ」

 と言ってケガナイドは倒れた。

「……へ?」

 わたしを含め周りから出た言葉はこれだった。

 私もしばらく思考が止まった。そして動き出した。

 周りはまだ、固まっている。もしかしたら私がそこに倒れている大男を倒したように周りから見えたのかもしれない。

 しばらくして、時が動き出したかのように、騒ぎになった。
 
「ケガナイドを倒したぞ!」

 という声が周りから聞こえる。

 そしてすぐにケガナイドは病院に運ばれて衛兵が私の元へ来たけれど、みんなが状況を説明してくれて、どうにか助かった。

 カナーニには「すごい!」とか言われたし。
 私のことを見てた新人冒険者はキラキラした目でこちらを見てくるし。

 私なんもしてないよー!ゆうた!ブレスレットいじったでしょ!っと言いたい!次会ったら叱ってやる!

 と息巻きながら、これから忙しいだろうなと思いながらギルド受付に戻った
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

一人だけ竜が宿っていた説。~異世界召喚されてすぐに逃げました~

十本スイ
ファンタジー
ある日、異世界に召喚された主人公――大森星馬は、自身の中に何かが宿っていることに気づく。驚くことにその正体は神とも呼ばれた竜だった。そのせいか絶大な力を持つことになった星馬は、召喚した者たちに好き勝手に使われるのが嫌で、自由を求めて一人その場から逃げたのである。そうして異世界を満喫しようと、自分に憑依した竜と楽しく会話しつつ旅をする。しかし世の中は乱世を迎えており、星馬も徐々に巻き込まれていくが……。

異世界転生雑学無双譚 〜転生したのにスキルとか貰えなかったのですが〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
エドガーはマルディア王国王都の五爵家の三男坊。幼い頃から神童天才と評されていたが七歳で前世の知識に目覚め、図書館に引き篭もる事に。 そして時は流れて十二歳になったエドガー。祝福の儀にてスキルを得られなかったエドガーは流刑者の村へ追放となるのだった。 【カクヨムにも投稿してます】

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

備蓄スキルで異世界転移もナンノソノ

ちかず
ファンタジー
久しぶりの早帰りの金曜日の夜(但し、矢作基準)ラッキーの連続に浮かれた矢作の行った先は。 見た事のない空き地に1人。異世界だと気づかない矢作のした事は? 異世界アニメも見た事のない矢作が、自分のスキルに気づく日はいつ来るのだろうか。スキル【備蓄】で異世界に騒動を起こすもちょっぴりズレた矢作はそれに気づかずマイペースに頑張るお話。 鈍感な主人公が降り注ぐ困難もナンノソノとクリアしながら仲間を増やして居場所を作るまで。

平民として生まれた男、努力でスキルと魔法が使える様になる。〜イージーな世界に生まれ変わった。

モンド
ファンタジー
1人の男が異世界に転生した。 日本に住んでいた頃の記憶を持ったまま、男は前世でサラリーマンとして長年働いてきた経験から。 今度生まれ変われるなら、自由に旅をしながら生きてみたいと思い描いていたのだ。 そんな彼が、15歳の成人の儀式の際に過去の記憶を思い出して旅立つことにした。 特に使命や野心のない男は、好きなように生きることにした。

はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!

さとう
ファンタジー
異世界にクラス丸ごと召喚され、一人一つずつスキルを与えられたけど……俺、有馬慧(ありまけい)のスキルは『模倣』でした。おかげで、クラスのカースト上位連中が持つ『勇者』や『聖女』や『賢者』をコピーしまくったが……自分たちが活躍できないとの理由でカースト上位連中にハメられ、なんと追放されてしまう。 しかも、追放先はとっくの昔に滅んだ廃村……しかもしかも、せっかくコピーしたスキルは初期化されてしまった。 とりあえず、廃村でしばらく暮らすことを決意したのだが、俺に前に『女神の遣い』とかいう猫が現れこう言った。 『女神様、あんたに頼みたいことあるんだって』 これは……異世界召喚の真実を知った俺、有馬慧が送る廃村スローライフ。そして、魔王討伐とかやってるクラスメイトたちがいかに小さいことで騒いでいるのかを知る物語。

処理中です...