上 下
34 / 133
豊穣の町(仮)に行く編

4.村の現状確認。これは思ったより酷いのでは

しおりを挟む
 村人達に用意してもらった家に、泊まった次の日

 まずは百二十人に食べ物を行き渡らせ。朝ごはんの時間にした。

 またもや、朝ごはんを食べて、夢じゃなかったのだと、涙する人がいた。

 井戸の水を何度も確認して涙する人もいた。

 そんなこんなで村人達全員が、朝食を食べ終えたのを確認して、畑に案内してもらおうと思った。

「グロウ、畑の様子を見せてくれないか?」

「かしこまりました。付いてきてください」

 俺は畑を見て回った。個人で、使っている畑も、村全体で使っている大きな畑も、例外なく酷い状況だった。

 地面は枯れて、土は死んでいた。

「死んでる…」

 所々畑の周りに何か掘った跡がある。
 きっと、別の場所でも畑を作ろうとしたのだろう。

 畑の土を触ってみても砂漠のような土となっていた。

 え、これどうするんだ。自然魔法でいけるかと思ったら、地面が完全に死んでいるから、つかえねぇ。どうしよう。

 回復魔法での蘇生はできない。死んだ大地に水魔法は効果はない。自然魔法での復活も望めない

「…原因の究明が必要ですね」

「そうですね、畑に手を加えようとしても同じような結果になりました。村の外に出て、生きている土を持ってきたりしてみたのですが、この村に入るとたちまち土は死にました。あと敬語は必要ありません」

「…わかった、では牧畜をしていた場所にあんないを頼む」

「病気にかかるかもしれませんよ?大丈夫でしょうか?」

「かかるかどうかを確かめるんだよ。それに、かかるとしたら、この村に入るときに、かかってるよ。グロウは案内したらすぐに、その場から下がって」

「わかりました、一応、牧畜は燃やしてありますので、その場には何もいません」

「了解」

 俺はシシオウを念のため広場においてきている。獣にかかるようなまじないだったら、聖気で弾けるが、それ以外の何かならば、弾けないからだ。


 牧畜していた、エリアについた。

 ついた瞬間にわかる。ここは嫌な予感しかしない。足を止めたいくらいに、何かを感じる。
 魔力でもない、聖気でもない、呪いの力のようなものを感じる。

 これ以上先に進むのは、とりあえずやめておいた。

 だが、はっきりわかる。あそこに原因が存在している。
 あれ以上近づくと、こちらが呪われそうなくらい、禍々しいものを感じる

 俺は辺りを見回しながら広場へ戻った。

 うーん、この村の雰囲気のせいで、この村が暗いのかと思っていたけど、どうやら違うなぁ

 この村の一つ一つにまじないがかけられていると思っていたが、村全体まじないの結界にかかっているみたいだ。

 魔女はかなりの実力者らしい。

 村全体に結界を貼り、まじないを付与している。
 二ヶ月以上結界と付与が成されているという事だ。
 それがわかった以上、消滅しない魔法が使えているってこだ。

 更に、村全体にまじないをかけるほどの生命力があるということになる。

 これが魔女のいにしえの魔法なのか?ロストマジックを使うほど長く生きているのは確かだな。

 考えても仕方がないな。魔女は強くて、長生きってことだ。

「どうすっかなぁ…」

「どうかしましたか?」

「いや、治す方法をちょっと考えていてね」

「な!もう原因がわかったのですか?」

「まあ、一応は…ただ確実に治せるかどうかがまだわからないんだよなー」

「そうですか。でも、村に助かる希望があるんのですね。それも、これも、ゆうた様とシシオウ様が舞い降りてくださったからです。ありがとうございます」

「舞い降りたって…」

 そんな会話をしていると、広場に着いた。
 俺はすぐに村人を集めて、原因について話すことにした。

「えぇー、この村の畑と牧畜していた場所を見せてもらいました。そして、原因がわかりました。それは…」

 俺は今俺がわかっていることを話した。

 この村全体にまじないの結界がかけられていて、作物や井戸水が汚れたこと。
 原因は牧畜エリアにあること。

 まじないを解かない限り畑は育たないし、井戸水もまた、ダメになるだろうことも話した。

 村人の顔はやや暗い。
 俺は安心させるように話を続けた。

「だけど、心配しないでください。原因をなくせば、まじないは解けますし、方法もいくつかあります。だから安心してください」

「…さすが…神…だ」

「やはり、我々の救世主だ」

 少し暗い表情が、明るくなった。方法があると聞かされて希望を持ってくれたみたいだ。

「牧畜エリアに近づかないように」と言って話を終えた俺はお昼ご飯の分の食料を配り、シシオウと対策を考えていた。

まじないを解くにはシシオウの力が必要だ。
 あの場所は聖気が無ければ近づけない。だけど、シシオウがまじないを解きに行けば、もしもの時に村人を守れない。なんかいい案ないか?」

「ガゥグゥ」

「いや、お前は分身できないだろ」

「グァウ」

「うーん、一度シシオウが結界魔法と付与魔法を覚えるのは、俺も考えたんだけどな、それじゃあ時間がかかりすぎる。村人達が不安になっちゃうからなー」

「グゥガァ」

「いや、シシオウだけ解きに行っても俺は村人を守れないよ」

「ガァ」

「やっぱ、玉砕覚悟で俺が解きに行くしかないかー。はぁ、死にたくねぇなぁー」

 俺が解きに行ってシシオウが村人達を聖気で守る。ということになり、話をそれで進めていった。

 夜になり、広場で食料を配り終えた時に全員に説明をした。

「えっと、明日、俺が原因を解きに行きます。心配しなくてもみんなには危害が加わるような事にはさせません。シシオウがみんなを守ります」

 ざっくりと簡単に説明した。

 村人達はわかってくれたみたいで全員が頷いていた。昨日会った時の顔をしている奴は一人たりともいなかった。

 そして俺とシシオウは明日に備えて早く寝た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。 女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。 ※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。 修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。 雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。 更新も不定期になります。 ※小説家になろうと同じ内容を公開してます。 週末にまとめて更新致します。

世界に一人だけの白紙の魔眼 ~全てを映す最強の眼~

かたなかじ
ファンタジー
前世で家族に恵まれなかった山田幸作。 不憫に思った異世界の神が自らの世界に招いてくれる。 そこは剣と魔法と『魔眼』の世界。 与えられたのは特別な魔眼。 求めたのは彼を大事に思ってくれる家族。 異世界でアレクシスとして生を受けた彼は、白紙の魔眼という眼をもって生まれる。 それはなんの力も持たない魔眼だと言われていた。 家族はそれでも彼を劣っているとは思わない。 彼も神を信じ、いつか覚醒する日が来ると信じ眼に魔力を流し続けていく。 数年後、ついに特別な力に目覚めていく。 全ての魔眼を使う白紙の魔眼! ──世界に一人だけの魔眼で最強の道を行く!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし
ファンタジー
この力は危険だからあまり使わないようにしよう――。 そんな風に考えていたら役立たずのポンコツ扱いされて勇者パーティから追い出された保井武・32歳。 とりあえず腹が減ったので近くの町にいくことにしたがあの勇者パーティにいた自分の顔は割れてたりする? パーティから追い出されたなんて噂されると恥ずかしいし……。そうだ別人になろう。 そんなこんなで始まるキュートな少年の姿をしたおっさんの冒険譚。 目指すは復讐? スローライフ? ……それは誰にも分かりません。 とにかく書きたいことを思いつきで進めるちょっとえっちな珍道中、はじめました。

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...