上 下
19 / 133
人間に会う編

閑話.一途な乙女。自分磨き、人探し

しおりを挟む
 ゆうたがいなくなってから四年が経ち、中学生になっていた。

 この四年間で私はゆうたを探す事を諦めなかった。
 
 手始めに、ゆうたが好きだったボクモンのゲームの大会でチャンピオンになる事を目指した。ふざけていると思われるかもしれないが、大マジだ。

 私が有名になれば、ゆうたが見てくれていて、どこからか手がかりをつかめるかもしれないと思ったからだ。『もしかしたら』とか『かもしれない』と思うだけでもやる価値があった。

 それが三年前。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ゆうたがいなくなってから一年が経っていた。

 ゆうたは見つからない。
 私の両親とゆうたの両親だけでその頃探していた。

 もう周りはゆうたは死んでいると考えていたので、私を可哀想な目で見ていた。

 私は張り紙を貼って連絡を待つ以外に何か他の探し方を考えていた。
 何もできない自分を変えたい。そんな思いで。

 そんな時テレビでボクモンの大会がある事を知った。
「これだ!」
 テレビを見て叫んだ。ゆうたのボクモンと、私のボクモンを使って優勝したら。ゆうたから何か反応があるかもしれない。なんて思っていた。

 そこから、すぐに綺麗にしまっておいたゲーム機を取り出してボクモンを開いて私のボクモンへ移していった。

「あれ?おかしいな、どこにいるんだろう」
 ゆうたがよく使っていたボクモンを移すためにモンスターボックスを見ていたのだけど、ゆうたが一番大切にしていたボクモンの『赤獅子』がいないのだ。

 確か名前はシシオウ。ゆうたがいなくなる前の日にはいたはずのシシオウ。

「あの日に誰かと交換したの?」

 そう一人呟いて、もしかしたら手がかりになるかもしれないと思ってモンスターボックス探したが、私と秋ちゃんがあげたモンスターしかいない。
 交換した日付であの日のものは見当たらない。

 逃しちゃったのかな?あのゆうたが?なんでもない日に?相棒を?
 ありえない。ゆうたがものすごい自慢していたモンスターを間違えても逃す事はない。じゃあどこへ行ったの?

 わからない。

「どこにいるの、ゆうた……」

 一人でいると泣きそうになる。本当に泣いてしまいたい。

 私はゆうたの使っていたモンスターを全て移したあと、急いでお母さんの元へ行って、料理の手伝いをした。

 その日私はボクモンの大会に出る事を家族に説明した。



 大会の日、私は小学生の部でまずは優勝した。

 地区から全国大会まで行くのはなかなか骨が折れた。
 負けそうになる時もあった。だけどゆうたのモンスターと、私のゲロゲロビームでなんとか勝った。
 ゆうたのモンスターがいると、なんだか二人で戦っているみたいで心強かった。


 私は日本チャンピオンになった。
 テレビのレポーターに話しかけられてカメラの前で話すことにもなった。

「夏目ちゃん、チャンピオンおめでとう!このカメラに向かって、一言もらえるかな?」
 私はレポーターさんにマイクを向けられたので、チャンスだと思いカメラに向かって言った。

「チャンピオンになったよ!ゆうた!見てる??」

「おっと~、夏目ちゃんの恋人かなぁ?」

「は、はい!」

 恋人という単語につられて思わず答えちゃった!どうしよう!!
 顔が真っ赤になった。

 私は急いでカメラから逃げて、お母さんの元へ戻ってしまった。
 恥ずかしい……

 テレビに出たからなのか、芸能事務所にスカウトされた。
 有名になったらゆうたが早く見つかるかもしれないと思って、思い切って入ってみることにした。

 学校が終わった後、子役としてドラマの撮影などしたりしていた。

「これ、ゆうた見てくれるかな」

 思えば、ゆうたがいなくなってから、毎日、ゆうたのことを考えている。

 こんな考えてたら気持ち悪くて、嫌われちゃうかな、あんまり面に出さないようにしなくちゃ。

と思ってバレないように、考えることにした。

 それからは、交友を増やしたりしていたら、中学一年生になっていた。

 ゆうたは今どこで何をしているんだろう。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。 女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。 ※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。 修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。 雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。 更新も不定期になります。 ※小説家になろうと同じ内容を公開してます。 週末にまとめて更新致します。

世界に一人だけの白紙の魔眼 ~全てを映す最強の眼~

かたなかじ
ファンタジー
前世で家族に恵まれなかった山田幸作。 不憫に思った異世界の神が自らの世界に招いてくれる。 そこは剣と魔法と『魔眼』の世界。 与えられたのは特別な魔眼。 求めたのは彼を大事に思ってくれる家族。 異世界でアレクシスとして生を受けた彼は、白紙の魔眼という眼をもって生まれる。 それはなんの力も持たない魔眼だと言われていた。 家族はそれでも彼を劣っているとは思わない。 彼も神を信じ、いつか覚醒する日が来ると信じ眼に魔力を流し続けていく。 数年後、ついに特別な力に目覚めていく。 全ての魔眼を使う白紙の魔眼! ──世界に一人だけの魔眼で最強の道を行く!

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

異世界召喚された回復術士のおっさんは勇者パーティから追い出されたので子どもの姿で旅をするそうです

かものはし
ファンタジー
この力は危険だからあまり使わないようにしよう――。 そんな風に考えていたら役立たずのポンコツ扱いされて勇者パーティから追い出された保井武・32歳。 とりあえず腹が減ったので近くの町にいくことにしたがあの勇者パーティにいた自分の顔は割れてたりする? パーティから追い出されたなんて噂されると恥ずかしいし……。そうだ別人になろう。 そんなこんなで始まるキュートな少年の姿をしたおっさんの冒険譚。 目指すは復讐? スローライフ? ……それは誰にも分かりません。 とにかく書きたいことを思いつきで進めるちょっとえっちな珍道中、はじめました。

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

処理中です...