上 下
18 / 133
人間に会う編

閑話.受付の心情。慈愛の母になる

しおりを挟む



 ほとんど人間に会う編の
 2.冒険者ギルドに。と内容が同じです。
 ただ視点がニルファになっているだけです!
 読まなくても話は進むので、さらさらっと読む感じで大丈夫です。








_______________________________________________


 私の名前はニルファ。

 十二歳になってすぐに、ギルドに務めてから八年が経っていた。
 ここは村のギルドなので、結構平和だ。都会では、素行の悪い冒険者がいてかなり危険らしいと他の支部の友達から聞いた。

 「今日も平和だなぁ」

 なんて思っていると冒険者ギルドに小さな男の子が入ってきた。
 その子はかなりしっかりとした服装を着ていたので商人の息子さんなのかな?と思いながらその子を眺めていると受付の私のところまで来たのだ。

「あ、あのぉ、すみません……」

 この子は多分、迷子なのだろう。すごい緊張しているようだった。

「どうしたの?僕。迷子になっちゃったのかな?」
 そう聞くと

「あの、迷子じゃなくて、冒険者になりたくて。冒険者になりたいんです」

 この男の子は冒険者になりたいらしい。でも、こんなに小さくて可愛い子は、まだ冒険者にはなれないので大きくなったらきて欲しいと伝えた。

「そうだねー、冒険者になれるのは、僕がもう少し大きくなってからかなぁ、十二歳になったら登録できるからね!だから、大きくなったら、お姉さんのところで登録してくれるかな?」

「あの、俺、十二歳で、冒険者になりにきたんです」

 男の子が冒険者になりたいなんてみんなが思うことだ。
 きっと親に頼み込んで冒険者になりたいって言ったのかな?ふふ。可愛いなぁ。
 それにしても本当に十二歳?若くない?

「あら、本当?僕少し待ってくれるかな。ちょっと手続きの紙を取ってくるからね」
 そう言って私は受付の奥へ行き、手続きの紙とペン、真実石という本当のことを言うと光る石を持って、男の子のところへ戻った。

 「はい!じゃあ冒険者登録をしましょうね!私の名前はニルファ。
 僕、じゃなくて君の名前は?」

「えっと、中森ゆうた。ゆうたです」

「ゆうたくん!よろしくね!じゃあ手続きに行こう!と、その前に!ゆうたくんこの石を触ってくれるかな?」
 そう言って私は真実石を差し出すとゆうたくんは緊張しているようで

「は、はい!」
 と言っていた。可愛い。

「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。いくつか質問するだけだからね」

「はい。わかりました」
 とまだ若干緊張を残したゆうたくんが言った。

「じゃあ質問します。まずゆうたくんは十二歳以上ですか?」

「はい」
 真実石が光った。本当のことを言っている。けど、少し疑っていた私はちょっと驚いた

「本当に十二歳みたいだね。じゃあ次ね、冒険者登録は初めてですか?」

「はい」
 うん、それはそうだよねだってすごい緊張してるもん。ふふ。次の質問をしよう。

「冒険者になって、やる気はありますか?」
 この質問をした時ゆうたくんは訳のわからないような顔をしていた。
 実際このギルドを見ると、なんだその質問は!と思う。
 だけど、支部によってはやる気のない冒険者や、ギルドにいる新人冒険者を潰す冒険者がいるらしいのだ。
 だから聞いておいた。

「?はい」

 この子は大丈夫そうだ。

「大丈夫そうだね、じゃあ最後の質問ね。保護者様から許可を取っていますか?」
 これを聞いた時ゆうたくんの顔はほんの少しだけ曇って。
「はい」
 と答えた。

 真実石はひからなかった。ゆうたくんは保護者の許可を取っていなかったのだ。

「ゆうたくん!ダメじゃない、嘘ついちゃ!保護者様から許可取らなきゃ!」
 そういうと、ゆうたくんは困った顔をしていた。
 困った顔してもダメなものはダメなんだから!そう思っていると。

「え、っと、取れないんですよ。許可が」
 とゆうたくんは言った。かなり厳しいお父さんで、隠れて登録しにきたのかな?

「ゆうたくんのお父さんは厳しい商人のお父さんなのかな?」

「そういうわけじゃないんですけど、俺、前に両親と離れ離れになってしまって、それからじいちゃんに育てられてきたんですけど、じいちゃんも死んでしまっているので。許可が取れないんですよ」

石が光ってしまった。

「え、」

 ゆうたくんは本当のことを言っている、若干トーンの低い声。
 私が辛い過去を思い出させてしまったと感じさせられた。

「あのー、ニルファさん?」
 少し混乱していた。

「……あ、ごめんね。辛いこと聞いちゃって」

「気にしないでください、もう慣れましたし!」

 そう言って、元気に返事をして力こぶを作るようにしたゆうたくん。

 いろんな辛いことがあったのに強い子だと思った。少し安心した。

 安心した私はふと視線を真実石が触れている手を見た。

 その石は光っていなかった。

「ッ!!……」

 その意味はゆうたくんは傷ついている寂しい思いをしているということだ。これから、この子は一人で生きていくのかな。

 そんなことはさせない。
 させてはならない。

 私は一人で生きていくことの辛さを知っている。

「ニルファさん?僕は冒険者になれるのでしょうか?」

 そんなことを言うゆうたくんを見て決心した。
 
 この子の母になる。

 そうと決まれば、早くゆうたくんに伝えなければ。

「私がなります」

「へ?」

「私が保護者になります!」


「へ?????」

 ゆうたくんは理解できていないようだ。それはそうだよね。今日会ったばっかの人に、保護者になる、なんて言われるなんて。

「えっと、どうして、どうなって、そうなったんでしょうか?」

 私は今置かれているゆうたくんの現状を説明した。

「ゆうたくんはずっとこれから一人でで、生きていかないといけない状況なの。
 保護者のいない子供はどこも雇ってくれないから。
 だからせめて、私が保護者になって冒険として働けるようにしたいの……」

 私も昔、ゆうたくんと同じような境遇だった、貧しい村で生まれて、口減らしのために追い出されそうだった。
 その時に、たまたま様子を見にきた私のおばあちゃんが、私を引き取ってくれて、近くの街で私を育ててくれた。
 私が一七の時に亡くなってしまったけれど、今働けているのは、おばあちゃんのおかげだ。
 ゆうたくんは十二歳でもう独りぼっちになってしまった。
 ゆうたくんと自分を重ねてしまった。

 気づいたら涙が出ていた。

 ゆうたくんは悩んでいるみたいだった。

「これは私の自己満足だと思う。
 ゆうたくんにも、冒険者としての目標があったり、これからの目標があると思う。けれど。
 私はゆうたくんを一人にさせたくないの。
 ここにいる間だけでもいいから。お願い……」

 お願い!ゆうたくん!

 願いが届いたのか、ゆうたくん。いいや、ゆうたは答えてくれた。

「あの、こちらこそ、お願いしたいです。」

「うん」

そのあと、私は泣いていたのが恥ずかしくて、そわそわしながら手続きをした。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界で農業をやろうとしたら雪山に放り出されました。

マーチ・メイ
ファンタジー
異世界召喚に巻き込まれたサラリーマンが異世界でスローライフ。 女神からアイテム貰って意気揚々と行った先はまさかの雪山でした。 ※当分主人公以外人は出てきません。3か月は確実に出てきません。 修行パートや縛りゲーが好きな方向けです。湿度や温度管理、土のphや連作、肥料までは加味しません。 雪山設定なので害虫も病気もありません。遺伝子組み換えなんかも出てきません。完璧にご都合主義です。魔法チート有りで本格的な農業ではありません。 更新も不定期になります。 ※小説家になろうと同じ内容を公開してます。 週末にまとめて更新致します。

世界に一人だけの白紙の魔眼 ~全てを映す最強の眼~

かたなかじ
ファンタジー
前世で家族に恵まれなかった山田幸作。 不憫に思った異世界の神が自らの世界に招いてくれる。 そこは剣と魔法と『魔眼』の世界。 与えられたのは特別な魔眼。 求めたのは彼を大事に思ってくれる家族。 異世界でアレクシスとして生を受けた彼は、白紙の魔眼という眼をもって生まれる。 それはなんの力も持たない魔眼だと言われていた。 家族はそれでも彼を劣っているとは思わない。 彼も神を信じ、いつか覚醒する日が来ると信じ眼に魔力を流し続けていく。 数年後、ついに特別な力に目覚めていく。 全ての魔眼を使う白紙の魔眼! ──世界に一人だけの魔眼で最強の道を行く!

鬼神転生記~勇者として異世界転移したのに、呆気なく死にました。~

月見酒
ファンタジー
高校に入ってから距離を置いていた幼馴染4人と3年ぶりに下校することになった主人公、朝霧和也たち5人は、突然異世界へと転移してしまった。 目が覚め、目の前に立つ王女が泣きながら頼み込んできた。 「どうか、この世界を救ってください、勇者様!」 突然のことに混乱するなか、正義感の強い和也の幼馴染4人は勇者として魔王を倒すことに。 和也も言い返せないまま、勇者として頑張ることに。 訓練でゴブリン討伐していた勇者たちだったがアクシデントが起き幼馴染をかばった和也は命を落としてしまう。 「俺の人生も……これで終わり……か。せめて……エルフとダークエルフに会ってみたかったな……」 だが気がつけば、和也は転生していた。元いた世界で大人気だったゲームのアバターの姿で!? ================================================ 一巻発売中です。

異世界で魔法使いとなった俺はネットでお買い物して世界を救う

馬宿
ファンタジー
30歳働き盛り、独身、そろそろ身を固めたいものだが相手もいない そんな俺が電車の中で疲れすぎて死んじゃった!? そしてらとある世界の守護者になる為に第2の人生を歩まなくてはいけなくなった!? 農家育ちの素人童貞の俺が世界を守る為に選ばれた!? 10個も願いがかなえられるらしい! だったら異世界でもネットサーフィンして、お買い物して、農業やって、のんびり暮らしたいものだ 異世界なら何でもありでしょ? ならのんびり生きたいな 小説家になろう!にも掲載しています 何分、書きなれていないので、ご指摘あれば是非ご意見お願いいたします

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

生産性厨が異世界で国造り~授けられた能力は手から何でも出せる能力でした~

天樹 一翔
ファンタジー
 対向車線からトラックが飛び出してきた。  特に恐怖を感じることも無く、死んだなと。  想像したものを具現化できたら、もっと生産性があがるのにな。あと、女の子でも作って童貞捨てたい。いや。それは流石に生の女の子がいいか。我ながら少しサイコ臭して怖いこと言ったな――。  手から何でも出せるスキルで国を造ったり、無双したりなどの、異世界転生のありがちファンタジー作品です。  王国? 人外の軍勢? 魔王? なんでも来いよ! 力でねじ伏せてやるっ!  感想やお気に入り、しおり等々頂けると幸甚です!    モチベーション上がりますので是非よろしくお願い致します♪  また、本作品は小説家になろう、エブリスタ、カクヨムで公開している作品となります。  小説家になろうの閲覧数は170万。  エブリスタの閲覧数は240万。また、毎日トレンドランキング、ファンタジーランキング30位以内に入っております!  カクヨムの閲覧数は45万。  日頃から読んでくださる方に感謝です!

ある日、近所の少年と異世界に飛ばされて保護者になりました。

トロ猫
ファンタジー
仕事をやめ、なんとなく稼ぎながら暮らしていた白川エマ(39)は、買い物帰りに偶然道端で出会った虐待された少年と共に異世界に飛ばされてしまう。 謎の光に囲まれ、目を開けたら周りは銀世界。 「え?ここどこ?」 コスプレ外国人に急に向けられた剣に戸惑うも一緒に飛ばされた少年を守ろうと走り出すと、ズボンが踝まで落ちてしまう。 ――え? どうして カクヨムにて先行しております。

処理中です...