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人間に会う編
閑話.受付の心情。慈愛の母になる
しおりを挟むほとんど人間に会う編の
2.冒険者ギルドに。と内容が同じです。
ただ視点がニルファになっているだけです!
読まなくても話は進むので、さらさらっと読む感じで大丈夫です。
_______________________________________________
私の名前はニルファ。
十二歳になってすぐに、ギルドに務めてから八年が経っていた。
ここは村のギルドなので、結構平和だ。都会では、素行の悪い冒険者がいてかなり危険らしいと他の支部の友達から聞いた。
「今日も平和だなぁ」
なんて思っていると冒険者ギルドに小さな男の子が入ってきた。
その子はかなりしっかりとした服装を着ていたので商人の息子さんなのかな?と思いながらその子を眺めていると受付の私のところまで来たのだ。
「あ、あのぉ、すみません……」
この子は多分、迷子なのだろう。すごい緊張しているようだった。
「どうしたの?僕。迷子になっちゃったのかな?」
そう聞くと
「あの、迷子じゃなくて、冒険者になりたくて。冒険者になりたいんです」
この男の子は冒険者になりたいらしい。でも、こんなに小さくて可愛い子は、まだ冒険者にはなれないので大きくなったらきて欲しいと伝えた。
「そうだねー、冒険者になれるのは、僕がもう少し大きくなってからかなぁ、十二歳になったら登録できるからね!だから、大きくなったら、お姉さんのところで登録してくれるかな?」
「あの、俺、十二歳で、冒険者になりにきたんです」
男の子が冒険者になりたいなんてみんなが思うことだ。
きっと親に頼み込んで冒険者になりたいって言ったのかな?ふふ。可愛いなぁ。
それにしても本当に十二歳?若くない?
「あら、本当?僕少し待ってくれるかな。ちょっと手続きの紙を取ってくるからね」
そう言って私は受付の奥へ行き、手続きの紙とペン、真実石という本当のことを言うと光る石を持って、男の子のところへ戻った。
「はい!じゃあ冒険者登録をしましょうね!私の名前はニルファ。
僕、じゃなくて君の名前は?」
「えっと、中森ゆうた。ゆうたです」
「ゆうたくん!よろしくね!じゃあ手続きに行こう!と、その前に!ゆうたくんこの石を触ってくれるかな?」
そう言って私は真実石を差し出すとゆうたくんは緊張しているようで
「は、はい!」
と言っていた。可愛い。
「そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。いくつか質問するだけだからね」
「はい。わかりました」
とまだ若干緊張を残したゆうたくんが言った。
「じゃあ質問します。まずゆうたくんは十二歳以上ですか?」
「はい」
真実石が光った。本当のことを言っている。けど、少し疑っていた私はちょっと驚いた
「本当に十二歳みたいだね。じゃあ次ね、冒険者登録は初めてですか?」
「はい」
うん、それはそうだよねだってすごい緊張してるもん。ふふ。次の質問をしよう。
「冒険者になって、やる気はありますか?」
この質問をした時ゆうたくんは訳のわからないような顔をしていた。
実際このギルドを見ると、なんだその質問は!と思う。
だけど、支部によってはやる気のない冒険者や、ギルドにいる新人冒険者を潰す冒険者がいるらしいのだ。
だから聞いておいた。
「?はい」
この子は大丈夫そうだ。
「大丈夫そうだね、じゃあ最後の質問ね。保護者様から許可を取っていますか?」
これを聞いた時ゆうたくんの顔はほんの少しだけ曇って。
「はい」
と答えた。
真実石はひからなかった。ゆうたくんは保護者の許可を取っていなかったのだ。
「ゆうたくん!ダメじゃない、嘘ついちゃ!保護者様から許可取らなきゃ!」
そういうと、ゆうたくんは困った顔をしていた。
困った顔してもダメなものはダメなんだから!そう思っていると。
「え、っと、取れないんですよ。許可が」
とゆうたくんは言った。かなり厳しいお父さんで、隠れて登録しにきたのかな?
「ゆうたくんのお父さんは厳しい商人のお父さんなのかな?」
「そういうわけじゃないんですけど、俺、前に両親と離れ離れになってしまって、それからじいちゃんに育てられてきたんですけど、じいちゃんも死んでしまっているので。許可が取れないんですよ」
石が光ってしまった。
「え、」
ゆうたくんは本当のことを言っている、若干トーンの低い声。
私が辛い過去を思い出させてしまったと感じさせられた。
「あのー、ニルファさん?」
少し混乱していた。
「……あ、ごめんね。辛いこと聞いちゃって」
「気にしないでください、もう慣れましたし!」
そう言って、元気に返事をして力こぶを作るようにしたゆうたくん。
いろんな辛いことがあったのに強い子だと思った。少し安心した。
安心した私はふと視線を真実石が触れている手を見た。
その石は光っていなかった。
「ッ!!……」
その意味はゆうたくんは傷ついている寂しい思いをしているということだ。これから、この子は一人で生きていくのかな。
そんなことはさせない。
させてはならない。
私は一人で生きていくことの辛さを知っている。
「ニルファさん?僕は冒険者になれるのでしょうか?」
そんなことを言うゆうたくんを見て決心した。
この子の母になる。
そうと決まれば、早くゆうたくんに伝えなければ。
「私がなります」
「へ?」
「私が保護者になります!」
「へ?????」
ゆうたくんは理解できていないようだ。それはそうだよね。今日会ったばっかの人に、保護者になる、なんて言われるなんて。
「えっと、どうして、どうなって、そうなったんでしょうか?」
私は今置かれているゆうたくんの現状を説明した。
「ゆうたくんはずっとこれから一人でで、生きていかないといけない状況なの。
保護者のいない子供はどこも雇ってくれないから。
だからせめて、私が保護者になって冒険として働けるようにしたいの……」
私も昔、ゆうたくんと同じような境遇だった、貧しい村で生まれて、口減らしのために追い出されそうだった。
その時に、たまたま様子を見にきた私のおばあちゃんが、私を引き取ってくれて、近くの街で私を育ててくれた。
私が一七の時に亡くなってしまったけれど、今働けているのは、おばあちゃんのおかげだ。
ゆうたくんは十二歳でもう独りぼっちになってしまった。
ゆうたくんと自分を重ねてしまった。
気づいたら涙が出ていた。
ゆうたくんは悩んでいるみたいだった。
「これは私の自己満足だと思う。
ゆうたくんにも、冒険者としての目標があったり、これからの目標があると思う。けれど。
私はゆうたくんを一人にさせたくないの。
ここにいる間だけでもいいから。お願い……」
お願い!ゆうたくん!
願いが届いたのか、ゆうたくん。いいや、ゆうたは答えてくれた。
「あの、こちらこそ、お願いしたいです。」
「うん」
そのあと、私は泣いていたのが恥ずかしくて、そわそわしながら手続きをした。
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