上 下
14 / 133
森に迷い込んだ編

12.異世界に来て三年半。獅子に羽が生えているのだけど

しおりを挟む
しっかりと、森を散歩して半年で帰ってきた。

 森は既に俺の庭となっている。御山の大将ならぬ、御森の大将である。

「シシオウは帰ってきてるかな」

 なんて呟きながら重力山へ向かっていったのだが、重力山がなんか明るい。
 今は昼だがそれにしても明るい。と言うよりか太陽は空にあるのに、重力山にも太陽が落ちているようなそんな明るさだ。

 重力山についてその正体はわかった。

 いや。わかっていたのだけれど。

 正体はシシオウだった。

 いやいや。シシオウなんだけど、少しいやかなり見た目が変わっている。

 また変わったのか。焦ってしまうよ、この姿は、可愛げがあったライオンが、少しかっこよくなったのが、ついこの前だってのに。
 さらにかっこよくなって、前の赤獅子がいなくなっちゃったよ。

 脚元は変わらずにしましまの脚。たてがみは生え際は白くて、毛先にかけて赤みがかったグラデーションである。

 そして何よりの変化は体だあろう。

 背中にたてがみの様なグラデーションの羽が生えている。おしりから鳥の尻尾の様なものが生えている。

 シシオウが凛々しくなった。
 絶対にコイツは南にある鳥を食べた。それはよくないが、いいとして。

 眩しい、眩しすぎる。眩しすぎて一緒にいると色々と困る。

 とりあえずじいちゃんに帰宅報告しよう。

「じいちゃんただいま。シシオウはどうしちゃったんだ?」

「おお、ゆうた、おかえり半年振りじゃのそれはシシオウに聞いとくれ」

「わかったよ」

「シシオウおかえり。どうしちゃったんだ、そのピカピカは。」

「グルゥ」

 やはりシシオウは鳥を食べたらしい。
 光はちゃんと抑えられるらしいので安心だ。

 自慢したかったらしい。

ピカピカなんて使い道あまりなさそうだしなぁ。

 だがそのピカピカから放たれる聖気は神様なのかと思うくらい強い。
 まあ神様は見たことがないのだけれども。俺の相棒がここまで強くなったことはとても嬉しい。

 ボクモンでタマゴから育てて、赤獅子になって、この世界にきて、さらに育ったのだ。

 白焔の獅子とか思っていたら、また姿が変わったのだから、また名前を考えなければいけないなぁ。

 なんて思い、ニヤニヤしていた。

「ゆうたよ、お前たちはもうすでにこの森を高速で出れるだけの力がある。
 きっとある程度の脅威にも耐えることができるだろう。この森はかなり危険な森じゃったからな。
 お前たちにはもう、庭同然じゃろうしな。
 しかし、慢心はするな、人間は簡単に死ぬのじゃからな、ワシも簡単に死んだくちじゃしの」

 じいちゃんがニヤニヤしてる俺に真面目なことを言ってきた。

「ああ、ありがとう。じいちゃん。
 じいちゃんがいなければこの森を出れずに死んでたとおもう。刀術、死の恐怖、森での生き方、心構え。いろんなものを教えてもらったよ。不器用だったけどなんとか伝わったよ」

「不器用は余計じゃ!それでどうするのじゃ。今後の予定とかはきまっておるのか?」

 今後の予定か。生きるために強くなる事と人間に会うことばっか考えていたな。
 人間にあったら何をしよう。まず初対面の人にはなんて挨拶すればいいんだ?

 俺獣臭くないかな。おっと、話が逸れた。

 俺が何をしたいのか。俺は……

「俺は困っている人を助けたい。救いを求めている奴がいたら救ってやりたい。
 俺は運良く、ここまで生きてこれたけど、一人で悲しんでいる奴もいるかもしれない。そんな奴を助けてやりたい」

「……そうか。ならば、人間との会話の仕方を学ばないといかんの!ゆうたは、森でワシとシシオウとしかはなしとらんしの!はっはっは!」

「俺はセイちゃんとも話してるぞ!そもそも森にはそれくらいしか話せる奴がいないじゃないか。
 しかも、この世界で人語を話している奴はじいちゃんと暗闇であった奴らだけだし!」

「残り半年で教えられるのは、この森の外の常識だけじゃな。ワシの知っている限りをゆうた達には教えよう」


そして半年はあっという間に過ぎた。
しおりを挟む
感想 91

あなたにおすすめの小説

前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に二週目の人生を頑張ります

京衛武百十
ファンタジー
俺の名前は阿久津安斗仁王(あくつあんとにお)。いわゆるキラキラした名前のおかげで散々苦労もしたが、それでも人並みに幸せな家庭を築こうと仕事に精を出して精を出して精を出して頑張ってまあそんなに経済的に困るようなことはなかったはずだった。なのに、女房も娘も俺のことなんかちっとも敬ってくれなくて、俺が出張中に娘は結婚式を上げるわ、定年を迎えたら離婚を切り出されれるわで、一人寂しく老後を過ごし、2086年4月、俺は施設で職員だけに看取られながら人生を終えた。本当に空しい人生だった。 なのに俺は、気付いたら五歳の子供になっていた。いや、正確に言うと、五歳の時に危うく死に掛けて、その弾みで思い出したんだ。<前世の記憶>ってやつを。 今世の名前も<アントニオ>だったものの、幸い、そこは中世ヨーロッパ風の世界だったこともあって、アントニオという名もそんなに突拍子もないものじゃなかったことで、俺は今度こそ<普通の幸せ>を掴もうと心に決めたんだ。 しかし、二週目の人生も取り敢えず平穏無事に二十歳になるまで過ごせたものの、何の因果か俺の暮らしていた村が戦争に巻き込まれて家族とは離れ離れ。俺は難民として流浪の身に。しかも、俺と同じ難民として戦火を逃れてきた八歳の女の子<リーネ>と行動を共にすることに。 今世では結婚はまだだったものの、一応、前世では結婚もして子供もいたから何とかなるかと思ったら、俺は育児を女房に任せっきりでほとんど何も知らなかったことに愕然とする。 とは言え、前世で八十年。今世で二十年。合わせて百年分の人生経験を基に、何とかしようと思ったのだった。

異世界転生 我が主のために ~不幸から始まる絶対忠義~ 冒険・戦い・感動を織りなすファンタジー

紫電のチュウニー
ファンタジー
 第四部第一章 新大陸開始中。 開始中(初投稿作品)  転生前も、転生後も 俺は不幸だった。  生まれる前は弱視。  生まれ変わり後は盲目。  そんな人生をメルザは救ってくれた。  あいつのためならば 俺はどんなことでもしよう。  あいつの傍にずっといて、この生涯を捧げたい。  苦楽を共にする多くの仲間たち。自分たちだけの領域。  オリジナルの世界観で描く 感動ストーリーをお届けします。

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

最強聖女は追放されたので冒険者になります。なおパーティーメンバーは全員同じような境遇の各国の元最強聖女となった模様。

山外大河
ファンタジー
 とある王国の」最強の聖女、アンナ・ベルナールは国王の私利私欲の為の邪魔となり王国を追放されてしまう。  そして異国の地で冒険者になったアンナだが、偶然知り合った三人の同年代の少女達は全員同じような境遇で国を追放された各国の最強の元聖女達だった。  意気投合した四人はパーティーを結成。  最強の元聖女四人による冒険者生活が今始まる。  ……ついでに彼女たちを追放した各国は、全部滅びるようです。

これダメなクラス召喚だわ!物を掌握するチートスキルで自由気ままな異世界旅

聖斗煉
ファンタジー
クラス全体で異世界に呼び出された高校生の主人公が魔王軍と戦うように懇願される。しかし、主人公にはしょっぱい能力しか与えられなかった。ところがである。実は能力は騙されて弱いものと思い込まされていた。ダンジョンに閉じ込められて死にかけたときに、本当は物を掌握するスキルだったことを知るーー。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

D○ZNとY○UTUBEとウ○イレでしかサッカーを知らない俺が女子エルフ代表の監督に就任した訳だが

米俵猫太朗
ファンタジー
ただのサッカーマニアである青年ショーキチはひょんな事から異世界へ転移してしまう。 その世界では女性だけが行うサッカーに似た球技「サッカードウ」が普及しており、折りしもエルフ女子がミノタウロス女子に蹂躙されようとしているところであった。 更衣室に乱入してしまった縁からエルフ女子代表を率いる事になった青年は、秘策「Tバック」と「トップレス」戦術を授け戦いに挑む。 果たしてエルフチームはミノタウロスチームに打ち勝ち、敗者に課される謎の儀式「センシャ」を回避できるのか!? この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...