社畜がひとり美女に囲まれなぜか戦場に~ヘタレの望まぬ成り上がり~

のらしろ

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中隊はジャングルに

思い付き

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「亡命ですか?」
 そんな会話をしているところに、被害にあった女性たちが処理を終えてテントから出てきた。
 俺とアンリ少尉との会話を聞いていたのか、驚いたひとりの女性がアンリ少尉に食ってかかった。
「少尉、亡命はお待ちください。でないと、国に居る親や弟たちにどんな被害が出るかわかったものじゃなくなります。私たちが帝国に亡命したとしれたらそれこそリンチにでもあって殺されます」
 すると後から出てきたもうひとりの少女が今の少女に向かって「では、どうすれば良いと言うのですか?私たちはとっくに死んだことになっていますよ。このまま国に戻されたらそれこそ今度は確実に殺されます。私は死にたくはありません。国の親族の安否は心配ですけれども、正直私は自分の命が惜しい」
「ケッ、とんだゲスばかりの国になっているな、敵さんは」と俺たちの会話を聞いていたメーリカさんが思わず感想を言ってきた。
「帝国もお貴族さんたちの無理難題にはかなり酷い目にあってきたけれども、今の会話を聞くとそこまで帝国は腐っていないぞ。お前たちの国は貴族の腐敗を嫌って民主的で開かれた国を作るんだと言って俺たちに喧嘩を吹っかけたはずなのにな。お前たちの方が腐りきっているな」
「よさないか、今はそんな会話をしている時じゃないよ」
 俺は雲行きが怪しくなってきた会話の方向を修正した。
「そうですよ。それに亡命なんて簡単にはできませんから。どちらにしても帰投しないと始まりませんよ。で、どうしますか、中尉」
 相変わらずの優等生なアプリコットからの問いに俺は答えた。
「アプリコット少尉の言うとおり、基地に可及的速やかに帰投する。各自準備にかかって欲しい」と俺は隊の全員に向かって命令を発した。
 その後、不安を抱える被害女性達に向かって、「とりあえず、ここでは話は進まない。亡命者として受け入れるにしろ、捕虜として扱うにしろ、ここでの俺たちの君たちに対する扱いは変わらない。拘束するつもりはないが警戒だけはさせてもらう。基地につくまでは捕虜待遇として扱わせてもらうから当然武装は解除させてもらうし、常時監視はさせてもらう。そこのところは了解して欲しい。アンリさんは経験しているから知っているとは思うが俺たちは君たちをひどくは扱わないことを保証する。それでこの場は理解してくれ」
 俺はテントから出てきた18名の共和国女性兵士に向かって言い聞かせるように話した。
「へ~~、隊長も変わってきたね。自信でも出てきたの」
 メーリカさんが俺のことを冷やかしてきた。
「しょうがないじゃないか。怯えた女性たちをそのままにして置けるほど俺の心臓は強くはないよ。でもどうしようかな……」
「基地に帰るのはいいとして、基地への報告はどうしましょうか。この場での無線報告は危険が伴うと思われます」
 サーシャ少尉がこのあとについての心配事を相談してきた。
「そうだな、ここは既に敵の勢力圏と考えてもいいだろうな」
「そうなりますと確実に無線は傍受されますね」
 今度はローラ軍曹が断言してきた。
「確実に傍受されるか。でも定期連絡を何日も欠かすわけには行かないぞ。どうしますか。無線とバイクを先行させて連絡を無理矢理にでも取りますか」
 最後に決定的なことをアプリコットが気付いてしまった。
「中尉、ちょっと待ってください。確実に無線を傍受されていると考えると、昨日の定期連絡は傍受されていると考える必要が生じます。となると我々は非常に危険な状態になっているものと判断されますよ」
 そうだよな。
 アプリコットが言うように敵に気づかれている??
 ここから逃げるにしても現実的な問題が山積している。
 どうするかな。
 俺はしばし考えていたが、何かが引っかかる。
 そうだ、俺は先ほどアンリ少尉が話してくれた噂が気になっていたのだ。
 どこの部分で引っかかっているのだ……
「あ~~~そうだよ。大丈夫だ。慌てなくとも大丈夫だよ。そうだよねアンリ少尉」
「は?どういうことでしょうか。中尉が何をおっしゃっているのか分かりません」
「隊長、どういうことだよ。俺らにもわかりやすく説明してくれ」
「だからさ、あの噂だよ。それにアンリ少尉たちも噂通りここまで3日かけてきたんだよね」
「あ~そういうことか。だとすると我々には3日のアドバンテージがあったはず。昨日の段階で発見されていても2日のアドバンテージは残っているというわけか」
「メーリカ少尉、どういうことなんでしょうか」
「だからさ、敵さんは本隊が駐屯しているそばではさすがに強姦や殺しは出来ないということだよ。奴らがどんなに腐っていても、さすがにおおっぴらにはできないだろう、強姦や殺しは。だとすると本隊からは少し離れてなければならないというわけか。それが移動で3日の距離というわけか。そういうことだろ、隊長」
「そういうことだ。最悪でも1日のアドバンテージが我々にはある。来た道を帰るだけだから帰りはかなり短縮できるし、まずは安全と考えていいだろう。もっともあまりゆっくりとはできないが。それに我々は最悪威力偵察の危険性も考慮されていたわけだから、その準備も出来ているだろ。敵の追跡部隊が大隊までなら逃げ切れるさ」
 ここまで話していて俺はあることを思いついた。
 あくまで噂だったわけなのだから、一般の敵兵士には彼女たちのあった被害は伝わっていないわけだ。
 暗黙の事実だとしても公でない。
 しかもアンリ少尉の話しぶりだと噂はまだあくまでも噂であって暗黙の事実にはなっていない。
 最もこんなことがおおっぴらにでもなったら軍の士気など簡単に最悪なレベルまで低下するだろ。
 少なくとも少なからず居る女性兵の士気は最悪になる。
 ならば噂の真相を敵にお伝えしなければならないだろう。
「アプリコットさん。俺の気が変わった。今すぐに基地に無線をするから準備をしてくれ」
「ちょっと待ってください。いくら1日以上のアドバンテージがあるとは言え、また、敵に我々の存在が発見されたわけじゃないのですよ。それなのに何故危険を冒してまで無線連絡をしなければならないか私には分かりません」
「だからさ、敵にも聞いてもらおうよ。戦地犯罪の状況をさ。きちんと敵の政治将校と参謀の高級将校たちが自分たちの権利を行使して女性兵士に乱暴していたところを帝国兵士に捕まったとね。無線を聞いた敵の兵士たちは我々に感謝するんじゃないかな。よくぞゲス人間を捕まえたとね。だから敵の方向にアンテナを向けて戦地犯罪人の捕縛と殺人の容疑もあることを伝えて基地に帰ると暗号を使わずに平文で発信するからすぐにできるよね」
「それならば今すぐにでも発信はできますよ」
「ならば、発信後すぐにここを立つから出発の準備が整い次第無線を発して、急いで基地に帰るよ。急いで準備してね」
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