165 / 336
中隊はジャングルに
電話の工事
しおりを挟むシバ中尉と共に、出来たばかりの司令部建家に入っていった。
シバ中尉の連れてきた部下たちは既にこの建家に食堂として作っていた広いスペースにとりあえず入ってもらっているので、シバ中尉たちを俺の部屋として割り当てられている隊長室に連れて行った。
「グラス中尉、電話の工事の件ですがうちらは明日からでも取り掛かれますが、電話線を這わす経路はどうしましょうか?
ウチラが通ってきた経路だと無駄が多いような……経路そのものが長くなり過ぎになってしまうし、グラス中尉に何かアイデアはありませんかね」
「それなんですけれど、あの経路だとシバ中尉の言うとおり遠回りなのが気に入らないのですよ。そこで新たな経路を模索して今測量をしているんですがその経路で這わせましょうか」
「へ~~~、既に次を考えておりましたか……で、その経路とはどんな感じですかね」
「ちょっと待ってください。アプリコットさんや、エレナさんを呼んで今作っている地図を持ってきてもらえないかな」
「あ、はい。そうですね、電話線の工事には必要になりますよね。すぐに呼んできます」と言って、アプリコットがここ隊長室を出ていった。
「それにしても驚きました。このあたりの地図まで作っていたんですね」
「それなんですが、前の小隊時代から、なぜか私の小隊に測量担当のエレナさんが配属されていたんですよ。せっかくなら使わない手はないですからね」
「エレナですか……そう言えばあの時なかりドタバタしていたからわかりませんでしたがグラス中尉のところに配属されていましたか……我々と一緒にあの基地に着いたはずでしたがいつの間にかいなくなっていたのを忘れていました。エレナはシノブ大尉が帝都から連れてきた技師でしたね。ずっとシノブ大尉率いる工兵隊にいたはずでしたが、そうですか中尉のところに行きましたか……一番活躍場所のある配置ですね。誰の思惑ですか。シノブ大尉ではないでしょ」
「あの時の配属にはかなりおやっさんに世話になりましたから多分おやっさんのお考えでは。あの時一緒に整備担当にマキアさんを付けてもらいましたし、衛生兵としてビッショップ准尉のところから秘蔵っ子を二人も出してもらいましたから、今でもとても助かっています。我々が今でも事故なくジャングルで活動できるのも、あの時に強力な助っ人を回してもらえたことが大きいでしょうね。それもこれもおやっさんのおかげかと思いますよ」
「そうだね、あの時にゴタゴタの時にそこまで気が回ったのはおやっさんくらいしかいませんでしたからね。多分、師団司令部は今でも気が付いていないかもしれないかもしれませんよ。最近あのあたりの開発に当たり測量技師がいなくてとても困っているようだから、中尉のところに測量技師がいることを失念していることでしょう。でなければこんなところに中尉を回すはずないし、それどころかエレナを配置替えしたはずですからね」
「そうですね。なぜか私は司令部に良く思われていないようで。シバ中尉にお願いですが、このことは内密にお願いしますよ。ただでさえせっかく育てた兵士を連れて行かれたんだし、ここで更に戦力を抜かれたらニッチもサッチ行かなくなってしまいますからね」
「わかってますよ。どうせおやっさんは分かっているでしょうから、本当に必要にならないとそんな無理はさせませんよ」
ここまで話し込んでいると大きな紙を持ったエレナさんがアプリコットに連れられてやってきた。
「シバ中尉、お久しぶりですね」
「エレナか、久しぶり」
エレナさんが持ってきた大きな紙にはおおよその付近の地図が描かれていた。
精密な測量を広範囲にはできなかったためにかなりラフであるが、経路の選定には十分に使えるレベルのものだ。
その地図を前にしてエレナさんが我々に新たな補給ルートの候補を指差して説明し始めた。
それによるとかなり真っ直ぐな経路となりそうで補給ルートとしてもかなり良さそうなので、その場でルートを描きこんでもらいそのルートで先に電話工事をしてもらうようにした。
補給ルートとして道幅6mの道路を作ることを考えていたのだが、まず、そのルート上に1m幅でジャングルを切り開いてもらい、電柱を立てて電話工事に明日から入ることになった。
1m幅のジャングルの切り開きはケート少尉のところ部下に工事を任せ、ひよこさんたちには先行している1mの経路を6mまで広げ道にしていくような計画で工事が始まった。
雑用などをしながらシバ中尉の工事を見守っている。
さすがにジャングルを切り開きながらの工事なのでそう簡単には電話工事ははかどらないが、それでも毎日一定の距離の工事が進んでいく。
師団本部との補給も数日おきに行っており、師団本部に残してきたひよこさんたちも訓練の進み具合を見ながら徐々にこっちに呼んでいる。
次の補給の便で全員がここに揃う予定だ。
後からやってくるひよこさんたちには自分たちのための営舎作りをさせているし、交代して道路工事にも参加させている。
それにしても俺のところに配属されてくる兵士たちはみんな器用だな。
全員が全員上手に工事をこなしてしまうと感心していたのだが、アプリコットたちに言わせると一般の兵士の仕事をさせないで工兵の真似事どころか帝国内で仕事をしている大工以上に工事をさせるので、全員がある一定期間過ぎると工兵並みの技量を持たせてしまうと呆れていた。
俺にはそんな自覚は無かったのだが、自覚無さ過ぎとまで言われたのには少し凹んでしまった。
1
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

大日本帝国、アラスカを購入して無双する
雨宮 徹
歴史・時代
1853年、ロシア帝国はクリミア戦争で敗戦し、財政難に悩んでいた。友好国アメリカにアラスカ購入を打診するも、失敗に終わる。1867年、すでに大日本帝国へと生まれ変わっていた日本がアラスカを購入すると金鉱や油田が発見されて……。
大日本帝国VS全世界、ここに開幕!
※架空の日本史・世界史です。
※分かりやすくするように、領土や登場人物など世界情勢を大きく変えています。
※ツッコミどころ満載ですが、ご勘弁を。
甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。
【新訳】帝国の海~大日本帝国海軍よ、世界に平和をもたらせ!第一部
山本 双六
歴史・時代
たくさんの人が亡くなった太平洋戦争。では、もし日本が勝てば原爆が落とされず、何万人の人が助かったかもしれないそう思い執筆しました。(一部史実と異なることがあるためご了承ください)初投稿ということで俊也さんの『re:太平洋戦争・大東亜の旭日となれ』を参考にさせて頂きました。
これからどうかよろしくお願い致します!
ちなみに、作品の表紙は、AIで生成しております。

女豹の恩讐『死闘!兄と妹。禁断のシュートマッチ』
コバひろ
大衆娯楽
前作 “雌蛇の罠『異性異種格闘技戦』男と女、宿命のシュートマッチ”
(全20話)の続編。
https://www.alphapolis.co.jp/novel/329235482/129667563/episode/6150211
男子キックボクサーを倒したNOZOMIのその後は?
そんな女子格闘家NOZOMIに敗れ命まで落とした父の仇を討つべく、兄と娘の青春、家族愛。
格闘技を通して、ジェンダーフリー、ジェンダーレスとは?を描きたいと思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる