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グラス小隊のお仕事
街が見えた
しおりを挟む「お~い、スティアさん、ドミニクさん、できたんだって?」
「あ、隊長、完成しました。今二人で念入りに確認していたところです。問題はありませんでしたよ。あ、でも、せっかく隊長も来てくれたのですし、隊長にも確認してほしいなぁ」
「俺は、構わないよ。でも、目視の確認は済んでいるんだろ。それじゃ~、ただの目視確認だけじゃもったいないな。お~い、誰か、そこの軽車両をゆっくり橋の上まで運転してきてくれ」
「分かりました」と、マキアさんが早速軽車両の運転席に乗り、ゆっくりと橋の中央まで軽車両を運転してきてくれた。
「隊長、どんな感じですか?」
「橋の支柱にも変な動きはないし、撓みも問題ないな。これならば、大丈夫そうだ。とりあえず、車を向こう岸に移動させておいてくれ」
「分かりました」と言って、今度はもう少し速度を上げて車を移動させていった。
「ついでにもう少し確認がてら、車を移動させよう。誰か、指揮車も向こうに移動させてくれ」
「わかったよ、指揮車は私が運転しよう」と言って、メーリカさんが指揮車に戻り運転してきた。
今度はやや速度を落とした位の速度で、とくに慎重な運転ではなかった。
正直、良かったと思っている。
橋が実用に耐えうるかどうかの確認ができたから、助かった。
見る限りでは、どこにも問題は見つけられなかった。
「これなら大丈夫そうだな。ついでにトラックも移動させよう。トラックの運転手に運転させてくれ」
アプリコットが「それなら、私がトラック運転の当番兵に伝えてきます」と言って、兵士たちが溜まっているあたりまで駆けていった。
しばらく、橋の周りを周り異常がないかを入念に見て回ったが、本当に頑丈に作られており、どこにも問題点が見つけられなかった。
トラック2台が、ノロノロと橋の方に近づいてきた。
「お~い、そのまま向こう岸まで、トラックを移動しておいてくれ」
運転席に座っている、多分新兵達だと思うが「「分かりました」」と返事を返して、そのままトラックを橋の上まで運転してきた。
その時、橋の様子をすぐ脇で観察していたが、これも先ほどと同様に問題らしいものは見当たらなかった。
「良かった。大丈夫だとは思っていたが、心配だったので、この目でじっくり確認したけれど、このまま使用できる。橋に関しては、もう終わりにして、今日は休み。明日は、このまま出発しよう」
「分かりました。すぐに野営に入ります。先ほどから、サリーが夕食の準備を進めていましたので、直ぐに食べられるようになると思います」
「どうりでいい匂いがしてきたと思った。でも、サリーはいつ料理を覚えたんだ?この匂いはカレーだろ」
「ハイ、多分カレーだと思います。基地にいた時に、料理に興味を持ったようで、ちょくちょく厨房に行っては教わっていたみたいですよ」
「あ、サリーがよく厨房にお茶やら小麦粉やらをもらいに行っていたのには、そういう目的もあったのか。どうりで帰りの遅い時が多かったな。これで納得ができたよ。でも、本当によく働いてくれるな。助かるよ」
それにしても、うちの連中は皆よく働くな。
俺の体にはブラック職場から持ってきた細菌でもあるのかな。それともブラックって遺伝するのかな……て、遺伝は無いな。
でも、楽しそうにしているから、ブラックじゃないよな。
どちらにしても、助かることには変わりはないし、楽しそうならなお結構だ。
直ぐにみんなで食事になった。
これはこの小隊が以前から行っていることだが、食事前にバイクで周囲のかなり広い範囲を探索してから、全員が集まって取ることにしている。
仲間はずれは、かわいそうだからな。
食事くらいはみんなで摂りたい。
最初の頃は、アプリコットだけじゃなく山猫のみんなも、歩哨を立てずに食事なんか信じられないと言っていたが、このスタイルを継続していくうちに、すっかりこのスタイルにハマってしまった。
全員が一堂に会する機会なんて、作戦行動中にはあまり持てないのが普通で、貴重な時間となっている。
何より、伝達事項に漏れが出ないのが、いい結果を生んでいる。
危険じゃないかって? 周囲10km位の警戒を済ませてあるので、敵が近づいてきたとしても、食事中にはここまで来れない。
合理的に考えて、大丈夫だ。
もし、強引に敵がここまで攻めて来られるようなら、歩哨を立てていても結果は同じだ。
唯一の違いは、言い訳が立つか立たないかの違いしかない。
「きちんと警戒していたが、無理でした」と言えるかどうかだけでしかないのだ。
それだったら、おれはみんなと一緒に食事をするほうがいい。
そろそろ食事が終わりそうなタイミングで、アプリコットが全員に明日の行動について説明をし、解散となる。
さすがに解散後には交代で歩哨を出すが、こればかりは軍隊の性質上やむを得ないことだ。
俺は、みんなに甘えてお休みさせてもらっているが、アプリコットばかりではなく山猫のみんなからも、おれが歩哨に立つことは禁止されている。
なんでも、いらぬ危険を呼び込みそうだというのだ。
最初の頃は抵抗もしたが、全員に頑なに拒まれ、仕方なく彼女たちの指示に従っている。
なので、俺は制作途上の地図の確認をしたあと、お休みとなる。
明朝、日も出る前から隊は活動を始めた。
もっとも、最初に動くのはバイクの探索隊であって、残りは野営の片付けをしながら彼女たちの報告を待っているのだが。
1時間程すると、最初の移動ポイントを見つけた探索隊が、迎えを寄越してきた。
「それじゃ~、俺らも移動するよ。昨日と同様に、トラック隊はもうしばらくの待機ね。では、出発しよう」と言って、バイクと軽車両について指揮車を移動させていった。
「どんな感じかな?」
「そうですね。もしかしたらですが、次のポイントか、その次あたりで、海が確認できるかもしれませんよ」
「だとすると、かなり目的地近くに来ていることになるけれど、そういうことかな?」
「信じ難いですが、今回の探索では、かなり直線的に移動ができているようです。元々、基地から港まで直線距離では60kmくらいしかありませんでしたので、それにかなり近いと考えております」
「それじゃ~、ポイントに着くまで期待していよう」
車を1時間程走らせていると、急に周りが開けてきた。
生えている木々の間隔が広くなってきており、ジャングルというより林になってきているようだった。
ポイントについて周りを見渡すと、遠くに海が見えている。
また、その向こうに街らしきものも見えているようだった。
「悪いが誰か、車から双眼鏡をとってきてくれ」
「分かりました」
ジーナが、兵士に命じているようだった。
一人の兵士が、双眼鏡を持って走ってきた。
「隊長、ご依頼の双眼鏡をお持ちしました」
「ありがとう」と言って双眼鏡を受け取ると、直ぐに街らしき影が見える方向に双眼鏡を向けた。
「お~~~~、街だ。あそこが目的地だ。今日中には着けるな」
俺の叫び声を聞いて、周りが喜んでいた。
「隊長、私にも双眼鏡を貸してください」
「お~、いいぜ、順番にな」と言って、メーリカさんに双眼鏡を手渡した。
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