社畜がひとり美女に囲まれなぜか戦場に~ヘタレの望まぬ成り上がり~

のらしろ

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グラス小隊のお仕事

サクラの帰還

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 サクラたち一行が、帝都からあの輸送機『北斗』に乗って、第27場外発着場に帰ってきた。
 そこには、既に出迎えとしてレイラとマーガレットが、駐機場横で待機していた。
「本当に早いですね、あの輸送機は。出発の連絡があって、半日で帝都からここまで来てしまうのですから」
「そ~よね。そのおかげで私たちもかなり助けられているから、あの輸送機が我々の管理下にあって本当に良かったわ。でないとこれほどまで帝都に呼び出されていたのでは、基地が崩壊しちゃうところよ」
 レイラとマーガレットが話し込んでいるうちに、『北斗』は着陸し、駐機場に向かってきた。
 輸送機が止まり、ハッチが開いてサクラが降りてきた。
「お帰りなさい、旅団長」
「ブル、おかえり。変わりはなかった?」
「あら、あなたたちが迎えに来たの。ただいま。でも、基地は大丈夫なの?」
「最大の懸案に目処がついたので、だいぶ落ち着いたよ」
「あら、そうなの。しかし、ほんの少し前まで帝都で暮らしていたのに、もうこっちに帰ってくると落ち着くのはなんなのかしらね。帝都にいると落ち着かないのよね」
「私も、感じました。なんだか今の帝都は、以前とはだいぶ感じが違いますから。なぜだかわかりませんが、今の帝都は、そこらじゅうが毒々しく感じます」
「そうよね、今の帝都は、毎日とてつもなく変化しているようね。まるで、以前の政争が激しかった時のように。いや、少し違うか。以前の政争は急進攻勢派が一方的に穏健内政派を責め立てていたけれど、今は、その逆のことが起きてるかと思っていたのに、両派共にスキャンダルの暴露合戦を始めていて、帝都全体の雰囲気が悪く、息苦しく感じるのかな。ここに帰ると、何も変わっていないと感じて、とても落ち着くわ」
「その気持ちは、大事にしないとね。でも、変わらないのは、ここだけだから。今、基地はとんでもなく変化しているから。ブルが帝都に行ってからとは、段違いになっているわよ」
「どういうことなの?説明してくれるわよね」
「ブルが出発前に心配していたように、あいつとサカキ中佐が一緒になって、色々な施設を基地いっぱいに作っているわ。もっとも、そのおかげで、最大の懸案だった兵士の営舎問題に一定の目処がついたから、あいつらを責めるわけにもいかないけれどね」
「おじ様とあいつが異様に仲が良さそうにしていたから、心配はしていたのよね。やっぱり、何かしでかしましたか。は~~~~~」
「何、ため息ついているのよ。その中に、あなたの部下も入っているのよ」
「何?どういうこと」
「どうもこうもないわよ。私も基地に帰って、あまりの変わりように驚いて、サカキ中佐に、どうしてこうなったのかを聞いたのよ」
「それで?」
「事の発端は、アザミの隊長 アート少佐だったけ?彼女があいつに『テント暮らしは嫌だから、住むところを一緒に作ろう』と言いだしたことが始まりだったそうよ」
「営舎を準備できなかったことは、我々にも責任があるからね。強くは言えないかもしれないけれど、よりによってあいつに頼るとは…」
「それで、アザミ隊がジャングルの木を使って小屋を作り始めたのよ、あいつらと一緒に。あいつらはその小屋を『ログハウス』と呼んでいたわ」
「その小屋『ログハウス』が出来て、アザミ大隊がそこに入ったの?」
「そうとも言えるけれど、ブルの想像していることと少し違うわ。アザミ隊が営舎を作るのを見つけたバラ隊が『それじゃ~自分たちの分も』ということになって、それを知ったサカキ中佐が、『いっそ、基地を上げて一気に作ってしまえ』となって、ほぼ全員でジャングルの木を使ってあの『ログハウス』を大量に作り始めたのよ。特殊工兵大隊が全面協力だから、作業がはかどること。今朝には、ほぼ全員分の営舎が完成していたわよ。もっとも、完成したのは小屋だけで、内装はこれからだと言っていたけれど。基地についたら、基地の全容の変化に驚くわよ、覚悟していてね」
「旅団長、レイラ中佐、車の準備が整いました。ここでの話もなんですので、基地の方へ向かいませんか?」とマーガレットが言ってきた。
「それもそうね、マーガレット、基地に向かいましょう」
 全員が車に乗り込んで基地へと帰っていった。
 基地の門を過ぎたあたりで、サクラが、
「ここらへんは、あまり変わっていないわよね。あ、でも、端に立派なレンガの建家ができているわね。あの建家はなんなのかしら?」
「あれは、今まで仮設だった風呂を常設で新設したそうです」
「それじゃ~、その奥にある小ぶりのレンガの建家は何?」
「驚かないでください。あれが、あいつらが最初に作った小隊の詰所だそうです」
「????」
「それで、その奥に先程から話している営舎が並んで建ててあります。今、車を回しますので、すぐにでもご確認できます」
「ス…ス…スゴイ!もの凄い量の営舎が建ててあるのだけれど、どういうことなの」
「サカキ中佐の話では、基地を上げて全力で当たったら、とても効率的に作ることができたそうです。なんでも、あの『ログハウス』なるものは、同じ規格品で、部品さえできれば誰でも組み立てることが出来るそうで、部品作りを特殊工兵大隊の工兵中隊が受け持ち、残りの兵士が手分けして場所の整地から組立をしたそうで、あっという間にあのように……」
 最後の方は自信なさげに声がだんだんと小さくなっていったが。
「なぜ?こんなに簡単にできるのなら、おじ様がここに着いた時に始めていれば、あんなに余分な苦労をしなくとも良かったのに、どうして……」
 説明しにくそうにしているマーガレットを見かねて、レイラが代わりに説明を始めた。
「サカキ中佐も『こんなに簡単にできるのならもっと早く作れば良かった』と言っていましたよ。その後『あのあんちゃんは、たいしたものだと』とも付け加えてね。要は、『ログハウス』の工法を持ち込んだのがあいつなのよね。今までの軍では、あの工法はあり得なかったから。営舎の設営は、営舎資材を補給物資として受け取り、現場にて工兵隊が設営していくしか軍ではあり得なかったのよ。それ以外の営舎は、みんな現地民間からの徴発による借り上げね。自分たちで、現地資材を使っての設営なんて、誰も知らなかったのよ、あいつ以外には」
 後から到着したサクラたち一行が説明を受け唖然としているうちに、車は視察を終え司令部前に着いた。
 この司令部は、元からここに打ち捨てられていた建家を簡単に整備して使っていたので、先ほど見てきたレンガハウスはもとより、グラスが応急的と考えているログハウスよりも明らかにボロっちかった。
 サクラが思わず、「なぜ、風呂や小隊詰所よりオンボロなのよ、旅団司令部が。一般の兵士の営舎より、なぜ見劣りがする建家に司令部があるのよ。これ、ほかから視察が入るとまずいことになるわよ。あいつら、何考えて作っているのよ」
「ブル、落ち着いて。あいつは知らないけれど、特殊工兵大隊の連中はしっかり考えているわ。詰所や風呂場は、いわば練習なの。彼らにとって、あの工法は初めてなのよ。そのため、失敗しても大丈夫なものから始めて、練習をしていったのよ。今、彼らは司令部建家の設計に入っているわ。次に作るそうよ。資材のレンガは毎日作られているしね。すぐに立派な司令部ができるから安心してね。それに、作った営舎にかなり余裕があるから、ブルにも建家1つそのままあてがえられるわ。それで、体裁は保てるわ、大丈夫だから、しばらく待ちましょう」
「営舎の余裕??なぜ、余裕ができるのよ?今まで全然足らなかったのに、どうしてなの??説明できるわよね」
「理由はしっかり聞いたわよ。説明できるけれど……、やっぱり説明しなければダメかな~。ダメだよね。……」
 レイラはサクラに、自分が聞いたことをできるだけ穏やかに説明していったが、それを聞いたサクラは………。
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