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31.諜報のプロによる荒事

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「応援が間もなくつきますので、応援が付き次第乗り込みます」
「応援?」
「ええ、大使館には駐在武官というのがおりますが、それをカバーとして少なくない数の諜報員も駐在しております」
 俺にそんな秘密をばらしてもいいのかと少し心配になったのだが、今更か。
 その諜報員に応援を頼んだらしい。
 また、東京の自宅では外事課を通して警察にも出動を依頼しているそうだ。
 ただ、どうもこの屋敷は日本の政権与党のお偉いさんが所有しているらしく証拠がない限り警察も動けないらしい。

 なぜ、政権与党のお偉いさんが産油国相手に喧嘩を売るのかよくわからないが、それよりも政治家が誘拐なんかにかかわるのなんてスキャンダル以前の話だ。
 ありえないだろうと思うが、GPSはここから発信されている。
 それも一つではなく、持たせたものすべてが同じ屋敷から発信されている。

 ここまで近づくとより詳細に場所までわかるらしく、いくつかは見える位置に止めてある車から発信されているという。
 望遠鏡などで調べても車の中には誰もいないので、持ち物が置き捨てられているのだろうといことで屋敷に突入することで計画を練っている。
 待っていた応援が静かに俺たちに近づいてきた。
 指揮を執っているキャシーさんが計画の確認をしている。

「5分後に乗り込みます。
 三方向から突入しますので、本郷様はいかがしますか」
「俺は制圧後すぐに中に入る。
 正面からはいる方がいいかな」
「でしたらアプリコットを残しますので、一緒に」
「ああ、わかった。
 悪いな、余計な手間をかけさせて」
「いえ、そろそろ時間ですので配置につきます」
 彼女はそういうとどこかに消えていった。

 アプリコットさんが心配そうにしている俺に声をかけてきた。
「本郷様、大丈夫です。
 こういうことは初めてでないので、ましてや多少の心得があったにしても訓練を積んている連中でもない限り、何ら問題はありません。
 お嬢様につきましても、さらわれてから時間がたっておりませんので、乱暴の可能性も低いでしょう」
 俺を気遣っての声掛けだろうが、『初めてでない』という言葉に少し引いてしまった。

 そうこうしているうちに配置が済んだようで、アプリコットさんに短く合図が入る。
「始まります」
 アプリコットのこの言葉と同時に窓を割られる音がしたかと思ったら、大きな爆発音とともに強い光が漏れてきた。

「近くまで行きましょうか」
 俺はアプリコットさんに連れられて敷地内に入ると、屋敷中化からうめき声の他にどたばたとする雑音が聞こえてくる。
 今まで清閑な別荘地にひときわ目立つ音だ。

「通報されるな」
「ええ、窓を割った段階で警備会社には連絡が入っているでしょうから30分以内に駆けつけてくるでしょう」

「30分」
「大丈夫です、後数分で制圧済の連絡が入るでしょう。
 銃声もしませんでしたし、今の段階でほぼ制圧できたと思いますよ。
 ……
 ほら、言っているそばから制圧が済んだと連絡が入りました。」」玄関を開けてくれるようなので私たちは玄関から入りましょう」
 途中俺たちが追いかけてきた車もあったので、簡単に中をのぞく。
 中には誰も、いや、何も残っていない。
 トランクに何かあるかもしれないが、今は幸の方が心配だ。
 玄関から屋敷に入りすぐそばにあるリビングに向かうとむさくるしい男どもが後ろ手をされて黒がされている。
 何人かはうめき声をあげている。

 ソファーには全裸でぐったりしている女性が二人も倒れていた。
 正直吐き気がしてきた。
 こいつら下種だな。
 ここが日本でなければ俺はこいつらを殺していたかもしれない。
 すると奥から声がかかる。

「お嬢様、ご友人とともに発見。
 他女性一人も保護」

 俺は声のかかる方向にアプリコットさんとともに向かうと、奥のベッドルームに幸とあかねがベッドに学校の制服のまま転がされていた。
「大丈夫か?」
「ええ、大丈夫です。
 まだなにもされていませんから」
「あかねは?」
「……」
 あかねは青い顔をして震えている。
「あかねも大丈夫。
 私とずっと一緒にいたから」
「通報されているだろうからすぐに引き上げようか」
「彼女は?」
 アプリコットさんとともにいた知らない外国人、多分少し前に聞いた応援できている情報部の連中だろうが、半裸の状態で意識がもうろうとしている女性について聞いてきた。
 何を思ったのか俺はすぐに「一緒に連れて帰る」といってしまった。
 半裸で意識がもうろうとしている段階で薬を疑う必要があるのだろうが、そんなことにも考えが及ばずに俺は連れて帰る決断をしていた。
 絶対に厄介事案件なのに、そんなことを一切考えていなかった。
 もう一度リビングに戻ると、前に見たことのあるやくざが転がされており、その横で下半身を丸出しにしている大学生くらいの偉そうな男と、同じように上半身はスーツ姿なのにズボンを下げて気を失っている男がいた。
『こいつらが犯人か』

「警察と救急を呼びました。
 直に警備会社の人と警察関係者がここに来ます。
 急いでください」
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