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11.葵さんの生い立ち

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 国際電話で、すでに会社に戻っているプロジェクトリーダーを捕まえた。
 電話口で、ローレン王子の言われる通り、転職については話が通っており、かえって歓迎されている。

 なんでも、見本市ですぐに一艘売り上げているので社長の評価も高まることこそあれ下がることのない状態だそうで、リーダーも社長から褒められたそうだ。

 そんな感じで社内には問題ないと快く俺のことを送り出してくれた。
 最後に、これまた驚くような情報までつけてくれたが。
 なんでもローレン王子は俺の転職と同時に豪華クルーザーの販売代理店の権利も取得したそうだ。
 何せ、このプロジェクトは今まで会社が扱う客層でないこともあり、マリン事業部から受け入れを拒否られていたので、販売チャネルが全くない。
 ローレン王子が最初の顧客であると同時に代理店第一号でもある。

 プロジェクトとしては大歓迎なことらしい。

 そんなことを話して、最後に退職するにしても一度会社に戻れと命じられた。
 まだ俺の扱いは出張中だそうなので、ローレン王子側が許すのならばそこから帰国して来いとのことだ。

 もともと天涯孤独のような人生だった俺だ。
 会社に対して義理を欠くことが無ければ問題はない。
 早速、ローレン王子の下に戻り、転職の件を受け入れると話した。

 まだ細かい条件は詰めていないが、扱い的にはローレン王子の個人的な雇用だそうで、ブルガン王国の公務員ではないということだけは理解した。
 当面はあの豪華クルーザーの船長として雇用されるらしい。
 年棒や細かいことは俺の退社後にきちんと話し合うとして、一度日本に戻ることもすぐに了承してもらい、明日の飛行機で一度ドバイに戻り、成田へ向かうことになった。
 予約やその他もろもろのことはすべてローレン王子側で手配してくれてはいるが、費用は俺持ちだ。
 正確に言うと会社持ちだ。
 何せ出張中の身だ。
 それもビジネスクラスで帰れるというから、転職前まで働いていた会社と比べると、天国のような扱いだったが、これが最後の出張となる。
 ローレン王子も日本へはついては来れないが、人を付けてくれるという。
 退職後に、速やかにここまで戻ってきてほしいそうなのだ。

 なので、俺の日本滞在期間中はその付けてくれる人と一緒の行動になるらしいが別に取って食わるわけでもなし、問題ないのでありがたく人をお借りすることにした。

 何せ全く知らない外国でチケットなどの手配をしてもらっているし、逆にここに戻るのに、はっきり言って一人で戻れる自信がない。

 そこまで話を付けると、ここではもうやることが無くなった。
 明日に移動までゆっくりとしてくれと言われて、俺はプライベートビーチでのんびりさせてもらった。

 なんと、昼頃に仕事を終えたのか葵さんがビキニにパーカーを羽織る姿でビーチまで俺を訪ねてきてくれた。
 そのあとビーチにある日よけの下で、軽食を取りながらお話をして時間を使った。
 まるでデートのような気分で楽しかった。
 葵さんも社交辞令ではあるだろうが、一緒に働けることを喜んでくれた。

 そのおしゃべりで、俺は新たな事実を知ることができた。
 なんとローレン王子は皇族であることは知っていたから、大叔父にあたる人も王族であろうとは想像していたが、ことのほか大物だということを知った。

 なんと、現国王の兄にあたる人だという。
 王弟とは聞いたことがあるが、王兄とは聞いたことがない。
 これが前国王の側室の生まれだとかいうのならばわかるのだが、第一王妃の生まれらしく、現国王陛下は第二王妃の生まれだとか。
 普通に考えれば現国王の方が継承順位が低いのにもかかわらず、色々とあるらしくややこしい関係だそうだ。

 しかもだ。
 葵さんの父親というのがその王兄殿下…敬称は陛下じゃないよね…だというから驚きだ。
 王兄殿下は葵さんの認知もしたそうなのだが、記録上では親子関係はないらしい。
 ブルガン王国の古くからある習慣というかそういうのがあり、国王にならなかった理由の一つにもなっているのだそうだ。

 あまり楽しいひと時に政治向きな話は合わないので、適当なところで切り上げたのだが、少なくとも深くかかわってはいけないことだけはわかった。

 まあ、さすがにあれほどの美人だ。
 嫁とは無理でも恋人という妄想くらいが関の山かな。
 そのように妄想して楽しんでいたけど、もうできないな。
 王族関係者である以上、不敬罪に問われかねない。
 俺は、この後は葵さんについてあまり考えないようにはしていた。

 翌日は、朝早くから空港に移動した。
 空港までは葵さんが見送りに来てくれたのがうれしかったが、それ以上に驚いたのが俺と一緒に日本まで来てくれる人が、女性、しかも美人だ。
 昨日人を貸すと言われたので、てっきりセーシェルにいる大使館の職員あたりかと勝手に思っていたら、俺を接待してくれたメイドの一人がOL風の格好で付いてくるのだそうだ。

 なんでも身の回りの世話係で、そのほかに美少女?と呼んでもいいよね。
 アプリコットさんという秘書がいろんな手配をしてくれるためについてくると空港で言われた。

 彼女の自己紹介で聞いたのだが、なんとブルガンの大学を数年スキップして卒業した21歳の女性だ。
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