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第四章 建国の準備

第71話 魔動車の搬出

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 車両甲板に着くとサーシャが俺に聞いてきた。

「守様。
 これらの魔動車ですが、どこから降ろすのですか」
 サーシャは薄暗い車両甲板に出入り口を見つけられずに俺に聞いてきた。
 夜では甲板にある照明だけでも十分に明るく感じていたので、感じなかったのだが、昼間だと暗く感じる。
 それだけにサーシャは不安に思ったのか出入り口を探していたようだ。
 普通、外とつながっている扉からは明かりが漏れてくるものだ。
 サーシャはその明かりを探していたようだ。

 だが、そこは日本で活躍していたカーフェリーだ。
 外から海水など侵入しないように車両搬入口はしっかりと閉じられており、明かりなど盛れるはずもない。

 しかし、サーシャの言う通り俺も確認だけはしておこうかと搬入口に向かう。
 しかし、車両甲板の中を歩いて進んでも一向にそれらしき搬入口は見つからない。
 甲板内の案内に沿って探していくと、搬入口の真ん前に大きなものが置かれており、それが搬入口をふさいでいた。

「おいおい、これでは車が出せそうにないな。
 尤も、今搬入口を開けても車は出せないが……」
 しかし、これ、どうやってどかそうかなと俺は考えながら目の前の装置を触る。

 怪しげな物体に触ると神様からの祝福かはたまた呪いかは置いておいて、目の前の物体の遣いからが理解できた。
 流石防衛隊、良い素ごとをしていた。
 この船が向かっていたのは被災地だ。
 被災地にカーフェリーが安全に接岸出来て、しかも車両を降ろせるような場所は運が良ければあるかもしれないが、そんなことをあてにはしてない。

 陸に近い場所から直接降ろせるようにと、海上面まで落とせるブリッジ装置だった。
 これを会場に降ろして、ホバークラフトを使って各種車両を上陸させる作戦だったようだ。

 その証拠に、目の前の怪しげな装置のすぐ傍には上陸支援用にホバークラフトが二台待機している。
 まずは、こいつに必要となる車両を載せてからだな。
 
 俺はサーシャたちに対して、これからの作業を説明した後に、まず最初に使いそうなパワーショベルとブルドーザーを防衛隊自慢のホバークラフトに乗せた。
 ただ、それら建機を動かしてホバークラフトに乗せただけで周りから驚かられた。
 確かにボートを始め、船に関してはかなりのものを彼女たちの前でも使って見せたが、陸上のものは初めてかもしれない。
「ま、守様……」
「あの~、これらって」
「ああ、この小さな船を使って浜に降ろすんだ」
「え?
 これって、船のなのですか?」
「ああ、今まで見た船とは全く違うタイプだが、これで会場を運べるから便利なんだ」
「ですが浜ではどうやって」
「この船は、このまま浜にも乗り上げることができるから、この船で浜に乗り上げてから魔動車だっけか、これらを降ろすつもりだ。
 一緒に行くのだろう」
「え、ええ、ご一緒させていただいてもよろしのでしょうか」
「ああ、本当はいけないのだろうが、納得しないだろう。
 運転台の後ろに若干だがスペースもあるし、そこなら大丈夫だろう」
「守様。
 しかし、ここからどうやって海に出るのですか。
 魔法で移動とか……」
「え?
 魔法ってそんなことまで出来るのか」
「私は知りませんが、伝説級の魔法ならば可能かと思います」
「伝説級って、まあいいか。
 うん、これからあそこハッチを開いて、目の前の装置を動かすから、少し離れていてくれ。
 危ないのでな」

 俺はそう言ってから、車両搬入口付近の小さな部屋に入った。
 この部屋から搬入口をふさぐハッチの操作ができるらしい。
 さっき搬入口を触った時に勝手に頭の中に入ってきた。
 確かに便利なのだろうが、慣れるまでは少々邪魔にも思う。
 もう少しどうにかならなかったのかなとも思うのだが、あのカミサマ相手だ。
 上出来の部類だろう。
 
 俺はハッチを開いてから、部屋から出てあの防衛隊特製の装置の操作盤の前まで行き、素ループを降ろした。

 ゆっくりとした動作で、スロープが伸びていき、海上いや、先端は海中多分1mくらいは中に入っていく。
 まあ、考えたら当たり前の話で、海上すれすれだと、ホバークラフトを降ろすことはできるだろうが、戻ることはできそうにない。
 あれくらい海中に先端が浸かっていないと無理だろう。
 だが、使用後のメンテだけはしっかりしないと錆が出そうだな。
 使うにしろ注意は必要かということだ。

 一連の動作を終えてからみんなをホバークラフトに乗せた。
「これから会場に出るから、何かに捕まっていてほしい。
 会場に出るときに揺れるかもしれない」
「「「ハイ」」」

 しかし、フェリーからホバークラフトを出すのにも大した揺れも無く、浜に上陸っする際にも同様で、あっという間に浜に上陸した。
 すると、浜ではちょっとした騒ぎになっていた。

 人込みをかき分けながらフランやダーナがやってきた。
「守様」
「守様、これは……」
「ああ、フランにダーナか。
 浜を騒がして済まなかった。
 これからはこれを使うから、浜での作業もはかどるぞ」
「魔動車ですか」
「ああ、こういった土木建設に特化した魔動車だ」
「どちらかというとゴーレムのような気が……」
「ゴーレムか……そうともいうか。
 人が乗り込んで操作をするゴーレムに近いかもしれない。
 とにかく力持ちなので、まずは奥の林の整備からかな」
「え、ええ。
 でしたら、ここから奥の広場までの道を作りたいので頼めますか」
「ああ、やってみよう」

 俺はダーナと相談して、道になるコースに布切れなど巻いてもらい目印を付けてもらった。
 そのうえで、周りに人を使づけないよう頼んでから林の木をなぎ倒していく。
 それこそ根っこごと気を取り除くので、俺の通った後は穴ぼこだらけになっている。

 うん、これも想定通りだ。
 とりあえず根っこごと倒した木は邪魔にならないよう、浜に運んでいくので、大した距離は無い範囲の作業も効率を考えると自慢できるものではなかった。

 それでもフランたちには驚きの時間であっという間に道はできたと喜んでいた。

 穴ぼこだらけの道でもいいらしい……そんな訳あるはずがない。

 俺は一旦パワーショベルを浜の邪魔になりそうにない場所まで運んでから、今度はブルドーザーに乗り換えて道の整備に入る。
 ブルで一回鳴らすだけでも簡単に穴はふさがる。
 その上で、浜から石交じりに砂を運んで道にまいていく。
 ある程度まき終われば、その上をブルドーザーで何度も走り道を固めていく。
 距離にして200mくらいだったか、それでもそこまでの作業を終えるのに一日が掛った。
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