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第四章 建国の準備

第57話 神様からの祝福

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 梯子を上るとすぐに階段があり、その階段の先に近フェリーの操舵室があった。
 当然、操舵室にはところどころに洋服が落ちていた。
 ほとんどが男物の制服だ。
 うん、つまらない。
 何がつまらないかはこの際詮索しない。

 俺は騎士に頼んでその企業の制服を一か所に集めてもらった。
 雑に扱えないのだ。
 この世界では貴重な洋服になる。
 当然捨てることもできない。
 騎士は不思議そうにしていたが俺の指示通りそれら服をたたんで隣の海図室に置いていく。
 俺は僧舵輪のそばに近づくと、今の船?令和でも最新式の船だけあって一人でも操船できるようになっているシステムだ。
 それに俺が操船システムに触ると、この船の操船方法がわかるようだ。
 というよりもいきなり操船方法などの情報が俺にインストールされる感じだと言えばいいのか、そんな感じだ。
 初めての経験だった。
 何せ今まで俺が乗っていた船は、俺が少し前まで勤務していた傭兵の船で、しかもその船は日本の哨戒艦を元に作られていたからだ。
 首になるまで俺もしっかり鍛えられた慣れた艦なのだ。
 当然、操船も一通りできるように訓練されている。
 だから首になってもすぐに今の傭兵に拾われた訳だ。
 あ、その傭兵からも首……ではないか、でも離れたか職場からだから先の表現は訂正だ。
 話を戻して、今船の操船となると話が今乗っている船とは条件が全く違う。
 いくら俺が船舶免許を持っていようとも出来ることと出来ないことがあるのだ。
 この船に限らずとも俺の乗ったことのない船の操船なんかできるはずがない。
 それが大型の船だとなると猶更だ。
 今までの巡視艇も複数の乗員での操船が基本だが、それでも一人でもできたが、それは最近はやりの省力化のおかげもあるが、一番の理由は俺が今までに操船したことがある為だった。
 だが、ここまで大型になると普通は無理だ。
 俺は今まで探すことばかり考えてきたが、いま改めて考えれば当たり前の話だ。
 どこの世界に大型の船を、それも操船したことも無い船を一人で動かそうとさせるんだよと、考えれば考えるほどあの時にカミサマを殴っておけばよかったと思う。
 それこそ魔法でもない限り……この世界には不通に魔法があったわ。
 しかしいざそう舵輪を前にしたら、操船できそうなのだ。
 その魔法のおかげかどうかは知らないけど、あの神様からの祝福なのは確かだ。
 扱い方が直接俺の中にインストールされる感じで入って来た。
 これなら問題ない。
 いちいちマニュアルを探し手が無い分、本当に助かる。
 確かに助かったのだが、本当に何でもありの世界だな。

 俺かここから無線で巡視艇を呼び出して無事に船の中に入ったことを伝えて、巡視艇をケリーたちのサポートに向かわせた。
 フェリーを動かすのに邪魔にならないようにフェリーから距離をとらせる意味もある。

 次にケリーを呼び出して、無事に船を回収したことを伝えて、この船で救助に向かうと伝えた。

「ケリーか。
 今話しても大丈夫か」
「はい、守様」
「こちらは無事に目的の船に乗り込めた。 
 これが俺の探していた船のようだ」
「え、それは良かったですね」
「ああ、それにこの船ならば大型なので前にも話した通り、全員をこの船に乗せることができる」
「それでは……」
「今、俺たちが乗っていた船をそちらに回したので、ケリーの指揮下においてくれ。
 俺はこれからこの船でそちらに向かう。
 難破している船のこの船を横付けするからそのつもりで」
「わかりました。
 ではこちらに来る船は少し離した位置に停船させますね」
「わかった。
 後は頼む……と言ってもすぐに到着するがな」
 俺はこう言ってから無線を切った。

「守様。
 一応ここの服は片付けが終わりました」
 俺が先に頼んでいた服の片づけを終わらせた騎士が俺に報告してきた。
「ありがとう。
 ならこちらも手伝ってもらおうか」
「私は何を……」
「ああ、いつもと変わらないよ。
 これからこの船を動かしてみんなのところに向かうから、付近を十分に監視してくれ。
 船が大きくなったので前以上にすぐそばの周りが見えないから」

 俺たちはゆっくりとカーフェリーを動かしていった。
 今まで乗っていた巡視艇は、治安を守る公船を元にした軍艦であったために巡航速度も商業利用の大型船とは明らかに違い、簡単に30ノット以上は出せるのに対して今乗っているカーフェリーは経済的な効率も考えられて作られているために明らかに前の船よりは遅い。
 俺の知る『北斗』は確か……20ノットくらいだったような。
 詳しくは後で調べるとして、あの船とは戦隊は組めないだろう。
 速度が違いすぎる。
 まあ、今回が異常なだけで一緒に行動することはほとんどないと思われるから問題は無いか。

 フェリーを実際に動かしてみるとゆっくりとした感覚になるが、それでもこの世界ではかなりの高速になるらしく難破船に乗っていた人たちからは驚かれていたようだ。

 近くまできて方一旦船と停めた。
 そう、完全に停めたのだ。
 動力だけ切って終わりにしたら惰性で動くのでぶつかるから、そういう気配りが必要なのだ。 
 ケリーたちもだいぶ船の操船には慣れてきたようだが、船を停める操作について制つめ意をしてこなかったのを思い出した。
 今まで必要もなかったので結構いい加減に対応していたな。
 さすがの込み合う海域での操船には細心の注意が必要だ。
 
 完全に船を停めてから周りを見渡すと、目の前に広がる景色は酷い。
 先ほど戦った魔物たちとの戦闘の後だろうが、三隻ある帆船全てが相当なダメージを受けている。
 これなら、姫と呼ばれた人がすべてをあきらめて俺たちに助けを求めてくるのもわかるというものだ。
 
 しかし、帆船の状態も酷いが、それ以前に帆船そのものが小さく感じる。
 一つ一つの船の大きさは、俺たちがここまで乗ってきた船取りも船長でやや短く思えるくらいだ。
 それ出ていて一艘あ辺りに多くの人を乗せているのだろうな。
 仮に前に出た数字で1000名と言ってたがこれを三で割っても一艘あたり330名になり俺たちの定員60名の5倍以上だ。
 尤もかなりずんぐりとした見た目があるので容積的には広い……のかな?
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