58 / 81
第四章 建国の準備
第57話 神様からの祝福
しおりを挟む梯子を上るとすぐに階段があり、その階段の先に近フェリーの操舵室があった。
当然、操舵室にはところどころに洋服が落ちていた。
ほとんどが男物の制服だ。
うん、つまらない。
何がつまらないかはこの際詮索しない。
俺は騎士に頼んでその企業の制服を一か所に集めてもらった。
雑に扱えないのだ。
この世界では貴重な洋服になる。
当然捨てることもできない。
騎士は不思議そうにしていたが俺の指示通りそれら服をたたんで隣の海図室に置いていく。
俺は僧舵輪のそばに近づくと、今の船?令和でも最新式の船だけあって一人でも操船できるようになっているシステムだ。
それに俺が操船システムに触ると、この船の操船方法がわかるようだ。
というよりもいきなり操船方法などの情報が俺にインストールされる感じだと言えばいいのか、そんな感じだ。
初めての経験だった。
何せ今まで俺が乗っていた船は、俺が少し前まで勤務していた傭兵の船で、しかもその船は日本の哨戒艦を元に作られていたからだ。
首になるまで俺もしっかり鍛えられた慣れた艦なのだ。
当然、操船も一通りできるように訓練されている。
だから首になってもすぐに今の傭兵に拾われた訳だ。
あ、その傭兵からも首……ではないか、でも離れたか職場からだから先の表現は訂正だ。
話を戻して、今船の操船となると話が今乗っている船とは条件が全く違う。
いくら俺が船舶免許を持っていようとも出来ることと出来ないことがあるのだ。
この船に限らずとも俺の乗ったことのない船の操船なんかできるはずがない。
それが大型の船だとなると猶更だ。
今までの巡視艇も複数の乗員での操船が基本だが、それでも一人でもできたが、それは最近はやりの省力化のおかげもあるが、一番の理由は俺が今までに操船したことがある為だった。
だが、ここまで大型になると普通は無理だ。
俺は今まで探すことばかり考えてきたが、いま改めて考えれば当たり前の話だ。
どこの世界に大型の船を、それも操船したことも無い船を一人で動かそうとさせるんだよと、考えれば考えるほどあの時にカミサマを殴っておけばよかったと思う。
それこそ魔法でもない限り……この世界には不通に魔法があったわ。
しかしいざそう舵輪を前にしたら、操船できそうなのだ。
その魔法のおかげかどうかは知らないけど、あの神様からの祝福なのは確かだ。
扱い方が直接俺の中にインストールされる感じで入って来た。
これなら問題ない。
いちいちマニュアルを探し手が無い分、本当に助かる。
確かに助かったのだが、本当に何でもありの世界だな。
俺かここから無線で巡視艇を呼び出して無事に船の中に入ったことを伝えて、巡視艇をケリーたちのサポートに向かわせた。
フェリーを動かすのに邪魔にならないようにフェリーから距離をとらせる意味もある。
次にケリーを呼び出して、無事に船を回収したことを伝えて、この船で救助に向かうと伝えた。
「ケリーか。
今話しても大丈夫か」
「はい、守様」
「こちらは無事に目的の船に乗り込めた。
これが俺の探していた船のようだ」
「え、それは良かったですね」
「ああ、それにこの船ならば大型なので前にも話した通り、全員をこの船に乗せることができる」
「それでは……」
「今、俺たちが乗っていた船をそちらに回したので、ケリーの指揮下においてくれ。
俺はこれからこの船でそちらに向かう。
難破している船のこの船を横付けするからそのつもりで」
「わかりました。
ではこちらに来る船は少し離した位置に停船させますね」
「わかった。
後は頼む……と言ってもすぐに到着するがな」
俺はこう言ってから無線を切った。
「守様。
一応ここの服は片付けが終わりました」
俺が先に頼んでいた服の片づけを終わらせた騎士が俺に報告してきた。
「ありがとう。
ならこちらも手伝ってもらおうか」
「私は何を……」
「ああ、いつもと変わらないよ。
これからこの船を動かしてみんなのところに向かうから、付近を十分に監視してくれ。
船が大きくなったので前以上にすぐそばの周りが見えないから」
俺たちはゆっくりとカーフェリーを動かしていった。
今まで乗っていた巡視艇は、治安を守る公船を元にした軍艦であったために巡航速度も商業利用の大型船とは明らかに違い、簡単に30ノット以上は出せるのに対して今乗っているカーフェリーは経済的な効率も考えられて作られているために明らかに前の船よりは遅い。
俺の知る『北斗』は確か……20ノットくらいだったような。
詳しくは後で調べるとして、あの船とは戦隊は組めないだろう。
速度が違いすぎる。
まあ、今回が異常なだけで一緒に行動することはほとんどないと思われるから問題は無いか。
フェリーを実際に動かしてみるとゆっくりとした感覚になるが、それでもこの世界ではかなりの高速になるらしく難破船に乗っていた人たちからは驚かれていたようだ。
近くまできて方一旦船と停めた。
そう、完全に停めたのだ。
動力だけ切って終わりにしたら惰性で動くのでぶつかるから、そういう気配りが必要なのだ。
ケリーたちもだいぶ船の操船には慣れてきたようだが、船を停める操作について制つめ意をしてこなかったのを思い出した。
今まで必要もなかったので結構いい加減に対応していたな。
さすがの込み合う海域での操船には細心の注意が必要だ。
完全に船を停めてから周りを見渡すと、目の前に広がる景色は酷い。
先ほど戦った魔物たちとの戦闘の後だろうが、三隻ある帆船全てが相当なダメージを受けている。
これなら、姫と呼ばれた人がすべてをあきらめて俺たちに助けを求めてくるのもわかるというものだ。
しかし、帆船の状態も酷いが、それ以前に帆船そのものが小さく感じる。
一つ一つの船の大きさは、俺たちがここまで乗ってきた船取りも船長でやや短く思えるくらいだ。
それ出ていて一艘あ辺りに多くの人を乗せているのだろうな。
仮に前に出た数字で1000名と言ってたがこれを三で割っても一艘あたり330名になり俺たちの定員60名の5倍以上だ。
尤もかなりずんぐりとした見た目があるので容積的には広い……のかな?
10
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
Serendipty~セレンディピティ~リストラから始まったハーレム生活
のらしろ
大衆娯楽
リストラ後に偶然から幸運を引き当ててハーレムを築いていくお話です。
主人公の本郷秀長はある装置メーカーの保守を担当する部署に務めておりましたが昨今の不景気のより希望退職という名のリストラをされました。
今まで職場で一生懸命に頑張ってきていたと自負していたけど他の職場メンバーからは浮いていたようで、職場の総意という伝家の宝刀を抜かれて退職する羽目になりました。
しかし、今まで一生けん目に働いていたことは事実で、そんな彼を評価していた人も少なからずおり、その一人にライバルメーカーの保守部門の課長から誘われて、ライバルメーカー転職したところから物語は始まります。
転職直後に、課長ともども配置転換を命じられて高級クルーザーの販売部署に回されて初の海外出張で産油国の王子と出会い、物語はどんどん普通でない方向に進んでいきます。
その過程で多くの女性と出会い、ハーレムを築いていくお話です。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。
俺、貞操逆転世界へイケメン転生
やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。
勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。
――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。
――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。
これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。
########
この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる