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第二章 軍団の誕生

第26話 ジョブローテーション

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 補給については追々確認していくが、まずが彼女たちをこの船のクルーに仕上げていかなければ今後何があるかわからないので、近々の課題としては毎日の食事と仕事のローテーションの確立だ。

 今の人数では絶対数が足りないが、やむを得ない。
 艦橋には騎士たちが3人一組で3直体制でやるしかないか。
 その管理を騎士のリーダーだったケリーに任せて、俺はそれ以外の確認などをしていく。
 生活全般についてはフランを頭に二人のメイドたちに任せていく。
 艦内清掃などについては当分手つかずだな。

 そのうち乗員の補充についてもフランやケリーと相談しないとまずいかもしれない。

 とりあえず今朝の朝食の準備がフランたち三人だけで準備できたので、最初の段階はクリアしたと判断する。
 この後、本来は当直ごとに食事をしていくのが理想だが、今のところは全員を集めて一緒の食事をとる方が何かといいだろう。

 俺は艦橋に戻り報告を聞いて、自分の目でレーダーを確認後に船を止めて、全員を食堂に連れていく。

 さあ、一日の始まりだ。

 朝食を皆で囲みながら今日の予定を話し合っていく。
 基本艦橋を騎士たちに任せて、その他をフランを頭に二人のメイドたちに任せるようにしていくことで全員が合意した。
 メイドたちの主な仕事は当分食事つくりと食堂の衛生面の維持だ。
 本当は船の掃除を乗員たちが毎日行わなければならないのだが、何せ集まったメンバーを見ても明らかに少ない。
 俺を入れても13名だ。
 尤も一昨日ここに落とされた時には俺一人だったから、それから考えれば選択肢は格段に増えたともいえるが、それとてこの船を十全に動かすには全く足りない。
 やりかけのことや、やらなければならないことなど盛りだくさんで、やりたいことのなどいったいつできるんだと思うくらいだ。
 それで、今やりかけについて思い出したのだが、救助で使ったボートをデッキに放り出したままだった。
 艦橋を任せられるようになるだろうから、このあと一番の仕事はボートの片付けだな。

 食事の後に、一応片づけについてミーシャに確認を取ると問題ないとの返事だったので、フランに監督を任せて俺は艦橋に騎士たちと戻る。

 それで艦橋の当直のことだが半分の3名には自室でも構わないのでしっかりと休むように伝えたのだが、離れ離れになることを嫌うのか、ここで休ませてもらうとの返事だ。
 海賊たちに囚われていたこともあり、不安もあるのだろう。
 俺は海図室の扉を開けて、そこのソファーでも使って休めと言い残してボートを放置してあるデッキに向かった。
 使ったままだったこともあり、海水が乾いて潮が吹いているところもあったので、俺は一旦ボートを洗ってからしまおうとデッキブラシなどを使って海水を洗い流す。
 いい加減に二度も使い、そのまま放置していたこともあり、きれいになるまでに1時間はかかった。
 きれいになったので、所定の位置にしまおうとクレーンを操作しに向かうと、既にボートはしまわれている。
 ???
 なんで、ここにしまわれていたボートは今俺がきれいにしたばかりで、まだデッキに置いてある。
 俺はそう思いデッキを振り返ると、きちんとそのままの状態でボートがデッキに鎮座している。
 なら、この場所にあるボートって何?
 ひょっとしてこれも補給とか言わないよな。
 だが、考えられることは使ったら補充されるというルールがよくわからないが、ボートも消耗品扱いのようだ。
 どうも消耗品は補充されるらしい。
 これって、ひょっとして格納庫にしまわれているヘリにも適用されるとか。
 ヘリは使えないだろうから関係ないが、このボート一つとってもかなりチートだ。
 とにかく、洗ったボートは風や波にさらわれないように近くのロープを使い固定だけはしておいた。
 その後、もう一度艦橋に戻り騎士たちに様子を伺い、そのまま海図室に入る。
 俺の後からケリーもついてきた。

「守様。
 それは何を」
 俺が自動海図装置を扱っていると不思議そうな顔をしてケリーが聞いてきた。
 周りで休んでいた騎士たちも集まる。
「これは海図上に自分の位置をトレースする装置だ。
 海図上で、自分の位置が分かるようにするためにな」
「海図ですか、ひょっとして海図って海の地図のことですか」
 船乗りでない騎士たちには船の上での生活に関しては見識が乏しいらしいが、それでも海の地図なるものがこの世界にもあることだけは今の会話で分かった。
「この世界ではそう呼ばれているのか。
 ならそうだ、海の地図上に自分の位置を記していく」
 皆興味深そうにしているので、簡単に俺の持ち常識を含めて説明していくと、かなり好評だった。

 ならばと、俺は一旦自分の部屋、船長室に入る前に使っていた、今は備品保管庫のしている部屋に入り、俺の私物から昔使っていた教本とハンドブックを探し出して海図室に戻る。

 幸いというか海図室にもホワイトボードが壁に据え付けられているので、それを使って、当直でない騎士たちに常識の範疇に限るが、船上での生活やその他仕事などで必要と思われる知識を教えている。
 船の備品倉庫には文具類もあったので、それを渡して、勉強させている。

 交代で、教えているので、いっぱしの船乗りとするにはまだまだ時間履かかるが、5日ばかりが過ぎるころには、艦橋の仕事を安心して任せられるレベルにまではできた。
 また、メイドの二人についても完全に厨房施設の扱いにも慣れて、こちらも食事などの準備では安心して任せられるレベルになった。

 うん、この世界に来た時と比べると格段の差がある。
 今思うと一人では生きていけることくらい端なら問題は無いだろうが、なんもできやしない。
 まあ、今でもマンパワーの不足は如何ともしがたく、何かできるかというと何もできそうにない。
 そのあたりについてフランはなんら心配もしていない。
 前に愚痴ったことがあるのだが、その場でフランから『大丈夫』と太鼓判を押してもらった。
 なんであんなに強気になれるのか不思議だったのだが、ミーシャが言うには最悪奴隷の購入でもありますからって言っていた。

 この世界には当たり前に奴隷もいるらしい。
 それもかなり沢山、やたらとあちこちで戦争するものだから、戦争孤児などの奴隷が簡単に入手できるのだとか。
 ケリーが言うにはつい最近に自分らもその戦争奴隷になりかけたとか。
 尤も奴隷商に引き渡される前に俺に助けられたので、いわゆる奴隷紋のようなものを付けられずに済んでよかったとか言っていた。

 この船の中にいる限りは安全のようだが、陸地を見つけても俺が上陸できるか自信が持てない。
 簡単に騙されたり捕まったりして奴隷落ちが目に見える。

 艦橋での仕事も3人一組の2直体制から、ツーマンセルの3直体制に変えてある。
 なので、休憩の他に今ではボートの扱いも覚えてもらうように訓練をしている。

 あのボートを使っての戦闘だけは避けられそうにないと思える。
 何せそこら中にあたり目のように海賊が跋扈する世界のようだから、自衛も当たり前のように戦闘が繰り返されそうだ。
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