プレアデスの伝説 姫たちの建国物語

のらしろ

文字の大きさ
上 下
23 / 90
第二章 軍団の誕生

第23話 部屋割り

しおりを挟む
「この部屋をフランがこの部屋を使ってほしい」
「え、この部屋を私に……」
「ええ、ちょうど隣に下士官部屋があるので、元のメイドの二人をその部屋に入れるつもりだ。
 近くですから、何かと便利だと思う」
「私たちにも部屋を……」
 ドーラが驚きの声を上げる。
「ああ、寝床は十分にある。
 ミーシャには昨日まで使っていたところより狭くなり、相部屋となるが許してほしい。
 何せあそこは俺が使っている部屋だったからな」
「はい、守様。
 気にしないでください」
「なら自分たちのための部屋を片付けて、とりあえず今日のところの片づけは終わりにしよう」
「今日のところ??」
「ああ、この船は本来60人乗りだった。
 乗員もほぼ定数を載せていたから、全ての片づけを済ませたい。
 まあ、急がないから手すきの時にやろうと考えている。
 さあ、自分たちの寝床を準備するよ」
「「はい」」

 下士官用の部屋は二人の相部屋で、騎士に割り振った一般兵士用の4人部屋よりは少しばかり贅沢にはなるが、兵士部屋に入ってもらう騎士たちには、当直もお願いしようかと考えているので、部屋の利用時間も少なくなるから問題ないと俺は考えている。
 それに何よりフランの世話をしてきた元の従者の二人は、フランのそばに置いておきたい。
 まあ、彼女たち全員に言えることだが、全くと言って私物を持っていないので、部屋の引っ越しは簡単だ。
 追々状況に合わせて部屋割りも変えていくことがあるかもしれない。

 とりあえず、今回助けた11名と昨日助けたミーシャを合わせて12名分の寝床の確保が終わった。

「守様、この後は……」
 時間は午後4時近くになっていた。
 ちょうどいい時間だ。
 夕食の準備に取り掛かろう。
 説明をしながら慣れない彼女たちにも作業をさせるので、少し余裕をもって夕食の準備に取り掛かる。

「ああ、この後はみんなの食事の準備をしよう。
 今度は初めから手伝ってもらうから、覚えてほしい」
 そう言って食堂隣の厨房にやってきた。

「ところで海賊に襲われる前の食事はどんな感じだった」
「どんな感じとは」
「誰が食事を作っていたんだ??」
「船には料理をする者がいたので、彼に作ってもらっていましたが、この船で昼に食べた物よりも質素なものですよ」
 フランが答えてくれた。
「良いところの出のフランはわかるが、従者だった二人は料理の経験はあるのかな」
「私はって言いましたが、どういう意味なんですか」
「いや、俺の偏見があったのかもしれない。
 貴族の子女は自分で料理など作らないと思ったので。
 で、それならフランは何か料理を作れるのかな」
「いえ、作ったことがありません」
「そうです、フラン様は厨房にお入りになられる方ではありません」
 ドーラがやや怒ったような口調で言ってきた。
「ああ、でもこれからは手分けしないといけないので、できれば覚えてほしいかな。
 しれで二人は料理の経験はあるのかな」
「……」
「お屋敷では料理長がいましたし、配膳など食事関連のメイドもおりましたから」
 どうもメイドによって仕事が異なるらしかった。
 ミーシャもドーラもメイドだったようなのだが、従者と言われているだけあって、フランの秘書のようなことをしていたようだ。
 当然料理の経験は無い、配膳すらほとんどしてこなかったらしい。
「だいたい現状はわかった。
 では、当分は手抜きをするか」
 俺はそう言って、食材の確認を始めた。
 この世界に送られる前のこの船は最後の補給地であるハワイからかなりの日数が経過していたこともあり、野菜庫の中にはほとんど新鮮な野菜が無くなっている。
 大きな野菜庫がガラガラな状態だ。
 まあ、考えなくとも当たり前の話で、今日明日中に横須賀に着こうかというタイミングで、俺はさらわれたのだ。
 その時の船は補給せずどこまで大丈夫かというと、日持ちする冷凍食品や、保存食を除くとだいぶ寂しいものがあった。
 だが、冷食などは十分に積んでいたので、まだ余裕で60人を一月は持たせることができる。
 その状態をそのまんま複製されているので、冷食だけは十分にある。
 しかも、現状の定員は前の1/6だ。
 当分は問題ないが、どこかで補給も視野に入れなければならないな。
 その前に大型船を見つけることができれば状況も変わるのだが。
 当分は冷食中心で行くしかないが、最近の冷食はサラダまであるから別に生野菜が無くとも関係ないか。

 問題があるとすれば献立だな。
 一体だれが献立を考えるのかって……俺しかいないか。
 俺が考えないと、彼女たちを助け出す前の様に同じ食事ばかりになる。
 流石に3~4食を全く同じでは飽きる。

 今日の昼とも変えないといけないから、夜は魚を中心に行くか。
 日本人の俺が乗ることもあって、地球にいた時の料理主任は冷食にも日本から取り寄せた物をかなり載せていてくれた。
 日本食がアメリカでももてはやされたこともあり、けっこう割高だったが無理やり予算を取っていたようだ。
 俺が出汁に使われた節もあるが、今はそれに感謝しよう。

 煮つけと御飯にみそ汁の組み合わせそれと大根サラダ。
 うん、今日はこれに決めた。
 全部冷食なので、準備と言ってもほとんどレンチンだ。
 サラダは違うが、こっちは真空パックの冷蔵なので、封を切るだけでそのまま食べられる優れものだ。

 まず見本を示して、これを作ってもらうが、調理というまでもなく、温めるのがほとんどで、後は盛り付けだ。
「出来そうか?」
「はい、見ているずいぶん簡単に出きそうですが、これ凄いですよね。
 お屋敷では料理一つ作るのにも相当料理長が苦労していましたから」
「だろうな。
 ここまで便利になったのもつい最近だ。
 俺の子供の頃にって、もう言葉も敬語の必要はないよね」
「はい、守様。
 そうしていただける方がうれしく思います」
 貴族というから気を付けていたけど、俺の部下となるので、いちいち体裁を整える必要が無くなったのが助かる。

 なんだかんだと、それでも時間を要したので、準備ができたのは午後6時になってからだ。
 この人数ならば当分は全員一緒に食事をとる方が良いだろう。
 俺は、フランを連れて艦橋に戻る。
 ミーシャとドーラにはお茶の準備をしてもらっている。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

処理中です...