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第二章 軍団の誕生

第11話 チュートリアル

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「相談って何でしょうか?」
「ああ。あの船のことだ。
 護衛の女性を見つけた」
「それは!」
「ああ、船倉に近い場所で、両腕だけを縛られているが、それ以外は繋がれていなかったかな。
 尤も一人だけだが。
 護衛って複数いたのだろう」
「はい、10人ばかりの姫様専属の女性の騎士様がおりました」
「だからなのか、一応丁寧に扱われていたようだが、あれが丁寧かな」
「騎士様ですから腕を縛られるのはやむを得ないことかと」
「まあそうだな」
「それで、相談と言いますと」
「ああ、姫様はあの船の船長室に船長と一緒にいるらしいのだが、どうしようかと考えていたんだ」
 そこで、俺はミーシャに聞いてみた。
「もし、あの船で大騒ぎが起こせれば護衛や姫はミーシャの様に逃げ出せるのかな」
「私の様に?」
「ああ、とにかく船から海に飛び込んでもらえれば、救助もできるのだが、俺が直接船に乗り込むことはできないしな」
「騒ぎが起きればと言いましても、少しばかりの騒ぎでは……」
「どのくらいならば大丈夫か。
 例えば火事を出すとか、マストが折れるとかならばどうだ」
「そんなことが起こせるのですか。
 そくれくらいのことならば船の中は大騒ぎになりますから、その気になればできると思いますが、果たして姫様がご自身で海に飛び込むかどうか……」
「そこなんだ、相談したいのは。
 もし、ミーシャの声だけになるが、護衛にでも聞かせることができれば信じてもらえるかな」
「そんなことまで来ますか」
「ああ、できるが、それならばどうだろうか」
「やってみなければわかりませんが、やるだけの価値はあります。
 私はそう思いますが」
「なら決まったな。
 あと一時間もすればだんだんと明るくなるが、暗いうちに早速俺が見つけた女性にミーシャの声を伝えよう。
 騒ぎはもう少し明るくなってからだな」

 これで3回目になる同じメニューの食事を終えてからもう一度ミーシャと一緒に艦橋に戻る前に、ドローンのメンテナンスを個なっている部屋により、後部デッキにそのドローンを置いてから艦橋に戻った。

「守様、先ほど何を……」
「ああ、これからミーシャにお願いしたいことがあるのだが、船の後ろに置いたやつを使ってミーシャの声を届けてもらうんだ。
 これから操作するから待ってほしい」

 俺は艦橋にあるドローン端末に向かって、操作を始める。
 ある程度の航路はあらかじめ予約の様に設定ができるので、さきほど音を拾った座標まで自動操縦でドローンを送った。

 座標もこの船を基準とした簡易的なもので、長距離を精密に操作するには無理だがこれくらいの距離ならばどうということもない。
 この船には長距離偵察攻撃ドローンを積んではあるが、座標操作だけでは使えそうにない。
 まあ、その座標というのもこの船を基準としたものしかなく、この世界がどうなっているかは全くの道なので、欲しい座標が存在しないと思えばいいだろう。
 もっとも、今回のチュートリアルには関係が無いから問題ない。
 しかし、このチュートリアルにしてはまだどうなるかは不明だが、相当難しくはないか。
 なにせ与えられているミッションは二人対海賊たち二百名近くになる。
 しかも、お姫様の救出も必須の課題として存在している。
 姫の救出なんてラノベだけでなくゲーム含めて世にありふれているコンテンツの中では定番中の定番なのだが、その割にはかなり難しめの設定になっているように思われる。
 まあ、あの『カミサマ』から出されたミッションならば納得ができるというものだ。
 しかし、いい加減どうにかならないかな、あの『カミサマ』って。
 正直、後から出てきた神様に俺の担当をミッション含めて全て変わってくれないかな。
 まあ、今更どうでもいいことか。

 それよりも、明るくなってからの救出劇になるので、作戦が重要になる。
 この船を近づけないといけなくなるが、やみくもに近づけることはできない。
 ただ沈めるだけならば、それこそここから砲撃だけでどうとでもなる。
 実質的な人質になっている姫とその護衛の騎士がいるので、かなり慎重にしないとまずい。
 とにかく、騒ぎを起こして近づき、海に飛び込んだ姫たち一行を……ここはやはりボートでの救出になるか。
 ならば自動操船をかけておいて……、いや、停船したのちの作戦になるな。
 幸い早朝での作戦なので、ここはセオリー通り日を背にしてになるか。

「ミーシャ。
 そろそろ声を届けられそうですね。
 私の言うことを理解しておりますか」
「はい、明るくなってから船に騒ぎを起こすので、姫を連れて海に飛び込んでほしいと騎士様にお伝えするのですよね」
「はい、海に飛び込むことで溺れて息ができなくなっても私が助けますから、信じて海に飛び込んで、できれば船から離れてほしいとお伝えください」
「わかりましたけど、どうすれば……」
「これからやるから見ていてね。
 あ、まだこいつがいるな。
 昨日と違うやつだが、正直会話の邪魔だな。
 ……やむをえまい。
 ミーシャ、小声で話しかけてくれるかな。
 騎士以外には聞かれたくないから」
「そうですね。
 それにしても、昨日も驚きましたが、どうやってこんな場面を映し出せるのですか。
 魔法ですか……ひょっとして大魔導士様」
「いや、それよりも時間がさせ迫っているから声をかけてみて」
「はい」

 そこから、チュートリアルの作戦が開始された。
「騎士様、騎士様、ミーシャです」
「ミーシャか?
 生きていたのか!」
「はい、それよりも声を抑えてください。
 敵に聞かれたくはありませんから」
 そこからミーシャが簡単に俺のことを説明していた。
「そんなことがあり得るのか?」
「はい、私も信じられませんがこうしてお話ができております。
 詳しくは大魔導士様から後でお聞きしてもらうとして、大切なお話があります」
 ミーシャは画面に映っている騎士に向かって、丁寧に話しかけている。
 囚われの女性騎士には声しか届いていないが、こちらには映像が送られているので、ミーシャはあたかも目の前で話している感覚なのだろう。
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