プレアデスの伝説 姫たちの建国物語

のらしろ

文字の大きさ
上 下
3 / 91
第一章 プロローグ

第3話 もはや定番?の転生

しおりを挟む

『ヤバイ!』

 俺は船から放り出されることになる。
 俺が船から放り出される場面を誰にも見られてはいないだろうが、流石に横からの大波だ。
 すぐに艦長は乗員の点呼を取ることだろうし、しばらくすれば俺も救助されると高を括るが、どんどん意識が遠のく。

 あれ、ひょっとして、これは本格的にやばいかも

 ……
  ……
   ……

 俺はいつの間にか知らない所にいる。
 果たして生きているのか、それともこれがあの世なのか。

 そんなことを考えていると、俺の心に直接訴えてくるものがある。
 目の前には何もない、いや、まぶしいばかりの光だけだ。
 その光が俺に訴えてくるのか。

 これは、いよいよ死んだかな。

「ある意味、君の考えは正しい。
 君は地球と言ったか、アースだったか忘れたが、そこの神より私が賭けで勝ち取った魂だ」

 勝ち取った??

「あれ、君聞いていないのかな。
 賭けで私が勝ったのに、君のところの管理者はいつまでたっても賭けの報酬をよこさないから、文句言ったら前の時の様にしたら良いと言われたが。
 あ、そういえば前の彼も聞いていなかったかな。 
 でも、君は件の管理者でない別の者からの紹介だったので、前のようにはなるまい。
 そう聞いていたので、てっきり今回は聞いているものと思ったのだが」

「神……さま?」

「ああ、そう思ってもらって構わないよ。
 私はここでは創造神と呼ばれている」

「創造神様ですか……」

「もっとも君のいた星の神では無いが」

「それで,私になにを……」

「前の時にも話したけれど、君の星で流行っている転生というやつだ。
 少し前に勇者として一人召喚してけどね。
 その彼が言ってたね。
 日本という場所では大流行で、あこがれる人が沢山いるからと。
 それで召喚したのだが、その彼がこちらに召喚後に色々とやらかしてね。
 まあ、当初の目的は果たしてくれたからいいけど。
 で、もう一度賭けに勝ったこともあって、今度は文化というの、平和的に星を発展させてほしいんだけれど……あ、君には選択肢はないよ」

「え、え、あの……」

「話を続けるね」

 そこから延々と星の説明をされたけど、結構酷い。
 戦国時代を星全体に広げたような状況だとかで、弱肉強食の世界と言えばよいのか。
 そこで俺に勇者にでもなれとばかり思ったのだが、それも違う。

 『この世界に平和を』って、なんだよそれって。
 俺にどうしろと説明を聞こうとしても、俺の質問には一切答えてくれない。
 ひょっとして話を聞かない系なのか?

 まあ、『カミサマ』って名乗ってる段階から傍若無人、唯我独尊的なものだとは思ったけど、これはちょっと酷い。
 何も知らなければ俺は何もできずにまた死ぬことになりそうだって、俺って地球ではあの時の波で死んだのかな……

「それで君にも神の祝福をって、前に召還した彼が言っていたけれどもね~。
 その彼が色々とやらかしているから、君には祝福っていう彼はスキルとも言っていたけどそういうのはあげられないよ」

「え、何もない状態で私に何を望んでいます?」

「さすがに、何も渡さないのもね~」

「……」

「だから君には船をあげようかと思う。
 前の勇者にも船をあげたのだけれども結局あいつは一度も使わなかったよ、酷いと思わない。
 彼が望んだのに、私だって苦労して複製したのに」

「複製?」

「ああ、君たちのいる世界から直接物は持ってこれないからな。
 そこの管理者がうるさいのもあるけど、神力的にも結構きつくてね」

 この『カミサマ』は今管理者って言ったよ地球の神様のことを。

「で、船の複製って?」

「彼の乗っていた船ね、彼は豪華客船とか言っていたけれど、それをそのままよこせって要求してきたから、生き物は無理だけれどそれ以外を完璧に複製して送ったのだけれど、結局見つけてくれなかったよ。
 酷いと思わない。
 あれほど苦労して複製したのに」

「は~?」

「それでね、君にもお船を渡すけど……、この船小さいね」

「は~、そうですね。
 豪華客船と比べられればそうなりますね」

「そうだね~、この船だとちょっと彼との差がありすぎるから……そうだ。
 近くを走る一番大きな船を複製するから探してみてね」

「探すのですか?」

「ああ、前に連れてきた彼にもそう言ったのだけど、結局探すこともなく、使わなかったから、君は絶対に探してみてね。
 あ、そうそう、前の彼のために複製した船も見つければ使っていいよ。
 それがいい。
 君にはこれから複製する船と、彼のために造った船をあげるから使ってね」

「それは勇者様のでは」

「ああ、だがその彼も船を見つける前に寿命を迎えているから大丈夫。
 誰からも文句は出ないから」

「探せばいいのですね」

「そう、その船たちを使って使命を果たしてね」

 だからその使命が分からないんだけど、いくら聞いても答えてくれないしどうしよう……

「これから送るね……、あ、困ったね。
 君は泳げるか?」

 泳げるかって聞いたけどどういうことかな

「少し、そうですね池程度ならばどうにか、しかし、海の真ん中では絶対に無理ですからね」

 この『カミサマ』なら平気で人を大洋のど真ん中にでも落としかねない。
 ここは誰が聞いても勘違いしないようにきちんと説明しなければ、本当に命が無くなる。
 一度死んだ身とはいえ、自覚もないが転生草々に死んだとあればこの『カミサマ』のことだ。
 どんな難癖を言ってくるのか分かったものでもない。

「そうなのか。
 困ったね。
 これから君を案内する場所は大洋の真ん中ってことはないが、今の君の話ではちょっと無理そうだね……そうだね、なら君が今まで乗っていたこの小さな船も複製するからこの船と一緒に送るから」

 そういうとすぐに目の前が暗くなった。

 あの『カミサマ』は本当に最後まで俺の話を聞かなかった。
 あ、でも身一つで落とされるのだけは防がれたのかな。

 ……
  ……
   ……

 気が付くと俺は一人船の後部デッキに寝かされていた。
 さっきまでのことは夢だったのだろうか。
 船は横須賀に向かって航行しているはずだ……多分。

 しかし、俺の周りには誰もいない。
 いや、今の時間では後部デッキに人などいないのが当たり前なのだが、『生き物以外』という言葉が頭をよぎる。

 俺は慌てて船内に入り艦橋に向かう。
 航行中ならば、いや、停泊中だって艦橋には誰かしらいなければいけない。
 そう、俺は不安に駆られて、絶対に人のいるところを目指したのだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

貞操逆転世界の男教師

やまいし
ファンタジー
貞操逆転世界に転生した男が世界初の男性教師として働く話。

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

処理中です...