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第26話 彼女たちの気持ち

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 テレビのニュース番組では記者会見の会場からの中継映像が入ってきた。
 ちょうどアリアさんが記者たちから質問を受けている場面だ。

 A新聞記者「スレイマン王国の方に質問させていただきます。
 今回、海賊興産1社だけの契約をされたと聞いておりますが、先ほど産業省のスポークスマンも『リスクが大きいために政府としては諸手を挙げて歓迎はできない』と言っていました。
 日本の他の石油会社からも共同での権益確保の提案もあったとも聞いております。
 なぜ、共同での権益の確保を断ったのでしょうか」

 先ほどイレーヌさんから聞いていた内容の件だ。
 この記者も産業省の息が掛かっていそうだ。

 アリアさんが通訳のかおりさんを通して質問の内容を確認してから答え始めたようだ。
「共同での権益の確保については、私どもは認めるつもりはありません。
 なぜなら、共同で権益を確保された場合に、もしものことが起こったときに誰が責任を取るかが曖昧になる危険性をはらんでおります。
 しかし、私どもは決して日本の他の会社を排除しようとはしておりません。
 こちらから逆に提案をさせて頂きましたが、皆先方の方からお断りを頂いており、今回の件ではご縁がなかったと判断しております」

 かなり正直の答えたようだが、先の記者は納得が行かなかったようだ。
「私どもが掴んだ情報では、海賊興産が契約した内容と比べてかなり不利な条件を出されたと聞いております。
 これは予め断られることを前提とした条件提示ではないでしょうか」

 この記者はかなり食い下がってきている。
 それだけに今回の件では我々に対して含むものがあるんだろう。
 記者や新聞社になくとも産業省かもしくはその上のコロンビア合衆国にあるとしか思えない。
 これには、というより、アリアさんはこの記者会見前に産業省やコロンビア合衆国に対してなにか仕掛けるつもりでいたように、この質問を待っていたようだ。

「1stパートナーと2ndパートナーや3rdパートナーが同一条件でなんてありえないでしょう。
 今まで何もしていなかったところが美味しいところを取れそうだと、急に割り込んできて何も努力なく美味しいところをとっていかれたら誰だって面白くないでしょ。
 私たちだって1stパートナーと信頼を醸成してきていたのに、全く知らないところと急な信頼感を持てませんよ。
 その分のリスクを計算しただけです。
 決して不条理なことはないと考えております。
 逆に同じにしろという方があまりに上から目線だと言えないでしょうか。
 あくまでも信用の度合いでリスクを考えた結果です。
 産業省のお役人の方はどういう意図で先程のようなことを言ったのでしょうか。
 産業省はどこのいや誰の利益を守ろうとしているのでしょうかね。
 我々の利益を奪おうとしか思えない見解だと非常に不愉快に感じます。
 もしかしたらスレイマンや日本国以外の他国の利益を守ろうとすら感じるコメントだとも思えてしまいます」

 ここまで言うのか。
 これでは日本政府の他にコロンビア合衆国の利益の代弁だとしかありえないと言っているようなものだ。
 これを中継で流されてしまったので、後が大変だぞ。
 先程の記者が更に食い下がろうとしていたようだが、同僚に止められたようだ。
 流石にまずいと思われたのだろう。

 この放送が流れたあとすぐに俺の携帯に里中さんから電話が入った。

「直人くん。
 約束通りに世間の注目を集めてもらえたようだが、いささかやりすぎだよ。
 あれって、アリアさんの独断なの」

「私は何も聞いていませんが、今までの産業省の横槍にかなり頭にきていたようだったので、計画していたかも。
 政府の方で問題でも上がりましたか」

「首相官邸で問題視されていたよ。
 流れてしまったものはしょうがないけど、後の処理で産業省は大変そうだ。
 でも、産業省の人事異動の件がカモフラージュされるのでナイスアクションと評価している大臣もいるから直接直人くんには影響は出ないと思うよ。
 ただ、これ以上は勘弁ね。
 アリアさんにも言っておいて欲しい」

 とにかく先のアリアさんの答えで記者会見は終わった。
 無事に終わったとは言えるかどうかわからないが、この後各界の人たちを集めてパーティーまで計画されているから、その席で何かわかるだろう。
 もっとも、俺は今日の仕事を終えているので、あとは自由時間となっている。

 ここ数日はいろんな人たちがこの部屋を出入りしていたので、俺もしばらくはお楽しみを遠慮していたのだが、それも今日からは解禁だ。

 夕食後に俺は久しぶりのお楽しみと張り切って寝室に入ると、そこで待っていたのは………

「なんで?
 なんで由美さんや葵さんをはじめみんながいるの。
 君たちはまだだよね」

「はい、直人様。
 私たちは奴隷です。
 その奴隷がご主人様にお願いするのはいけないことかもしれませんが、せめて教えてください」

「みんな心配しているのです。
 私たちに女性として魅力がないかも知れないと。
 直人様に女性として見られていないかもしれない」

「直人様の所に来てからだいぶ時間が経ちましたが、この中の誰ひとりとしてお相手をさせていただいておりません。
 もし、もしよろしければその理由だけでも教えていただけないでしょうか。
 私たちは直人様の奴隷として役に立っていないのではないかと、夜中に泣き出す子までいます。
 どうか、どうか、せめて理由だけでも教えてください」

 俺はこの時に思ったことがいくつかあるが、一番最初に思ったのが、
 『バチが当たった』 ということだ。
 アリアさんやかおりさんが今も下でパーティーに出ている。
 仕事をしているのにも関わらず、自分だけが天国を味わおうとしていたことで天罰が当たったと。
 そのあとに急に思いつき、自責の念に駆られたことがあった。
 それは確かに彼女たちにきちんと理由を話していなかったことで、彼女たちを知らず知らずのうちに苦しめていたことだということだ。 
 これには俺なりの考えがあったことなので、直ぐにみんなに謝り、理由を説明した。

「まずは、みんなに謝罪したい。
 ごめんなさい。
 キチンと理由を説明してなかったね。
 そのことでこんなにもみんなを苦しめていたとは知らなかった。
 本当にごめんなさい」

「直人様………」

「ちょうど良い機会だから理由を説明しておくね。
 後で、ボルネオに残した人達にも僕から説明をします。
 で、みんなが聞きたかった理由だけれど、それはね、みんなを大事に扱いたかったためだよ」

「大事にって」

「皆の処女を奪うのは男の僕にとって非常に楽しみなことだよ。
 だってみんなは、誰ひとりの例外なく美人ばかりだ。
 男のサガで皆を独占したいし、みんなと繋がりたい。
 しかし、みんなの処女は一回の性交でなくなってしまうものだよね。
 そう、一生で一回しかないことなのに、それこそ作業のように散らしたくはなかった。
 できれば一生の思い出に残るような素敵な機会にしたかった。
 でもどうすればそうなるかを考えていたけれど、なかなか思いつかなく、そうこうしているうちに忙しくなってしまったので、後回しになってしまった。
 本当に申し訳ない」
 俺は自分の気持ちをストレートに伝えたく、そのまま日本語で説明をし始めた。
 由美さんと葵さんは周りの人に英語やアラビア語で直人の気持ちをできる限り丁寧に伝えた。
 それを聞いた彼女たちの中には泣き出すものも出てきて、それを見た俺は更に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
 みんなが落ち着くのを待って、みんなで正直な気持ちを語り合った。

 本当に意味で、後から合流してきた彼女たちとはコミュニケーションが取れていなかったと今更ながら思い知ったし、また、彼女たちも先輩たちに相談するなり、俺とのコミュニケーションを積極的に図れなかったことを反省していた。

 部屋の空気が完全におかしくなってきた時に、やっとアリアさんたちが下から戻ってきた。

「あらあら、どうしたのかしらね」と部屋の雰囲気を察したかおりさんが声をかけてきた。
 俺は今までのことを簡単に二人に説明をしたら、アリアさんがみんなに声をかけた。

「あなた方焦っていたのはわかっていましたよ。
 でもそこまで思いつめていたとは思わなかったわ。
 ごめんなさいね。
 直人様もおっしゃっていらしたとおり、直人様からお声が掛かるまでもう少しお待ちなさいな。
 今日のところは皆さん、これで解散してください。
 明日に備えゆっくりとおやすみくださいな」

「大丈夫よ、直人様もおっしゃっていらしたでしょ。
 直人様はみんなのことを大事にしていたのよね。
 それも宝物のように大事にしすぎたようよね。
 でも大丈夫よ。
 今日みんなの気持ちがわかったようだから、近いうちに大事にしてくれるからね。
 今まで忙しく働いてくれたしね、今日はゆっくりおやすみなさい」

 アリアさんとかおりさんはみんなを落ち着かせ早めに下がらせた。
 イレーヌさんはみんなの気持ちが焦っていたことをアリアさんたちと同様に気づいていたが、どうにもできずにいた。
 今日、みんながおかしくなっていたのを見て、一度彼女たちの気持ちを吐き出させたほうがいいと判断し、彼女たちの受け持ちである残り仕事をナディアさんやエマさんなどの経験者たちに振り分け暖かく見守っていた。
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