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墓で待つもの
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◎墓で待つもの◎
毎年、盆が来ると私は友人の墓参りに行く。
彼女は、私たちがまだ小学生の頃に事故で亡くなってしまった。
放課後に公園で遊んだ帰りのことだった。
事故が起きた時、私は彼女のすぐそばにいた。
彼女は、ダンプカーに轢かれて亡くなった。即死だったと思う。
勉強が出来て、運動もできる、そして男子からもモテる。本当になんでも出来る女の子だった。
だから、彼女が亡くなったのは多くの友人たちを悲しませた。私も悲しかった。ひどく落ち込んで、しばらく学校に行けなかったほどだ。
何年も彼女の死を受け入れられなかったが、大学生になった今では、ようやくあの悲劇的な死が現実だったんだと飲み込むことができるようになった。
墓はとある山の上の寺の中にある。
私が行くのは決まって盆の終わりごろで、その辺りに行くとこの寺に墓参りに来ている人は殆どいないし、静かで心地が良いのだ。
墓石に水をかけてやり、お供えをして線香を炊く。
手を合わせて目を閉じていると、風も吹いていないのに木々が揺れる。それからかすかに誰かの足音が聞こえる。
目を開ければそれらの音は消えてしまう。
これは毎年のことで、私はきっと彼女が会いに来てくれているのだとそう思っていた。
毎年、ここに来れば彼女に会える。そう思うだけでなんだか救われた気になっていた。
お参りが終わり、お供物を鞄にしまって私がいつものように帰ろうとすると、じゃりっと背後で砂利を踏む音がした。
私は立ち止まった。
周りには誰もいなかった。
足音は徐々に近づいてくる。
心臓の鼓動が早くなっていく。
きっと、彼女が会いに来てくれたんだ。
そう思うと、嬉しかった。だが、同時にやっぱり怖さも感じていた。
足音は、私のすぐ背後で止まった。
「君かい?」
私は振り向き、そこにいた者を見て悲鳴を上げて尻餅をついた。
何かの笑い声が聞こえたのを最後に、私は気を失った。
そこからのことはよく覚えていない。
どうやって家に帰ったのかも、何も覚えていなかった。
ただ、振り向いた時、あそこにいたのは、彼女ではなかった。
あれは、なんだったのか分からない。上手く説明もできない。
背丈は小学生よりもずっと小さくて、顔はしわくちゃ。開けっぱなしの口には、欠けた歯がいくつも並んでいた。
左手だけ普通ではないくらい伸びていて手のひらが地面に接していた。
そいつは、異様なくらい吊り上がった目で私を睨みつけていた。
それから、細い細い喉を震わせてしゃがれた声で笑ったのだった。
大切な人の墓参り。必ずしもそこで、知っている人が待っているとは限らない。
毎年、盆が来ると私は友人の墓参りに行く。
彼女は、私たちがまだ小学生の頃に事故で亡くなってしまった。
放課後に公園で遊んだ帰りのことだった。
事故が起きた時、私は彼女のすぐそばにいた。
彼女は、ダンプカーに轢かれて亡くなった。即死だったと思う。
勉強が出来て、運動もできる、そして男子からもモテる。本当になんでも出来る女の子だった。
だから、彼女が亡くなったのは多くの友人たちを悲しませた。私も悲しかった。ひどく落ち込んで、しばらく学校に行けなかったほどだ。
何年も彼女の死を受け入れられなかったが、大学生になった今では、ようやくあの悲劇的な死が現実だったんだと飲み込むことができるようになった。
墓はとある山の上の寺の中にある。
私が行くのは決まって盆の終わりごろで、その辺りに行くとこの寺に墓参りに来ている人は殆どいないし、静かで心地が良いのだ。
墓石に水をかけてやり、お供えをして線香を炊く。
手を合わせて目を閉じていると、風も吹いていないのに木々が揺れる。それからかすかに誰かの足音が聞こえる。
目を開ければそれらの音は消えてしまう。
これは毎年のことで、私はきっと彼女が会いに来てくれているのだとそう思っていた。
毎年、ここに来れば彼女に会える。そう思うだけでなんだか救われた気になっていた。
お参りが終わり、お供物を鞄にしまって私がいつものように帰ろうとすると、じゃりっと背後で砂利を踏む音がした。
私は立ち止まった。
周りには誰もいなかった。
足音は徐々に近づいてくる。
心臓の鼓動が早くなっていく。
きっと、彼女が会いに来てくれたんだ。
そう思うと、嬉しかった。だが、同時にやっぱり怖さも感じていた。
足音は、私のすぐ背後で止まった。
「君かい?」
私は振り向き、そこにいた者を見て悲鳴を上げて尻餅をついた。
何かの笑い声が聞こえたのを最後に、私は気を失った。
そこからのことはよく覚えていない。
どうやって家に帰ったのかも、何も覚えていなかった。
ただ、振り向いた時、あそこにいたのは、彼女ではなかった。
あれは、なんだったのか分からない。上手く説明もできない。
背丈は小学生よりもずっと小さくて、顔はしわくちゃ。開けっぱなしの口には、欠けた歯がいくつも並んでいた。
左手だけ普通ではないくらい伸びていて手のひらが地面に接していた。
そいつは、異様なくらい吊り上がった目で私を睨みつけていた。
それから、細い細い喉を震わせてしゃがれた声で笑ったのだった。
大切な人の墓参り。必ずしもそこで、知っている人が待っているとは限らない。
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