転生したら乙女ゲームの主人公の友達になったんですが、なぜか私がモテてるんですが?

rita

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101~108話

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 101.ツンツンからのデレデレ・・・まじかー。


 無事、両想いになれた私であったが・・・まさかの事態が待っていた。

「・・・彩衣、隣いいか・・・。」
「・・・・・。」

 蔵でひとしきり抱き合って泣き、笑って、両想いになったのは最終日まで秘密にしようね。っと、何事もなかったかのように巻物探しを再会して、そこに臣先輩と一凛が戻ってきた。

 私たちは何でもない風を装っていたが、夕飯時、彪斗くんが座った私の隣に来て、そんなことを言ってきた。
 私含め、周りのみんなも黙り込んでじっと彪斗くんを見てしまう。

「え、あ・・・別にいいけど・・・。」

 私がぎこちなく答えると、彪斗くんは少し嬉しそうにとなりに座った。

 居間になんとも言えない空気が流れる。

 おいおいおい彪斗くん!!!!!
 なにやってんの!??
 いいけど・・・とか答えちゃったけどそんなばれるような行動やめてくれる!!??
 ていうか何!?急に!??

 そんなことを思いつつ、私たちのぎこちない夕飯は終わった。
 しかし彪斗くんの・・・・意識なのか無意識なのか、デレ?はそのあとも続いた・・・。

 私が食器を片付けようとすると、

「いい、俺が持ってく・・・。」

 と、彪斗くんは私のお皿まで持って行こうとした。

「え、いいよ!」
「いいから。」

 と、颯爽と立ち上がり持って行ってしまった。

 だからばれるってば!!!!

 私は心の中で叫んでいた。
 その後、わたしと一凛が離れに戻ると、

「・・・・・・・。」

 窓の外をうろつく人影が・・・。

「凄いね・・・両想いになったら溺愛だね・・・でれっでれだね。」

 一凛がものすごくにやにやしながら言う。

「ほんとにね・・・あれどうしよう・・・。」
「みんなに悪いからやめなさいって叱ってきなよお母さん。」
「お母さんって・・そうね・・・ママ行ってくるわ・・・。」

 私はそんなことを言いつつ、重いため息をついて立ち上がった。
 靴を履き、ガラガラと離れの扉を開き、窓の方へ行くと、

「彩衣・・・・。」

 嬉しそうな顔をした彪斗くんが立っていた。
 こうも露骨に変わるとは・・・。

 私は嬉しいような今までのはなんだったんだというような、複雑な心境と面持ちで彪斗くんと対峙する。

「彪斗くん・・・何やってんの?」

 単刀直入にそう聞いてみた。

「あ、いや・・・彩衣に・・・会いたくて・・・・。」

 彪斗くんは少しうつむきながらそう言った。

 やめろ。にやける。
 これからお説教できなくなるだろ。

 私は息を吸い、吐く。

「彪斗くん・・・そんな露骨に態度に出しちゃうと、みんなにばれるよ・・・。」

 私は無表情でいう。

「え・・・そんな出てたか?」

 無自覚かい!!
 それ無自覚かい!!!

「露骨すぎだよ・・・。」

 私はおかしくなって笑う。

「そうか・・・ただ・・・無性にそばにいたくて・・・顔が見たくて・・・・つい・・・。」


 おい、やめろよ最推し。
 幸せで何かアドレナリン出まくって、にやけまくるだろ。

「っ・・・私も・・・そうだけど・・・元のままの彪斗くんでお願いします。」
「元のまま・・・か・・・・。」
「うん、最終日まで。」
「・・・・・つとめる。」
「うん・・・・月が綺麗だね。」
「ああ・・・月が綺麗だ・・・。」

 彪斗くんはそういうと、私に柔らかいほほえみを向けてきた。


 な、なんっ・・・なんなんその顔!!!
 死んじゃうからやめて!!!!!!!


 きっと今の私の顔は真っ赤だろう。



 続



 102.ついに・・・。


 その後、数日穏やかな生活が続いた・・・巻物探しも続いた・・・。
 つづ・・・いたのかなぁ?

 なんかちらほら・・・いや、所々で彪斗くんが頭なでてきたりほほえみかけてきたり、意味もなく背後に立っていたり・・・。
 まぁ、そんなことが続けば・・・ねぇ・・・・。


「だっーーー!!!お前ら何なんだよ!!!絶対なんかあっただろ!!!返事は最終日までするなって言っただろう!!!」


 麻日くんが切れた。

「・・・な、なにもないよ。」
「・・・・。」

 私はしらばっくれて、彪斗くんは黙秘した。

「絶対あった!!!ふざけんなよ!!!彪斗なんかあの夜こ、こくはくするのかしないのかも曖昧だったくせに!!!しかもなんだよその豹変っぷり!!」

 豹変には私も頷くしかない。

「ふざけんなよ!ふざけんなよ!ふーざーけーんーな!!!」

 よほど怒りがたまってたのか、麻日くんが握り拳をつくり、大きく足を開き、うちらに向かって片足をダンダンと木の床に打ち付ける。

「麻日落ち着いて・・・・ほこりが・・・床壊れちゃ・・・」

 臣先輩がそう言った時だった。

 バキッと、音がした。

「あ。」

 みんなの声が重なる。

「あー、ほら、麻日、床壊した。」

 臣先輩がため息をつく。

「うわぁ・・・床板壊しちゃったの、麻日くん・・・。」
「う・・・。」

 みんながぞろぞろと麻日くんに近寄りながら、麻日くんはうっという顔をしている。

 どうすんだー、修繕費なんてないだろうに。
 と、私が呆れていると。

「あれ?」
「あ。」
「床下に何かある・・・。」

 みんながつぶやくように言った。
 みんなが屈んで見ていると、彪斗くんが割れた床板をつかみ、ばきっと剥いだ。
 いや、かっこいいけどやっていいのかよ。
 と、思っていると、

「中に書物が何冊かあるね・・・あと木箱が・・・。」

 中は隠し床下収納になっていて、臣先輩がごそごそと取り出す。
 受け取った七斗くんが私たちのいる床に置いていく。

「あ!その木箱!」

 私は思わず叫んだ。

「え?」

 手に持っていた七斗くんに言葉を返される。
 私はもしかして、と心が弾んだ。

「七斗くん!あけてみて!!」

 その言葉を受け、七斗くんが古びた木箱をあけると・・・。

「あ!」
「あったーーー!!!巻物!!!」

 私と七斗くんが叫んだ。

「え?これなの?」
「多分そうです!!」

 スチルで見た物と一緒だ。木箱に入ってる青い巻物。

「やったね!一凛!」
「う、うん!」

 なんだか思いがけず見つかり、みんなきょとんとしている。

「まさか床下に隠してあるなんて・・・通りで探しても見つからないはずだよ。麻日のおかげだね。」
「じゃ、じゃあ修繕費はなしってことで・・・。」

 臣先輩の言葉に麻日くんはごにょごにょとうつむきながら言った。

 いやー、ついに見つかったわ巻物。
 確か、ゲームでは普通に探してて見つかったんだけどなぁ、8月29日辺りに。

 と、思い私は今日の日にちを確認する。

「あの・・・今日って、何日でしたっけ?」
「今日は28日だよ。夏休み終わるギリギリに見つかってよかったねー。」

 臣先輩にそう言われた。



 続



 103.みんなの複雑な心境。


 私たちは巻物を持ち、これがその巻物かどうか九五さんの所へ持って行った。

「あれー、本当に見つけたんだー。偉いねー、どこにあったの?」
「えっと・・・それは・・・。」

 苦笑いしている私たちに疑問符を浮かべながら、九五さんは社務所の休憩室で巻物を開いた。
 私たちも見ていたが、巻物に書かれている文字は私達にはわからない昔の文字で、本物なのかどうかわからなかった。

「んー・・・本物っぽいね。」

 しかしその言葉に私たちは歓声の変わりに息を吸う。

「とりあえず、今晩、か明日、退魔師幹部会議で見せて、本当に本物かどうか、中身に書かれてること詳細に書き出すから、とりあえずみんなはお疲れさまー。儀式は30日になるかなぁ・・・。」
「わかりました!」

 九五さんの言葉に私は笑顔で返事をする。
 そしてみんなで社務所を出た。

 まだまだ暑い夏の日差しが照りける。
 いやー、よかったなー。と、私は御機嫌にあるいていたが、ふと周りを見ると・・・え?

「なんか・・・みんなあんまり喜んでない・・ね・・・。」

 みんなの面持ちは暗かった。
 な、なぜ?
 私は疑問に思う。

「あ、いや、嬉しくないわけじゃないんだよ。ただ・・・儀式やるとなったらなんか不安で・・・。」

 一凛が言う。

「俺も・・・。」

 七斗くんも続いた。
 あー・・・当の本人たち2人はナイーブになってるのか・・・。

「ボクはいよいよこの楽しい合宿も終わってしまうんだなって。」

 臣先輩はそう言った。

「俺は・・・いよいよ退魔師やめることになるんだな・・・って。」

 ああ・・・みんないろいろあるんだな・・・麻日くんは将来のことちゃんと考えなきゃいけないから大変だ。

 私は彪斗くんを見た。
 物凄い複雑そうな表情をしていた。

 彪斗くんは私と両思いになってから感情が顔に出るようになってきた。
 あー・・・なんか・・・自分の犯した罪が元に戻ってひとつなくなるかもしれないけど、罪は消えないしみたいなそういう複雑な心境なのかな?わからないけど・・・。

 とりあえず私は横に行き、

「大丈夫?」

 と、服を引っ張りこっちの世界もどらせた。

「あ、ああ。」

 すこしほっとした表情をしたので、すこし安心した。

「とりあえず、蔵片付けて着替えて居間で休もうか。」

 七斗くんが元気のない笑顔で笑って言う。

 巻物が見つかったら大喜びだと思ったけど、
 見つかったら見つかったで、みんないろいろ複雑なんだなぁ・・・。

 私はそんなことを思いつつ蔵へと戻る。
 そしてハッとした。


 私もだよ・・・31日以降どうなるんだろう・・・・。




 続



 104.また来年も・・・。


 蔵をみんなで元通り・・・元がどうだったかもう思い出せないが、適度に片付け、蔵を後にする。

「この蔵ともお別れだね。」
「毎日ずっといたからなー。」
「すこし寂しいね。」
「そうだね。」

 私たちは蔵の中でそんな会話をする。

「さようなら、ありがとね。」

 そしてそう言い、私たちは蔵を後にした。

 離れに戻り着替えて手荒うがい、顔を洗い、髪をすいたりほこりを落とすと、わたしと一凛は神薙家の居間に向かった。

「お疲れさま。」

 着くと、七斗くんが麦茶を用意していた。
 男子達はもう勢揃いしていた。

 座った私たちの前にも麦茶を置いてくれる七斗くん。
 ありがとう。と言って受け取る。

 居間には沈黙が流れていた。

 本来なら見つかったぜやったー!と、盛り上がるはずなのだが、皆いろいろ思うところがあり、複雑な心境らしい。
 わたしもこの先・・・あと三日で自分がどうなるのか考えて出したら少し暗くなってきた。
 せっかく彪斗くんと両想いになれたのに・・・このままここにいたい。
 この願いは叶うだろうか・・・。

 いや!暗く考えててもしかたない!
 みんなも暗くなってるし、ここは年長者がなんとかせねば!

「いやー、巻物見つかっちゃったねー。この後どうしようかー。もう課題やるしかないよね。」

 わたしは軽く笑いながら言う。

「そうだね・・・儀式が明後日になるのかわからないけど・・・それまで課題したり、のんびりしたりしながらみんなでゆっくりしようか。」

 臣先輩がのってくれた。さすがー。

「そうですね、のんびりしましょう。夏休みずーっと蔵で大変だったから。ね、一凛。」
「え、あ、うん。」
「テレビ見てだらだらしよー。あ、お菓子買ってこようか。」
「お、なら商店街行こうぜ。最後に魔物狩っておきてぇ。」
「何それ」

 私たちは笑った。

 でも、なんとなくわかる気がする。宝玉が戻ったら、街に穢れや魔物はいなくなる。最後の見納めだ。

「よっし!じゃあ、今からみんなで商店街行こうか!彪斗くんもだよ。」
「え・・・。」

 彪斗くんは驚いた顔をしていた。
 いつも陰からみていたからね、皆と一緒に歩くなんて初めてだろう。だが、年相応のことだ。やっておけ。
 おばさんは思う。

「いや、俺は・・・。」
「いーからいーから。皆で行こう!じゃあ、カバンとってくる!いこう、一凛!」
「うん!」

 そして、私たちは商店街へと向かった。
 麻日くんはここぞとばかりに目に付くものすべて狩り尽くしていた。
 彪斗くんはどうしても徐々に離れるので、わたしが服の袖をひっぱって歩いていた。

 お菓子を買ったり、ケーキを買ったり、七斗くんが安い食材を買い込んだりし、私たちは楽しいみんなでの買い物を、満喫した。


「はー!楽しかった!」

 神社に帰ってきて、荷物を置き、神薙くんちの縁側で窓を開けて、みんなで座りながら買ってきたジュースやお菓子を食べる。

「夕焼けが綺麗だねー。」

 私は綺麗な夕焼けの空を見ながら言った。

「ここは高台だからね。空を邪魔する物はないから綺麗に見られる。」
「本当ですね。」
「今日も終わるな・・・。」

 麻日くんがしんみりと言う・・・そういうしんみりすること言っちゃダメ~~!!!!
 と、思っていると。

「また来年も、みんなで夏休みの合宿しようか。ここで。流石に期間は短くなるけど。」

 七斗くんが苦笑しながら言う。

「賛成ー!さすが七斗くん!いいこと言う!」

 私は満面の笑みで答えた。

「でもボクは卒業してるよ。」

 臣先輩がすこし悲しそうにほほえんだ。

「あ・・・いや!大学生だって夏休みの課題あるでしょ!一緒にやりましょうよ!むしろ麻日くんの先生必要だし!先輩がいなきゃダメです!!」
「ボクがいないと・・・だめ・・・。」
「はい!」
「・・・ふふ・・・そっか、わかった。また来年、みんなでここに集まろう。」

 臣先輩は嬉しそうに笑ってそう言った。


 また来年の夏・・・ここでみんなで夕焼けを見よう。



 続



 105.いよいよ・・・明日。


 次の日、私たちはもう蔵での巻物探しがないので、朝から夏休みの課題や、もう終わってる者は教えたり、のんびりしたり各々過ごしていた。
 すると、九五さんが居間にやってきた。

「おー、お前らちょうど全員そろってるな、ちょうどいい。」

 私はごくりと唾を飲んだ。

「昨日の夜、幹部会議してな。この巻物、本物だ。」

 やった!と私は叫びそうになる。
 みんな思わず座っていた腰が浮く。

「中身も解読した。明日の昼、儀式するぞ。」

 思わず私は一凛と七斗くんを見た。
 2人は緊張した様子だった。

 いよいよ儀式か・・・どんな儀式なんだろう・・・ゲームではスチルで見たけど・・・リアルだと違うことが結構あるからなぁ・・。

「七斗と一凛ちゃんは、普通にしてればいいいから。ただ、言われたら宝玉の棚の前で向かい合わせに立って、片手合わせてもらえば宝玉が出てくるらしいから。」

「うん・・・わかった。」
「はい・・・。」

 何その適当な説明!ちゃんと説明してあげてよ!!2人とも超不安そうじゃん!!
 私はやきもきする。

「あと・・・一応、一大事だからな、お前らの他にも幹部がたくさん来るから覚悟しとけよ~。」

 九五さんはにやりとそう言うと行ってしまった。
 え・・・と、私は一凛と七斗くんを見る。
 2人とも硬直して真っ青になっていた。
 九五さん!!!余計なこと言うな!!
 まぁ、事実なら知っておかないと当日見るよりいいけどさ!!

「い、一凛、七斗くん、きっと大丈夫だよ。リラックスして。ね?」
「彩衣ちゃん~~~~!!!」

 一凛が泣きそうにしている。

「がんばれがんばれ。これで終わるから。」

 私は手を握って頭をなでてあげる。
 七斗くんを見ると、七斗くんはうつむいて暗い表情をしていた。
 しょうがないなーまた、期待させちゃうけど・・・。

「!」
「がんばれ七斗くん。もうすぐ終わるよ。」

 私は七斗くんの頭に手をおいた。
 背が高いから背伸びをして。
 そして笑ってそう言った。
 どうだ!これで元気出たか!

「・・・うん・・・最後だもんね・・・がんばる、ありがとう。」

 七斗くんは笑ってくれた。
 マジか。おばさんマジで好かれてんな。

「しかし、明日の昼かー・・・。」
「本当に夏休み終了ギリギリですね。私、実はお母さんからいつ帰ってくるのってメッセージ凄い来てるんですよ。明日の夜帰ろうかな・・・。」

 臣先輩の言葉にわたしが苦笑いしながら返すと、

「31日まで居ようぜ!」

 と、麻日くんが言う。

「いやー・・・さすがに戻らないと・・・。」
「そうか・・・。」
「うん・・・。」

 まぁ、実際どうなるかわからないから本当は神社にいたいんだけどね・・・。
 と、思いながら私は明日の儀式に思いを馳せた。



 続



 106.儀式。


「おはよう・・・一凛・・・寝れた?」
「一睡もできなかった・・・。」
「だよね・・・話してればよかったね・・・。」
「うん・・・。」

 いよいよ8月30日。
 宝玉を宝玉の棚に戻す儀式の朝、私たちは時計のアラームと共にそんな会話をした。

「おはよー。」
「おはようございます。」

 神薙家で最後になる朝ご飯。

 七斗くん、彪斗くん、麻日くん、臣先輩とあと一凛。
 みんなで食べる、おいしい朝ご飯。
 これも最後かー・・・残念だな。
 私は思う。
 来年も合宿したいな。
 あ、冬休みもできたらいいな。先輩受験だけどできたらいいな。聞いてみよ。
 私はそんなことを思いながら七斗くんのおいしい卵焼きを頬張る。

 そして、朝食を食べ終えると、九五さんに、午後1時から儀式だと伝えられた。
 私たちはその日は何もしないことにした。
 みんなで居間でお菓子やジュースを飲み、テレビをかけて、だらだらすることにしたのだ。

 一凛はずっと私の手を握っていた。
 不安なのだろう。
 不安だろうなー、お偉いさんの前でよくわかんない儀式するんだもんな。
 七斗くんも大丈夫かな?
 見ると、うつむいて暗い表情でいる。
 あとで声かけるか。

 と、思いつつ、柱によりかかっている彪斗くんを見た。
 彪斗くんも複雑な心境だろうなぁ・・・。
 あれから話してないから話したいけど・・・今は一凛と七斗くん優先だなぁ・・・。

 そんなこんなで1時近くなった。

「彩衣ちゃん~~!もうすぐ1時だよ~~~!!!」

 一凛がぎゅっと手を握ってくる。

「大丈夫!大丈夫!一瞬で終わるよ!多分!」
「ほんと?」
「いや、よく知らないけど。」

 私は、はははと笑った。

「もーーーー!!!」
「七斗くんは平気ー?」
「平気・・・じゃない、かも・・・・。」

 あらら。

「あんまり気負わないで。また頭なでようか?」
「い、いや・・・。」
「ふふふ・・なでてあげようか~~?」
「いや・・・。」

 私はなんとか空気を和ませようとする。
 すると、

「おい、お前ら、儀式始めるぞ。」

 九五さんが来て、そう言い放った。
 今がしんっと静まり返る。

 いよいよ、始まる・・・。



 私たちが神社の社の中に行くと、既にお偉いさんたちが数十名びっしりと正座して座っていた。
 洋装、和装、いろんな服装、年代は高めだが40代から70代くらいの男性がいる。

 一凛がぎゅっと私の手を握った。これは私だって怯むわ。
 社長と支店長と部長の前でプレゼンしろって言われてるようなもんだわ。

 私はぎゅっと握り返す。
 そして一凛の目を見て頷く。
 そして七斗くんを見た。
 顔面蒼白でカタカタ震えている。
 ちょうど右横にいたので、私は服の袖をひっぱった。
 七斗くんはハッとして、私を見る。
 私は頷いた。
 七斗くんはすこしほっとしたようで、ぎゅと唇を結んだ。

「お前たち、ここに座って。」

 私たちは九五さんに言われ、御神体の目の前に通された。
 そして座る。
 わたしの横に彪斗くんが座った。
 あとで話さないとなと思った。

 そして、いよいよ儀式が始まった。

 神社の御神体と、宝玉の棚には、あれは多分、御神酒と榊かな?あといろんなお供え物が置かれてあった。
 そこへ、九五さんが宮司さんの正装っていうのかな?こういう式を行うときに着るらしききちんとした服を着て、白い紙のついた木の棒を持って静かに入ってきた。

 おごそかな空気だ・・・緊張する。

 九五さんは神社の御神体とその前にある宝玉の棚の前に立つと紙のついた木の棒を降り、祝詞っていうんだよね?それを唱え始めた。
 何言ってるかわかるようでわからない・・・。
 すると九五さんがこちらを向き、

「七斗、一凛さん、宝玉の棚の前へ。」

 と、真面目な顔で言ったので、あの九五さんが真面目な顔をしていることも加わって、いよいよか・・・と、緊張がピークに達する。

「はい。」
「は、はい!」

 2人は棚の前に行き、片手を会わせた。
 すると九五さんはまたもや棒をふり、

「遠くへゆきし宝玉よ、あるべきところへもどりたまへ。もどりたまへ。」

 と私にもわかる言葉で言った。そしてまたわからない言葉を続ける・・・すると・・・

「っ!」
「きゃ!」

 カッと青と赤の光が七斗くんと一凛の腹部から発せられ、2人が手を離し、腹部を押さえる。

 光は強さを増し、すぅっと丸い・・小さな・・・あれが宝玉。
 そう、スチルで見た、小さな丸い宝玉が、2人の腹部から出て、小さな棚へと入っていった・・・・。

 そして光は消えた・・・。

 室内は静まりかえっていた。
 七斗くんと一凛もきょとんとしている。

 あー・・・終わったか・・・。
 私は一人そう思う。

 九五さんが宝玉の棚に向かい、一礼すると、観音開きの扉を開く。
 そして振り向き、

「宝玉、戻りました。」

 静かにそう言った。

 幹部たちは、わぁ!と声をあげ、ぞろぞろと宝玉を見に棚へと向かう。
 七斗くんと一凛は、呆然としながら私たちの元へと戻ってきた。

「お疲れ、2人とも。居間に行っていいか聞いて行こうか。」

 私はほほえんで言う。

「あ、うん。」
「うん・・・。」

 2人は呆然としながら答えた。

 私が九五さんに聞くと、いいよ。と答えてくれたので、私達はぞろぞろとその場を後にした。
 元に戻った宝玉も見ずに・・・。



 続



 107.終わりは突然に。


「わー、すごーい、本当に穢れと魔物いないー。階段付近しか見てないけど。」
「ほんとだな・・・。」

 私達は居間に行く途中、もう本当に穢れや魔物がいないのか見てみようと鳥居の外へと向かった。
 外には本当に一匹もいなかった。麻日くんがしゃがみこみ、草をブチブチと引き抜く。

「よかったね、七斗くん、一凛。お疲れさま。」
「う、うん・・・なんかあんまり実感ないけど・・・。」
「うん・・・。」

 2人は微妙な面持ちだった。

「あーあ!本当に退魔師廃業かー!!!」

 麻日くんが叫ぶ。

「ふふ・・・しかたないよ。まぁ、よかったじゃん。これでもう穢れや魔物で傷つく人はいないよ。」
「・・・・ああ。」

 麻日くんに言うと、麻日くんはすこし不服そうだが返事をした。

「彪斗くんも・・・よかったね。」

 私はほほえみながら言う。

「ああ・・・まぁな・・・俺の罪は消えないが・・・。」

 うつむいて彪斗くんは言う。
 まったく。

「またそういうこと言う!私がいるって・・・」



 ピーーーーーーーー



 え?

 目の前が一瞬真っ暗になった。


「彩衣?」


 彪斗くんがわたしに問いかける。


「あきと、くん・・・。」


 ザッザザザザザ


 え、何、視界がブレる。

 何か、赤と青と黄色と黒?何これ。

 え??


「彩衣・・・?」
「え?おい、誰だ・・何だよあれ!人間か?」
「彩衣ちゃん!?」
「・・・宮本・・・さん?」


 え?

 あれ?わたし・・・浮いてる?


 あれ?私の・・彩衣ちゃんの・・背中見てる?


 あれ?私の手・・・・人間の手だ。二次元の手じゃない・・・。

 え?顔は・・・鏡見てないけど触った感じ人間の顔だ!

 服も、事故した時、着てた、カーディガンにパンプスにスーツのパンツ・・・え、え、え・・・。


「・・・恵名?」


 彪斗くんが・・・私を見て、怪訝な顔をしている・・・。


 人間の、私を見て・・・・。



「見ないで!!!!」



 私は顔を覆った。

 こんな醜い人間の顔の私なんて見てほしくない!

 涙があふれてきた。


「おい!どういうことだよ!「えな」って誰だ!彩衣はどうしたんだ!気失ってるぞ!」
「速水さ・・・宮本さん!!」

 麻日くんが倒れ込んだ彩衣ちゃんを抱え、七斗くんが私の名を、本当の名を呼び私を見る。

「ごめんなさい!!!本当の私は!こんな醜いおばさんなんです!!!多分、もう宝玉が戻ったから、ゲーム終わるから!やっぱり私は元の世界に帰るんです!!!ごめんなさい!だましてて!!今までありがとう!!!」

 私はあふれ出る涙も、見られたくない顔も、手で隠して叫んだ。
 私の身体はゆっくりと、どんどん上空へと向かって上がっていく・・・。

「恵名!!!」

 彪斗くんの私の本当の名前を呼ぶ声が聞こえた。

「彪斗・・・彪斗くん!!ごめんね!ずっと側にいられなくて!!でも・・・こんな醜いおばさんなんか嫌だよね・・・いい人見つけてね!」

 私は指の隙間からみんなを見る。
 みんなは怪訝な、複雑な表情で、宙に浮かぶ私を見ていた。


 そう、私は醜い人間のおばさん・・・。


「ごめん・・・みんな・・・・。」


 私がそうつぶやくと、彪斗くんが走ってどこかへ行ってしまった。

 あー・・・幻滅してあまりのショックに逃げちゃったか・・・。
 そりゃそうか、こんな醜い二次元でもない、人間のおばさんなんて・・・。
 私が徐々に上昇しながら手で顔を覆いすすり泣いていると、


「恵名!!!」


 彪斗くんの、大きな叫ぶ声が聞こえた。

 わたしが顔から手をそっとはなし、見ると・・・。


「受け取れ!!」


 と、何かを思いっきり私の方へ投げてきた。
 まだそんなに距離がないので、空中でわたわたしながらもなんとかキャッチ出来た。


 それは・・・・・



「赤の・・・宝玉・・・・。」



 私は目を丸くした。


「絶対それ持ってろ!!!そうすれば!またかならず会えるから!!!ずっと側にいるって約束しただろ!!!お前だけは!!俺の味方だって!!!約束破るなよ!!?」


 彪斗くんは叫んだ。叫んでいた・・・悲痛な表情で・・・。


「うん・・・うん!!!わかった!!!かならず!!絶対戻ってくる!!!ぜったい!!!」


 私も叫ぶ。涙をぼろぼろ流しながら。

 こんな醜い人間の私を見ても、まだそんなことを言ってくれる・・・ありがとう・・・ありがとう彪斗くん・・・・。

 身体はどんどん上空へと上がり、雲に隠れ・・・わたしの意識も・・・・途絶えた。





 ピッピッと電子音が聞こえる・・・うっすらと目を開くと、白い天井が見えた・・・身体を動かそうとすると、強烈な痛みと、身体は重りをつけたように重く、動かなかった。

 目だけ動かして、わかった。
 ああ、ここ病院だ。
 心電図の機械と、酸素マスクしてる。点滴もある。

 あー・・・そうか。事故ったからあのまま入院してたんだ。
 そこへ看護師さんが入ってきた。

「宮本さん!?宮本さん!わかりますか?」

 看護師さんの言葉に私は小さく頷く。

「今、先生呼んできますからね。」

 看護師があせって出て行った。
 看護師さんも人間の造形だった。ユキ。先生の絵柄じゃない。

 そう、ここは元の世界だ。現実の。
 あれは・・・あの楽しいゲームの世界での日々は・・・結局、事故してた間のゆ・・・・え?あれ?

 夢だと思いかけて、わたしは右手に握っている丸い物に気づき、瞳を見開き、全身にビリビリとした緊張した時のような、強張りの様な、まさか・・という期待感が走り、痛く重い右手を少しずらし、首を曲げて、それを確認した。


「っ・・・・」


 それは・・・赤い宝玉だった。


 夢じゃ・・・なかった。


 夢じゃなかったんだ。


 だって、私、今、宝玉持ってるもん。



 ねぇ、彪斗くん、みんな。




「うっ・・・ひっく・・・」



 私は泣いたら身体が痛むけど、泣かずにはいられなかった。


 夢じゃなかった。



 夢じゃなかったんだ。





 続



 108.はじまりの終わり。


「よっこいせっと。」
「恵名、あんまり無理しないようにね。」
「はーい。」

 私は半年ぶりに自室に帰ってきた。
 半年ぶりのオタクな自分の部屋。
 思わず彩衣ちゃんの部屋と比べて苦笑い。

 あれから・・・こっちの世界・・現実?に戻ってきてから、私は退院するまで約半年かかった。

 動けるようになるまで・・・リハビリ・・・大変だった。
 皆に心配されて、親にも死んだかと思った、一ヶ月、目を覚まさないし。と言われたし。
 あの期間は一ヶ月だったんだなぁ・・と、思いながら、私は宝玉を買ってきてもらった小さな巾着に入れて大切に、肌身離さず持っていた。

 いつ戻れるのだろう、いつだろう・・と、思って半年たってしまった。

 正直もう無理かな・・・と、諦めている。

 だって半年たってるし・・・でも宝玉持ってるしなぁ・・・。


 私は、ベッドの上に座って、部屋を見渡す。
 リアルはこんなもんだよね。と、思い、側にあった携帯ゲーム機を見た。
 手に取ってソフトを見ると、私が行っていた『宝玉の記憶~目覚めし少女と4人の退魔師~』のゲーム。
 苦笑いしちゃった。

 スイッチいれようかと思ったけど何となくやめた。
 そしてその側に置いてあった、少しほこりをかぶってる、七斗くんと彪斗くんが表紙の乙女ゲーム雑誌が目に入り、硬直した。

 私はそっと手に取る。
 ほこりを払い、表紙の彪斗くんに触れた。涙がにじんだ。
 中をペラペラとめくって行く・・・みんながいた・・・。


 一凛、七斗くん、臣先輩、麻日くん、彪斗くん・・・・。


 ポタリと涙が落ちた。

 私は宝玉をポケットから取り出す。
 綺麗な赤い宝玉・・・。
 雑誌を見ていると、どんどん涙があふれてくる。

「みんな・・・会いたいよ・・・・戻りたいよ・・・彪斗くん・・・・。」

 私は宝玉を両手で握りしめ、涙をぼろぼろとこぼしながら両手を額にあてた。
 その時だった。
 突然手の中が熱くなった。

「え・・・。」

 私が泣いて閉じていた目を開き、両手を開くと、宝玉が熱と光を発していた。
 光は眩しさを増す・・・。

「まぶしっ・・・!」

 私は目を細め、閉じる・・・。






 しばらく目をつむっていたのだろうか・・・意識を失っていたのだろうか・・・。


「速水・・・?」


 その声と、言葉で、はっと目を開く。

「・・・恵名・・か?」

 目の前には・・・・・彪斗くん・・・が、いた。

「彪斗・・・くん?」

 私は呆然とする。

 え?あれ?
 私がきょろきょろとすると、そこはもう懐かしい、神社の社の御神体の前で、目の前には彪斗くん、周りには一凛、七斗君、臣先輩、麻日くん、そして九五さんがいた。

「え・・・・戻って・・・これ・・た?」

 私ははきょとんとしてしまう。

「よっしゃーー!!!恵名もどってきた!!」

 すると麻日くんが私の本当の名を叫んだ。

「はー、よかったよ、ほんとに。あのままだったらどうしようかと。まぁ、本当の彩衣ちゃんはあの彩衣ちゃんなんだろうけどね。」
「彩衣は恵名でいいんだよ。あんなクソうるせぇ女いなくなってせいせいするわ!」
「麻日。」

 みんなが元の彩衣ちゃんをボロクソに言っているのはわかるが何があったのだろう・・・というか・・・・。

「私・・・戻ってこれたんだね・・・宝玉の儀式のおかげで・・・。」

 私は今は両手の中にない、おそらくそこに戻っただろう赤い宝玉がある宝玉の棚を見て、つぶやくように言う。

「ああ・・・でも、これがラストチャンスだったんだ・・・。」
「え?」
「今回で三回目だったんだよ。本当の彩衣ちゃんを、本当の理由教えずに儀式させるのも大変だったし、二回も何も起きなかったから、次ダメだったら諦めよう・・・って、みんなで話してたの。」

 一凛が説明してくれた。
 それを聞いて私は少し考える・・・・。

「あ、入院してたからかな?」
「入院?」

 みんなの声がハモる。

「うん、向こうの私、トラックと正面衝突して半年間入院してたから。退院して、部屋に戻って宝玉泣きながら握ってたら宝玉が光ってさ・・・戻ってこれた。」
「そっか・・・。」

 七斗くんがほほえむ。

「ていうか・・・今日、何月何日?私、向こうで半年たってたんだけど・・・。」

 みんなが複雑な表情をしている。

「9月10日だよ。」
「え!!??」
「時間の経過が違うみたいだね。」

 七斗くんが苦笑した。

「そうだね。」

 私は笑いながらみんなを見る。

「いやー・・・それにしても・・・ひさ、久しぶりだなぁ・・・戻れてきて・・・ほんっ・・ほんとに・・・よかっ・・た・・・っく・・・。」

 私はみんなをひとりひとり見て、涙がこみ上げてきて、ボロボロと泣き出してしまった。

「彩衣・・・いや、恵名・・・。」
「!」

 すると彪斗くんが私をそっと抱きしめた。

「戻ってきてくれて・・ありがとう。約束・・・守って、ずっとオレのそばにいてくれ・・・。」

「彪斗・・・くん・・・。」

 私は耳元でささやかれる低音ボイスとその言葉に涙も止まって真っ赤になる。

「おいてめぇ!!何やってんだ!!まだ結果はついてねぇんだぞ!!」

 すると麻日くんが大声でさけんだ。

「まぁ、もう分かりきってるけどね。」

 臣先輩が溜息混じりに言った。

「結果?」

 私が彪斗くんの腕の中から顔を出し聞く。

「そうだよ!全部終わったら、こ、こくはくの答え出す約束だったろ!」
「あ~・・・。」
「あ~じゃねぇ!!!」
「恵名は俺のだ。」
「!」

 その言葉に全私が目を見開いた。
 あ、彪斗くんんんんんん!!!!
 嬉しいけど!嬉しいけど!!!

「じゃ、じゃあちゃんと私からつたえます!」

 ほら彪斗くん話して!と、いうと、彪斗くんはごねたが、早く!!と、押すと、ようやっと放してくれた。
 さみしかったのかな?私がいない間。あとで大変そうだ。

 さて、そんなこんなで、今、私の前に、神聖な御神体の前に、イケメンな男子4人が立っています。
 私はこれからこのうち一人を選ばなくてはなりません。

「えーっと、まず、私を好きになってくれてありがとうごいます。あと、私の中身の醜いアラサーババアを見て、知っても好きでいてくれてるようで、本当にありがとうございます。結果を言うのは本当に心が痛みます・・・でも・・・もうみんなわかってると思うけど・・・・私が好きなのは・・・・彪斗くんです!みんなごめん!!!」

 その言葉に、麻日くんはがっくりと頭を下げ、臣先輩は首を傾げ瞳を閉じ、七斗くんは少し悲しそうにほほえんで、彪斗くんは・・・ほほえんでいた。うれしそうに。

「っだーーー!!!わかってたよ!わかってたよーーーー!!!!」

「まぁ、けじめだよね。」

「ははは。」

 フラれた三人は言う。

「本当にごめんね!!こんな私を好きになってくれたのに!!!」

 私は手を合わせて頭を下げる。

「こんななんていうな。」

 すると彪斗くんがやってきて、背後から私を抱きしめる。

「お前は最高の女だ。」

 そして耳元でささやいた。


 や・め・ろーーーー!!!!


 私は真っ赤になってるだろう。


「おい!いちゃつくんじゃねぇ!!!」


 麻日くんが怒鳴る。

「そうだよ!!やめなよみんなの前で!!」

 私も怒る。
 私が怒る立場じゃないんだけど!

「まあまあ、宮本さん。彪斗すっごい落ち込んでたから。」
「七斗、余計なことは言うな。」
「そうだよなー、恵名恵名恵名恵名言ってたよなー。」
「そうだね。」

 そこで私はふと思う。

「ねぇ、今更だけどみんなわたしの中身のこと知ってるんだね。」

 すると七斗くんが、気まずそうな顔をした。

「あ、うん・・・さすがに隠し続けるわけにはいかなくて・・・ぜんぶ話しちゃった。」
「そっか・・・まぁ、いいんだけど。」
「てか、この世界がゲームとかマジか?」

 麻日くんが怪訝な顔で聞いてくる。

「うーん、そう・・・なんだよね。まぁでも、みんなこうして実際に生活してるし、もしかしたら私の元の世界も誰かのゲームの世界かもしれないし。いいじゃん気にしなくて。ね?」

 私はほほえむ。

「ま、そうだな。」

 麻日くんは笑う。

「俺はお前が帰ってきてくれれば、ゲームの世界だろうがなんでもいいや。」

 しみじみとつぶやくように麻日くんは言った。
 そして、ハッとして真っ赤になっている。
 うーん、かわいいがおばさんも照れる。

「ボクもたいして気にしてないかな。むしろ出会えたのが本当に奇跡で・・・・あーあ、本当にどうしてボクは選ばれなかったんだろう・・・いやでもまだチャンスはあるからね。別れるのを待つよ。」
「先輩!!」

 私は叫んだ。

「ははは・・・でも・・・戻ってきてくれて俺も・・・うれしい・・・です。」

 柔らかく、うれしそうに七斗くんが笑う。かわいいなぁ。

「ありがとう。また、いいこいいこしてあげるね。」

「恵名。」

 すると、背後からドスの効いた声が聞こえた。

「それは禁止だ。」

 おっと、ちょっとヤンデレか?君も。
 ストーカーでツンデレなのは知ってたけどヤンデレか?

「冗談だよ。」

 私が笑いながらいうと、ぎゅっと力強く抱きしめられた。

「もう・・・二度とどこにもいかないでくれ・・・・ずっと俺のそばにいてくれ・・・頼むから・・・・。」

 そして、耳元で小さく泣きそうな声でそう囁かれる・・・。

「うん、ごめんね・・・ありがとう・・・・。」

 私もそっと抱きしめ返した。




 こうして、私の突然の乙女ゲー生活は終わり、また始まった。

 私はおそらく一生この世界で生きていくだろう。

 嬉しい限りだ。やったぜい!




 そして、久しぶりの学校へと登校する。
 予鈴がなり席につき、担任を待っていると扉が開いた。

「え!!?」

 担任の後に続いてこの学校の制服を着て入ってきた人物に私は驚いた。

 だって・・・・


「転入生の不知火彪斗です。よろしくおねがいします。」


 彪斗くんはこっちを見て少しほほえんだ。


 マジかよ。

 学校には麻日くんも臣先輩も七斗くんもいるのに・・・彪斗くんまで!!??



 私の第二の高校生活は穢れや魔物がいなくなっても大変なものになりそうだ。



 終
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