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第二部 第二章
2 大人の決意。
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二階に行くのは初めてだった佐知子。二階に上がると一階と変わらないレンガに白い漆喰が塗られた廊下が左右に伸び、間隔を開けて扉のない白いカーテン代わりの布がかけられた病室の入口が見えた。
(えっと……二〇三号室……あ、部屋番号ついてる。数字は読めるようになったから……二〇三……二〇三……ここだ!)
佐知子は白いカーテンを少しめくり中を見る。
すると六人部屋らしき部屋の窓側。左奥に、絨毯に座り壁にもたれかかるノーラの姿を見つけた。
「ノーラさん……」
白い布をめくり佐知子は部屋へと入り、少し小声でノーラの名を呼ぶ。
「サチコ! ああ、よかったわ! ここに移った事、一応身振り手振りでサチコに伝えてと伝えたんだけどうまくいったみたいね!」
佐知子は苦笑いする。
「いや……隔離病棟行ったらいなかったんで、受付で聞きました……」
「ああ……やっぱり伝わってなかったのね……」
ノーラは肩を落とす。
「いやでも! 看護婦さんとかに会わなったし! 会ってたら伝えてくれたかも!」
佐知子は慌ててフォローする。
「……そうね」
ノーラは眉を下げてほほえんだ。
ユースフの顔を見てから二人で絨毯に座り話をする。
「ユースフくん、一般病棟に移れたってことは元気になったってことですよね」
「多分ね……あなたがいないから何もわからなくて……ただ、流されるままここに来ちゃった。後で通訳お願いね」
ノーラは申し訳なさそうにほほえむ。
「はい」
笑顔で佐知子は返事をした。
「でも……いつまでもサチコに頼ってばかりいてはダメよね……」
ノーラはいくぶん健康的な肉付きになった顔を上げてつぶやく。
「サチコ……もう毎日ここに来なくていいわよ。あなたにはあなたの生活があるでしょ?」
サチコに顔を向けて、ノーラは薄くほほえむ。
「え……でも通訳しないと……」
急に突き放すような事を言われ、佐知子は動揺する。
「今日の移動も何とかなったし、きっと大丈夫。いつまでもあなたに頼ってちゃきっとダメなのよ。そりゃ楽だし助かるけど……あなたの生活と時間を犠牲にして得た楽と援助よ。それに……自分のことは自分でなんとかしなきゃ! 今までだってそうしてきたんだから! ここ最近の楽したことは……きっと今まで頑張ってきたご褒美ね」
ノーラはふふっと笑う。
「自分の事は自分で何とかする……それがいい年した大人の当たり前よ」
まぁ、たまには人の助けもかりるけどね。と、ノーラは清々しくほほえんでいた。
「…………わかりました……」
ノーラは明らかに自分よりも年上だ。そして沢山の壮絶な体験や苦労もして来ただろう。その人からの言葉に、優しいぬるま湯の世界で育った高校生の佐知子が返せる言葉はない……。顔を少し伏せて、少し暗い顔で佐知子は返事をした。
「あの! でも! 退院の時は来て良いですか!?」
サチコは顔を上げ、縋る様に聞く。
「……ええ、いいわよ。退院の日は決まってるから」
「え! 本当ですか!?」
思わぬ朗報に、佐知子は驚く。
「確か……指で四ってやってたから、四日後だと思うのだけれど……最後に通訳頼めるかしら?」
ノーラは苦笑する。
「はい! 最後の通訳がんばります!」
ノーラとサチコは笑いあった。
(えっと……二〇三号室……あ、部屋番号ついてる。数字は読めるようになったから……二〇三……二〇三……ここだ!)
佐知子は白いカーテンを少しめくり中を見る。
すると六人部屋らしき部屋の窓側。左奥に、絨毯に座り壁にもたれかかるノーラの姿を見つけた。
「ノーラさん……」
白い布をめくり佐知子は部屋へと入り、少し小声でノーラの名を呼ぶ。
「サチコ! ああ、よかったわ! ここに移った事、一応身振り手振りでサチコに伝えてと伝えたんだけどうまくいったみたいね!」
佐知子は苦笑いする。
「いや……隔離病棟行ったらいなかったんで、受付で聞きました……」
「ああ……やっぱり伝わってなかったのね……」
ノーラは肩を落とす。
「いやでも! 看護婦さんとかに会わなったし! 会ってたら伝えてくれたかも!」
佐知子は慌ててフォローする。
「……そうね」
ノーラは眉を下げてほほえんだ。
ユースフの顔を見てから二人で絨毯に座り話をする。
「ユースフくん、一般病棟に移れたってことは元気になったってことですよね」
「多分ね……あなたがいないから何もわからなくて……ただ、流されるままここに来ちゃった。後で通訳お願いね」
ノーラは申し訳なさそうにほほえむ。
「はい」
笑顔で佐知子は返事をした。
「でも……いつまでもサチコに頼ってばかりいてはダメよね……」
ノーラはいくぶん健康的な肉付きになった顔を上げてつぶやく。
「サチコ……もう毎日ここに来なくていいわよ。あなたにはあなたの生活があるでしょ?」
サチコに顔を向けて、ノーラは薄くほほえむ。
「え……でも通訳しないと……」
急に突き放すような事を言われ、佐知子は動揺する。
「今日の移動も何とかなったし、きっと大丈夫。いつまでもあなたに頼ってちゃきっとダメなのよ。そりゃ楽だし助かるけど……あなたの生活と時間を犠牲にして得た楽と援助よ。それに……自分のことは自分でなんとかしなきゃ! 今までだってそうしてきたんだから! ここ最近の楽したことは……きっと今まで頑張ってきたご褒美ね」
ノーラはふふっと笑う。
「自分の事は自分で何とかする……それがいい年した大人の当たり前よ」
まぁ、たまには人の助けもかりるけどね。と、ノーラは清々しくほほえんでいた。
「…………わかりました……」
ノーラは明らかに自分よりも年上だ。そして沢山の壮絶な体験や苦労もして来ただろう。その人からの言葉に、優しいぬるま湯の世界で育った高校生の佐知子が返せる言葉はない……。顔を少し伏せて、少し暗い顔で佐知子は返事をした。
「あの! でも! 退院の時は来て良いですか!?」
サチコは顔を上げ、縋る様に聞く。
「……ええ、いいわよ。退院の日は決まってるから」
「え! 本当ですか!?」
思わぬ朗報に、佐知子は驚く。
「確か……指で四ってやってたから、四日後だと思うのだけれど……最後に通訳頼めるかしら?」
ノーラは苦笑する。
「はい! 最後の通訳がんばります!」
ノーラとサチコは笑いあった。
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