神様の外交官

rita

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第二部 第一章

33 ずぶ濡れヨウ。

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「夜店でバラヴァ売ってた! ラッキー! これは今日頑張った俺へのご褒美だね!」

 一人でセロの研究室でぼーっと待っていた佐知子の元へ、バターン! と、大きな音を立て扉を開きセロが戻って来た。

 片手には皿に乗ったたくさんのバラヴァを持ち、満面の笑みで嬉しそうなセロ。そして、よっと。と言いながら床に置いていた、いつもヨウが持ってくるシャイの銀の携帯器を持ち、足で扉を閉めた。

「さー、食べよ食べよ」

 セロはテーブルの上にシャイとバラヴァをセッティングしていく。

「あの……セロさん、まだヨウが来てませんけど……」

 おずおずと佐知子が問うと、

「あー、いいよ、いいよ!」

 ぶっきらぼうにセロは返す。

「セロさん!」

 もう! と、佐知子は心の中で叫んだ。

「俺がどうしたって……」

 すると扉を開き、ヨウがやってきた。

「あ、ちょうど来た来た。これならサッちゃんもいいでしょ?」

 テキパキと、セロはシャイを淹れる。

「はい……」

 ほっとする佐知子。

「何の話だ?」

 佐知子の隣に座ったヨウ。ヨウからはいつものいい香りがした。しかし、

「ヨウ……髪、濡れてない? まさか水浴びたの? こんな気温で!」

 佐知子は思わず大声を出した。

「え……ああ」

 ヨウは気まずそうに視線を合わせず、少し俯いて答えた。

「体拭くだけで良かったのに! 風邪引いちゃうよ!! 何考えてるの!? そんなに汗臭くないよ!!」

 立ち上がりながら佐知子がまくし立てると

「…………」

 二人のやり取りを見ていたセロは吹き出す。

「あっはっは! サッちゃん、お母さんみたい! 叱られてやんの!」

 笑っているセロにヨウが、

「うるさい……」

 睨む。

「おか……もう! タオルある? 髪拭いて早く乾かしな? あったかいシャイ飲んで!」

 心配そうな表情で佐知子は自分のシャイをヨウの前に出す。

「ふふふ……」

 セロはまだ小さく笑っていた。
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