神様の外交官

第二部 第一章

２２ 自分の力を生かす決意。

　ふぅ……と、息を一つ吐くと並んでいた列が進み、折り返しで側にある難民課窓口を見る。そこでは……

「ですから……ど、こ、の、ご、出、身、で、す、か？」
「だから言葉がわからねぇんだよ！　アーマ！　アーマにしてくれればいいんだ！」
「だから、アーマの宿舎に入りたいのはわかるんだけど手続きが……もう慣れたけど言葉が通じないとほんと困るわね……」
「あ？　なんだ？」

　四十代位の、極東アジア系の女性役人と、恰幅の良いボロボロの服を着て、髪と髭が伸びた男性がそんな会話をしていた。もちろん両方の言葉がわかるのは佐知子だけだ。

「どのくらいかかるかしらねぇ……」

　ユースフのことも心配だし……と、ノーラは浮かない顔をする。

（これは……やるしかないのだろうか……）

　佐知子は顔を俯かせて、少し眉間に皺を寄せる。

（やるべきなのだろうか……知らないふりをして黙って見ててもいいけど……ノーラさんが今日中に手続きできないし……皆の為にもならない……！）

　佐知子は決意し、顔を上げると、列を離れようとする。

「サチコ？　どこへ行くの？」

　急にどこかへ行こうとする佐知子に、慌ててノーラは声をかける。

「ノーラさんは順番待ってて下さい！　必ず……何とか！　今日中に手続き済ませられるようにしますから！」

　そういうと、佐知子は難民課窓口へと向かった。