神様の外交官

rita

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第一部 第二章

1-3 恥じらいと敬語。

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「でも、こっちに来てすぐにヨウくんに会えてよかったー。あんな形で別れたから気になってたし、知り合いに会えて助かったし。でも、まさか十年後に飛ばされるとは……」

 そんなことをいいながら、佐知子は何の気なしに、景色を見ようとヨウの脇を通り、崖から下を見る。

「うわっ!」

 そして驚いた。

「ねぇ! 凄い! 集落があんな大きな町? になってるよ!」

 崖から眺めた風景は一変していた。
 さきほど、十年前は川沿いに家が少しまとまってあるだけだった集落が、今は、川のそばには広い緑の畑が広がり、畑に続き、円形状の高い塀に囲まれた立派な大きな村になっていた。

「町ではないんですが……あれからいろいろありまして……あの集落もここまでちゃんとした村になりました……」

 青年になったヨウは、はしゃぎながら村を眺める佐知子の横に立つ。

「……そっか、十年だもんね……ヨウくんもこんなに大きくなったし」

 佐知子はそういってヨウにほほえみかける。

「っ……」

 ヨウはまた顔を赤らめてうつむいてしまう。

「? あ、ヨウ『くん』はもうおかしいか。もう大人だもんね。ごめんね。あ、ごめんなさい」
 なんだかむずかしいね。急に大人になったから。と佐知子は苦笑いする。
「いえ、お好きなようにお呼び下さい……」
「……ていうか、なんでそんな敬語なの? ヨウさん」
「え!」
「さっきもなんか様つけてたし……敬語も様もつけなくていいよ? あ、敬語と様つけしたほうがこちらの世界ではいいんですか? ならしますが」
「いいえ! めっそうもありません!」
「?」
「あの……タカハシサチコ様は……ずっと……神様か……何かだと思ってたので……なので……敬語と……様を……」

 少し照れくさそうにうつむいて、頬を赤くしてしどろもどろにヨウはいう。

「あー……」

 その内容を聞いて佐知子は納得した。確かにあんな登場と退場の仕方をすればそうも思うだろう。しかも子供のころに見ればだ。

「あー……えっと、私は別に神様でもなんでもないんだよ、あ、ですよ。確かに、今回は神様から、大戦争回避するようにって命令? 指令? を受けて、こっちの世界に来たんですけど、元の世界では普通の女子こ……女だったんです。だから私は普通の女なので、そんな様つけたり、敬語とかは使わないでください」

 ね? と、佐知子は、ほほえむ。

「…………」

 ヨウはなぜか少しうつむいてためらっている。

「じゃないと私も、ヨウ様って呼んで、敬語使いますよ?」

 佐知子は少し茶化す。

「そ、それは!」
「じゃあ、やめよう? ね? ヨウくん」
「は…………ああ……わかった」

 しぶしぶといった感じでヨウは承諾した。
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