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第一部 第一章
8-2 神様との出会い。
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「はぁ……」
ため息とともに自室の扉を開ける。そして閉めて、学習机の椅子にボロボロになったリュックを置いた。
『なぁーに、ため息なんてついてるの?』
「ひゃ!」
突然、自分の部屋で自分以外の声がして、佐知子は思わず肩を上げ声をあげた。
声がした。と思ったが、それは直接、脳に響いたというのが正しい。しかもその声には聞き覚えがあった。
佐知子は反射的に横を向く。すると、ベッドに神々しく淡く光る、長い白髪に褐色肌、そして虹色にゆらゆらとゆれ光る瞳の、白い服に金の装身具をたくさんつけた男性と思わしき人物が座っていた。
「え……」
佐知子は硬直する。
『はじめまして~! サッちゃん』
語尾にハートマークをつけて、若干、女性的に話す、男性と思わしき謎の、少し全体的に光っている人物は、なれなれしく佐知子をそう呼んできた。
(だ、誰……てか、なんであたしの部屋に人がいるの! てか……人間?)
思わず半歩下がって両手を胸元へ持ってきて身がまえる佐知子。
『あ~! 怖がらなくて、大丈夫、大丈夫! あたし、神様だから。変なことしないから。ね?』
相変わらず、頭に直接響く声で、その人は自分を神様だといった。
「かみ……さま?」
きょとんとしてしまう佐知子。
『そうそう! さっき、サッちゃんが行った世界の神様! 創造神ってやつ? よろしくね!』
さらりと綺麗な白髪の髪を揺らし、金色の装身具を鳴らしながら立ち上がり、近づいてきて握手を求める自称、神様。
「…………」
佐知子はさし出された手に戸惑う。さし出された手もどこか淡く光っている。
確かにこんな人間など存在しない。淡く光っていて、なにより瞳が凄い。いろいろな色が混じりあいながらゆらゆらと動いて光っている虹色だ。本当に神様なのだろう……信じるほかない……今しがた体験したことも信じることを手伝っていた。
「…………」
佐知子は恐る恐る握手をした。神様の手はほんのりと、ひだまりのようにあたたかかった。
『で、どうだった? あたしの世界。やっていけそう?』
握手を終えると、神様はまたベッドにふわりと座り、そう聞いてきた。
「え?」
『とりあえず、やっていけそうかおためしで飛ばしてみたんだけど、やっていけそうかしら?』
「え……っと」
話が見えない。
『あのねー、私の世界もう何度も作り直してるのよ。何度作っても、かならず人間同士が争って、大戦争で人類の大半が死んじゃってねー。そこから先に進まないのよ! だからね、ちょっと異物を投入してみようかなーって思って。そこでまぁ、タイミングよく現れたのがサッちゃんってわけよー!』
ノリが軽いなぁ……と、思いながら佐知子は立ったまま話を聞く。
『ってわけで! サッちゃんには、大戦争を回避してもらおうと思います!』
「は!?」
あまりにも重大な任務に、佐知子は大きな声で聞き返してしまう。
『これから起こる大戦争を回避してください』
今度は語尾に星マークをつけながら神様はいう。
「いや……そんなだいそれたことは……私にはちょっと……」
『大丈夫、大丈夫ー! サッちゃんならできるわよー! あたしも手助けたまにするから!』
たまになのかよ。と、佐知子は心の中でツッコミを入れた。
「異世界には行きたいですが……大戦争回避とかはちょっと無理があるかと……」
『んー、でも、大戦争回避しないとその腕輪もう外れないわよ?』
「は?」
それそれ。と、神様は佐知子の左腕にぴっちりとはまった腕輪を指さす。
「な! それ卑怯じゃありませんか!?」
思わず大声になった。
『えー? だってー』
神様は、えへ。と、笑っている。
「なっ……」
ずるい! 酷い! と、佐知子は怒りたい気持ちだった。
『まぁまぁ、大丈夫だから。ね? やってみない? ほら、あの子のことも気になるでしょ?』
「!」
そこで佐知子はハッとする。
「あの! ヨウくんどうなったんですか? 大丈夫ですか?」
『さぁ~? それは自分で見てこなくちゃ』
こいつ……と、佐知子は思った。
『さて、長話もしてられないわ。どうする? やる? やらない? 行くの? 行かないの?』
「うっ……」
佐知子は答えに困る。
大戦争回避など自分には到底、無理だと思う。でも、ヨウくんのことは気になる。異世界での生活はまだしてみたい。そして腕輪は大戦争を回避しないと外れない……。
答えは、ほぼ決まっていた。
「大戦争回避は……できるかはわかりませんが…………行きます!」
佐知子は、ぎゅっと目をつむり大きな声で、顔を上に向けながらそう答えた。
『できるかわからないって……まぁいいわ! じゃあ、行くわよー!』
神様がそういい、パチンと指を鳴らすと、腕輪がまた青くきらきらと光りだし、しゅるしゅると水が出てきた。
「え! もう!?」
佐知子はあわてる。
「え! え! 準備とか! に、荷物!」
あわてながらとっさにまた目についたリュックをつかむ。
『荷物なんて、いらない、いらなーい! じゃあ、いってらっしゃーい!』
神様がそういい、指をしゅっとひとふりすると、青い水が一気に佐知子を包んだ。
「きゃっ!」
また水に包まれる。
視界は青い水から目をつむり暗闇へ、息を止め、暗闇へ、深い深い、暗闇へ……。
ため息とともに自室の扉を開ける。そして閉めて、学習机の椅子にボロボロになったリュックを置いた。
『なぁーに、ため息なんてついてるの?』
「ひゃ!」
突然、自分の部屋で自分以外の声がして、佐知子は思わず肩を上げ声をあげた。
声がした。と思ったが、それは直接、脳に響いたというのが正しい。しかもその声には聞き覚えがあった。
佐知子は反射的に横を向く。すると、ベッドに神々しく淡く光る、長い白髪に褐色肌、そして虹色にゆらゆらとゆれ光る瞳の、白い服に金の装身具をたくさんつけた男性と思わしき人物が座っていた。
「え……」
佐知子は硬直する。
『はじめまして~! サッちゃん』
語尾にハートマークをつけて、若干、女性的に話す、男性と思わしき謎の、少し全体的に光っている人物は、なれなれしく佐知子をそう呼んできた。
(だ、誰……てか、なんであたしの部屋に人がいるの! てか……人間?)
思わず半歩下がって両手を胸元へ持ってきて身がまえる佐知子。
『あ~! 怖がらなくて、大丈夫、大丈夫! あたし、神様だから。変なことしないから。ね?』
相変わらず、頭に直接響く声で、その人は自分を神様だといった。
「かみ……さま?」
きょとんとしてしまう佐知子。
『そうそう! さっき、サッちゃんが行った世界の神様! 創造神ってやつ? よろしくね!』
さらりと綺麗な白髪の髪を揺らし、金色の装身具を鳴らしながら立ち上がり、近づいてきて握手を求める自称、神様。
「…………」
佐知子はさし出された手に戸惑う。さし出された手もどこか淡く光っている。
確かにこんな人間など存在しない。淡く光っていて、なにより瞳が凄い。いろいろな色が混じりあいながらゆらゆらと動いて光っている虹色だ。本当に神様なのだろう……信じるほかない……今しがた体験したことも信じることを手伝っていた。
「…………」
佐知子は恐る恐る握手をした。神様の手はほんのりと、ひだまりのようにあたたかかった。
『で、どうだった? あたしの世界。やっていけそう?』
握手を終えると、神様はまたベッドにふわりと座り、そう聞いてきた。
「え?」
『とりあえず、やっていけそうかおためしで飛ばしてみたんだけど、やっていけそうかしら?』
「え……っと」
話が見えない。
『あのねー、私の世界もう何度も作り直してるのよ。何度作っても、かならず人間同士が争って、大戦争で人類の大半が死んじゃってねー。そこから先に進まないのよ! だからね、ちょっと異物を投入してみようかなーって思って。そこでまぁ、タイミングよく現れたのがサッちゃんってわけよー!』
ノリが軽いなぁ……と、思いながら佐知子は立ったまま話を聞く。
『ってわけで! サッちゃんには、大戦争を回避してもらおうと思います!』
「は!?」
あまりにも重大な任務に、佐知子は大きな声で聞き返してしまう。
『これから起こる大戦争を回避してください』
今度は語尾に星マークをつけながら神様はいう。
「いや……そんなだいそれたことは……私にはちょっと……」
『大丈夫、大丈夫ー! サッちゃんならできるわよー! あたしも手助けたまにするから!』
たまになのかよ。と、佐知子は心の中でツッコミを入れた。
「異世界には行きたいですが……大戦争回避とかはちょっと無理があるかと……」
『んー、でも、大戦争回避しないとその腕輪もう外れないわよ?』
「は?」
それそれ。と、神様は佐知子の左腕にぴっちりとはまった腕輪を指さす。
「な! それ卑怯じゃありませんか!?」
思わず大声になった。
『えー? だってー』
神様は、えへ。と、笑っている。
「なっ……」
ずるい! 酷い! と、佐知子は怒りたい気持ちだった。
『まぁまぁ、大丈夫だから。ね? やってみない? ほら、あの子のことも気になるでしょ?』
「!」
そこで佐知子はハッとする。
「あの! ヨウくんどうなったんですか? 大丈夫ですか?」
『さぁ~? それは自分で見てこなくちゃ』
こいつ……と、佐知子は思った。
『さて、長話もしてられないわ。どうする? やる? やらない? 行くの? 行かないの?』
「うっ……」
佐知子は答えに困る。
大戦争回避など自分には到底、無理だと思う。でも、ヨウくんのことは気になる。異世界での生活はまだしてみたい。そして腕輪は大戦争を回避しないと外れない……。
答えは、ほぼ決まっていた。
「大戦争回避は……できるかはわかりませんが…………行きます!」
佐知子は、ぎゅっと目をつむり大きな声で、顔を上に向けながらそう答えた。
『できるかわからないって……まぁいいわ! じゃあ、行くわよー!』
神様がそういい、パチンと指を鳴らすと、腕輪がまた青くきらきらと光りだし、しゅるしゅると水が出てきた。
「え! もう!?」
佐知子はあわてる。
「え! え! 準備とか! に、荷物!」
あわてながらとっさにまた目についたリュックをつかむ。
『荷物なんて、いらない、いらなーい! じゃあ、いってらっしゃーい!』
神様がそういい、指をしゅっとひとふりすると、青い水が一気に佐知子を包んだ。
「きゃっ!」
また水に包まれる。
視界は青い水から目をつむり暗闇へ、息を止め、暗闇へ、深い深い、暗闇へ……。
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