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第一部 第四章
8 この世界、ヒラールアルド。
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「じゃあ、まずはこの世界のことを話そうか。確かこの辺に世界地図が……」
そう言って、セロは立ち上がりごそごそと物の山を漁る。そして出してきたのは、丸められた少し大きめの洋紙皮だった。セロと佐知子の間の机の上でそれを広げる。
「これがこの世界、あ~……アズラク語だと、ヒラールアルドだよ」
広げられた洋紙皮に描かれていたのは、三日月の形をした大地だった。
洋紙皮には、大きくC型の三日月の大地が描かれ、山や川、砂漠が絵で描かれている。おそらく赤道のような赤い線もあった。
後はまたもや佐知子には読めないが、先程の当番表のアラビア文字に似た言葉とは違う言葉で、沢山の地名や、海の名前などが書かれている。
「これが……この世界……ヒラールアルドって言うんですね」
「うん。で、この世界には……まぁ、大きく分けて四つの国がある。一つ目は、アズラク帝国」
セロが三日月の中心の辺り、海岸沿いを指差した。そこには少し大きめに文字が書いてある。
「二つ目は、エウペ王国」
今度はその反対側の海岸沿いを指さした。そこにも大きめの文字があった。
「三つ目は、ホン国」
今度は少し離れたその上の、弧を描いた部分。そこにも同じように大きめの文字。
「そして四つ目、フラーウム王国」
そして最後に指を下に大きくずらし、反対側の弧を描いている内側、海岸沿いの大きめの文字を指差した。
「ちなみに今、僕たちがいるアスワド村はここら辺だよ。一応、アズラク帝国の領土内。まぁ、辺境だから統治されてないけどね。抵抗してるし」
セロが指差したのは、アズラク帝国とホン国の中間の、砂漠の絵が描かれた場所だった。
(……こんなにしっかりした世界だったんだ……)
佐知子は世界地図を見て、呆然とする。
「ちなみに僕は、フラーウム王国出身。ハーシムさんはアズラク帝国。黄さんはホン国。カーシャさんとトトくんはエウペ王国だよ。まぁ、人種で大体分かるね。この村は特殊でごっちゃだけど、アズラク帝国が近いからそれでもアズラク人がやっぱり多いかな」
「あ……そうなんですか……」
(やっぱりこの世界も、国で人種が大体別れてるんだなぁ……)
佐知子は呆然としたまま、世界地図を食い入るように見た。
これが、今、自分がいる世界。
思ったよりもしっかりとした大きな世界だった。
しかも自分がいるのは、大きな四つの国ではない、小さな辺境の村だった。
先程まで世界の中心のように感じていたこの村が、自分の知っているこの村が、世界が、何だかちっぽけに感じる。
佐知子はそんなことを感じていた。
そう言って、セロは立ち上がりごそごそと物の山を漁る。そして出してきたのは、丸められた少し大きめの洋紙皮だった。セロと佐知子の間の机の上でそれを広げる。
「これがこの世界、あ~……アズラク語だと、ヒラールアルドだよ」
広げられた洋紙皮に描かれていたのは、三日月の形をした大地だった。
洋紙皮には、大きくC型の三日月の大地が描かれ、山や川、砂漠が絵で描かれている。おそらく赤道のような赤い線もあった。
後はまたもや佐知子には読めないが、先程の当番表のアラビア文字に似た言葉とは違う言葉で、沢山の地名や、海の名前などが書かれている。
「これが……この世界……ヒラールアルドって言うんですね」
「うん。で、この世界には……まぁ、大きく分けて四つの国がある。一つ目は、アズラク帝国」
セロが三日月の中心の辺り、海岸沿いを指差した。そこには少し大きめに文字が書いてある。
「二つ目は、エウペ王国」
今度はその反対側の海岸沿いを指さした。そこにも大きめの文字があった。
「三つ目は、ホン国」
今度は少し離れたその上の、弧を描いた部分。そこにも同じように大きめの文字。
「そして四つ目、フラーウム王国」
そして最後に指を下に大きくずらし、反対側の弧を描いている内側、海岸沿いの大きめの文字を指差した。
「ちなみに今、僕たちがいるアスワド村はここら辺だよ。一応、アズラク帝国の領土内。まぁ、辺境だから統治されてないけどね。抵抗してるし」
セロが指差したのは、アズラク帝国とホン国の中間の、砂漠の絵が描かれた場所だった。
(……こんなにしっかりした世界だったんだ……)
佐知子は世界地図を見て、呆然とする。
「ちなみに僕は、フラーウム王国出身。ハーシムさんはアズラク帝国。黄さんはホン国。カーシャさんとトトくんはエウペ王国だよ。まぁ、人種で大体分かるね。この村は特殊でごっちゃだけど、アズラク帝国が近いからそれでもアズラク人がやっぱり多いかな」
「あ……そうなんですか……」
(やっぱりこの世界も、国で人種が大体別れてるんだなぁ……)
佐知子は呆然としたまま、世界地図を食い入るように見た。
これが、今、自分がいる世界。
思ったよりもしっかりとした大きな世界だった。
しかも自分がいるのは、大きな四つの国ではない、小さな辺境の村だった。
先程まで世界の中心のように感じていたこの村が、自分の知っているこの村が、世界が、何だかちっぽけに感じる。
佐知子はそんなことを感じていた。
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