神様の外交官

rita

文字の大きさ
上 下
56 / 191
第一部 第四章

8 この世界、ヒラールアルド。

しおりを挟む
「じゃあ、まずはこの世界のことを話そうか。確かこの辺に世界地図が……」

 そう言って、セロは立ち上がりごそごそと物の山を漁る。そして出してきたのは、丸められた少し大きめの洋紙皮だった。セロと佐知子の間の机の上でそれを広げる。

「これがこの世界、あ~……アズラク語だと、ヒラールアルドだよ」

 広げられた洋紙皮に描かれていたのは、三日月の形をした大地だった。

 洋紙皮には、大きくC型の三日月の大地が描かれ、山や川、砂漠が絵で描かれている。おそらく赤道のような赤い線もあった。

 後はまたもや佐知子には読めないが、先程の当番表のアラビア文字に似た言葉とは違う言葉で、沢山の地名や、海の名前などが書かれている。

「これが……この世界……ヒラールアルドって言うんですね」
「うん。で、この世界には……まぁ、大きく分けて四つの国がある。一つ目は、アズラク帝国」

 セロが三日月の中心の辺り、海岸沿いを指差した。そこには少し大きめに文字が書いてある。

「二つ目は、エウペ王国」

 今度はその反対側の海岸沿いを指さした。そこにも大きめの文字があった。

「三つ目は、ホン国」

 今度は少し離れたその上の、弧を描いた部分。そこにも同じように大きめの文字。

「そして四つ目、フラーウム王国」

 そして最後に指を下に大きくずらし、反対側の弧を描いている内側、海岸沿いの大きめの文字を指差した。

「ちなみに今、僕たちがいるアスワド村はここら辺だよ。一応、アズラク帝国の領土内。まぁ、辺境だから統治されてないけどね。抵抗してるし」

 セロが指差したのは、アズラク帝国とホン国の中間の、砂漠の絵が描かれた場所だった。

(……こんなにしっかりした世界だったんだ……)

 佐知子は世界地図を見て、呆然とする。

「ちなみに僕は、フラーウム王国出身。ハーシムさんはアズラク帝国。黄さんはホン国。カーシャさんとトトくんはエウペ王国だよ。まぁ、人種で大体分かるね。この村は特殊でごっちゃだけど、アズラク帝国が近いからそれでもアズラク人がやっぱり多いかな」
「あ……そうなんですか……」
(やっぱりこの世界も、国で人種が大体別れてるんだなぁ……)

 佐知子は呆然としたまま、世界地図を食い入るように見た。


 これが、今、自分がいる世界。
 思ったよりもしっかりとした大きな世界だった。

 しかも自分がいるのは、大きな四つの国ではない、小さな辺境の村だった。

 先程まで世界の中心のように感じていたこの村が、自分の知っているこの村が、世界が、何だかちっぽけに感じる。


 佐知子はそんなことを感じていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

千年に一度の美少女になったらしい

みな
恋愛
この世界の美的感覚は狂っていた... ✳︎完結した後も番外編を作れたら作っていきたい... ✳︎視点がころころ変わります...

囚われの姫〜異世界でヴァンパイアたちに溺愛されて〜

月嶋ゆのん
恋愛
志木 茉莉愛(しき まりあ)は図書館で司書として働いている二十七歳。 ある日の帰り道、見慣れない建物を見かけた茉莉愛は導かれるように店内へ。 そこは雑貨屋のようで、様々な雑貨が所狭しと並んでいる中、見つけた小さいオルゴールが気になり、音色を聞こうとゼンマイを回し音を鳴らすと、突然強い揺れが起き、驚いた茉莉愛は手にしていたオルゴールを落としてしまう。 すると、辺り一面白い光に包まれ、眩しさで目を瞑った茉莉愛はそのまま意識を失った。 茉莉愛が目覚めると森の中で、酷く困惑する。 そこへ現れたのは三人の青年だった。 行くあてのない茉莉愛は彼らに促されるまま森を抜け彼らの住む屋敷へやって来て詳しい話を聞くと、ここは自分が住んでいた世界とは別世界だという事を知る事になる。 そして、暫く屋敷で世話になる事になった茉莉愛だが、そこでさらなる事実を知る事になる。 ――助けてくれた青年たちは皆、人間ではなくヴァンパイアだったのだ。

なんて最悪で最高な異世界!

sorato
恋愛
多々良 初音は、突然怪物だらけの異世界で目覚めた。 状況が理解出来ないまま逃げようとした初音は、とある男に保護されーー…。 ※テスト投稿用作品です。タグはネタバレ。

女性の少ない異世界に生まれ変わったら

Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。 目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!? なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!! ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!! そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!? これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。

【本編完結】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!

七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。 この作品は、小説家になろうにも掲載しています。

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?

陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。 この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。 執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め...... 剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。 本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。 小説家になろう様でも掲載中です。

聖女のおまけです。

三月べに
恋愛
【令嬢はまったりをご所望。とクロスオーバーします。】  異世界に行きたい願いが叶った。それは夢にも思わない形で。  花奈(はな)は聖女として召喚された美少女の巻き添えになった。念願の願いが叶った花奈は、おまけでも気にしなかった。巻き添えの代償で真っ白な容姿になってしまったせいで周囲には気の毒で儚げな女性と認識されたが、花奈は元気溌剌だった!

処理中です...