51 / 191
第一部 第四章
3 使用人小屋の人間関係。
しおりを挟む
使用人小屋に戻ると、ライラの姿はなかった。
朝番と呼ばれる、役人や軍人達の朝ご飯を作る使用人の仕事に行ってしまったようで、使用人小屋にいるのは、非番か昼番だけの人達で、皆、のんびりと過ごしていた。
佐知子は開け放たれた扉に、目隠しにされた布をめくり、ライラがいないことを知ると、心細く、入りづらい気持ちになりながらも、ぎゅっと体に力を入れ、中に入り、革のサンダルを脱ぎ、自分のスペースへと向かった。
「あ、あんた!」
すると、部屋の奥の方から声をかけられ思わず肩を揺らす。
「セロ長官に連れてかれた子だろ? ライラから伝言。タオル置いとくからって」
指差された布団の上を見ると、レンガの上に置いたままだったタオルが置かれていた。
「あ、ありがとうございます」
佐知子はお辞儀をして、お礼を言う。
「あんた、大丈夫だった~? あの変人にすごい剣幕で連れてかれて」
その言葉に、小屋に残っていた他の使用人の女性たちが笑う。
「あ……まぁ、なんとか……」
(変人……)
佐知子は心の中でつぶやく。やはり他の人達にもそう思われているのかと。
「あの人、あれがなきゃあねぇ。顔はいいし、頭もいいし、身分もいいし、お金持ちで最高なんだけど」
ほんと、ほんと。と、周りの女性たちが言う。
「あ、ていうか、あんたが連れてかれてしばらくした後、ヨウ長官が、あんたいるかー? って来たよ? セロ長官が連れてったって言ったら急いで行っちゃったけど……そういえば、昨日の夜も、あの二人があんたんとこ来たけど……何、何!? あんた長官二人手玉にとって何者!?」
小屋の中がざわざわとする。この手の話はどこの世界の女性でも好きなのだなぁ。と痛感した。
「あ、いや、違うんです。あの……えっと、私、ヨウ……長官の、昔の恩人で……それでこの村に来たから、ヨウ長官いろいろ面倒見てくれて……で、ちょっと珍しい国……から来たので、持ってる物が珍しくて、セロ……長官が、すごい興味持っちゃって……さっきも、持ち物の事とか色々聞かれて……」
しどろもどろに、佐知子は立ったまま小屋の女性たちに弁解する。
「ふーん……でも、ヨウ長官はそんな感じじゃないよねー!」
しかし、盛りあがる女性たち。
「セロ長官はないけど、ヨウ長官ならいいよねー。ちょっと無愛想で無口だけど、浮気しなさそうだし」
「えー、ならあたしトト副長官もありだと思う」
「えぇ!? あの人この間、草と話してたよ?」
「草!!」
女性たちが一気に大きく笑う。何だかよくわからないが、話の矛先が自分から変わってくれたようで、佐知子は、ほっとして、静かに座った。
女性たちは楽しそうに会話をしている。ここの人たちの人間関係は良好なようだ佐知子は少しほっとした。もっとギスギスしていたらやはり居心地が悪いし、生活しづらい。
佐知子は安堵しながら、皆が会話する光景を、ぼうっと見つめていたのだった。
朝番と呼ばれる、役人や軍人達の朝ご飯を作る使用人の仕事に行ってしまったようで、使用人小屋にいるのは、非番か昼番だけの人達で、皆、のんびりと過ごしていた。
佐知子は開け放たれた扉に、目隠しにされた布をめくり、ライラがいないことを知ると、心細く、入りづらい気持ちになりながらも、ぎゅっと体に力を入れ、中に入り、革のサンダルを脱ぎ、自分のスペースへと向かった。
「あ、あんた!」
すると、部屋の奥の方から声をかけられ思わず肩を揺らす。
「セロ長官に連れてかれた子だろ? ライラから伝言。タオル置いとくからって」
指差された布団の上を見ると、レンガの上に置いたままだったタオルが置かれていた。
「あ、ありがとうございます」
佐知子はお辞儀をして、お礼を言う。
「あんた、大丈夫だった~? あの変人にすごい剣幕で連れてかれて」
その言葉に、小屋に残っていた他の使用人の女性たちが笑う。
「あ……まぁ、なんとか……」
(変人……)
佐知子は心の中でつぶやく。やはり他の人達にもそう思われているのかと。
「あの人、あれがなきゃあねぇ。顔はいいし、頭もいいし、身分もいいし、お金持ちで最高なんだけど」
ほんと、ほんと。と、周りの女性たちが言う。
「あ、ていうか、あんたが連れてかれてしばらくした後、ヨウ長官が、あんたいるかー? って来たよ? セロ長官が連れてったって言ったら急いで行っちゃったけど……そういえば、昨日の夜も、あの二人があんたんとこ来たけど……何、何!? あんた長官二人手玉にとって何者!?」
小屋の中がざわざわとする。この手の話はどこの世界の女性でも好きなのだなぁ。と痛感した。
「あ、いや、違うんです。あの……えっと、私、ヨウ……長官の、昔の恩人で……それでこの村に来たから、ヨウ長官いろいろ面倒見てくれて……で、ちょっと珍しい国……から来たので、持ってる物が珍しくて、セロ……長官が、すごい興味持っちゃって……さっきも、持ち物の事とか色々聞かれて……」
しどろもどろに、佐知子は立ったまま小屋の女性たちに弁解する。
「ふーん……でも、ヨウ長官はそんな感じじゃないよねー!」
しかし、盛りあがる女性たち。
「セロ長官はないけど、ヨウ長官ならいいよねー。ちょっと無愛想で無口だけど、浮気しなさそうだし」
「えー、ならあたしトト副長官もありだと思う」
「えぇ!? あの人この間、草と話してたよ?」
「草!!」
女性たちが一気に大きく笑う。何だかよくわからないが、話の矛先が自分から変わってくれたようで、佐知子は、ほっとして、静かに座った。
女性たちは楽しそうに会話をしている。ここの人たちの人間関係は良好なようだ佐知子は少しほっとした。もっとギスギスしていたらやはり居心地が悪いし、生活しづらい。
佐知子は安堵しながら、皆が会話する光景を、ぼうっと見つめていたのだった。
0
お気に入りに追加
26
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
囚われの姫〜異世界でヴァンパイアたちに溺愛されて〜
月嶋ゆのん
恋愛
志木 茉莉愛(しき まりあ)は図書館で司書として働いている二十七歳。
ある日の帰り道、見慣れない建物を見かけた茉莉愛は導かれるように店内へ。
そこは雑貨屋のようで、様々な雑貨が所狭しと並んでいる中、見つけた小さいオルゴールが気になり、音色を聞こうとゼンマイを回し音を鳴らすと、突然強い揺れが起き、驚いた茉莉愛は手にしていたオルゴールを落としてしまう。
すると、辺り一面白い光に包まれ、眩しさで目を瞑った茉莉愛はそのまま意識を失った。
茉莉愛が目覚めると森の中で、酷く困惑する。
そこへ現れたのは三人の青年だった。
行くあてのない茉莉愛は彼らに促されるまま森を抜け彼らの住む屋敷へやって来て詳しい話を聞くと、ここは自分が住んでいた世界とは別世界だという事を知る事になる。
そして、暫く屋敷で世話になる事になった茉莉愛だが、そこでさらなる事実を知る事になる。
――助けてくれた青年たちは皆、人間ではなくヴァンパイアだったのだ。
なんて最悪で最高な異世界!
sorato
恋愛
多々良 初音は、突然怪物だらけの異世界で目覚めた。
状況が理解出来ないまま逃げようとした初音は、とある男に保護されーー…。
※テスト投稿用作品です。タグはネタバレ。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
女性の少ない異世界に生まれ変わったら
Azuki
恋愛
高校に登校している途中、道路に飛び出した子供を助ける形でトラックに轢かれてそのまま意識を失った私。
目を覚ますと、私はベッドに寝ていて、目の前にも周りにもイケメン、イケメン、イケメンだらけーーー!?
なんと私は幼女に生まれ変わっており、しかもお嬢様だった!!
ーーやった〜!勝ち組人生来た〜〜〜!!!
そう、心の中で思いっきり歓喜していた私だけど、この世界はとんでもない世界で・・・!?
これは、女性が圧倒的に少ない異世界に転生した私が、家族や周りから溺愛されながら様々な問題を解決して、更に溺愛されていく物語。
【本編完結】五人のイケメン薔薇騎士団団長に溺愛されて200年の眠りから覚めた聖女王女は困惑するばかりです!
七海美桜
恋愛
フーゲンベルク大陸で、長く大陸の大半を治めていたバッハシュタイン王国で、最後の古龍への生贄となった第三王女のヴェンデルガルト。しかしそれ以降古龍が亡くなり王国は滅びバルシュミーデ皇国の治世になり二百年後。封印されていたヴェンデルガルトが目覚めると、魔法は滅びた世で「治癒魔法」を使えるのは彼女だけ。亡き王国の王女という事で城に客人として滞在する事になるのだが、治癒魔法を使える上「金髪」である事から「黄金の魔女」と恐れられてしまう。しかしそんな中。五人の美青年騎士団長たちに溺愛されて、愛され過ぎて困惑する毎日。彼女を生涯の伴侶として愛する古龍・コンスタンティンは生まれ変わり彼女と出逢う事が出来るのか。龍と薔薇に愛されたヴェンデルガルトは、誰と結ばれるのか。
この作品は、小説家になろうにも掲載しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?
陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。
この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。
執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め......
剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。
本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。
小説家になろう様でも掲載中です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
聖女のおまけです。
三月べに
恋愛
【令嬢はまったりをご所望。とクロスオーバーします。】
異世界に行きたい願いが叶った。それは夢にも思わない形で。
花奈(はな)は聖女として召喚された美少女の巻き添えになった。念願の願いが叶った花奈は、おまけでも気にしなかった。巻き添えの代償で真っ白な容姿になってしまったせいで周囲には気の毒で儚げな女性と認識されたが、花奈は元気溌剌だった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる