神様の外交官

第一部 第二章

１－１ 再会。

　うっすらと目を開くと、そこはまたもや暗闇だった。

「ここは……」

　佐知子は上半身を起こす。そしてハッとした。

（そうだ！　神様にまた異世界に飛ばされたんだった！）

　あわてて周りを見る。
　目がなれてくると、外からの仄かな光もあり、辺りは薄暗いが見えた。佐知子には見覚えがあった。

（ここ……）

　綺麗にはなってはいたが、そこはさっき飛ばされた、神様を奉っていると思われる建物だった。
　同じ場所、一番奥の掛け軸のような物の前に、同じように佐知子は横になっていたようだ。

「…………」

　だが、掛け軸のような物は破れておらず、きれいな状態で、建物のレンガもきれいに補修されており、光りは入ってこない。供え物がされていた祭壇らしきものも、きれいに作り替えられ装飾がほどこされていた。供え物の果物も新鮮だ。出入り口の布も破れてはいない。

　一体、どうしたのだろう……佐知子は疑問に思いながらもとりあえず、ここを出ることにした。すきま風が入らない分、さきほどより暑い気がした。
　近くにあったリュックをつかみ、前にかけると、四つん這いになりながら出入口へと向かい這っていく。そして、黒い布をよけ、顔を外へ出すと、まぶしさに顔をゆがめた。

　外には、さきほどと同じ光景が広がっていた。
　見慣れない青い青い、雲ひとつない高い空。強烈な太陽、乾いた黄土色の大地。そして、数メートルはなれた崖のきわに、一人の男が立っていた。

（誰だろう……）

　さっきの集団の人かな？　と、佐知子が思っていると、パッとその男はふりむいた。

（あ……見つかっちゃった）
「……こ、こんにちは」

　佐知子はとりあえず、四つん這いのまま会釈してあいさつをする。
　その、黒髪に、褐色の肌、そして深い緑色の瞳をした、白いゆったりとしたシャツとズボンに、茶色い革のサンダルを履いて、腰に巻いた黒い布に剣をさしているまだ若い男は、佐知子を見ると、ゆっくりと、しかし大きくその瞳を見開いた。