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第13話:宇宙の果て
Eパート(2)
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トーゴー大佐を倒し、通路を進んだアルテローゼは、レッドノーム号の動力源である融合炉に辿り着いていた。全長二キロの宇宙戦艦を駆動させる融合炉は直径三十メートルほどの巨大な球体であった。
『これが融合炉ですか。思ったより大きいですわ。この三発のミサイルで破壊できるのでしょうか?』
巨大な動力炉を前にして、レイチェルは不安そうにアルテローゼが運んできた三発のミサイルを見る。
『完全に破壊する必要はない。停止させるだけで良いのだ。設置する箇所は、あのケーブルの辺りで良いはずだが…ん?』
レイフはミサイルの設置場所をモニターに表示するが、その途中でレッドノーム号の動きが変わったことに気付く。
『レイフ、どうしたのですか? 早く設置してしまいましょう』
『レイチェル、不味いぞ。レッドノーム号の速度が上がったのだ。このままでは火星をスイングバイして木星方面に向かう軌道に乗ってしまうぞ』
『それはどういうことなのですか?』
『今動力炉を破壊すると、レッドノーム号は火星に落下するかもしれない。しかし放っておけば、木星方面に向かうことになる。もしかしてこの船の連中は、火星への攻撃を諦めたのか?』
レイフはモニターに火星とレッドノーム号の軌道を表示する。表示された軌道は確かに火星をスイングバイする軌道である。
『もしかしてトーゴー大佐が亡くなられたので、攻撃を諦めたのではないでしょうか。確か二人しか乗船していないと言うことでしたし、大佐亡き今は、攻撃ができなくなった可能性が…ちょっと待って下さい』
レイチェルは火星とレッドノーム号の軌道をじっと見ると、あることに気付いた。
『レッドノーム号がこのまま火星をスイングバイするつもりに見えますが、この軌道では失敗しますわ』
『どういうことだ? 儂には普通に大丈夫に見えるのだが?』
『この最接近時の軌道が低すぎますわ。レッドノーム号は大気圏突入ができない仕様ですわ。このままでは大気圏に突入して…地表に落下しますわ。どうしてこのような軌道をとるのでしょう?』
『…なるほど、確かにこの軌道では大気層の厚さを考慮していないため急激に減速して地表に落下する。そしてその落下地点は…ヘリオスか』
『AIがこのような軌道を許す理由がありませんわ』
レイチェルはレッドノーム号が地表に落下する軌道を取ったことを不思議に思った。正常に船のAIが動作していれば、地上に落下するような軌道を許すはずはないのだ。
『それは儂にも分からん。だがこのままでは確実にこの船は地表に落下し、レッドノーム号が質量弾となってヘリオスに落下するぞ!』
『絶対にそんな事させませんわ』
レイチェルは決意に目を輝かせるが
『(だがどうやってこの船の軌道を変えるのだ? 儂には良い手が思い浮かばないぞ)くそっ、ディビットがいれば相談できるのだが…』
世界最高のゴーレムマスターであっても、レイフは宇宙船の軌道計算については素人同然なのだ。レイフにはレッドノーム号の軌道を修正する手を思いつかなかった。
《ピーピー》
レイフがディビットの名前を呼んだとき、アルテローゼにステーションから通信が入る。もちろん通信の相手は…
『レイフの旦那、俺を呼んだか?』
『…その声はディビットさん?』
『ディビットなのか?』
通信モニターにブロックノイズ混じりながらディビッドの姿が映し出される。
『金髪ドリル~』
『レイチェルさ~ん』
ディビットの後ろにアイラとケイイチの姿も見えていた。
『三人とも無事なようですわ』
『うむ。任務は成功してくれたようだな』
レイチェルは三人の無事な姿を見てほっとした表情をする。レイフも三人が全員無事で怪我もない事が分かり、少し嬉しかった。
『ああ、こちらの方は何とかなった。だが、レッドノーム号の方は不味い状況だな』
『トーゴー大佐を倒したのだが、このままではレッドノーム号は大気圏に突入してヘリオスに落ちてしまうのだ』
『マジかよ』
『やべーじゃん』
レッドノーム号がヘリオスに落下してしまうと聞いて、ケイイチとアイラの顔が青ざめる。
『それに関しては、どうすれば良いか俺も考えている。取りあえずアルテローゼの状況とレッドノーム号の状況を分かる限りで良いから送ってくれ』
『了解した』
ディビットの要求に応じて、レイフはアルテローゼの現状データとレッドノーム号の状況を送信する。
『…打てる手は、これしかないのか』
しばらくの間データを見ていたディビットは渋い顔で呟いた。
『何か手があるのですか?』
『ディビット、聞かせてくれ』
『俺としてはこんな事をレイチェルさんにやらせたくは無いのだが…。だが、それしか方法はない。いいか良く聞いてくれ…』
ディビットはレイチェルとレイフに作戦を話し始めた。
『これが融合炉ですか。思ったより大きいですわ。この三発のミサイルで破壊できるのでしょうか?』
巨大な動力炉を前にして、レイチェルは不安そうにアルテローゼが運んできた三発のミサイルを見る。
『完全に破壊する必要はない。停止させるだけで良いのだ。設置する箇所は、あのケーブルの辺りで良いはずだが…ん?』
レイフはミサイルの設置場所をモニターに表示するが、その途中でレッドノーム号の動きが変わったことに気付く。
『レイフ、どうしたのですか? 早く設置してしまいましょう』
『レイチェル、不味いぞ。レッドノーム号の速度が上がったのだ。このままでは火星をスイングバイして木星方面に向かう軌道に乗ってしまうぞ』
『それはどういうことなのですか?』
『今動力炉を破壊すると、レッドノーム号は火星に落下するかもしれない。しかし放っておけば、木星方面に向かうことになる。もしかしてこの船の連中は、火星への攻撃を諦めたのか?』
レイフはモニターに火星とレッドノーム号の軌道を表示する。表示された軌道は確かに火星をスイングバイする軌道である。
『もしかしてトーゴー大佐が亡くなられたので、攻撃を諦めたのではないでしょうか。確か二人しか乗船していないと言うことでしたし、大佐亡き今は、攻撃ができなくなった可能性が…ちょっと待って下さい』
レイチェルは火星とレッドノーム号の軌道をじっと見ると、あることに気付いた。
『レッドノーム号がこのまま火星をスイングバイするつもりに見えますが、この軌道では失敗しますわ』
『どういうことだ? 儂には普通に大丈夫に見えるのだが?』
『この最接近時の軌道が低すぎますわ。レッドノーム号は大気圏突入ができない仕様ですわ。このままでは大気圏に突入して…地表に落下しますわ。どうしてこのような軌道をとるのでしょう?』
『…なるほど、確かにこの軌道では大気層の厚さを考慮していないため急激に減速して地表に落下する。そしてその落下地点は…ヘリオスか』
『AIがこのような軌道を許す理由がありませんわ』
レイチェルはレッドノーム号が地表に落下する軌道を取ったことを不思議に思った。正常に船のAIが動作していれば、地上に落下するような軌道を許すはずはないのだ。
『それは儂にも分からん。だがこのままでは確実にこの船は地表に落下し、レッドノーム号が質量弾となってヘリオスに落下するぞ!』
『絶対にそんな事させませんわ』
レイチェルは決意に目を輝かせるが
『(だがどうやってこの船の軌道を変えるのだ? 儂には良い手が思い浮かばないぞ)くそっ、ディビットがいれば相談できるのだが…』
世界最高のゴーレムマスターであっても、レイフは宇宙船の軌道計算については素人同然なのだ。レイフにはレッドノーム号の軌道を修正する手を思いつかなかった。
《ピーピー》
レイフがディビットの名前を呼んだとき、アルテローゼにステーションから通信が入る。もちろん通信の相手は…
『レイフの旦那、俺を呼んだか?』
『…その声はディビットさん?』
『ディビットなのか?』
通信モニターにブロックノイズ混じりながらディビッドの姿が映し出される。
『金髪ドリル~』
『レイチェルさ~ん』
ディビットの後ろにアイラとケイイチの姿も見えていた。
『三人とも無事なようですわ』
『うむ。任務は成功してくれたようだな』
レイチェルは三人の無事な姿を見てほっとした表情をする。レイフも三人が全員無事で怪我もない事が分かり、少し嬉しかった。
『ああ、こちらの方は何とかなった。だが、レッドノーム号の方は不味い状況だな』
『トーゴー大佐を倒したのだが、このままではレッドノーム号は大気圏に突入してヘリオスに落ちてしまうのだ』
『マジかよ』
『やべーじゃん』
レッドノーム号がヘリオスに落下してしまうと聞いて、ケイイチとアイラの顔が青ざめる。
『それに関しては、どうすれば良いか俺も考えている。取りあえずアルテローゼの状況とレッドノーム号の状況を分かる限りで良いから送ってくれ』
『了解した』
ディビットの要求に応じて、レイフはアルテローゼの現状データとレッドノーム号の状況を送信する。
『…打てる手は、これしかないのか』
しばらくの間データを見ていたディビットは渋い顔で呟いた。
『何か手があるのですか?』
『ディビット、聞かせてくれ』
『俺としてはこんな事をレイチェルさんにやらせたくは無いのだが…。だが、それしか方法はない。いいか良く聞いてくれ…』
ディビットはレイチェルとレイフに作戦を話し始めた。
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