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第13話:宇宙の果て
Dパート(8)
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FAHM-002のアームの捕縛から逃れたアルテローゼは、体操選手のような側転で距離を取った。
『馬鹿な!』
トーゴー大佐は慌てて背後のスラスターを点火して追いかけるが、直線運動しかできないFAHM-002に変化自在に動くアルテローゼを捕まえられるわけがなかった。
『レイチェル、背面のスラスターを狙うんだ』
『了解ですわ!』
ここに来てまたパイロットとしての能力を開花させたレイチェルに対して、レイフができるのは操縦のサポートだけである。FAHM-002の背後のスラスターが後付けされた物であり装甲が薄いと見て取ったレイフはレイチェルに狙いを教える。レイフによって狙い撃つべき箇所がモニターに表示されると、レイチェルは狙い違わず打ち抜いた。
レーザーに打ち抜かれたスラスターは炎をまき散らし爆発する。さすがにそれだけで行動不能になるほどFAHM-002は柔ではなかったが、爆発によって四本のアームのうち二本が壊れてしまった。残った二本のアームの一本も先ほどアルテローゼによって破壊されており、残ったのはアークプラズマ切断機が付いたアームだけであった。
『やらせはせん、やらせはせんぞ!』
爆発により前に倒れそうになったFAHM-002だが、何とか機体を制御して持ちこたえた。
そして、FAHM-002の無限軌道が激しく回転し床と接触して火花を散らすと、百八十度方向転換してアルテローゼに向かって突進してきた。
『あの程度のスピードではアルテローゼが捕まることはない。レイチェル、このまま一気に撃破してしまうぞ』
レイフはそう進言するが、
『もう勝負は決まりましたわ。諦めて降伏してください』
レイチェルはトーゴー大佐に降伏を勧告するのだった。
『(ここで降伏勧告とは…レイチェルは優しすぎる)』
レイフはそう感じるが、それは敵であるトーゴー大佐も同じように感じていた。
『あまい、あますぎるぞ! 我らと赤の星の民との戦いにおいて降伏などあり得ないのだ!』
トーゴー大佐はそう叫ぶとアルテローゼに突進してくる。しかし無限軌道で出せる速度はスラスターに比べて圧倒的に遅かった。トーゴー大佐のそれは無駄な足掻きであった。
『赤の星の民? 大佐は何を言っているのでしょう。まるで木星方面軍は火星に対して思うところがあるみたいな言い方ですわ。木星方面軍に何がおきているのでしょう?』
FAHM-002の突進を躱しながら、レイチェルは大佐の言葉に引っかかっていた。
『(赤の星とは何か聞いたことがあるような…)チッ、いかん。このままではレッドノーム号が軌道に戻ってしまう。レイチェル、速くFAHM-002を倒して、レッドノーム号を止めるんだ』
レイフもトーゴー大佐の言葉に引っかかりを感じていたが、それもレッドノーム号の進路変更と加速を感じ取るまでだった。レッドノーム号はその進路を火星軌道に向けて進み始めていたのだ。
『まさか艦長自ら時間かせぎをしていたのですか?』
レイチェルはトーゴー大佐の攻撃が時間稼ぎだとわかり、アルテローゼの攻撃を再開する。
『気付かれたか。しかし、FAHM-002を倒さぬ限り先には進むことはできないぞ』
FAHM-002は格納庫へと続く隔壁の前に陣取りアルテローゼを待ち受けた。
『一体何が大佐にそこまでさせるのですか!』
レイチェルはFAHM-002を攻撃するが、レーザー機銃では致命傷を与えられないのは分かっていた。そしてレイチェルはまだトーゴー大佐の乗るコクピットを狙うことができずにいた。
『(このままでは時間切れだ。だが、レイチェルではトーゴー大佐を殺せない。手はあるが、儂にそれができるのか? いや悩む時間は無い!)』
レイフはゴーレムマスターの魔法を発動させた。アルテローゼの周りに魔法陣が浮かぶと、それはまるで魔法の発動が拒否されるように激しく明滅した。
『レイフ、何をしたのですか?』
『だ、大丈夫だ。これから起きることは儂がやることであって、レイチェルには責任の無いことなのだ…』
『何をいっているのですか? アルテローゼの操縦ができない?』
レイチェルは必死にスティックを操作するが、アルテローゼの制御はレイフに切り替わっていた。そしてレーザー機銃の照準はFAHM-002のコクピットに向けられた。
『レイフ、止めて~!』
AIの独自判断で攻撃はできないという原則をレイフは破ろうとした。それを成すためにレイフは自分自身にゴーレムマスターの魔法をかけたのだった。ゴーレムマスターの魔法でパイロットの許可を得ずに攻撃する。しかも人の命を奪うという攻撃は、AIとして許されざる行為であった。AIの根幹とも言えるプログラムがゴーレムマスターの魔法に逆らう。それはレイフにとって灼熱の炎で焼かれるような苦しみを与えていた。
『儂は、世界最高のゴーレムマスターだ。この程度でくじけるものか!』
体が焼けるなか、レイフはレーザー機銃のトリガーを引くのだった。
『馬鹿な!』
トーゴー大佐は慌てて背後のスラスターを点火して追いかけるが、直線運動しかできないFAHM-002に変化自在に動くアルテローゼを捕まえられるわけがなかった。
『レイチェル、背面のスラスターを狙うんだ』
『了解ですわ!』
ここに来てまたパイロットとしての能力を開花させたレイチェルに対して、レイフができるのは操縦のサポートだけである。FAHM-002の背後のスラスターが後付けされた物であり装甲が薄いと見て取ったレイフはレイチェルに狙いを教える。レイフによって狙い撃つべき箇所がモニターに表示されると、レイチェルは狙い違わず打ち抜いた。
レーザーに打ち抜かれたスラスターは炎をまき散らし爆発する。さすがにそれだけで行動不能になるほどFAHM-002は柔ではなかったが、爆発によって四本のアームのうち二本が壊れてしまった。残った二本のアームの一本も先ほどアルテローゼによって破壊されており、残ったのはアークプラズマ切断機が付いたアームだけであった。
『やらせはせん、やらせはせんぞ!』
爆発により前に倒れそうになったFAHM-002だが、何とか機体を制御して持ちこたえた。
そして、FAHM-002の無限軌道が激しく回転し床と接触して火花を散らすと、百八十度方向転換してアルテローゼに向かって突進してきた。
『あの程度のスピードではアルテローゼが捕まることはない。レイチェル、このまま一気に撃破してしまうぞ』
レイフはそう進言するが、
『もう勝負は決まりましたわ。諦めて降伏してください』
レイチェルはトーゴー大佐に降伏を勧告するのだった。
『(ここで降伏勧告とは…レイチェルは優しすぎる)』
レイフはそう感じるが、それは敵であるトーゴー大佐も同じように感じていた。
『あまい、あますぎるぞ! 我らと赤の星の民との戦いにおいて降伏などあり得ないのだ!』
トーゴー大佐はそう叫ぶとアルテローゼに突進してくる。しかし無限軌道で出せる速度はスラスターに比べて圧倒的に遅かった。トーゴー大佐のそれは無駄な足掻きであった。
『赤の星の民? 大佐は何を言っているのでしょう。まるで木星方面軍は火星に対して思うところがあるみたいな言い方ですわ。木星方面軍に何がおきているのでしょう?』
FAHM-002の突進を躱しながら、レイチェルは大佐の言葉に引っかかっていた。
『(赤の星とは何か聞いたことがあるような…)チッ、いかん。このままではレッドノーム号が軌道に戻ってしまう。レイチェル、速くFAHM-002を倒して、レッドノーム号を止めるんだ』
レイフもトーゴー大佐の言葉に引っかかりを感じていたが、それもレッドノーム号の進路変更と加速を感じ取るまでだった。レッドノーム号はその進路を火星軌道に向けて進み始めていたのだ。
『まさか艦長自ら時間かせぎをしていたのですか?』
レイチェルはトーゴー大佐の攻撃が時間稼ぎだとわかり、アルテローゼの攻撃を再開する。
『気付かれたか。しかし、FAHM-002を倒さぬ限り先には進むことはできないぞ』
FAHM-002は格納庫へと続く隔壁の前に陣取りアルテローゼを待ち受けた。
『一体何が大佐にそこまでさせるのですか!』
レイチェルはFAHM-002を攻撃するが、レーザー機銃では致命傷を与えられないのは分かっていた。そしてレイチェルはまだトーゴー大佐の乗るコクピットを狙うことができずにいた。
『(このままでは時間切れだ。だが、レイチェルではトーゴー大佐を殺せない。手はあるが、儂にそれができるのか? いや悩む時間は無い!)』
レイフはゴーレムマスターの魔法を発動させた。アルテローゼの周りに魔法陣が浮かぶと、それはまるで魔法の発動が拒否されるように激しく明滅した。
『レイフ、何をしたのですか?』
『だ、大丈夫だ。これから起きることは儂がやることであって、レイチェルには責任の無いことなのだ…』
『何をいっているのですか? アルテローゼの操縦ができない?』
レイチェルは必死にスティックを操作するが、アルテローゼの制御はレイフに切り替わっていた。そしてレーザー機銃の照準はFAHM-002のコクピットに向けられた。
『レイフ、止めて~!』
AIの独自判断で攻撃はできないという原則をレイフは破ろうとした。それを成すためにレイフは自分自身にゴーレムマスターの魔法をかけたのだった。ゴーレムマスターの魔法でパイロットの許可を得ずに攻撃する。しかも人の命を奪うという攻撃は、AIとして許されざる行為であった。AIの根幹とも言えるプログラムがゴーレムマスターの魔法に逆らう。それはレイフにとって灼熱の炎で焼かれるような苦しみを与えていた。
『儂は、世界最高のゴーレムマスターだ。この程度でくじけるものか!』
体が焼けるなか、レイフはレーザー機銃のトリガーを引くのだった。
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