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第13話:宇宙の果て
Dパート(5)
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《クローズド・モードに入るまでのデータではそうなっています》
『この巨大な船をたった二人で動かしているのか。儂には信じられないないが、AIは支配下にある。この情報に嘘は無いな』
『信じられない話ですが、先ほど見たように船の修理ができていない事を考えると事実かも知れませんわ。…でもそれならそのお二人を何とかすればこの船は止まると言うことですわ』
乗組員が二人と聞いてレイチェルが目を輝かせ立ち上がるが、
『ガードロボットを何とかせねば駄目だな』
『そうですわね』
レイフの指摘に萎れる様にシートに座り直した。
『…ここから艦橋までアルテローゼで向かうことは可能?』
《船体の途中までは移動可能ですが、艦橋付近はアルテローゼの大きさの機体の進入は不可能です》
格納庫のAIは船体の修理も担当していたのか艦内の構造データも持っていた。レイフの質問にAIはレッドノーム号の船内図と経路を表示する。
『ふむ、アルテローゼで船内を移動していけるなら簡単だと思ったのだが…これでは無理だな。現在残っている武装で、この船を航行不能にする方法は有るのだろうか』
レイフはアルテローゼの武装をもう一度確かめる。衝突の際にミサイルは破棄したし、レールガンは壊れてしまった。左手のレーザー機銃は先ほど壊したし、残っているのは右手のレーザー機銃だけであった。
《パイクⅡに搭載するミサイルの在庫が三発ほど有りますが》
『それは助かるが、船内で使えば自殺行為だな。それに三発を船外から撃ち込んだとして、この船の装甲を破れるのか?』
《…不可能です》
パイクⅡが相手にするのは不法採掘者の宇宙船であり、幾ら装甲があってもレッドノーム号ほどの装甲は持っていない。搭載ミサイルは敵船を航行不能にする程度の威力であれば良いため、レッドノーム号を破壊するほどの威力は持っていなかった。船外に出て撃ち込んでも効果があるとは思えない。
『この経路はどうなっているのですか? アルテローゼが通れそうですが』
黙って船内図を睨んでいたレイチェルが、とある通路を指さした。それは艦橋とは別の方向に向かって伸びる物だった。
《アルテローゼで通行可能です》
『それなら、この先にあるのは?』
《当船の融合炉と、メインスラスターです》
融合炉やメインスラスターを整備や修理するためには大きな機器や資材を運ぶ必要がある。もちろん船外を使えば通路など必要はないが、デブリの多い空間や戦闘中での修理を考えると船内に通路を持っていた方が良い。そういった思想でレッドノーム号の融合炉には巨大な通路が繋がっていた。
『レイフ、狙うとしたらこれですわ』
レイチェルは指をパチリと鳴らして船内図を指さした。レイチェルが指さしたのは、もちろんレッドノーム号の融合炉であった。
『…確かにこれなら三発のミサイルで破壊可能だな』
レイチェルの案にレイフも頷いた。
『何とかなりそうですわね』
『後はアルテローゼの補給と修理と改造に後どれぐらい時間が必要かだが…』
《スラスターの燃料補給は完了しました。修理と改造にはあと一時間必要です》
『一時間ですか。この船が火星の軌道に戻るギリギリのタイミングですわね』
『魔法が使えれば、十分もかからないのに』
レイフは悔しそうに言うが、十八メートルも有る機体の修理と改造を一時間で行えるのは破格速さである。レッドノーム号の設備とAIは地味に優秀であった。
◇
ビービービー
アルテローゼの修理と改造を待っていた二人だったか、四十分ほど経ったところで警告音鳴り響いた。
『何事だ?』
《警告! 格納庫の隔壁が攻撃を受けています》
レイフの問いかけに、AIが格納庫の通路を塞ぐ隔壁を攻撃するガードロボットを映し出した。レッドノーム号のガードロボットは宇宙ステーションのそれと異なり、敵船に乗り込んで白兵戦も行うためレーザー機銃を装備していた。ガードロボットのレーザー機銃には隔壁を一撃で打ち抜くだけの出力はないが、数十機のロボットが協力して隔壁を狙い撃つことで隔壁はみるみる切り裂かれていく。
『このまま見過ごされるとは思ってなかったが、ようやくお出ましか。レイチェル、起きてくれ』
『…レイフ、どうしたのですか?』
『敵がやって来た。準備してくれ』
少しでも疲れを取るためにと眠らせていたレイチェルを起こすと、アルテローゼは戦闘態勢に入った。
『アルテローゼは動けるのですか?』
『改造はほぼ終わっている。一部装甲の取り付けがまだだが…』
《現状でも動作は可能です。しかし、脚部スラスターの燃料は二十四%しか補給できていません》
『という事だ。まあガードロボットだけなら何とかなるだろうが…』
『アレは何でしょう? ガードロボットではありませんわ』
レイチェルが、モニターを凝視する。そこには格納庫の隔壁を攻撃するガードロボットの後ろからアルテローゼに匹敵する大きさの、巨大なメカがやって来るのが映し出されていた。
『この巨大な船をたった二人で動かしているのか。儂には信じられないないが、AIは支配下にある。この情報に嘘は無いな』
『信じられない話ですが、先ほど見たように船の修理ができていない事を考えると事実かも知れませんわ。…でもそれならそのお二人を何とかすればこの船は止まると言うことですわ』
乗組員が二人と聞いてレイチェルが目を輝かせ立ち上がるが、
『ガードロボットを何とかせねば駄目だな』
『そうですわね』
レイフの指摘に萎れる様にシートに座り直した。
『…ここから艦橋までアルテローゼで向かうことは可能?』
《船体の途中までは移動可能ですが、艦橋付近はアルテローゼの大きさの機体の進入は不可能です》
格納庫のAIは船体の修理も担当していたのか艦内の構造データも持っていた。レイフの質問にAIはレッドノーム号の船内図と経路を表示する。
『ふむ、アルテローゼで船内を移動していけるなら簡単だと思ったのだが…これでは無理だな。現在残っている武装で、この船を航行不能にする方法は有るのだろうか』
レイフはアルテローゼの武装をもう一度確かめる。衝突の際にミサイルは破棄したし、レールガンは壊れてしまった。左手のレーザー機銃は先ほど壊したし、残っているのは右手のレーザー機銃だけであった。
《パイクⅡに搭載するミサイルの在庫が三発ほど有りますが》
『それは助かるが、船内で使えば自殺行為だな。それに三発を船外から撃ち込んだとして、この船の装甲を破れるのか?』
《…不可能です》
パイクⅡが相手にするのは不法採掘者の宇宙船であり、幾ら装甲があってもレッドノーム号ほどの装甲は持っていない。搭載ミサイルは敵船を航行不能にする程度の威力であれば良いため、レッドノーム号を破壊するほどの威力は持っていなかった。船外に出て撃ち込んでも効果があるとは思えない。
『この経路はどうなっているのですか? アルテローゼが通れそうですが』
黙って船内図を睨んでいたレイチェルが、とある通路を指さした。それは艦橋とは別の方向に向かって伸びる物だった。
《アルテローゼで通行可能です》
『それなら、この先にあるのは?』
《当船の融合炉と、メインスラスターです》
融合炉やメインスラスターを整備や修理するためには大きな機器や資材を運ぶ必要がある。もちろん船外を使えば通路など必要はないが、デブリの多い空間や戦闘中での修理を考えると船内に通路を持っていた方が良い。そういった思想でレッドノーム号の融合炉には巨大な通路が繋がっていた。
『レイフ、狙うとしたらこれですわ』
レイチェルは指をパチリと鳴らして船内図を指さした。レイチェルが指さしたのは、もちろんレッドノーム号の融合炉であった。
『…確かにこれなら三発のミサイルで破壊可能だな』
レイチェルの案にレイフも頷いた。
『何とかなりそうですわね』
『後はアルテローゼの補給と修理と改造に後どれぐらい時間が必要かだが…』
《スラスターの燃料補給は完了しました。修理と改造にはあと一時間必要です》
『一時間ですか。この船が火星の軌道に戻るギリギリのタイミングですわね』
『魔法が使えれば、十分もかからないのに』
レイフは悔しそうに言うが、十八メートルも有る機体の修理と改造を一時間で行えるのは破格速さである。レッドノーム号の設備とAIは地味に優秀であった。
◇
ビービービー
アルテローゼの修理と改造を待っていた二人だったか、四十分ほど経ったところで警告音鳴り響いた。
『何事だ?』
《警告! 格納庫の隔壁が攻撃を受けています》
レイフの問いかけに、AIが格納庫の通路を塞ぐ隔壁を攻撃するガードロボットを映し出した。レッドノーム号のガードロボットは宇宙ステーションのそれと異なり、敵船に乗り込んで白兵戦も行うためレーザー機銃を装備していた。ガードロボットのレーザー機銃には隔壁を一撃で打ち抜くだけの出力はないが、数十機のロボットが協力して隔壁を狙い撃つことで隔壁はみるみる切り裂かれていく。
『このまま見過ごされるとは思ってなかったが、ようやくお出ましか。レイチェル、起きてくれ』
『…レイフ、どうしたのですか?』
『敵がやって来た。準備してくれ』
少しでも疲れを取るためにと眠らせていたレイチェルを起こすと、アルテローゼは戦闘態勢に入った。
『アルテローゼは動けるのですか?』
『改造はほぼ終わっている。一部装甲の取り付けがまだだが…』
《現状でも動作は可能です。しかし、脚部スラスターの燃料は二十四%しか補給できていません》
『という事だ。まあガードロボットだけなら何とかなるだろうが…』
『アレは何でしょう? ガードロボットではありませんわ』
レイチェルが、モニターを凝視する。そこには格納庫の隔壁を攻撃するガードロボットの後ろからアルテローゼに匹敵する大きさの、巨大なメカがやって来るのが映し出されていた。
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