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第13話:宇宙の果て
Dパート(3)
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『レイチェル、大丈夫か?』
『ええ、私の方は大丈夫ですわ。それよりアルテローゼの方は大丈夫なのですか?』
衝突時にフォーリングコントロールに残りの魔力の大半を費やすことで、レイチェルは衝突のショックを無傷で乗り切ることができた。しかし、アルテローゼの方は重傷も良いところであった。
ロケットエンジンは切り離したため残っていないし、背中のレールガンはどこに消えたのか見当たらなかった。衝突は脚部からぶつかるように方向を変えたので、脚部は腰の辺りまでレッドノーム号に埋まってるが、ほとんどセンサーからの応答が無い。腕とそこにあるレーザー機銃は辛うじて動くが、かなりガタがきている感じであった。
『腰から下をパージすれば腕を使って動けそうだな。スラスターの燃料はあるから、それを使えばレッドノーム号の艦橋まではいけそうだ』
『…そうですか。レイフには申し訳ないですが、もう少しがんばって…キャー』
レイチェルとレイフが機体の状況を確認している最中に、レッドノーム号が突然軌道を修正する。そのGに振られてレイチェルは悲鳴を上げた。シートベルトをしていた為、シートから振り落とされなかったが、Gに振り回されレイチェルは悲鳴を上げ続けていた。
『これは、アルテローゼを振り落とすつもりか?』
レッドノーム号はグルグルと船体を回転させてアルテローゼを振り落とそうとする。アルテローゼは何とか両手で船体にしがみつくが、レッドノーム号の動きは止まらなかった。
『(これでは外を移動して艦橋に向かうのは無理だな)…レイチェル、レッドノーム号の中に入るぞ。トリガーを頼む』
レイフは両手のレーザー機銃を使って外壁を切り裂き、船体内部に入ることを決意した。
『キャー…分かりまし…キャー…たわ』
レイチェルはGに振り回されて悲鳴を上げていたが、何とかトリガーを引くことに成功した。
レーザー機銃はレッドノーム号の船体に発射されるが、惑星間を航行する全長二キロの宇宙船の装甲は容易く切断することはできない。レイフは左手のレーザー機銃を意図的にオーバーロードさせて強力なレーザーを発射して、何とか装甲板を切り裂くことに成功した。しかし、レーザー機銃をオーバーロードさせた事で、左手の回路がずたずたに破壊されてしまい使い物にならなくなってしまった。
『中に入るぞ』
腰から下をパージして、アルテローゼはレッドノーム号の内部に潜り込んでいった。
◇
艦橋のモニターには、船内に入り込むアルテローゼの姿が映し出されていた。
「チッ、内部に潜り込まれたか。これ以上船体を回転させる意味はない。停止しろ」
トーゴー大佐は舌打ちすると、船体の回転運動を止めさせた。
「了解しやした。回転を止めやす。それで、これからどうしやすかね~。アレが潜り込んだ場所は格納でやす。ガードロボットを出して排除しやすか? ガードロボットっても、そんなに数はないですがね~」
禿頭の大男は、アルテローゼが潜り込んだ格納庫の様子をモニターに映し出した。
「ガードロボットより、アレを動かせないのか?」
モニターに映った格納庫の様子を見て、トーゴー大佐は大男に尋ねるが、
「アレとはモニターに映っているパイクⅡのことですかい? あんな物を船内で動かしたら、大変なことになりやすぜ」
大男は呆れたようにそう答えた。
二人がそんな会話をしている間にも、下半身の無いアルテローゼは辛うじて動く右腕を使って機体を引きずりパイクⅡの格納庫に近づいていった。
「彼奴は何をするつもりだ?」
「さて、あの格納庫に機体を入れるつもりでしょうかね~。…ああ、そういや格納庫は機体の修理と整備もできやしたね。まさか機体の修理を行う積もりかも?」
《連邦軍所属、アルテローゼが格納庫で修理を開始したようです》
「馬鹿、そんな物中止だ」
AIがアルテローゼが修理を開始したと告げたのを聞いて、トーゴー大佐が怒鳴るが、
《格納庫のサブAIが応答しません。格納庫のAI及び電源のシャットダウンを試みましたが失敗しました。侵入者により格納庫の制御が奪われたようです》
AIから格納庫が乗っ取られてしまったという返事が返ってきた。
「まさか、この一瞬で乗っ取られたと?」
「艦長、もしかしてあの機体に乗っているのはジュモーと同類じゃないっすか?」
トーゴー大佐と大男は顔を見合わせると、
「「ガードロボットを向かわせろ(やす)」」
とハモりながらAIに命令するのだった。
「あっしゃレッドノーム号の操縦がありやすから、艦長は格納庫に向かってくだせい。ガードロボットも乗っ取られる恐れがありやすから気を付けてくだせい」
「了解した。しかし艦長自ら戦いに赴かなければならないとは思わなかったぞ」
トーゴー大佐は愚痴りながらも、自分の武装を整えるために艦橋の士官専用の武装コンテナを開いた。
「もっと人がいれば良かったんですがね~。とにかく艦長はあっちの方を何とかしてくだせい。こっちはあっしが何とかしやす」
大男はそう言って、オペレーター席に着くとAIに次々と指示を出し始めた。
トーゴー大佐は武装コンテナから軍用拳銃を取り出しホルスターを身につけた。そして海軍の伝統として配置されていたカットラスを取り出し、鞘から引き抜いて鈍く輝る刀身を確かめた。
「まあ、何とかしてみるか」
トーゴー大佐は目にも留まらぬ速さでカットラスを二三度振り鞘に収めるのだった。
『ええ、私の方は大丈夫ですわ。それよりアルテローゼの方は大丈夫なのですか?』
衝突時にフォーリングコントロールに残りの魔力の大半を費やすことで、レイチェルは衝突のショックを無傷で乗り切ることができた。しかし、アルテローゼの方は重傷も良いところであった。
ロケットエンジンは切り離したため残っていないし、背中のレールガンはどこに消えたのか見当たらなかった。衝突は脚部からぶつかるように方向を変えたので、脚部は腰の辺りまでレッドノーム号に埋まってるが、ほとんどセンサーからの応答が無い。腕とそこにあるレーザー機銃は辛うじて動くが、かなりガタがきている感じであった。
『腰から下をパージすれば腕を使って動けそうだな。スラスターの燃料はあるから、それを使えばレッドノーム号の艦橋まではいけそうだ』
『…そうですか。レイフには申し訳ないですが、もう少しがんばって…キャー』
レイチェルとレイフが機体の状況を確認している最中に、レッドノーム号が突然軌道を修正する。そのGに振られてレイチェルは悲鳴を上げた。シートベルトをしていた為、シートから振り落とされなかったが、Gに振り回されレイチェルは悲鳴を上げ続けていた。
『これは、アルテローゼを振り落とすつもりか?』
レッドノーム号はグルグルと船体を回転させてアルテローゼを振り落とそうとする。アルテローゼは何とか両手で船体にしがみつくが、レッドノーム号の動きは止まらなかった。
『(これでは外を移動して艦橋に向かうのは無理だな)…レイチェル、レッドノーム号の中に入るぞ。トリガーを頼む』
レイフは両手のレーザー機銃を使って外壁を切り裂き、船体内部に入ることを決意した。
『キャー…分かりまし…キャー…たわ』
レイチェルはGに振り回されて悲鳴を上げていたが、何とかトリガーを引くことに成功した。
レーザー機銃はレッドノーム号の船体に発射されるが、惑星間を航行する全長二キロの宇宙船の装甲は容易く切断することはできない。レイフは左手のレーザー機銃を意図的にオーバーロードさせて強力なレーザーを発射して、何とか装甲板を切り裂くことに成功した。しかし、レーザー機銃をオーバーロードさせた事で、左手の回路がずたずたに破壊されてしまい使い物にならなくなってしまった。
『中に入るぞ』
腰から下をパージして、アルテローゼはレッドノーム号の内部に潜り込んでいった。
◇
艦橋のモニターには、船内に入り込むアルテローゼの姿が映し出されていた。
「チッ、内部に潜り込まれたか。これ以上船体を回転させる意味はない。停止しろ」
トーゴー大佐は舌打ちすると、船体の回転運動を止めさせた。
「了解しやした。回転を止めやす。それで、これからどうしやすかね~。アレが潜り込んだ場所は格納でやす。ガードロボットを出して排除しやすか? ガードロボットっても、そんなに数はないですがね~」
禿頭の大男は、アルテローゼが潜り込んだ格納庫の様子をモニターに映し出した。
「ガードロボットより、アレを動かせないのか?」
モニターに映った格納庫の様子を見て、トーゴー大佐は大男に尋ねるが、
「アレとはモニターに映っているパイクⅡのことですかい? あんな物を船内で動かしたら、大変なことになりやすぜ」
大男は呆れたようにそう答えた。
二人がそんな会話をしている間にも、下半身の無いアルテローゼは辛うじて動く右腕を使って機体を引きずりパイクⅡの格納庫に近づいていった。
「彼奴は何をするつもりだ?」
「さて、あの格納庫に機体を入れるつもりでしょうかね~。…ああ、そういや格納庫は機体の修理と整備もできやしたね。まさか機体の修理を行う積もりかも?」
《連邦軍所属、アルテローゼが格納庫で修理を開始したようです》
「馬鹿、そんな物中止だ」
AIがアルテローゼが修理を開始したと告げたのを聞いて、トーゴー大佐が怒鳴るが、
《格納庫のサブAIが応答しません。格納庫のAI及び電源のシャットダウンを試みましたが失敗しました。侵入者により格納庫の制御が奪われたようです》
AIから格納庫が乗っ取られてしまったという返事が返ってきた。
「まさか、この一瞬で乗っ取られたと?」
「艦長、もしかしてあの機体に乗っているのはジュモーと同類じゃないっすか?」
トーゴー大佐と大男は顔を見合わせると、
「「ガードロボットを向かわせろ(やす)」」
とハモりながらAIに命令するのだった。
「あっしゃレッドノーム号の操縦がありやすから、艦長は格納庫に向かってくだせい。ガードロボットも乗っ取られる恐れがありやすから気を付けてくだせい」
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トーゴー大佐は愚痴りながらも、自分の武装を整えるために艦橋の士官専用の武装コンテナを開いた。
「もっと人がいれば良かったんですがね~。とにかく艦長はあっちの方を何とかしてくだせい。こっちはあっしが何とかしやす」
大男はそう言って、オペレーター席に着くとAIに次々と指示を出し始めた。
トーゴー大佐は武装コンテナから軍用拳銃を取り出しホルスターを身につけた。そして海軍の伝統として配置されていたカットラスを取り出し、鞘から引き抜いて鈍く輝る刀身を確かめた。
「まあ、何とかしてみるか」
トーゴー大佐は目にも留まらぬ速さでカットラスを二三度振り鞘に収めるのだった。
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