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第13話:宇宙の果て
Bパート(6)
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ヘリオスに向けて《神の雷》を発射したレッドノーム号だったが、狙い通りアルテローゼが《神の雷》を追いかけて火星に落下していったのを確認していた。
「この角度なら、あの機動兵器が再び衛星軌道まで上がってくる事はできないな。それで、あの機動兵器から分離したスペースボートはステーションに辿り着いたか」
モニターには、《神の雷》とアルテローゼの軌道が表示され、トーゴー大佐はアルテローゼが再び軌道上に上がってこない事を見て取った。
「みたいですぜ。あいつから侵入者ありと通知が来ておりやす。取りあえずセキュリティを動かして排除を試みているようですが、上手くいってないみたいですぜ」
「ふむ、ステーションのAIでは勝手が違うか…。連邦軍本部と連絡を取られると厄介だ。さっさと侵入者を排除しろと伝えろ」
「艦長、ステーションは自閉症モードですから、こちらからの通信は届きませんぜ」
「チッ、面倒くさい事を」
「外部からハックされたら面倒だから、そうしろと言ったのは艦長ですぜ?」
「仕方あるまい。あいつはAIとか科学技術について理解できていないのだ。下手をすると普通にハッキングで除去されてしまうかもしれないからな。とにかくステーションに急いで向かうぞ」
「アイアイサー」
禿頭の大男が昔の船乗りのような返事を返して、AIにステーションに向かうように告げる。レッドノーム号はロケットエンジンを吹かすと、全力でステーションに進み始めた。
◇
一方《神の雷》を追いかけて大気圏に突入したアルテローゼは、このまま大気圏を突破して火星に落ちる軌道を突き進んでいた。
『アルテローゼが軌道上まで再び上昇できないと思ったのか、レッドノーム号が動き始めたな』
『では、さっさと《神の雷》の軌道を変えてしまいましょう』
『早くしないと、大気の摩擦で攻撃が届かなくなるからな』
アルテローゼは、燃料が残り少ないロケットエンジンを吹かすと落下スピードを上げる。自由落下している《神の雷》との距離が一気に縮まるが、アルテローゼの装甲の温度も急激に上昇した。このままでは後数分も持たずにアルテローゼは熱によって破壊されてしまう。
『トリガーを頼むぞ』
『了解ですわ』
レイチェルがトリガーを引きレールガンが発射される。弾丸は狙い通り《神の雷》に命中し、その軌道をヘリオスから海の方向に変えることに成功した。
『さて、ここからが問題なのだが、このまま軌道上まで上昇する燃料がロケットには無い』
『では、どうやって軌道に戻るのですか?』
『レビテーションの魔法を使えば軌道に戻れるが、そうすると魔力がほとんど無くなる』
『それでもやるしかないのでは?』
『いや、今思いついたのだが、このままロケットで加速していけば軌道を揚げられるのだ』
『ですが、それでは機体が持ちませんわ?』
『そこでレジストファイアの魔法を使えば、機体は何とか耐えられる。これであれば、魔力をある程度残して軌道上まで上がれるのだが…』
『それで良い気がしますが。レイフ、何か問題があるのですか?』
『機体は持っても、レイチェルが耐えられるか分かない。コクピットにはアイスの魔法をかけて気温を下げるが、それでも相当な暑さになると思う』
『…ですが、それがたった一つの冴えたやり方なんでしょう? 私はレイフを信じます』
『レイチェル、済まない』
レジストファイアの魔法を発動させて、アルテローゼは更に加速する。機体の温度はとっくに耐久限界を超えているが、魔法により機体は持ちこたえる。
一方、コクピットのレイチェルは灼熱地獄に耐えていた。レイフがアイスの魔法で冷やしているが、それも焼け石に水程度である。宇宙服と体もレジストファイアの魔法で火傷を負うことはないのだが、体が炎で焼かれるような感覚をレイチェルは味わっていた。
「この角度なら、あの機動兵器が再び衛星軌道まで上がってくる事はできないな。それで、あの機動兵器から分離したスペースボートはステーションに辿り着いたか」
モニターには、《神の雷》とアルテローゼの軌道が表示され、トーゴー大佐はアルテローゼが再び軌道上に上がってこない事を見て取った。
「みたいですぜ。あいつから侵入者ありと通知が来ておりやす。取りあえずセキュリティを動かして排除を試みているようですが、上手くいってないみたいですぜ」
「ふむ、ステーションのAIでは勝手が違うか…。連邦軍本部と連絡を取られると厄介だ。さっさと侵入者を排除しろと伝えろ」
「艦長、ステーションは自閉症モードですから、こちらからの通信は届きませんぜ」
「チッ、面倒くさい事を」
「外部からハックされたら面倒だから、そうしろと言ったのは艦長ですぜ?」
「仕方あるまい。あいつはAIとか科学技術について理解できていないのだ。下手をすると普通にハッキングで除去されてしまうかもしれないからな。とにかくステーションに急いで向かうぞ」
「アイアイサー」
禿頭の大男が昔の船乗りのような返事を返して、AIにステーションに向かうように告げる。レッドノーム号はロケットエンジンを吹かすと、全力でステーションに進み始めた。
◇
一方《神の雷》を追いかけて大気圏に突入したアルテローゼは、このまま大気圏を突破して火星に落ちる軌道を突き進んでいた。
『アルテローゼが軌道上まで再び上昇できないと思ったのか、レッドノーム号が動き始めたな』
『では、さっさと《神の雷》の軌道を変えてしまいましょう』
『早くしないと、大気の摩擦で攻撃が届かなくなるからな』
アルテローゼは、燃料が残り少ないロケットエンジンを吹かすと落下スピードを上げる。自由落下している《神の雷》との距離が一気に縮まるが、アルテローゼの装甲の温度も急激に上昇した。このままでは後数分も持たずにアルテローゼは熱によって破壊されてしまう。
『トリガーを頼むぞ』
『了解ですわ』
レイチェルがトリガーを引きレールガンが発射される。弾丸は狙い通り《神の雷》に命中し、その軌道をヘリオスから海の方向に変えることに成功した。
『さて、ここからが問題なのだが、このまま軌道上まで上昇する燃料がロケットには無い』
『では、どうやって軌道に戻るのですか?』
『レビテーションの魔法を使えば軌道に戻れるが、そうすると魔力がほとんど無くなる』
『それでもやるしかないのでは?』
『いや、今思いついたのだが、このままロケットで加速していけば軌道を揚げられるのだ』
『ですが、それでは機体が持ちませんわ?』
『そこでレジストファイアの魔法を使えば、機体は何とか耐えられる。これであれば、魔力をある程度残して軌道上まで上がれるのだが…』
『それで良い気がしますが。レイフ、何か問題があるのですか?』
『機体は持っても、レイチェルが耐えられるか分かない。コクピットにはアイスの魔法をかけて気温を下げるが、それでも相当な暑さになると思う』
『…ですが、それがたった一つの冴えたやり方なんでしょう? 私はレイフを信じます』
『レイチェル、済まない』
レジストファイアの魔法を発動させて、アルテローゼは更に加速する。機体の温度はとっくに耐久限界を超えているが、魔法により機体は持ちこたえる。
一方、コクピットのレイチェルは灼熱地獄に耐えていた。レイフがアイスの魔法で冷やしているが、それも焼け石に水程度である。宇宙服と体もレジストファイアの魔法で火傷を負うことはないのだが、体が炎で焼かれるような感覚をレイチェルは味わっていた。
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