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第13話:宇宙の果て
Bパート(1)
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オリンポスから上がってきたシャトルを体当たりで撃破したレッドノーム号だが、次なる標的としてアルテローゼがモニターに映し出されていた。
「火星方面軍が宇宙まで上がれる機動兵器を持っていたとは驚きだな」
「あっしも驚いてますぜ。ヘリオスにはシャトルがないと言う話だったので、ノーマークでした」
禿頭の大男は頭をペシッとはたいて船長に頭を下げた。
「まあ、私も気にとめていなかったからな。それで、あの機動兵器は我々の裏をかいてステーションに向かうつもりなのだろうが、阻止できるのか?」
「今の軌道では難しいですぜ。一旦高軌道に遷移して接近しないと駄目ですわ」
大男は、モニターにレッドノーム号がアルテローゼに近づくための軌道を表示する。
「高軌道に遷移、そして接近したらレーザーとミサイルで攻撃するか。いや先ほどのシャトルのようにあの機動兵器も魔法で防御していたら逃げられるな」
「では接近してから、体当たりでしょうか?」
トーゴー大佐はしばらく考え込んだ後、
「レッドノーム号より機動兵器の方が機動性が高い。シャトルのようにはいかんだろう。接近後、艦載機…スクイッドⅣを出して本艦と挟み撃ちでいこう」
モニターにスクイッドⅣとレッドノーム号の行動を入力した。
「なるほど。これならやっこさんも逃げられませんね。了解しやした。AI、このプラン通りに高軌道へ遷移して、あの機動兵器に接近だ」
『了解しました』
大男がレッドノーム号のAIに軌道変更を命じると、レッドノーム号はロケットエンジンを吹かして高軌道に移動し始めた。それによって無重力だった艦橋にGが発生し、艦長席の周りに浮かんでいた空の酒瓶が流れていった。
「スクイッドⅣの出撃可能数は?」
『現在出撃可能なスクイッドⅣは五機です』
トーゴー大佐の質問にAIが即座に回答を返す。
「本艦にはスクイッドⅣは二十機搭載しているはずだが? 何故出撃可能なのが五機なのだ?」
トーゴー大佐はAIの回答に驚いたのか怒ったのか、席から立ち上がった。
「木星の戦闘で十機が未帰還、残り十機は損害が酷くて共食い修理で動かせるのが五機ってことですぜ」
トーゴー大佐の問いかけに、AIではなく大男が答える。
「なるほど…。あの戦いから、補給も整備もしてなかったな」
トーゴー大佐は何かを思い出すかのように目を宙にさまよわせた。
「スクイッドⅣは五機全て出撃だ」
『了解しました』
トーゴー大佐はAIにそう命じると、艦長席に再び座り込んだ。
◇
レッドノーム号の軌道変更から三十分後、アルテローゼとレッドノーム号は最接近位置に近づいた。
『そろそろスペースボートの分離地点だ』
ディビットからアルテローゼのコクピットに通信が入る。
『了解した。アルテローゼは一旦慣性飛行に移り、レッドノーム号が艦載機を発進させたら対レーザーの煙幕を張る。スペースボートの分離はそのタイミングで行ってくれ』
『三人とも無事にステーションに辿り着いてください』
レイチェルはスペースボートに乗る三人にそう言うと、
『レイチェルさんがそこまで俺の心配をしてくれるとは…感激です』
『金髪ドリルの方が危険なんだろ。こっちよりそっちの方が心配だよ』
ケイイチとアイラはそんな返事を返してくるのだった。
『アイラ、レイチェルは儂が護るから安心しろ』
『じゃあ、こっちはあたいが護るよ』
『俺たちゃ幼女に護られるのかよ』
『まあ、ディビットより頼りになるのは確かだな』
アイラに護られると言われて、ディビットとケイイチはガックリと肩を落とした。
そんな会話を繰り広げている間にもレッドノーム号とアルテローゼは近づいていく。そしてレッドノーム号から五機のスクイッドⅣが分離すると同時に煙幕を射出した。
微細なガラス片を含んだ煙幕は、徐々に広がってアルテローゼの機体を覆い隠した。それに慌てたのかレッドノーム号からレーザー攻撃が始まるが、煙幕とプロテクション・フロム・ミサイルの魔法陣のおかげでアルテローゼに命中弾は無かった。
『それじゃここでお別れだな』
『レイチェルさ~ん』
『行ってくるよ~』
三人が叫ぶ中、スペースボートはアルテローゼから分離すると即座に減速して低軌道に遷移して、大気圏を使ったスキップを開始した。
アルテローゼから分離したスペースボードに気付いたレッドノーム号は、二機のスクイッドⅣに後を追わせたが、大気圏突入能力の無いスクイッドⅣはスキップ軌道に追いつけるわけがなかった。ケイイチの神業のような大気圏スキップ軌道をトレースしようとしたスクイッドⅣは、角度調整を失敗し大気圏に突入して燃え尽きてしまった。
スクイッドⅣでの迎撃が無理と悟ったレッドノーム号は、艦砲のレーザーを打ち始めたが、それを阻止したのはアルテローゼだった。
「火星方面軍が宇宙まで上がれる機動兵器を持っていたとは驚きだな」
「あっしも驚いてますぜ。ヘリオスにはシャトルがないと言う話だったので、ノーマークでした」
禿頭の大男は頭をペシッとはたいて船長に頭を下げた。
「まあ、私も気にとめていなかったからな。それで、あの機動兵器は我々の裏をかいてステーションに向かうつもりなのだろうが、阻止できるのか?」
「今の軌道では難しいですぜ。一旦高軌道に遷移して接近しないと駄目ですわ」
大男は、モニターにレッドノーム号がアルテローゼに近づくための軌道を表示する。
「高軌道に遷移、そして接近したらレーザーとミサイルで攻撃するか。いや先ほどのシャトルのようにあの機動兵器も魔法で防御していたら逃げられるな」
「では接近してから、体当たりでしょうか?」
トーゴー大佐はしばらく考え込んだ後、
「レッドノーム号より機動兵器の方が機動性が高い。シャトルのようにはいかんだろう。接近後、艦載機…スクイッドⅣを出して本艦と挟み撃ちでいこう」
モニターにスクイッドⅣとレッドノーム号の行動を入力した。
「なるほど。これならやっこさんも逃げられませんね。了解しやした。AI、このプラン通りに高軌道へ遷移して、あの機動兵器に接近だ」
『了解しました』
大男がレッドノーム号のAIに軌道変更を命じると、レッドノーム号はロケットエンジンを吹かして高軌道に移動し始めた。それによって無重力だった艦橋にGが発生し、艦長席の周りに浮かんでいた空の酒瓶が流れていった。
「スクイッドⅣの出撃可能数は?」
『現在出撃可能なスクイッドⅣは五機です』
トーゴー大佐の質問にAIが即座に回答を返す。
「本艦にはスクイッドⅣは二十機搭載しているはずだが? 何故出撃可能なのが五機なのだ?」
トーゴー大佐はAIの回答に驚いたのか怒ったのか、席から立ち上がった。
「木星の戦闘で十機が未帰還、残り十機は損害が酷くて共食い修理で動かせるのが五機ってことですぜ」
トーゴー大佐の問いかけに、AIではなく大男が答える。
「なるほど…。あの戦いから、補給も整備もしてなかったな」
トーゴー大佐は何かを思い出すかのように目を宙にさまよわせた。
「スクイッドⅣは五機全て出撃だ」
『了解しました』
トーゴー大佐はAIにそう命じると、艦長席に再び座り込んだ。
◇
レッドノーム号の軌道変更から三十分後、アルテローゼとレッドノーム号は最接近位置に近づいた。
『そろそろスペースボートの分離地点だ』
ディビットからアルテローゼのコクピットに通信が入る。
『了解した。アルテローゼは一旦慣性飛行に移り、レッドノーム号が艦載機を発進させたら対レーザーの煙幕を張る。スペースボートの分離はそのタイミングで行ってくれ』
『三人とも無事にステーションに辿り着いてください』
レイチェルはスペースボートに乗る三人にそう言うと、
『レイチェルさんがそこまで俺の心配をしてくれるとは…感激です』
『金髪ドリルの方が危険なんだろ。こっちよりそっちの方が心配だよ』
ケイイチとアイラはそんな返事を返してくるのだった。
『アイラ、レイチェルは儂が護るから安心しろ』
『じゃあ、こっちはあたいが護るよ』
『俺たちゃ幼女に護られるのかよ』
『まあ、ディビットより頼りになるのは確かだな』
アイラに護られると言われて、ディビットとケイイチはガックリと肩を落とした。
そんな会話を繰り広げている間にもレッドノーム号とアルテローゼは近づいていく。そしてレッドノーム号から五機のスクイッドⅣが分離すると同時に煙幕を射出した。
微細なガラス片を含んだ煙幕は、徐々に広がってアルテローゼの機体を覆い隠した。それに慌てたのかレッドノーム号からレーザー攻撃が始まるが、煙幕とプロテクション・フロム・ミサイルの魔法陣のおかげでアルテローゼに命中弾は無かった。
『それじゃここでお別れだな』
『レイチェルさ~ん』
『行ってくるよ~』
三人が叫ぶ中、スペースボートはアルテローゼから分離すると即座に減速して低軌道に遷移して、大気圏を使ったスキップを開始した。
アルテローゼから分離したスペースボードに気付いたレッドノーム号は、二機のスクイッドⅣに後を追わせたが、大気圏突入能力の無いスクイッドⅣはスキップ軌道に追いつけるわけがなかった。ケイイチの神業のような大気圏スキップ軌道をトレースしようとしたスクイッドⅣは、角度調整を失敗し大気圏に突入して燃え尽きてしまった。
スクイッドⅣでの迎撃が無理と悟ったレッドノーム号は、艦砲のレーザーを打ち始めたが、それを阻止したのはアルテローゼだった。
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