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第13話:宇宙の果て

Aパート(4)

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『こうなったら、囮と本命に分かれてステーションを目指すしかないだろう。アルテローゼスペースボートディビットの二手に分かれるのだな』

レッドノーム号あのふねとと戦闘になるのは避けられないのですから、それが最善の手ですわ」

 レイフの提案にレイチェルは頷いた。

『…やっぱりそうなるかな』

『俺としては、レイチェルお嬢さんに囮をさせるのは忍びないのだが…』

 ディビットとケイイチの二人もレイフの提案した方法しかないと思っていた。しかしこの場合、ステーションにたどり着くべきはディビットとケイイチであり、アルテローゼが囮となるのは必然であった。ディビットとケイイチはそんなことを自分たちから言い出したくはなかったのだ。

「そんなことを言っている場合ではありませんわ。それにステーションに向かった方が楽とは限りませんわ」

『おいおい、不吉なこと言わないでくれよ』

『フラグじゃないか』

 レイチェルの言葉に、ディビットとケイイチの頭を嫌な予感が横切った。だからといって、二人がステーションに向かうのは確定事項であり、拒否はできない。

『ディビット達だけでは不安だな。…スペースボートにはアレ・・も積んであるし、アイラは二人に付いていく方がよいな』

「えーっ、あたいは金髪ドリルレイチェルと一緒の方が良いよ~」

 レイフがアイラにディビット達に付いていくように命じると、アイラは嫌そうに唇をとがらせた。

アルテローゼこちらは危険ですわ。それにあの子・・・を制御できるのは、アイラちゃんだけですし…ディビットさん達とステーションに向かってくださいね」

「うう、分かったよ~」

 レイチェルに諭されると、アイラは不承不承という感じで頷くのだった。

『そうなれば、アイラはさっさと移動するのだ』

 レイチェルとアイラがヘルメットを被ったのを確認して、レイフはアルテローゼのコクピットを空けた。
 プシューッと空気が抜けると、目の前にはスペースボートの操縦席が見える。

 命綱無しでの宇宙遊泳は危険な行為だが、アイラは

『それじゃ、行ってくる。金髪ドリルレイチェルもレイフも死なないでよ』

 と軽々とスペースボートに飛んでいった。

 アイラがスペースボートに乗り込むのを確認してレイフはコクピットを閉じる。

『このまま戦闘状態に入るからコクピットは与圧しないつもりだ。不便だがレイチェルはそのままでいてくれ。あとシートベルトはしっかり付けておくのだぞ』

『了解ですわ』

 レイフはレイチェルがシートベルトを付けるのを確認する。

『ディビット準備はOKだ。軌道を計算してくれ』

『了解だ。俺がいなくなった後、レイフが軌道計算をできるようにプログラムを送るから、受け取っておいてくれ』

「それは助かる。さっきの説明じゃ、理解できなかったのだ」

 ディビットはケイイチがアイラがシートベルトを着用したのを確認して、高度を下げるべくアルテローゼに逆噴射のプログラムを送った。レイフはそのプログラムを実行し、逆噴射により高度を落としたアルテローゼは速度を上げステーションに進む。
 アルテローゼが速度を上げたことで、高度を上げて速度を落としたレッドノーム号とアルテローゼの交差するタイミングでの戦闘は一撃離脱しかできないようになった。

『大気圏突入能力のないレッドノーム号がアルテローゼこっちと同じ軌道高度まで下がってくる事はないだろうが、ミサイルか宇宙戦闘機は出してくるだろうな』

 ディビットはレッドノーム号のスペックをデータベースより呼び出して眺める。

『艦載機はLE社のパイクⅡ攻撃機が十機にスクイッドⅣ戦闘機が二十機。惑星の軌道上だから、スクイッドⅣ戦闘機が出てくるだろうな。こいつは航続距離は短いが足が速い。俺達のスペースボートの速度じゃあっという間に追いつかれるな』

『さすがに二十機も出てくると、アルテローゼだけじゃどうしようもない。レッドノーム号の攻撃もあるだろうし、ディビット達はどうするつもりなのだ?』

『もちろん、追いつけない軌道をとるのさ。これを見てくれ』

 ディビットはモニターにアルテローゼから切り離された後のスペースボートの軌道を表示する。それを見ると、レッドノーム号とすれ違う瞬間にスペースボートは切り離され、そのまま高度を落として速度を上げる。そして大気圏を水切りの石のようにスキップして一気に距離を離してステーションにたどり着くというアクロバティックな軌道であった。

「大気圏で水切りですか? 一歩間違えば大気圏で燃え尽きるか、ステーションとは違った軌道にはじき飛ばされますわ」

 レイチェルはその軌道の危険性が分かるのか心配そうであるが、

『なに、軌道計算はばっちりだ』

『操縦は俺がやるんだ。問題ない』

 ディビットとケイイチがサムズアップして豪語する。

 レイチェルは「大丈夫なのかしら」と顔をしかめるが、レイフやアイラは危険性が分かっておらずただただ頷くしかなかった。
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