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第12話:宇宙へ

Cパート

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「これでプログラムの最終調整は終わりだ」

 ディビットは手に持った端末を閉じると、アルテローゼレイフを見上げた。

『ぷろぐらむの調整は終わったのか。これでロケットエンジンは正常に動かせるのだな。助かったぞ』

 アルテローゼレイフカメラを光らせて、ディビット礼を述べた。

 レイフは錬金術で物を作り出せるが、それはハードウェアまででありソフトウェアに関しては疎かった。ロボット兵器などのAIであれば何故かゴーレムマスターの魔法で作り出し制御できるのだが、それ以外のソフトウェアとなると、レイフにはちんぷんかんであった。
 レイフもそれは不味いと感じて最近はソフトウェアについて学習しているのだが、さすがにロケットエンジンの制御プログラムの調整をできるレベルではない。
 設計者のヴィクターが調整すれば良かったのだが、彼は火星司令部にいるためプログラムの最終調整はディビットに任されたのであった。ディビットもそこは専門外であったが、元はシャトルのロケットエンジンだったこともあり、燃焼試験の結果からパラメータを幾つかいじくるだけでシャトルのプログラムの流用で済ませることができた。

「しかし、AIがプログラムを調整できないとか、おかしいだろ」

『儂はゴーレムマスターであって、AIなどではないからな!』

「まあ、不通のAIじゃないことは確かだな」

 やれやれという感じでディビットは両手を広げる。

『司令室からのデータでは、打ち上げのタイミングは二十分後だ。ディビットも早く搭乗してくれ』

「分かったよ。そうせかすな」

 ディビットは端末を作業員に渡すとヘルメットを被って、アルテローゼ・スペースフォームの腹部につり下げられたスペースボートに乗り込んだ。

 滑走路に横たわった全長三十メートルのロケットにアルテローゼがぶら下がり、更にその腹部にスペースボートがつり下げられているその姿は、巨大な魚に中型コバンザメと小型のコバンザメがくっついているような姿であった。
 既にアルテローゼにはレイチェルとアイラが乗り込んでおり、スペースボートにはケイイチとディビットが搭乗する。ロケットには液体燃料が注入されており、後はカウントダウンを待つばかりだった。

『レイフ君、レイチェルとアイラ君を頼むよ』

『毎度のことだが、任せておけ』

 司令部からヴィクターが通信を送ってくる

「お父様、行って参ります」

 宇宙服に身を包んだレイチェルがヴィクターにそう言うと、カウントダウンが始まった。
 カウントダウンと同時にアルテローゼレイフは巨大なレビテートの魔法陣を展開し、ロケットとアルテローゼを空中に浮遊させた。

『9,8,7,6,5,4,3,2,1、点火!』

 レイフのかけ声と共にロケットエンジンが火を噴き、巨大な煙の尾を引いてアルテローゼは加速していった。

 空港の管制塔やヘリオス首都のあちこちで、そして司令部のモニターで様々な人が、上昇していくアルテローゼを見上げていた。

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