ゴーレムマスターの愛した人型兵器

お化け屋敷

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第12話:宇宙へ

Bパート(4)

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 研究所の格納庫では、急ピッチでアルテローゼの改装が行われていた。作業は急ピッチで進むが、その中心となるのがアルテローゼレイフの錬金魔法である。
 素材と設計図さえあれば瞬く間に現物ができあがる魔法の存在はチートの一言であり、しかしそれ魔法がなければ達成し得ないスケジュールだった。

お嬢ちゃんレイチェル以外の人員を乗せることになる。つまりコクピットの仕様を変更することになるが、そうすると今の機体バランスが変わっちまうな。できればそれは避けたいのだが…」

『おやっさん、一体何人乗せるんですか?』

「それは所長に聞かないとな」

 今回の任務では、ステーションでの作業のために追加の人員を乗せることが分かっていた。現在のアルテローゼのコクピットでは、レイチェルと小柄な少女アイラを乗せるのが限界である。つまり人を乗せるためのスペースを何処かに確保する必要があるのだが、コクピットを変更すると機体のバランスが変わってしまう。おやっさんとしてはもっと別な方法を考えたいところだったが、追加の人数が分からないと判断できない。

『やはり、コクピットを修正するのは難しいな』

「そうだな…。こうなったらいっそアルテローゼにくくりつけて飛ばした方が良いんじゃねーか?」

 顎の無精髭をさすりながらおやっさんがそう言うと、

『ははは、フォーリングコントロールの魔法を使えば打ち上げ時のGは無視できるし、宇宙服とやらを着せれば宇宙空間でもしばらくは大丈夫だとすると、それもありかな? ペイロードのどこかに詰め込んでおけば…』

 レイフからすると、レイチェルと一緒のコクピットに他の人を乗せたくは無いので、そんなことを言ってしまう。

「ちょっと待て。俺達にそんな無茶をやらせるつもりか?」

「俺は荷物じゃない」

 そこに現れたのは、ディビットとケイイチであった。ちょうど格納庫に来たばかりの二人は、レイフの無茶ぶりを聞いてしまったようだった。

「いや、冗談だったんだがな~」

『儂はかなり本気だったけどな』

「おい、こら! このAIは一体何を言ってやがる」

「せめて人扱いしてもらいたいな」

 ディビットとケイイチはこめかみに青筋を立てて、アルテローゼレイフを睨み付けた。

『ここに来たという事は、二人がステーションに送り届ける荷物と言うことなのか?』

「見てーだな。しかし、がたいの良い野郎が二人とは、困りやがるぜ。こりゃ所長と話を付ける必要があるな」

 おやっさんとレイフは、二人の抗議を無視してそんな会話を始める。

「…ちょっと無視は止めてくれよ」

「だよな~」

 ディビットとケイイチは、がっくりと肩を落とすのだった。


 ◇


 追加の搭乗員が決まったので、おやっさんはアルテローゼの改装案を相談するためにヴィクターに通信をつなげた。

『ムラタさん、一体何用ですか。今アルテローゼをステーションの軌道上まで打ち上げるための、メインのロケットエンジンの設計を行っているのですよ。これが無ければ作戦は成り立たないのですよ』

 切羽詰まった様子のヴィクターが通信にでてきた。

「おう、所長が忙しいことは分かっているが、そのロケットエンジンもアルテローゼの重量が分からなきゃ作れないだろ。それでだが、こっちに二人ほど来てるんだが、ステーションに送り届けるのは此奴らで良いんだよな?」

『その二人で良いはずですよ。ああ、彼等の乗る小型スペースボートの設計は終わってますので、先に作っておいてくださいよ』

 早口でそれだけまくし立てると、スペースボートの設計図データを送りつけてヴィクターは通信を切ってしまった。

「所長のやつ、かなりテンパってるな」

「はは、そりゃ二十四時間でロケットエンジンの設計と製造をするとなれば、テンパるだろうな。俺達もレイフAIの事を知ってなきゃ、が気が狂っていると思っちゃうからな」

「他の兵士達は、司令が気が狂ったと言っているぞ」

 ディビットとケイイチは遠い目をしてそんな事を呟いていた。

『そこの二人、喋っている暇があるなら、奥にある小型飛行機を持ってこい。それを使ってお前達が乗るスペースボートを作るからな』

 レイフは、そんな二人に作業を言いつける。

「へいへい」

「やれやれ人使いの荒いAIだぜ」

 そう言いながら二人は言いつけ通りに小型飛行機をアルテローゼの側に運んでくる。

『んじゃ、ヴィクターの設計通りに作り替えるとしますか』

 レイフが錬金魔法を発動させると、小型飛行機の下に巨大な魔法陣が現れる。そして小型飛行機はバラバラに分解されるとまるでCGのモーフィングのように変形を繰り返して、スペースボートの形に変わっていった。そして一分も経たないうちにディビットとケイイチの乗るスペースボートが完成する。

「相変わらず、この錬金魔法とかチートだよな」

「ああ。確かにチートだわ」

 ディビットとケイイチの二人は、その光景を見てため息をついていた。
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