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第12話:宇宙へ
Bパート(3)
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『連邦宇宙軍は、火星の各都市に対し二十四時間以内の武装放棄と、四十八時間以内の反乱軍メンバー全員の都市の外への退去を要求する。なおそれが履行されない場合は、各都市に対して対惑星兵器《神の雷》による攻撃を加える事になるだろう。火星各都市の市民の賢明な判断を期待する物である』
レッドノーム号、トーゴー大佐から火星各都市への通達は一方的な物だった。宇宙戦艦は広大な宇宙で通信を行うために強力な通信機能を持っている、また電子戦のための機能も充実しており、その機能を使えば火星の各都市の通信に割り込むことは簡単であった。トーゴー大佐は軌道上を回りながら、各都市に一斉に通信を送りつけたのだった。
この通信を聞き火星行政府の主席、レイコ・チシマは、慌てて火星司令部に連絡を取った。
「連邦宇宙軍は、こんな事を本気でやるつもりなのですか? これではますますマーズリアン…いえ、火星の人々が連邦政府に反感を持つことになりますよ」
レイコは、通信に出たオッタビオ司令を怒鳴りつけた。
『私も反対したのですが、彼は連邦軍本部から正式な指令書を得ておりまして、私の権限では制止できないのです』
「つまり、この通達は連邦軍…いえ連邦政府の指示なのですか?」
『そんな事はありません。これは木星方面軍、いえトーゴー大佐が暴走しているのです。連邦軍本部とは現在通信不能であり確認が取れていないのですが、連邦政府がその様な判断を下すわけがない事は主席も御存じでしょう』
オッタビオ指令の通信不通という発言に対して、秘書のサイゾウがレイコに「地球との通信ができなくなっているのは本当の事です」と耳打ちを行った。
「それは分かっていますが、火星市民はそう思わないでしょうね? とにかくトーゴー大佐の件は軍の内部の問題です。火星政府はこの件に関しては連邦軍に正式に抗議します」
『火星司令部としても、何とか連邦軍本部との通信を回復させて、トーゴー大佐の暴走を止めるつもりです』
「それは期待できるのでしょうか?」
『はい。朗報をお待ちください』
「…分かりました。火星行政府から各都市に軽はずみな行動を取らないように通達を出します」
『よろしくお願いします』
そう言ってオッタビオ司令が頭を下げたところで通信は切れた。
「サイゾウ、地球との通信を回復させるために、火星司令部は何をするつもりか掴んでいますか?」
「ヘリオスにシャトルが無いため、研究所の機動兵器でステーションに人を送る作戦のようです」
「作戦が成功する確率は?」
「専門外のため正確なことは言えませんが、技術的には機動兵器でステーションにたどり着くことは可能かと」
「あら、では何とかなりそうなのね」
レイコは表情を緩めほっとしたようだったが、
「ですが、トーゴー大佐が黙ってそれを見過ごすわけもないかと。軌道上の宇宙戦艦が邪魔をすると考えると…作戦の成功確率は限りなく低いかと思われます」
というサイゾウの分析を聞いて今度は青ざめるのだった。
「このままでは、火星の各都市はとんでもない事になるわね。どうにか市民を助ける方法を考えないと…。都市から逃げ出せと通達すべきかしら」
「あの通達では、都市から逃げ出せばそれだけで反乱軍と判断されるでしょう。そうなれば衛星軌道から狙い撃ち、誰も出てこなければ都市が爆撃される。トーゴー大佐は、どう転んでも火星の各都市を破壊したい…いえ火星を破壊したいと思っているとしか考えられませんね」
サイゾウはまるで人事のように淡々と説明するが、それを聞いたレイコは、
「ああもう、どうしたら良いのかしら」
頭を掻きむしったが、それで良い知恵が浮かぶわけもなかった。
「あの兵器の威力ではたとえ地下シェルターに入っても助かる見込みは少ないです。何とか火星司令部…いえ、研究所の機動兵器に頑張ってもらうしかありません。後は…」
「後は?」
「各都市の革命軍に協力を依頼するという考えもあります」
「革命軍に協力依頼ですって?」
サイゾウのトンデモ発言に、レイコは驚く。
「ええ、ヘリオスにはシャトルはありませんが、オリンポスを始め幾つかの都市には貨物輸送用のHLVがあります。それを使えば、ステーションに人を送り込むことは可能です。ですが…」
「それでは、革命軍がステーションを占拠しちゃうことにつながるわね」
レイコは渋い顔をする。
元々荷物の搬入などでステーションに人が乗り込んでいる。つまり革命軍のメンバーがステーションに入り込む機会は今までもあった。だがステーションはAIが管理するセキュリティに守られており、そう容易く乗っ取られることはない。
しかし、地球との通信を回復させるという話となると、AIのセキュリティを解除するコードが必要となり、それを革命軍に渡してしまえばステーションを乗っ取られる恐れが出てくる。いや、確実にステーションを乗っ取るだろう。ステーションの管理権限を奪われるのは火星行政府にとっては大きな痛手である。
「でも、このままでは火星は更地に代わってしまうわ。サイゾウ、至急各都市と連絡を取ってちょうだい。…このことは、火星司令部には内密にしてね」
「了解しました」
サイゾウはレイコに頭を下げると、部屋を出て行った。
レッドノーム号、トーゴー大佐から火星各都市への通達は一方的な物だった。宇宙戦艦は広大な宇宙で通信を行うために強力な通信機能を持っている、また電子戦のための機能も充実しており、その機能を使えば火星の各都市の通信に割り込むことは簡単であった。トーゴー大佐は軌道上を回りながら、各都市に一斉に通信を送りつけたのだった。
この通信を聞き火星行政府の主席、レイコ・チシマは、慌てて火星司令部に連絡を取った。
「連邦宇宙軍は、こんな事を本気でやるつもりなのですか? これではますますマーズリアン…いえ、火星の人々が連邦政府に反感を持つことになりますよ」
レイコは、通信に出たオッタビオ司令を怒鳴りつけた。
『私も反対したのですが、彼は連邦軍本部から正式な指令書を得ておりまして、私の権限では制止できないのです』
「つまり、この通達は連邦軍…いえ連邦政府の指示なのですか?」
『そんな事はありません。これは木星方面軍、いえトーゴー大佐が暴走しているのです。連邦軍本部とは現在通信不能であり確認が取れていないのですが、連邦政府がその様な判断を下すわけがない事は主席も御存じでしょう』
オッタビオ指令の通信不通という発言に対して、秘書のサイゾウがレイコに「地球との通信ができなくなっているのは本当の事です」と耳打ちを行った。
「それは分かっていますが、火星市民はそう思わないでしょうね? とにかくトーゴー大佐の件は軍の内部の問題です。火星政府はこの件に関しては連邦軍に正式に抗議します」
『火星司令部としても、何とか連邦軍本部との通信を回復させて、トーゴー大佐の暴走を止めるつもりです』
「それは期待できるのでしょうか?」
『はい。朗報をお待ちください』
「…分かりました。火星行政府から各都市に軽はずみな行動を取らないように通達を出します」
『よろしくお願いします』
そう言ってオッタビオ司令が頭を下げたところで通信は切れた。
「サイゾウ、地球との通信を回復させるために、火星司令部は何をするつもりか掴んでいますか?」
「ヘリオスにシャトルが無いため、研究所の機動兵器でステーションに人を送る作戦のようです」
「作戦が成功する確率は?」
「専門外のため正確なことは言えませんが、技術的には機動兵器でステーションにたどり着くことは可能かと」
「あら、では何とかなりそうなのね」
レイコは表情を緩めほっとしたようだったが、
「ですが、トーゴー大佐が黙ってそれを見過ごすわけもないかと。軌道上の宇宙戦艦が邪魔をすると考えると…作戦の成功確率は限りなく低いかと思われます」
というサイゾウの分析を聞いて今度は青ざめるのだった。
「このままでは、火星の各都市はとんでもない事になるわね。どうにか市民を助ける方法を考えないと…。都市から逃げ出せと通達すべきかしら」
「あの通達では、都市から逃げ出せばそれだけで反乱軍と判断されるでしょう。そうなれば衛星軌道から狙い撃ち、誰も出てこなければ都市が爆撃される。トーゴー大佐は、どう転んでも火星の各都市を破壊したい…いえ火星を破壊したいと思っているとしか考えられませんね」
サイゾウはまるで人事のように淡々と説明するが、それを聞いたレイコは、
「ああもう、どうしたら良いのかしら」
頭を掻きむしったが、それで良い知恵が浮かぶわけもなかった。
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「後は?」
「各都市の革命軍に協力を依頼するという考えもあります」
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「ええ、ヘリオスにはシャトルはありませんが、オリンポスを始め幾つかの都市には貨物輸送用のHLVがあります。それを使えば、ステーションに人を送り込むことは可能です。ですが…」
「それでは、革命軍がステーションを占拠しちゃうことにつながるわね」
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しかし、地球との通信を回復させるという話となると、AIのセキュリティを解除するコードが必要となり、それを革命軍に渡してしまえばステーションを乗っ取られる恐れが出てくる。いや、確実にステーションを乗っ取るだろう。ステーションの管理権限を奪われるのは火星行政府にとっては大きな痛手である。
「でも、このままでは火星は更地に代わってしまうわ。サイゾウ、至急各都市と連絡を取ってちょうだい。…このことは、火星司令部には内密にしてね」
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