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第12話:宇宙へ
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大気圏外からマッハ11という超高速で落下した神の雷は、狙い違わず革命軍のいる座標に誘導され、その上空で数千の子矢弾に分裂し革命軍の部隊に襲いかかった。
チュン、チュンと最初は五月雨のように振りそそいだ子矢弾だが、その一瞬後には豪雨のような激しさで降り注いだ。
降り注ぐのはタングステン合金の矢であり、戦車だろうが多脚装甲ロボットだろうが関係なく貫いていった。そして、革命軍の部隊は逃げ出す間もなく、一瞬で全滅した。
神の雷の子矢弾が降り注いだのは革命軍だけではなかった。子矢弾の幾つかは包囲していた周囲の連邦軍にも降り注いだ。
また、子矢弾の直撃を受けなくとも、マッハ11で着弾した際の衝撃波が連邦軍を襲い多大な被害を与えていた。
子矢弾が全て着弾し衝撃波が過ぎ去った後、一瞬前までロボット兵器がひしめいていた場所には、直径一キロ程の巨大なクレーターができあがっていた。
幸いなことに、アレクセイ中佐の乗る指揮者は着弾地点から離れた場所にいた。しかし衝撃波によって指揮車は横倒しとなってしまった。その側面が床となった指揮車両の中で、アレクセイ中佐は倒れていた。
「うっ、一体何が起きたのだ? 革命軍の攻撃なのか?」
アレクセイ中佐が頭を振って立ち上がると、オペレータ達も気がついたのか、彼と同様に立ち上がり始めた。アレクセイ中佐は、指揮車が横転した際に頭を打ったのか額から出血していたが、それ以外の外傷は無かった。オペレータ達も重傷者はおらず彼と同じ程度の軽傷者ばかりであった。
「…どうやら、衛星軌道上から投下された対惑星兵器のようです」
オペレータの一人が、横向きのコンソールを操作し、分析した結果を報告する。
「衛星軌道からの投下だと。…もしかして木星方面軍の連中がやったのか?」
「は、はい、恐らくそのようです。司令部からもその旨が通達されています」
「今更か。木星方面軍に好き勝手を許すとは、司令部は一体何を考えているのだ!」
額の出血をハンカチで抑えながら、アレクセイ中佐はオペレータを怒鳴りつけ、直ぐにそれが八つ当たりだと気付くと、
「怒鳴って済まなかった。…今の火星司令部に木星方面軍を押さえられる人はいない。恐らく通達が遅れたのも、革命軍に対惑星兵器の投下を知られたくないというのが司令部の思わくだろうな」
アレクセイ中佐は、司令部でふんぞり返るオッタビオ司令と事後処理に四苦八苦するアッテンボロー少佐の姿を思い浮かべ、苦笑を浮かべた
「取りあえず、こちらの被害状況と革命軍の状況を至急とりまとめてくれ。…いやその前に、指揮車を復旧しないと駄目か。生き残っているロボットで何とかなるか?」
「は、はい。直ぐに復旧に取りかかります」
オペレータはアレクセイ中佐の命令を受けて、生き残っている多脚装甲ロボットに指揮車の復元を命令する。すると十台ほどのロボットが集まり、指揮車を元の姿勢に復元した。
「生き残った偵察ドローンを使って、革命軍の状況を調査するんだ。恐らく被害が大きい…いや全滅に近いのだろうが、もしかすると巨人は生き残っているかもしれない。それと、アルフォンス少佐とブルーノ少佐の部隊の安否も確認するのだ」
二人との通信は途絶しており、戦術モニターには部隊表示がなされていなかった。
「中佐、これを見てください」
オペレーターが偵察ドローンの映像をモニターに表示すると、そこには巨大なクレーターが映し出されていた。
「これが、連邦宇宙軍の対惑星兵器の威力か…。凄まじいな…」
クレーターとなった戦場を見て、唖然とするのだった。
◇
革命軍の野戦司令部は、戦場からある程度離れていたため『神の雷』による被害は全く無かった。衝撃波によって引き起こされた突風が野戦テントの幾つかを吹き飛ばしたぐらいであった。その野戦司令部の中は大混乱に陥っていた。
「馬鹿な、部隊が全滅だと? 一体何が起きたんだ」
イスハークは、戦術モニターから突然部隊が消えたことをオペレータに問い詰めていた。
「は、はい。上空から大規模な爆撃を受けて、こちらの部隊の99%が一瞬で消滅したようなのです」
オペレータ達も何が起きたのか未だ正確に把握はできていなかった。ただ、レーダーに上空からの攻撃…『神の雷』の子矢弾が映っていたため、爆撃による攻撃だと判断したのであった。
「爆撃だと! 馬鹿も休み休み言え。何処にも戦闘機は飛んでいなかったではないか」
「そ、そうなると、弾道ミサイルか野砲部隊による攻撃ではないかと思われますが…」
「こちらの部隊を一瞬で殲滅できるだけの弾道ミサイルがあるなら、ここに来るまでに撃ち込んでいるだろうが」
「…」
イスハークに論破されて、オペレータ達は黙るしかなかった。
「もう良い。……部隊が壊滅した以上この場に留まってもしかたない。撤退するぞ。直ぐ準備に取りかかるんだ」
イスハークは戦力が無くなった以上ここにいても意味がないと、撤退することを決断した。
革命軍に取ってこの戦いの敗北は痛手だが、生きていればまた巻き返せる。そういった点が革命軍の兵士の思想であった。
このイスハークの撤退するという決断は、通常の軍に比べれば迅速な物だった。しかし、それでもその決断は遅かったと言わざるを得なかった。
「あれは何だ?」
「流れ星か?」
「いや、こちらに向かって落ちてくるぞ」
野戦司令部の外で、革命軍の兵士達が空を見上げて騒ぎ始めていた。
「一体何を騒いでいる。急いで撤退の準備を…あれは一体?」
イスハークは野戦司令部を出て、空を見上げた。迫りくる火の玉は彼の目の前で無数の火の弾に分裂し、革命軍の野戦司令部に降り注いだ。
二発目の『神の雷』は革命軍の司令部を消滅させたのだった…。
チュン、チュンと最初は五月雨のように振りそそいだ子矢弾だが、その一瞬後には豪雨のような激しさで降り注いだ。
降り注ぐのはタングステン合金の矢であり、戦車だろうが多脚装甲ロボットだろうが関係なく貫いていった。そして、革命軍の部隊は逃げ出す間もなく、一瞬で全滅した。
神の雷の子矢弾が降り注いだのは革命軍だけではなかった。子矢弾の幾つかは包囲していた周囲の連邦軍にも降り注いだ。
また、子矢弾の直撃を受けなくとも、マッハ11で着弾した際の衝撃波が連邦軍を襲い多大な被害を与えていた。
子矢弾が全て着弾し衝撃波が過ぎ去った後、一瞬前までロボット兵器がひしめいていた場所には、直径一キロ程の巨大なクレーターができあがっていた。
幸いなことに、アレクセイ中佐の乗る指揮者は着弾地点から離れた場所にいた。しかし衝撃波によって指揮車は横倒しとなってしまった。その側面が床となった指揮車両の中で、アレクセイ中佐は倒れていた。
「うっ、一体何が起きたのだ? 革命軍の攻撃なのか?」
アレクセイ中佐が頭を振って立ち上がると、オペレータ達も気がついたのか、彼と同様に立ち上がり始めた。アレクセイ中佐は、指揮車が横転した際に頭を打ったのか額から出血していたが、それ以外の外傷は無かった。オペレータ達も重傷者はおらず彼と同じ程度の軽傷者ばかりであった。
「…どうやら、衛星軌道上から投下された対惑星兵器のようです」
オペレータの一人が、横向きのコンソールを操作し、分析した結果を報告する。
「衛星軌道からの投下だと。…もしかして木星方面軍の連中がやったのか?」
「は、はい、恐らくそのようです。司令部からもその旨が通達されています」
「今更か。木星方面軍に好き勝手を許すとは、司令部は一体何を考えているのだ!」
額の出血をハンカチで抑えながら、アレクセイ中佐はオペレータを怒鳴りつけ、直ぐにそれが八つ当たりだと気付くと、
「怒鳴って済まなかった。…今の火星司令部に木星方面軍を押さえられる人はいない。恐らく通達が遅れたのも、革命軍に対惑星兵器の投下を知られたくないというのが司令部の思わくだろうな」
アレクセイ中佐は、司令部でふんぞり返るオッタビオ司令と事後処理に四苦八苦するアッテンボロー少佐の姿を思い浮かべ、苦笑を浮かべた
「取りあえず、こちらの被害状況と革命軍の状況を至急とりまとめてくれ。…いやその前に、指揮車を復旧しないと駄目か。生き残っているロボットで何とかなるか?」
「は、はい。直ぐに復旧に取りかかります」
オペレータはアレクセイ中佐の命令を受けて、生き残っている多脚装甲ロボットに指揮車の復元を命令する。すると十台ほどのロボットが集まり、指揮車を元の姿勢に復元した。
「生き残った偵察ドローンを使って、革命軍の状況を調査するんだ。恐らく被害が大きい…いや全滅に近いのだろうが、もしかすると巨人は生き残っているかもしれない。それと、アルフォンス少佐とブルーノ少佐の部隊の安否も確認するのだ」
二人との通信は途絶しており、戦術モニターには部隊表示がなされていなかった。
「中佐、これを見てください」
オペレーターが偵察ドローンの映像をモニターに表示すると、そこには巨大なクレーターが映し出されていた。
「これが、連邦宇宙軍の対惑星兵器の威力か…。凄まじいな…」
クレーターとなった戦場を見て、唖然とするのだった。
◇
革命軍の野戦司令部は、戦場からある程度離れていたため『神の雷』による被害は全く無かった。衝撃波によって引き起こされた突風が野戦テントの幾つかを吹き飛ばしたぐらいであった。その野戦司令部の中は大混乱に陥っていた。
「馬鹿な、部隊が全滅だと? 一体何が起きたんだ」
イスハークは、戦術モニターから突然部隊が消えたことをオペレータに問い詰めていた。
「は、はい。上空から大規模な爆撃を受けて、こちらの部隊の99%が一瞬で消滅したようなのです」
オペレータ達も何が起きたのか未だ正確に把握はできていなかった。ただ、レーダーに上空からの攻撃…『神の雷』の子矢弾が映っていたため、爆撃による攻撃だと判断したのであった。
「爆撃だと! 馬鹿も休み休み言え。何処にも戦闘機は飛んでいなかったではないか」
「そ、そうなると、弾道ミサイルか野砲部隊による攻撃ではないかと思われますが…」
「こちらの部隊を一瞬で殲滅できるだけの弾道ミサイルがあるなら、ここに来るまでに撃ち込んでいるだろうが」
「…」
イスハークに論破されて、オペレータ達は黙るしかなかった。
「もう良い。……部隊が壊滅した以上この場に留まってもしかたない。撤退するぞ。直ぐ準備に取りかかるんだ」
イスハークは戦力が無くなった以上ここにいても意味がないと、撤退することを決断した。
革命軍に取ってこの戦いの敗北は痛手だが、生きていればまた巻き返せる。そういった点が革命軍の兵士の思想であった。
このイスハークの撤退するという決断は、通常の軍に比べれば迅速な物だった。しかし、それでもその決断は遅かったと言わざるを得なかった。
「あれは何だ?」
「流れ星か?」
「いや、こちらに向かって落ちてくるぞ」
野戦司令部の外で、革命軍の兵士達が空を見上げて騒ぎ始めていた。
「一体何を騒いでいる。急いで撤退の準備を…あれは一体?」
イスハークは野戦司令部を出て、空を見上げた。迫りくる火の玉は彼の目の前で無数の火の弾に分裂し、革命軍の野戦司令部に降り注いだ。
二発目の『神の雷』は革命軍の司令部を消滅させたのだった…。
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