ゴーレムマスターの愛した人型兵器

お化け屋敷

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第11話:空から来るもの

Aパート(3)

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 狼と馬と犀そして象の四体の巨人が、イスハーク総司令の命令で動き始めた。

 狼型の巨人は、全長十二メートルと四体の中で一番小柄である。そのいかにも俊敏そうなフォルムの期待を裏切らず、先陣を切って走り出した。
 馬型の巨人は、全長二十メートルのサラブレッドのような体型をしており、狼型より突進力に優れた走りを見せていた。
 犀型の巨人は、全長三十メートル先の二体より大きく、その機体は強固な装甲に包まれており、移動するトーチカのようだった。
 最後に、象型の巨人は、全長四十メートルと最も巨大であり、体のあちこちに武装が装備されており、その火力と装甲は移動する要塞と言っても過言ではなかった。

 動き出した四体の巨人を見て、その巨大さと力強さに革命軍の兵士達は、気炎をあげていた。

「巨人がいれば、俺達の勝利は確実だな」

「そうさ、何せ巨人は大シルチス高原の戦いで、連邦軍を壊滅させたからな」

「今度こそ、ヘリオス首都を落として、火星をマーズリアンの手に取り戻すんだ」

 兵士達の「巨人」コールを浴びながら、四体は連邦軍に向かって進撃を開始した。


 ◇


 巨人が動き出したことは、すぐさまヘリオスの司令部に伝わった。

「敵の巨人が動きだしただと。つまり、革命軍の総攻撃が始まったというのか?」

 アッテンボロー少佐が、オペレータに尋ねると、

「いえ、巨人だけがこちらに向かってきています」

 と彼女は、3Dモニターに状況を表示した。

 3Dモニターには、連邦軍と革命軍の部隊が、連邦軍は青、革命軍は赤と色分けて表示されていた。それに被さるように、四体の巨人の姿が映し出され、その進行経路が四つの巨大な矢印として表示された。
 四体の巨人の進軍経路は、狼型が左側面、馬型が右側面、犀と象型が正面からと予想されていた。

「中央に装甲と火力をぶつけ、側面は機動力でかき乱し、こちらの戦力を削るつもりか。アルテローゼがいない状況で、連邦軍だけで巨人と戦えるのか?」

 大シルチス高原での戦いを知っているアッテンボロー少佐は、巨人に対して通常兵器が無力だったことを知っている。いや、あの戦いで生き残った兵士達も身をもって知っているのだ。

「通常兵器が来てくれればまだ戦いようもあったのだが…。しかし泣き言は言ってられないか。司令、全軍に攻撃を命じます」

 アッテンボロー少佐は司令官席に座っているオッタビオ少将に攻撃許可を求めようと視線を向けると、彼は司令官席でコクリコクリと居眠りをしていた。

「(ぶん殴りたい)」

 ギリッと歯を噛みしめると、アッテンボロー少佐は本気で殴るつもりで拳を固めた。司令官席に詰め寄ろうとしたアッテンボロー少佐に、オペレータ達の視線が集まった。

「(クッ、ここで司令を殴っても意味は無い。…それより、あの首の上下の仕方が頷いているように見えるな) 司令、攻撃をしてよろしいでしょうか?」

 再度問いかけても、オッタビオ少将は頷くように頭を上下させている。

「司令の了解が出たぞ。全軍攻撃開始」

 司令の了解を得たアッテンボロー少佐が攻撃命令を出すと、オペレータ達は慌ただしく各部隊に通信を送り始めた。


 ◇


「攻撃開始だってさ。俺達の敵はあの狼のような機動兵器だな」

 ディビットは、司令部からの攻撃命令を受けて、左翼に迫ってくる狼型の巨人をモニターに表示させた。

「前に戦った獅子型の奴より随分と小型だな」

 マイケルは、装輪戦車のAIに狼型の巨人をターゲットとして登録し、彼の指揮下にある装輪戦車五十台のうち、十台に攻撃を命じた。

「航空支援はない…よな」

 クリストファーがディビットに確認する。

「今の連邦軍じゃせいぜい攻撃ヘリを数機出すぐらいしかないからな。期待するな」

「へいへい」

 クリストファーは肩をすくめて頷くと、今のところ出番のない多脚装甲ロボットに何やら作業を行わせていた。

「何をやってるんだ?」

「いやね、どうせ飛び道具の攻撃は当たらないんだろ。そこでこういった罠を仕掛けようかと思ってね」

 クリストファーは、ディビットに多脚装甲ロボットの位置と作業内容を見せる。

「なるほど、素早い獣には罠か…。確かにこれならやれるかもしれないな。マイケル、狼型の機動兵器をクリストファーの所に誘い込むんだ」

 ディビットは頷くと、マイケルにそう命じた。

「ん? 何か作戦でもあるのか。まあ、やれるだけやってみるけど、期待するなよ」

 マイケルは、手をひらひらさせて了解の意を伝えた。


 ◇


 狼型の巨人は、オペレータが指示・・した左翼から連邦軍に攻撃を仕掛けようとしていた。オペレータが指示することから分かるように、この狼型の巨人は今までの巨人と異なり、人が乗っていない無人機である。
 しかし、無人機だからといってロボット兵器かと言われると、そうでもなかった。
 狼型の巨人が単なるロボット兵器ではない証拠に、その機体にはプロテクション・フロム・ミサイルの魔法陣が描かれており、その魔法の効果によって、連邦軍の装輪戦車や多脚装甲ロボットからの攻撃を躱していたのだ。

 実は、プロテクション・フロム・ミサイルの魔法陣は、ロボット兵器に描いても効果は発揮されない。つまり、人が乗っていない機械に描いても魔法の効果はでないのだ。
 ではどうして無人機である狼型の巨人で魔法が効果を発揮しているかというと、それはこの巨人を動かしているのは単なる機械ではなく、動物の脳…この場合は狼の脳が組み込まれているからだった。

 動物の脳と言えばガオガオの制御コアにも獅子の脳が組み込まれていた。つまり、ガオガオを含めた五体の巨人は、最初の巨人とは異なりGC社が作り出した機動兵器であった。GC社は、荒れ地での四足歩行のデータ収集と、次期機動兵器のプロトタイプとして、五体の巨大起動メカを試作した。それがその五体の巨人のベースとなる機動兵器であった。

 そしてGC社は、その機動兵器の制御コアに通常のAIではなく、動物の脳を組み込んだ。動物の脳を組み込んだのは、LE社の技術に手っ取り早く追いつくのに動物の動きを取り入れれば良いのではと言う試みであった。実際その試みは成功しており、データ収集は上手くいっていた。

 しかし、次期機動兵器のプロトタイプとして、巨大な四足歩行の機動兵器は失敗であった。大型の機体では装甲や出力をいくら強化しても、結局高威力の武器によって破壊されてしまう。現代戦においては盾より矛が強すぎるのだ。

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