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第11話:空から来るもの
Aパート(2)
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アルテローゼがレイチェルを助けだし、一路首都に向かっている頃、革命軍の大部隊はヘリオス目前まで進軍してきていた。
司令部の予想では革命軍がヘリオスにやって来るまで、あと一日はかかるはずだったが、突然革命軍は進行速度を速めたのだ。
それに対して連邦軍はヘリオス手前に布陣し、革命軍を迎え撃とうとしていた。しかし、革命軍の進軍予定が早まったため、部隊の編成が不十分のままであった。そのため、連邦軍二千五百に対して革命軍五千と、戦力比は一対二という絶望的な数字となってしまった。
そんな状況では、連邦軍の兵士達の志気も上がるわけもない。革命軍が動いて攻撃を仕掛けただけで、連邦軍は総崩れになる危険性があった。
そんな連邦軍の中に第32武装偵察小隊のメンバーも含まれていた。
「相手はこちらの倍の数だぜ、指令は一体どうやって勝つつもりだよ」
ディビットは、やる気の無い格好で偵察ドローンのモニターを見つめていた。そこには圧倒的な数のロボット兵器が映し出されていた。
「『どうせ徹底抗戦だ~』とわめいているだけだろ」
マイケルは、装輪戦車のAIを調整しながらぼやいた。
「今回は巨人が四体もいるらしいな。アルテローゼ一機で勝てるのかよ」
クリストファーは天を仰いで十字をきった。彼は敬虔なクリスチャンではないが、神頼みというポーズであった。
「研究所の連中に聞いたら、アルテローゼはレイチェルさんを助けるために、オリンポスに行っている話だぜ。ここには来ないだろうな」
ディビットは、いつの間にか仲良くなった研究所の女性所員から、そんな話を入手していた。
「「マジかよ」」
マイケルとクリストファーは絶望したのか、作業を止めてしまった。ドライバーのケイイチはちらりと薄目を開けたが、また目をつむって瞑想に戻った。
ちなみに、ホァンは負傷中で、小隊のメンバーは四名しかいない。
「くそっ、隕石でも落ちてこないかな~」
やけくそになったマイケルの叫びが、指揮車両の中に木霊した。
◇
一方革命軍の方は、連邦軍を目の前に動くに動けない状態に陥っていた。
「進軍速度を無理に上げたツケが、こんなところで回ってくるとは。それで、エネルギー補給はいつ頃終わるのだ。GC社め、幾ら性能が良いといっても、燃費が悪すぎるではないか」
大部隊の総司令であるイスハークが、野戦司令部で怒鳴り散らしていた。
革命軍のロボット兵器の大部分は、オリンポスのGC支社から購入したものであった。
購入といっても、火星が独立した際のレアメタルの権益を餌に提供してもらったものであり、ようは出世払いという形であった。
GC社が革命軍と取り引きを始めると、他の企業も手持ちのロボット兵器を革命軍に提供し始めた。その甲斐もあって、五千もの大部隊が準備できたのだった。
「し、仕方ありませんよ。当社の兵器はまだ試作段階のものでして、火星の地形に十分対応できてはいないのです」
イスハークに怒鳴られたGC社のシステムエンジニアは、汗を拭きながらそんな言い訳を並べていた。
なぜ戦場に民間人であるGC社の社員がいるのか。それは、革命軍のロボット兵器が全てGC社のOSで動作し、指揮管制もGC社のシステムで運用されているからであった。
最新鋭のOSとシステムを運用できるのはGC社のエンジニアしかおらず、革命軍の兵士が教育を受けるにしてもそれでは時間がかかりすぎる。そこでエンジニアが派遣されることになったのだ。
このGC社の最新鋭OSは、他社のロボット兵器でも一定の規格を満たしていればインストール可能で、しかも従来のOSの五割増しの効率を発揮するという画期的な製品であった。このOS、ソフトウェアを変えるだけで性能が向上すると言うことで、素晴らしい製品に見えるが、そこには大きな穴があった。
GCN-OSと呼ばれる新型OSは、ロボットのリミッターを無視して動作させることができるという危険な代物だった。リミッターを外せば当然性能は上がる。しかし、リミッターを外すと言うことは、燃費や製品寿命が短くなるといったデメリットが出てくるのだ。
しかし、戦争…特に実戦では、燃費や製品寿命より性能が必要な時もある。そのような場合にはGCN-OSは有効な手段であった。
「とにかく、補給は後三時間で終わらせるんだ。それまではあれを前面に出して時間を稼ぐぞ。おい、巨人を出して連邦軍に攻撃を仕掛けるぞ」
イスハークは、オペレータにそう命令すると、戦術モニターを睨みつけた。
「何としてもヘリオスを落とすんだ」
イスハークの呟きは、野戦司令部の喧噪に消えていった。
司令部の予想では革命軍がヘリオスにやって来るまで、あと一日はかかるはずだったが、突然革命軍は進行速度を速めたのだ。
それに対して連邦軍はヘリオス手前に布陣し、革命軍を迎え撃とうとしていた。しかし、革命軍の進軍予定が早まったため、部隊の編成が不十分のままであった。そのため、連邦軍二千五百に対して革命軍五千と、戦力比は一対二という絶望的な数字となってしまった。
そんな状況では、連邦軍の兵士達の志気も上がるわけもない。革命軍が動いて攻撃を仕掛けただけで、連邦軍は総崩れになる危険性があった。
そんな連邦軍の中に第32武装偵察小隊のメンバーも含まれていた。
「相手はこちらの倍の数だぜ、指令は一体どうやって勝つつもりだよ」
ディビットは、やる気の無い格好で偵察ドローンのモニターを見つめていた。そこには圧倒的な数のロボット兵器が映し出されていた。
「『どうせ徹底抗戦だ~』とわめいているだけだろ」
マイケルは、装輪戦車のAIを調整しながらぼやいた。
「今回は巨人が四体もいるらしいな。アルテローゼ一機で勝てるのかよ」
クリストファーは天を仰いで十字をきった。彼は敬虔なクリスチャンではないが、神頼みというポーズであった。
「研究所の連中に聞いたら、アルテローゼはレイチェルさんを助けるために、オリンポスに行っている話だぜ。ここには来ないだろうな」
ディビットは、いつの間にか仲良くなった研究所の女性所員から、そんな話を入手していた。
「「マジかよ」」
マイケルとクリストファーは絶望したのか、作業を止めてしまった。ドライバーのケイイチはちらりと薄目を開けたが、また目をつむって瞑想に戻った。
ちなみに、ホァンは負傷中で、小隊のメンバーは四名しかいない。
「くそっ、隕石でも落ちてこないかな~」
やけくそになったマイケルの叫びが、指揮車両の中に木霊した。
◇
一方革命軍の方は、連邦軍を目の前に動くに動けない状態に陥っていた。
「進軍速度を無理に上げたツケが、こんなところで回ってくるとは。それで、エネルギー補給はいつ頃終わるのだ。GC社め、幾ら性能が良いといっても、燃費が悪すぎるではないか」
大部隊の総司令であるイスハークが、野戦司令部で怒鳴り散らしていた。
革命軍のロボット兵器の大部分は、オリンポスのGC支社から購入したものであった。
購入といっても、火星が独立した際のレアメタルの権益を餌に提供してもらったものであり、ようは出世払いという形であった。
GC社が革命軍と取り引きを始めると、他の企業も手持ちのロボット兵器を革命軍に提供し始めた。その甲斐もあって、五千もの大部隊が準備できたのだった。
「し、仕方ありませんよ。当社の兵器はまだ試作段階のものでして、火星の地形に十分対応できてはいないのです」
イスハークに怒鳴られたGC社のシステムエンジニアは、汗を拭きながらそんな言い訳を並べていた。
なぜ戦場に民間人であるGC社の社員がいるのか。それは、革命軍のロボット兵器が全てGC社のOSで動作し、指揮管制もGC社のシステムで運用されているからであった。
最新鋭のOSとシステムを運用できるのはGC社のエンジニアしかおらず、革命軍の兵士が教育を受けるにしてもそれでは時間がかかりすぎる。そこでエンジニアが派遣されることになったのだ。
このGC社の最新鋭OSは、他社のロボット兵器でも一定の規格を満たしていればインストール可能で、しかも従来のOSの五割増しの効率を発揮するという画期的な製品であった。このOS、ソフトウェアを変えるだけで性能が向上すると言うことで、素晴らしい製品に見えるが、そこには大きな穴があった。
GCN-OSと呼ばれる新型OSは、ロボットのリミッターを無視して動作させることができるという危険な代物だった。リミッターを外せば当然性能は上がる。しかし、リミッターを外すと言うことは、燃費や製品寿命が短くなるといったデメリットが出てくるのだ。
しかし、戦争…特に実戦では、燃費や製品寿命より性能が必要な時もある。そのような場合にはGCN-OSは有効な手段であった。
「とにかく、補給は後三時間で終わらせるんだ。それまではあれを前面に出して時間を稼ぐぞ。おい、巨人を出して連邦軍に攻撃を仕掛けるぞ」
イスハークは、オペレータにそう命令すると、戦術モニターを睨みつけた。
「何としてもヘリオスを落とすんだ」
イスハークの呟きは、野戦司令部の喧噪に消えていった。
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