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第9話:総攻撃
Aパート(4)
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船長室から船の左舷に向かって移動してた革命軍+レイチェルとホァンの一行は、誰にも邪魔されずに通路を進んでいた。
革命軍の兵士達は、恐らくこのまま順調に脱出できると思っていたらしいが、
『ただいま船内で火災が発生しました。火元は艦橋です。該当区域の消火設備を作動させますので、御注意ください。ただいま船内で火災が発生しま……』
突然のAIによる火災警報を聞いて、狼狽えだした。
「まさか、別働隊が艦橋の制圧にしくじったのか? おい、別働隊、どうなっているんだ……」
リーダーは慌てて端末を取り出し、別働隊と連絡を取るが、彼に何が起きているのか、端末にはピチャピチャという水音が聞こえるだけだった。
「…制圧に失敗したのなら、当初の手はず通り脱出地点まで戻るんだ。グズグズしていると置いていくぞ」
いつまで待ってもまともな返事が端末から聞こえないため、リーダーは業を煮やして端末に怒鳴りつけた。
リーダーが通信を終えたところで、巡視船は突然の大きく揺れる。
「うぁっ」
「船が揺れたぞ」
「火星タコめ、暴れすぎだ」
革命軍の兵士達は、あわてて壁に手を突いて揺れに耐えていた。
揺れが収まり、再び歩き出そうとしたところで、ピィピィとリーダーの端末が警告音を出し、メッセージが表示された。それを読んだリーダーが壁をどんとたたきつける。
「連邦の機動兵器が動き出しただと? パイロットはここにいるのに、いったい誰が動かしているんだ。……まさか、アイラがの乗っているのか?」
リーダーは、レイチェルの方に目をやるが、彼女はヘルメットで顔を隠して何も答えなかった。
「(アイラちゃんが、やってくれたようですわね)」
レイチェルはぐっと拳を握る。
「こうなったら、最悪、別働隊は置き去りにするしかないか。もうグズグズしている暇はない。全員走れ!」
そんなレイチェルの思惑を見透かしたかのように、リーダーは皆を急かす。ホァンを人質に取られているレイチェルには、彼らに付き従って走るしかなかった。
◇
程なく、レイチェルと革命軍兵士達は左舷の船べりにたどり着いた。そこには船にありがちな脱出用のボートが係留されていた。
「(あれに乗って脱出するつもりなのでしょうか?)」
レイチェルがそう思っていると、リーダーは船べりから身を乗り出して海面を見ていた。まるで巡視船の横に何かいるような態度であった。
「よし、迎えはきているぞ。ロープを張るんだ」
リーダーに言われ、若い男性の兵士が背中のバックバックからロープを取り出す。そしてロープの一端を船べりの手すりに結びつけると、彼はレンジャー隊員のようにロープを使って滑り降りていった。
「(えっ、そのまま海に降りるの? そんな夜の海に降りるなんて、自殺行為ですわ)」
レイチェルはパイロットスーツを着ているから大丈夫だが、他のメンバーは普通の服装である。このまま海に入ってしまえば簡単におぼれ死んでしまうだろう。
革命軍が何を考えているのか分からず、レイチェルがやきもきしていると、
「大丈夫です。上手く行きました」
先ほど降りていった若い男性の声が、下から聞こえてきた。
「(えっ、どういうことですの?)」
レイチェルは、慌てて大柄な兵士の脇を通り抜けて、舷側から下をのぞき込んだ。
「(こ、これは。鯨…いえ、火星には鯨なんていませんわ。もしかして、これは潜水艦というものでしょうか?)」
レイチェルの視界に入ったのは、全長百メートル、全幅二十メートルほどの黒い葉巻型の潜水艦であった。戦争がなくなった今、地球ではレジャーや深海の研究などに使われる者が主流であり、ミサイルを搭載できるような巨大な潜水艦は消えてしまった艦種である。
巨大な潜水艦は、巡視船の左側に浮上して反乱軍の兵士が乗り込むのを待つかのように、船体のハッチを開けていた。ロープはそのハッチの側の手すりに結ばれていた。
「よし、順に降りるんだ」
リーダーがメンバーに下りるように命令すると、女性の兵士が先に降りていく。彼女は滑車のような物をロープにセットすると、それに掴まって降りていった。その次はレイチェルの順番であった。しかしレイチェルは手錠で後ろ手に拘束されているため滑車を掴めない。どうするのかと思っていたら大柄な男がレイチェルの体をロープで縛り、滑車にレイチェルをつり下げた。まるで荷物か何かのようにレイチェルは潜水艦まで下ろされていった。
そのままレイチェルはハッチから潜水艦の船内に運び込まれた。垂直な階段は後から降りてきた大柄な兵士と若い男によってロープでつり下げられて下ろされた。下ろされた先は巨大な格納庫のような空間であり、そこには大量のコンテナが積み込まれいた。レイチェルはそこでロープから解放された。
「(これは、もしかして密輸船なのでしょうか?)」
地球連邦政府の統治下にある火星で戦争など起きるわけもなく、また海軍と言っても巡視船が一隻だけ。つまり潜水艦は戦うための船ではなく、荷物を運ぶ目的で作られたと考えるのが筋だった。
しかし普通の輸送であればロボットタンカーを使えば良く、このような潜水艦を使う必要は無い。そうなると、この潜水艦が運んでいるのは、連邦政府に知られては不味い物…つまり密輸された物であるとレイチェルは考えた。
「(革命軍への支援物資等も、潜水艦で運ばれていたのですね)」
レイチェルは、武器・弾薬のコンテナを見つけてそう確信した。
そんな時、レイチェルが降りてきたハッチの辺りが騒がしくなったのを感じた。ヘルメットをしているおかげで何か騒いでいることぐらいしか分からなかったが、どうやらもめ事がおきているようだった。
「(もしかしてホァンさんが危ないのではないですか!)」
レイチェルを大人しくさせるための人質であったホァンだが、彼女が潜水艦に連れ込まれてしまった今、その価値はなくなったと判断されるかもしれなかった。
レイチェルが不安そうにハッチに続く通路を見上げていると、バーンと銃声が鳴り響いた。
そして、ハッチが閉まり、リーダーと大柄な男が降りてきたが、ホァンの姿がなかった。
「(この人達は、ホァンさんを殺したのですわ。許せませんわ!)」
レイチェルは、ホァンを殺したと思わしきリーダーに向かって、体当たりを仕掛けようとしたが、それは大柄の男によって簡単に阻止された。
それでもレイチェルは暴れるが、不意でも突かない限り彼女が力で勝てるわけもなかった。
「客室に監禁しておくんだ」
リーダーの指示で、大柄な男は暴れているレイチェルを担ぐと、潜水艦の奥に向かっていった。
革命軍の兵士達は、恐らくこのまま順調に脱出できると思っていたらしいが、
『ただいま船内で火災が発生しました。火元は艦橋です。該当区域の消火設備を作動させますので、御注意ください。ただいま船内で火災が発生しま……』
突然のAIによる火災警報を聞いて、狼狽えだした。
「まさか、別働隊が艦橋の制圧にしくじったのか? おい、別働隊、どうなっているんだ……」
リーダーは慌てて端末を取り出し、別働隊と連絡を取るが、彼に何が起きているのか、端末にはピチャピチャという水音が聞こえるだけだった。
「…制圧に失敗したのなら、当初の手はず通り脱出地点まで戻るんだ。グズグズしていると置いていくぞ」
いつまで待ってもまともな返事が端末から聞こえないため、リーダーは業を煮やして端末に怒鳴りつけた。
リーダーが通信を終えたところで、巡視船は突然の大きく揺れる。
「うぁっ」
「船が揺れたぞ」
「火星タコめ、暴れすぎだ」
革命軍の兵士達は、あわてて壁に手を突いて揺れに耐えていた。
揺れが収まり、再び歩き出そうとしたところで、ピィピィとリーダーの端末が警告音を出し、メッセージが表示された。それを読んだリーダーが壁をどんとたたきつける。
「連邦の機動兵器が動き出しただと? パイロットはここにいるのに、いったい誰が動かしているんだ。……まさか、アイラがの乗っているのか?」
リーダーは、レイチェルの方に目をやるが、彼女はヘルメットで顔を隠して何も答えなかった。
「(アイラちゃんが、やってくれたようですわね)」
レイチェルはぐっと拳を握る。
「こうなったら、最悪、別働隊は置き去りにするしかないか。もうグズグズしている暇はない。全員走れ!」
そんなレイチェルの思惑を見透かしたかのように、リーダーは皆を急かす。ホァンを人質に取られているレイチェルには、彼らに付き従って走るしかなかった。
◇
程なく、レイチェルと革命軍兵士達は左舷の船べりにたどり着いた。そこには船にありがちな脱出用のボートが係留されていた。
「(あれに乗って脱出するつもりなのでしょうか?)」
レイチェルがそう思っていると、リーダーは船べりから身を乗り出して海面を見ていた。まるで巡視船の横に何かいるような態度であった。
「よし、迎えはきているぞ。ロープを張るんだ」
リーダーに言われ、若い男性の兵士が背中のバックバックからロープを取り出す。そしてロープの一端を船べりの手すりに結びつけると、彼はレンジャー隊員のようにロープを使って滑り降りていった。
「(えっ、そのまま海に降りるの? そんな夜の海に降りるなんて、自殺行為ですわ)」
レイチェルはパイロットスーツを着ているから大丈夫だが、他のメンバーは普通の服装である。このまま海に入ってしまえば簡単におぼれ死んでしまうだろう。
革命軍が何を考えているのか分からず、レイチェルがやきもきしていると、
「大丈夫です。上手く行きました」
先ほど降りていった若い男性の声が、下から聞こえてきた。
「(えっ、どういうことですの?)」
レイチェルは、慌てて大柄な兵士の脇を通り抜けて、舷側から下をのぞき込んだ。
「(こ、これは。鯨…いえ、火星には鯨なんていませんわ。もしかして、これは潜水艦というものでしょうか?)」
レイチェルの視界に入ったのは、全長百メートル、全幅二十メートルほどの黒い葉巻型の潜水艦であった。戦争がなくなった今、地球ではレジャーや深海の研究などに使われる者が主流であり、ミサイルを搭載できるような巨大な潜水艦は消えてしまった艦種である。
巨大な潜水艦は、巡視船の左側に浮上して反乱軍の兵士が乗り込むのを待つかのように、船体のハッチを開けていた。ロープはそのハッチの側の手すりに結ばれていた。
「よし、順に降りるんだ」
リーダーがメンバーに下りるように命令すると、女性の兵士が先に降りていく。彼女は滑車のような物をロープにセットすると、それに掴まって降りていった。その次はレイチェルの順番であった。しかしレイチェルは手錠で後ろ手に拘束されているため滑車を掴めない。どうするのかと思っていたら大柄な男がレイチェルの体をロープで縛り、滑車にレイチェルをつり下げた。まるで荷物か何かのようにレイチェルは潜水艦まで下ろされていった。
そのままレイチェルはハッチから潜水艦の船内に運び込まれた。垂直な階段は後から降りてきた大柄な兵士と若い男によってロープでつり下げられて下ろされた。下ろされた先は巨大な格納庫のような空間であり、そこには大量のコンテナが積み込まれいた。レイチェルはそこでロープから解放された。
「(これは、もしかして密輸船なのでしょうか?)」
地球連邦政府の統治下にある火星で戦争など起きるわけもなく、また海軍と言っても巡視船が一隻だけ。つまり潜水艦は戦うための船ではなく、荷物を運ぶ目的で作られたと考えるのが筋だった。
しかし普通の輸送であればロボットタンカーを使えば良く、このような潜水艦を使う必要は無い。そうなると、この潜水艦が運んでいるのは、連邦政府に知られては不味い物…つまり密輸された物であるとレイチェルは考えた。
「(革命軍への支援物資等も、潜水艦で運ばれていたのですね)」
レイチェルは、武器・弾薬のコンテナを見つけてそう確信した。
そんな時、レイチェルが降りてきたハッチの辺りが騒がしくなったのを感じた。ヘルメットをしているおかげで何か騒いでいることぐらいしか分からなかったが、どうやらもめ事がおきているようだった。
「(もしかしてホァンさんが危ないのではないですか!)」
レイチェルを大人しくさせるための人質であったホァンだが、彼女が潜水艦に連れ込まれてしまった今、その価値はなくなったと判断されるかもしれなかった。
レイチェルが不安そうにハッチに続く通路を見上げていると、バーンと銃声が鳴り響いた。
そして、ハッチが閉まり、リーダーと大柄な男が降りてきたが、ホァンの姿がなかった。
「(この人達は、ホァンさんを殺したのですわ。許せませんわ!)」
レイチェルは、ホァンを殺したと思わしきリーダーに向かって、体当たりを仕掛けようとしたが、それは大柄の男によって簡単に阻止された。
それでもレイチェルは暴れるが、不意でも突かない限り彼女が力で勝てるわけもなかった。
「客室に監禁しておくんだ」
リーダーの指示で、大柄な男は暴れているレイチェルを担ぐと、潜水艦の奥に向かっていった。
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