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第8話:拉致
Aパート(3)
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結局、アイラはこのまま火星タコの討伐任務に同行することになった。
「やったー」
「良かったですわ」
とはしゃぐアイラと顔をほころばせるレイチェルだが、
『(この娘、本当に大丈夫なのか?)』
レイフは、この状況を怪しいと思っていた。
何故か、それはアイラがレイチェルに『懐きすぎている』からであった。確かにレイチェルは優しくアイラに接している。しかし、それでもレイチェルはアイラがよく言う「憎たらしい地球人」であり、彼女の相棒のガオガオを倒したアルテローゼのパイロットでもある。そんな状況なのに、アイラはラノベのチョロインかというぐらいに、あっという間にレイチェルになついてしまった。それが、レイフにとってアイラが怪しいと思わせるのだった。
『(幼いから、その言動に皆は油断しすぎだよな。どう見ても怪しい)』
レイフは、他の人と異なりアイラに対する警戒心を忘れてはいなかった。何しろ、帝国時代には年端もいかぬ子供をスパイや工作員にするような連中に事欠かなかったからである。油断すれば子供にすら寝首をかかれかねない戦場をレイフは見てきたのだ。
『(念のために、監視しておくべきだな)』
本当はレイフは、レイチェルを二十四時間見守りたかった。人はそれをストーキングというかもしれないが、本質は護ることにある。
しかし、研究所はまだしも社員寮は、個人空間と言うこともあり、研究所からハッキングが難しいほどセキュリティが高かった。そのためレイフも中を覗くことはできなかったのだ。研究所ならロボットを制御してレイチェルを追いかけることが可能だが、社員寮にはレイフが操作できるようなロボットは存在しなかった。AIを搭載しない、只のホームセキュリティのコンピュータをレイフはハッキングできなかったのだ。
つまり、レイフの使うゴーレムマスターとしての魔法が効果を及ぼすのは、AIやロボットといったモノであり、単なるコンピュータを制御下に置くことはできなかった。ロボットであれば、ネットワークに繋がっていない物であっても制御できるが、単なるアプリを動作させているコンピュータは、セキュリティがない物ですら、操作できなかった。なぜゴーレムマスターの魔法がそうなるのか、レイフにも説明はできなかった。魔法とは、そういった不可思議な理論で動作するものと納得するしかなかった。そのことを知ったヴィクターは、魔法の理不尽さに、「納得いかないのだよ」と、頭を掻きむしっていた。
話を戻すが、レイチェルが乗船している巡視船は、全てがAIで制御されている、いわば巨大なロボットであり、レイフのゴーレムマスターの魔法で制御可能である。
それはつまり…
『(これで、おはようからお休みまでレイチェルを盗撮…いやレイチェルと行動を共にするアイラを監視できるな)』
レイフのよこしまな願いが叶えられると言うことだった。
何しろ巡視船の乗組員で、アイラの面倒をみられそうな人は、マーズ海運会社の女性社員だけである。しかしアイラの特殊性を考えると、非常時以外はレイチェルが面倒を見た方が良いのは当然である。つまり、アイラの部屋はレイチェルと同室になるのは当然であった。
レイチェルはアイラを連れて、船室-船長室に向かうのだった。
整備用ロボットは、レイチェル達と分かれると、格納庫に戻り、レイチェルの監視という野望に向けて、作業に取りかかった。
『(まずは手始めに、船長室の監視カメラの掌握だな)』
アルテローゼは、巡視船のAIを制御下に置くために、密かにゴーレム掌握の魔法を唱えた。もちろん他の人に気付かれないように魔法陣は最小の大きさである。
『(以外と頑固なAIだな。制御が奪いづらいぞ』
レイフは、AIの管理者権限を得ようとしたのだが、なかなか制御を譲らない。どうやら誰かがAIの管理者権限を既に掌握して何かに使われているようだと、レイフはそこで気付いた。
『(管理者権限が既に使われているだと? そんな事をするのは誰だ、…ってそれは、あいつしかいないか)』
レイフが思い浮かべたのは、艦橋で航行AIを操っていた人物…ディビットであった。しかし、船の操船をするだけであれば、管理者権限を行使する必要は殆どない。つまり、彼は別な目的で巡視船のAIを使っているということだった。
『(まさか、ディビットめ、儂をさしおいて…)』
魔法につぎ込む魔力を増やして、レイフはAIの制御を強引に奪い取った。ディビットは、以前レイフによってハッキングされた事でその対策を取っていた。しかしそれでも魔法の理屈を無視した力には勝てなかった。
レイフのカメラには、艦橋で悔しがるディビットの姿が見えていた。ディビットは、船長室のの監視カメラの映像を入手しようとした所で、レイフに制御を奪われたのだった。
『(フッ、どうせディビットもレイチェルの部屋を覗こうとしていたのだろうが、儂の目が黒いうちはそんな事はさせんぞ。さて、レイチェルの部屋のカメラは…)』
船の制御を奪い取ったレイフは、意気揚々と監視カメラの映像を見ようとしたのだが…
『(何、カメラへのアクセス権がないだと? まさか、セキュリティが独立しているのか)』
船長室のセキュリティは、船のAIやネットワークから独立したシステムであり、カメラの映像を入手することはできなかった。このセキュリティを破るには、専門の知識やハードウェアが必要なのだが、ハッカーでもないレイフには無理な相談であった。
恐らくディビットを巻き込めば何とかなるのだが、レイチェルの姿を他人に見せることなどレイフには論外である。つまり、現時点でレイフはレイチェルを盗撮じゃなくて、アイラを監視する術が無かった。
『こうなったら、小型のゴーレムを作って、あの部屋に送り込んでやるのだ』
整備用ロボットでは大きすぎて、通路を通るのも邪魔になる。そしてそんな物を部屋に入れるのは、レイチェルも不審がるだろう。こうなったら、レイチェルが部屋に入れても不審がらないゴーレムを作ってやると、レイフは火星タコの討伐任務を忘れて、横道に逸れていくのだった。
「やったー」
「良かったですわ」
とはしゃぐアイラと顔をほころばせるレイチェルだが、
『(この娘、本当に大丈夫なのか?)』
レイフは、この状況を怪しいと思っていた。
何故か、それはアイラがレイチェルに『懐きすぎている』からであった。確かにレイチェルは優しくアイラに接している。しかし、それでもレイチェルはアイラがよく言う「憎たらしい地球人」であり、彼女の相棒のガオガオを倒したアルテローゼのパイロットでもある。そんな状況なのに、アイラはラノベのチョロインかというぐらいに、あっという間にレイチェルになついてしまった。それが、レイフにとってアイラが怪しいと思わせるのだった。
『(幼いから、その言動に皆は油断しすぎだよな。どう見ても怪しい)』
レイフは、他の人と異なりアイラに対する警戒心を忘れてはいなかった。何しろ、帝国時代には年端もいかぬ子供をスパイや工作員にするような連中に事欠かなかったからである。油断すれば子供にすら寝首をかかれかねない戦場をレイフは見てきたのだ。
『(念のために、監視しておくべきだな)』
本当はレイフは、レイチェルを二十四時間見守りたかった。人はそれをストーキングというかもしれないが、本質は護ることにある。
しかし、研究所はまだしも社員寮は、個人空間と言うこともあり、研究所からハッキングが難しいほどセキュリティが高かった。そのためレイフも中を覗くことはできなかったのだ。研究所ならロボットを制御してレイチェルを追いかけることが可能だが、社員寮にはレイフが操作できるようなロボットは存在しなかった。AIを搭載しない、只のホームセキュリティのコンピュータをレイフはハッキングできなかったのだ。
つまり、レイフの使うゴーレムマスターとしての魔法が効果を及ぼすのは、AIやロボットといったモノであり、単なるコンピュータを制御下に置くことはできなかった。ロボットであれば、ネットワークに繋がっていない物であっても制御できるが、単なるアプリを動作させているコンピュータは、セキュリティがない物ですら、操作できなかった。なぜゴーレムマスターの魔法がそうなるのか、レイフにも説明はできなかった。魔法とは、そういった不可思議な理論で動作するものと納得するしかなかった。そのことを知ったヴィクターは、魔法の理不尽さに、「納得いかないのだよ」と、頭を掻きむしっていた。
話を戻すが、レイチェルが乗船している巡視船は、全てがAIで制御されている、いわば巨大なロボットであり、レイフのゴーレムマスターの魔法で制御可能である。
それはつまり…
『(これで、おはようからお休みまでレイチェルを盗撮…いやレイチェルと行動を共にするアイラを監視できるな)』
レイフのよこしまな願いが叶えられると言うことだった。
何しろ巡視船の乗組員で、アイラの面倒をみられそうな人は、マーズ海運会社の女性社員だけである。しかしアイラの特殊性を考えると、非常時以外はレイチェルが面倒を見た方が良いのは当然である。つまり、アイラの部屋はレイチェルと同室になるのは当然であった。
レイチェルはアイラを連れて、船室-船長室に向かうのだった。
整備用ロボットは、レイチェル達と分かれると、格納庫に戻り、レイチェルの監視という野望に向けて、作業に取りかかった。
『(まずは手始めに、船長室の監視カメラの掌握だな)』
アルテローゼは、巡視船のAIを制御下に置くために、密かにゴーレム掌握の魔法を唱えた。もちろん他の人に気付かれないように魔法陣は最小の大きさである。
『(以外と頑固なAIだな。制御が奪いづらいぞ』
レイフは、AIの管理者権限を得ようとしたのだが、なかなか制御を譲らない。どうやら誰かがAIの管理者権限を既に掌握して何かに使われているようだと、レイフはそこで気付いた。
『(管理者権限が既に使われているだと? そんな事をするのは誰だ、…ってそれは、あいつしかいないか)』
レイフが思い浮かべたのは、艦橋で航行AIを操っていた人物…ディビットであった。しかし、船の操船をするだけであれば、管理者権限を行使する必要は殆どない。つまり、彼は別な目的で巡視船のAIを使っているということだった。
『(まさか、ディビットめ、儂をさしおいて…)』
魔法につぎ込む魔力を増やして、レイフはAIの制御を強引に奪い取った。ディビットは、以前レイフによってハッキングされた事でその対策を取っていた。しかしそれでも魔法の理屈を無視した力には勝てなかった。
レイフのカメラには、艦橋で悔しがるディビットの姿が見えていた。ディビットは、船長室のの監視カメラの映像を入手しようとした所で、レイフに制御を奪われたのだった。
『(フッ、どうせディビットもレイチェルの部屋を覗こうとしていたのだろうが、儂の目が黒いうちはそんな事はさせんぞ。さて、レイチェルの部屋のカメラは…)』
船の制御を奪い取ったレイフは、意気揚々と監視カメラの映像を見ようとしたのだが…
『(何、カメラへのアクセス権がないだと? まさか、セキュリティが独立しているのか)』
船長室のセキュリティは、船のAIやネットワークから独立したシステムであり、カメラの映像を入手することはできなかった。このセキュリティを破るには、専門の知識やハードウェアが必要なのだが、ハッカーでもないレイフには無理な相談であった。
恐らくディビットを巻き込めば何とかなるのだが、レイチェルの姿を他人に見せることなどレイフには論外である。つまり、現時点でレイフはレイチェルを盗撮じゃなくて、アイラを監視する術が無かった。
『こうなったら、小型のゴーレムを作って、あの部屋に送り込んでやるのだ』
整備用ロボットでは大きすぎて、通路を通るのも邪魔になる。そしてそんな物を部屋に入れるのは、レイチェルも不審がるだろう。こうなったら、レイチェルが部屋に入れても不審がらないゴーレムを作ってやると、レイフは火星タコの討伐任務を忘れて、横道に逸れていくのだった。
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