27 / 143
第4話:黒い影
Aパート(3)
しおりを挟む
(ピッ、自爆機能を使用しますか?)
現在の危機的状況からどうやって抜け出すか、悩んでいるレイフにそのようなメッセージが届く。
『(はぁ、自爆機能じゃと? 馬鹿な事を言うな、自爆してはレイチェルが助からぬだろうが)』
ヴィクターの研究してたアルテローゼのシステムは、軍の最新技術であり機密情報の塊である。その秘密が外部に漏れないように、連邦軍は自爆機能の設置をヴィクターに命じたのだ。
もちろんヴィクターはそんな物を実装するつもりは無かったのだが、システム設計上は搭載されていることになっていた。レイフはその設計図を元に忠実にアルテローゼの機体を再構築したため、自爆機能が搭載されてしまったのだ。
『(ふむ、自爆機能とは動力である超伝導バッテリーでキャパシターを過充電してからショートさせて爆発させるシステムか。もちろん自爆前にコクピットは機外に射出するのだろうが、現在は胴体を捕まれたままじゃ。これではレイチェルが脱出できないではないか。しかし、超伝導バッテリーとキャパシターによる爆発は何かに使えそうじゃな)』
他に手が思い浮かばなかったレイフは、自爆システムについて原理と構造を調べていく。これは、自爆するシステムを何かに流用できないかと考えたからである。
「レイフ、私は一体どうすれば良いのですか?」
『シートに座っておれ。いま脱出の手を考えておるのじゃ』
レイチェルは、コクピットで潰される恐怖におびえていた。本当は優しい言葉でも掛けてやりたいところだったが、自爆システムを解析しているレイフにはそんな余裕はなかった。
『(背面のランドセルにも超伝導バッテリーとキャパシターが付いておる。これを爆発させることで、一時的に手の拘束を排除できるやもしれぬ。そして本命の本体の方は自爆ではなく巨人への攻撃として使えれば…)』
電子頭脳として思考するレイフは、その可能性を計算する。科学技術には疎いレイフだが、サブシステムのサポートにより一つの案がまとまった。その成功確率は50%程度と見積もられたが、実現は不可能とサブシステムは警告した。
『(儂の魔法があれば、この案は実現可能じゃ。帝国筆頭魔道士の力の見せ所じゃな)』
システムが実現不可能と判断した部分は、レイフの魔法で100%補えると彼は考えた。成功確率は50%だが、現状のままでは100%レイチェルは助からない。
『よし、方針は決まったのじゃ』
即断即決がレイフの持ち味であり、今までそれで切り抜けてきたのだ。
「どうしますの?」
何とかシートに着席したレイチェルは不安そうにモニターを見つめる。
『レイチェルよ儂の言う通りに、コンソールを操作してほしいのじゃ』
「誰が嫁なのですか。…それで何とかなるのですか?」
『ああ、レイチェルは助かるぞ』
「分かりましたわ。では何時から始めますの?」
ミシリとコクピットがさらに歪み、レイチェルの顔が不安に歪む。
『今すぐ始めるのじゃ』
レイフは、モニターに背面ランドセルの自爆と、アルテローゼ本体の自爆の可否を決める選択肢を表示した。
本当であればレイチェルに知らせずにこの処理は行いたかったが、人命に関わる自爆という行為は、レイフだけでは実行不可能である。必ずレイチェルの許可が必要なのだ。
「自爆って、それでは…」
『大丈夫じゃ、コクピットは自爆前に射出されるのじゃ』
レイフは不安そうなレイチェルに冷静に説明する。
「…レイフは、どうなるのですか?」
『(ちっ、気づきおったか)もちろん、制御コアはコクピットと一緒に射出されるぞ。大丈夫じゃ、儂がレイチェルを一人にするわけがなかろう』
「そうですのね、分かりましたわ」
『もう時間が無い。急ぐのじゃ』
「ええ」
レイチェルが、スティックを操作してアルテローゼの自爆行動を承認する。
『(まあ、制御コアだけが逃げても、ストレージが無くなれば、儂と言う自我は消えてしまうのだろうな)では、開始するぞ』
レイフの合図でまず背面のランドセルのキャパシターが爆発する。その爆発によって、胴体を拘束してた巨人の指が吹き飛びアルテローゼは巨人の手の拘束から解放された。
「きゃあ」
『(第一段階は成功じゃな)』
爆発の衝撃にレイチェルが悲鳴を上げるが、レイフはそれに構っている時間は無かった。
レイフは、バッテリーからキャパシターに電力を充電し、爆発寸前の状態に持っていった。そして右手のドリルを器用に使って、アルテローゼの体から過充電によって赤熱している心臓のようなキャパシターを取り出した。
またキャパシターを取り出す作業と同時に左手の盾を錬金術の工作魔法で丸めて、レイフは簡易の砲身を作り出した。砲身の一方に右手のドリルを装填し、それから過充電のキャパシターをセットする。そう、レイフが作ったのは、ドリルを砲弾としキャパシターを炸薬とした大砲だった。
なぜレイフが大砲を知っていたかというと、帝国時代にも錬金術の研究から黒色火薬が存在し大砲も存在していたからである。火薬と弾の補給を必要とする大砲より魔法の方が使い勝手は良かったため普及はしなかった。しかし、レイフは錬金術で弾を作り、魔法で射出する大砲をゴーレムに装備しようと研究していた。その成果がこの大砲だった。
『きゃぱしたーとやらの爆発力なら、この大砲とドリルで、巨人を破壊できるじゃろう…。短い間であったが、お前に会えて良かったのじゃ。レイチェルよさらばじゃ。フォイアー』
レイフは、コクピットの射出を専用システムに命じ、同時にキャパシターを爆発させるコマンド…自爆コマンドを実行した。
「えっ? レイフ、どういうこと…」
レイフの突然の別れの言葉にレイチェルが疑問の声を上げるが、それを遮るようにコクピットは背面から射出される。すぐさまエアバッグが展開し、コクピットは飛び跳ねながら地面を転がっていった。
そして、キャパシターが爆発すると、砲身から徹甲弾と化したドリルが射出される。レイフの計算通り徹甲弾と化したドリルは巨人の腕を貫き、巨人の胸に…チャンがいるコクピットに向けて吸い込まれていった。
現在の危機的状況からどうやって抜け出すか、悩んでいるレイフにそのようなメッセージが届く。
『(はぁ、自爆機能じゃと? 馬鹿な事を言うな、自爆してはレイチェルが助からぬだろうが)』
ヴィクターの研究してたアルテローゼのシステムは、軍の最新技術であり機密情報の塊である。その秘密が外部に漏れないように、連邦軍は自爆機能の設置をヴィクターに命じたのだ。
もちろんヴィクターはそんな物を実装するつもりは無かったのだが、システム設計上は搭載されていることになっていた。レイフはその設計図を元に忠実にアルテローゼの機体を再構築したため、自爆機能が搭載されてしまったのだ。
『(ふむ、自爆機能とは動力である超伝導バッテリーでキャパシターを過充電してからショートさせて爆発させるシステムか。もちろん自爆前にコクピットは機外に射出するのだろうが、現在は胴体を捕まれたままじゃ。これではレイチェルが脱出できないではないか。しかし、超伝導バッテリーとキャパシターによる爆発は何かに使えそうじゃな)』
他に手が思い浮かばなかったレイフは、自爆システムについて原理と構造を調べていく。これは、自爆するシステムを何かに流用できないかと考えたからである。
「レイフ、私は一体どうすれば良いのですか?」
『シートに座っておれ。いま脱出の手を考えておるのじゃ』
レイチェルは、コクピットで潰される恐怖におびえていた。本当は優しい言葉でも掛けてやりたいところだったが、自爆システムを解析しているレイフにはそんな余裕はなかった。
『(背面のランドセルにも超伝導バッテリーとキャパシターが付いておる。これを爆発させることで、一時的に手の拘束を排除できるやもしれぬ。そして本命の本体の方は自爆ではなく巨人への攻撃として使えれば…)』
電子頭脳として思考するレイフは、その可能性を計算する。科学技術には疎いレイフだが、サブシステムのサポートにより一つの案がまとまった。その成功確率は50%程度と見積もられたが、実現は不可能とサブシステムは警告した。
『(儂の魔法があれば、この案は実現可能じゃ。帝国筆頭魔道士の力の見せ所じゃな)』
システムが実現不可能と判断した部分は、レイフの魔法で100%補えると彼は考えた。成功確率は50%だが、現状のままでは100%レイチェルは助からない。
『よし、方針は決まったのじゃ』
即断即決がレイフの持ち味であり、今までそれで切り抜けてきたのだ。
「どうしますの?」
何とかシートに着席したレイチェルは不安そうにモニターを見つめる。
『レイチェルよ儂の言う通りに、コンソールを操作してほしいのじゃ』
「誰が嫁なのですか。…それで何とかなるのですか?」
『ああ、レイチェルは助かるぞ』
「分かりましたわ。では何時から始めますの?」
ミシリとコクピットがさらに歪み、レイチェルの顔が不安に歪む。
『今すぐ始めるのじゃ』
レイフは、モニターに背面ランドセルの自爆と、アルテローゼ本体の自爆の可否を決める選択肢を表示した。
本当であればレイチェルに知らせずにこの処理は行いたかったが、人命に関わる自爆という行為は、レイフだけでは実行不可能である。必ずレイチェルの許可が必要なのだ。
「自爆って、それでは…」
『大丈夫じゃ、コクピットは自爆前に射出されるのじゃ』
レイフは不安そうなレイチェルに冷静に説明する。
「…レイフは、どうなるのですか?」
『(ちっ、気づきおったか)もちろん、制御コアはコクピットと一緒に射出されるぞ。大丈夫じゃ、儂がレイチェルを一人にするわけがなかろう』
「そうですのね、分かりましたわ」
『もう時間が無い。急ぐのじゃ』
「ええ」
レイチェルが、スティックを操作してアルテローゼの自爆行動を承認する。
『(まあ、制御コアだけが逃げても、ストレージが無くなれば、儂と言う自我は消えてしまうのだろうな)では、開始するぞ』
レイフの合図でまず背面のランドセルのキャパシターが爆発する。その爆発によって、胴体を拘束してた巨人の指が吹き飛びアルテローゼは巨人の手の拘束から解放された。
「きゃあ」
『(第一段階は成功じゃな)』
爆発の衝撃にレイチェルが悲鳴を上げるが、レイフはそれに構っている時間は無かった。
レイフは、バッテリーからキャパシターに電力を充電し、爆発寸前の状態に持っていった。そして右手のドリルを器用に使って、アルテローゼの体から過充電によって赤熱している心臓のようなキャパシターを取り出した。
またキャパシターを取り出す作業と同時に左手の盾を錬金術の工作魔法で丸めて、レイフは簡易の砲身を作り出した。砲身の一方に右手のドリルを装填し、それから過充電のキャパシターをセットする。そう、レイフが作ったのは、ドリルを砲弾としキャパシターを炸薬とした大砲だった。
なぜレイフが大砲を知っていたかというと、帝国時代にも錬金術の研究から黒色火薬が存在し大砲も存在していたからである。火薬と弾の補給を必要とする大砲より魔法の方が使い勝手は良かったため普及はしなかった。しかし、レイフは錬金術で弾を作り、魔法で射出する大砲をゴーレムに装備しようと研究していた。その成果がこの大砲だった。
『きゃぱしたーとやらの爆発力なら、この大砲とドリルで、巨人を破壊できるじゃろう…。短い間であったが、お前に会えて良かったのじゃ。レイチェルよさらばじゃ。フォイアー』
レイフは、コクピットの射出を専用システムに命じ、同時にキャパシターを爆発させるコマンド…自爆コマンドを実行した。
「えっ? レイフ、どういうこと…」
レイフの突然の別れの言葉にレイチェルが疑問の声を上げるが、それを遮るようにコクピットは背面から射出される。すぐさまエアバッグが展開し、コクピットは飛び跳ねながら地面を転がっていった。
そして、キャパシターが爆発すると、砲身から徹甲弾と化したドリルが射出される。レイフの計算通り徹甲弾と化したドリルは巨人の腕を貫き、巨人の胸に…チャンがいるコクピットに向けて吸い込まれていった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。


大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
我ら新興文明保護艦隊
ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら?
もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら?
これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。
※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
大工スキルを授かった貧乏貴族の養子の四男だけど、どうやら大工スキルは伝説の全能スキルだったようです
飼猫タマ
ファンタジー
田舎貴族の四男のヨナン・グラスホッパーは、貧乏貴族の養子。義理の兄弟達は、全員戦闘系のレアスキル持ちなのに、ヨナンだけ貴族では有り得ない生産スキルの大工スキル。まあ、養子だから仕方が無いんだけど。
だがしかし、タダの生産スキルだと思ってた大工スキルは、じつは超絶物凄いスキルだったのだ。その物凄スキルで、生産しまくって超絶金持ちに。そして、婚約者も出来て幸せ絶頂の時に嵌められて、人生ドン底に。だが、ヨナンは、有り得ない逆転の一手を持っていたのだ。しかも、その有り得ない一手を、本人が全く覚えてなかったのはお約束。
勿論、ヨナンを嵌めた奴らは、全員、ザマー百裂拳で100倍返し!
そんなお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる