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第3話:巨人の慟哭
Bパート(5)
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左右の腕を避けたアルテローゼは、巨人にあと一歩で手が届くところまで近寄っていた。射出した腕は背後の重機部隊を突き抜けて言ったため、巨人は今両腕が無い状態だった。
『腕が戻らぬうちに倒してしまうのじゃ』
アルテローゼが右手のドリルを振るうために、一歩進もうとした時、
「いけませんわ」
レイチェルがスティックを引いてアルテローゼを下がらせる。
『何をするのじゃ、レイチェル』
レイフはレイチェルの指示に従って機体をバック・ステップさせながら文句を言うが、
「誰が、嫁ですか。あれは誘いです」
怒り狂って突撃を命じていたレイチェルが、突然冷静にそんなことを言い出す。
『誘いじゃと。何を言っておる…』
レイフが再び文句をつけようとしたところで、アルテローゼの目の前に炎弾がたたきつけられた。レイフが後一歩踏み出していたら、恐らくその炎に包まれていた事は明白だった。どのような状況でも的確な判断を下せる…レイチェルが有人機動兵器のパイロットとして類い希な適正を持っていることが、再び証明されたのだ。
一方巨人のコクピットでは、
「これでも喰らえ~って、これも避けるのかよ。ありえねーぞマジで」
チャンは、必殺を狙った炎弾が避けられた怒りで床を蹴り飛ばしていた。
チャンはアルテローゼが重機部隊から奪った盾を持っていることを見て、普通に炎弾を撃っても避けられると考え、地面にあえて打ち込むことを考えたのだ。しかし、その企みもレイチェルの的確な判断で失敗に終わってしまった。
『しかし、これではうかつに飛び込めないのじゃ』
一方、アルテローゼも接近すると上から炎弾が飛んでくると分かり、唯一の攻撃手段であるドリルがとどく位置まで踏み込めずにいた。
巨人の周りをグルグルと回り隙を窺うが、巨人もその動きに軽々と追従し、そうそう隙は見せてくれなかった。
このままでは千日手になってしまうと、レイフが思ったとき、
「いけ、ちびっ子達」
レイチェルは、いつの間にかちびっ子と名付けていたクレイ・ゴーレム達を巨人に突っ込ませた。アルテローゼに置いてきぼりにされていたゴーレム達だったが、ようやく追いついてきたところだった。半数ほどが巨人の手で破壊されてしまったが、それでも30体程残っていたゴーレム達は背後から巨人に襲いかかった。
「こんな奴らにやられるかよ~」
背後からクレイ・ゴーレムに襲いかかられた巨人は、脚でゴーレム達を蹴りつけて破壊するが、それで倒せたのは数体程度であった。残りのゴーレムは巨人の体によじ登り、その体を叩き始める。
「ええぃ、うっとうしいぞ。腕よ早く戻ってこい」
チャンの呼び声に、腕が大急ぎで戻ってくる。そして再び元の位置に接続しようとした時に、レイチェルが叫んだ。
「ちびっ子達、腕に取り付きなさい」
数体のクレイ・ゴーレムが腕の接合部に取り付き、腕の合体の邪魔をする。しかし、腕はゴーレムを潰しながらも強引に元に戻るのだった。
そして巨人はそろった両腕で、体に群がるゴーレム達を叩きつぶしていった。
『このままでは、クレイ・ゴーレムが全部破壊されてしまうのじゃ。今のうちに攻撃するのじゃ』
レイフは、レイチェルに攻撃を促すが、
「まだですわ。もう少し待つのです」
叩きつぶされるゴーレム達の姿を唇を噛みしめながら見つめ、レイチェルはレイフに待つように指示を出した。
「ふっ、大したことないな此奴らは」
巨人の装甲と質量を相手にするにはクレイ・ゴーレムは小さすぎた。それに元々土から作られたゴーレムは、強度が低く、取り付いて鎧に腕を叩きつけていたが、逆に腕が壊れる有様だった。そして巨人手によって、ゴーレム達は元の土くれに戻ってしまった。巨人の体はクレイ・ゴーレムの残骸により、土まみれになってしまった。
そのときだった、
「アルテローゼ、攻撃を仕掛けるのは今です」
レイチェルが、レイフに攻撃を命じる。
『また、炎弾が飛んでくるのではないか?』
「いいから、側面に回り込んで、攻撃するのです」
『分かったのじゃ』
アルテローゼは、レイチェルの指示に従い、巨人の左側面に回り込んで攻撃を仕掛けようとする。もちろん巨人はそれに追従し体の向きを変えようとしたのだが…。
「体が重いぜ。いってー何がおきたんだ?」
その時になって、チャンは、巨人を重いとおりに動かせないことに気付くのだった。
そう、巨人が動けなくなった原因は、クレイ・ゴーレムの残骸である土のためだった。体に張り付いたクレイ・ゴーレムを叩きつぶしたため、残骸の土が巨人の鎧の隙間にくまなく詰まってしまっていた。それが単なる土であれば問題も小さかっただろうが、クレイ・ゴーレムは滑走路の側にある土で作られており、その体には細かな砂利が多数詰まっていたのだ。そんな物が鎧と本体の隙間に詰まったのだ、巨人が動こうとしても自由がきかないのも当たり前である。
『(レイチェルはこうなることを読んでクレイ・ゴーレムを破壊させたのか…。我が嫁、恐るべしなのじゃ)』
「さあ、貴方の罪を数える時間ですわ」
レイチェルの気合いの入ったスティック操作が、アルテローゼに力を与える。レイフは、右手のドリルを錬金術の工作魔法陣で回転させると、左足の鎧の隙間にねじ込んだ。
ガッ、ギリギギギギギと異音を立てて、巨人の脚にドリルが食い込んでいく。
「…クッ、パワーが足りませんの?」
半ばほどまでドリルは食い込んだが、それ以上は進まない。レイチェルは一旦下がるようにスティックを操作するが、右手が抜けないためアルテローゼは立ち止まってしまった。このままでは、巨人の腕に叩きつぶされてしまう。
「動きが止まったな。体は動かなくても腕は動くんだぜ!」
チャンが吠えると、巨人はその腕をアルテローゼに叩きつけるべく振りかぶった。
『そうはさせぬぞ、ドリル全開なのじゃ』
シャトルが撃墜された時にアルテローゼに流れ込んだ魔力をドリルを回転させる魔法陣に流し込んだ。魔力によってその強度と回転力を強化されたドリルは、一気に巨人の脚を貫き破壊してしまった。
「グギャーッ。俺様の脚が~」
脚を破壊された事が、チャンにどうフィードバックされたのか、巨人は天を仰いで慟哭するのだった。
『腕が戻らぬうちに倒してしまうのじゃ』
アルテローゼが右手のドリルを振るうために、一歩進もうとした時、
「いけませんわ」
レイチェルがスティックを引いてアルテローゼを下がらせる。
『何をするのじゃ、レイチェル』
レイフはレイチェルの指示に従って機体をバック・ステップさせながら文句を言うが、
「誰が、嫁ですか。あれは誘いです」
怒り狂って突撃を命じていたレイチェルが、突然冷静にそんなことを言い出す。
『誘いじゃと。何を言っておる…』
レイフが再び文句をつけようとしたところで、アルテローゼの目の前に炎弾がたたきつけられた。レイフが後一歩踏み出していたら、恐らくその炎に包まれていた事は明白だった。どのような状況でも的確な判断を下せる…レイチェルが有人機動兵器のパイロットとして類い希な適正を持っていることが、再び証明されたのだ。
一方巨人のコクピットでは、
「これでも喰らえ~って、これも避けるのかよ。ありえねーぞマジで」
チャンは、必殺を狙った炎弾が避けられた怒りで床を蹴り飛ばしていた。
チャンはアルテローゼが重機部隊から奪った盾を持っていることを見て、普通に炎弾を撃っても避けられると考え、地面にあえて打ち込むことを考えたのだ。しかし、その企みもレイチェルの的確な判断で失敗に終わってしまった。
『しかし、これではうかつに飛び込めないのじゃ』
一方、アルテローゼも接近すると上から炎弾が飛んでくると分かり、唯一の攻撃手段であるドリルがとどく位置まで踏み込めずにいた。
巨人の周りをグルグルと回り隙を窺うが、巨人もその動きに軽々と追従し、そうそう隙は見せてくれなかった。
このままでは千日手になってしまうと、レイフが思ったとき、
「いけ、ちびっ子達」
レイチェルは、いつの間にかちびっ子と名付けていたクレイ・ゴーレム達を巨人に突っ込ませた。アルテローゼに置いてきぼりにされていたゴーレム達だったが、ようやく追いついてきたところだった。半数ほどが巨人の手で破壊されてしまったが、それでも30体程残っていたゴーレム達は背後から巨人に襲いかかった。
「こんな奴らにやられるかよ~」
背後からクレイ・ゴーレムに襲いかかられた巨人は、脚でゴーレム達を蹴りつけて破壊するが、それで倒せたのは数体程度であった。残りのゴーレムは巨人の体によじ登り、その体を叩き始める。
「ええぃ、うっとうしいぞ。腕よ早く戻ってこい」
チャンの呼び声に、腕が大急ぎで戻ってくる。そして再び元の位置に接続しようとした時に、レイチェルが叫んだ。
「ちびっ子達、腕に取り付きなさい」
数体のクレイ・ゴーレムが腕の接合部に取り付き、腕の合体の邪魔をする。しかし、腕はゴーレムを潰しながらも強引に元に戻るのだった。
そして巨人はそろった両腕で、体に群がるゴーレム達を叩きつぶしていった。
『このままでは、クレイ・ゴーレムが全部破壊されてしまうのじゃ。今のうちに攻撃するのじゃ』
レイフは、レイチェルに攻撃を促すが、
「まだですわ。もう少し待つのです」
叩きつぶされるゴーレム達の姿を唇を噛みしめながら見つめ、レイチェルはレイフに待つように指示を出した。
「ふっ、大したことないな此奴らは」
巨人の装甲と質量を相手にするにはクレイ・ゴーレムは小さすぎた。それに元々土から作られたゴーレムは、強度が低く、取り付いて鎧に腕を叩きつけていたが、逆に腕が壊れる有様だった。そして巨人手によって、ゴーレム達は元の土くれに戻ってしまった。巨人の体はクレイ・ゴーレムの残骸により、土まみれになってしまった。
そのときだった、
「アルテローゼ、攻撃を仕掛けるのは今です」
レイチェルが、レイフに攻撃を命じる。
『また、炎弾が飛んでくるのではないか?』
「いいから、側面に回り込んで、攻撃するのです」
『分かったのじゃ』
アルテローゼは、レイチェルの指示に従い、巨人の左側面に回り込んで攻撃を仕掛けようとする。もちろん巨人はそれに追従し体の向きを変えようとしたのだが…。
「体が重いぜ。いってー何がおきたんだ?」
その時になって、チャンは、巨人を重いとおりに動かせないことに気付くのだった。
そう、巨人が動けなくなった原因は、クレイ・ゴーレムの残骸である土のためだった。体に張り付いたクレイ・ゴーレムを叩きつぶしたため、残骸の土が巨人の鎧の隙間にくまなく詰まってしまっていた。それが単なる土であれば問題も小さかっただろうが、クレイ・ゴーレムは滑走路の側にある土で作られており、その体には細かな砂利が多数詰まっていたのだ。そんな物が鎧と本体の隙間に詰まったのだ、巨人が動こうとしても自由がきかないのも当たり前である。
『(レイチェルはこうなることを読んでクレイ・ゴーレムを破壊させたのか…。我が嫁、恐るべしなのじゃ)』
「さあ、貴方の罪を数える時間ですわ」
レイチェルの気合いの入ったスティック操作が、アルテローゼに力を与える。レイフは、右手のドリルを錬金術の工作魔法陣で回転させると、左足の鎧の隙間にねじ込んだ。
ガッ、ギリギギギギギと異音を立てて、巨人の脚にドリルが食い込んでいく。
「…クッ、パワーが足りませんの?」
半ばほどまでドリルは食い込んだが、それ以上は進まない。レイチェルは一旦下がるようにスティックを操作するが、右手が抜けないためアルテローゼは立ち止まってしまった。このままでは、巨人の腕に叩きつぶされてしまう。
「動きが止まったな。体は動かなくても腕は動くんだぜ!」
チャンが吠えると、巨人はその腕をアルテローゼに叩きつけるべく振りかぶった。
『そうはさせぬぞ、ドリル全開なのじゃ』
シャトルが撃墜された時にアルテローゼに流れ込んだ魔力をドリルを回転させる魔法陣に流し込んだ。魔力によってその強度と回転力を強化されたドリルは、一気に巨人の脚を貫き破壊してしまった。
「グギャーッ。俺様の脚が~」
脚を破壊された事が、チャンにどうフィードバックされたのか、巨人は天を仰いで慟哭するのだった。
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