ゴーレムマスターの愛した人型兵器

お化け屋敷

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第3話:巨人の慟哭

Bパート(3)

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 ロケットエンジンにより、通常の倍の加速で滑走路を走るシャトル。瞬く間に離陸速度に達すると、白い煙の尾を引きながら一気に大空を駆け上がっていく。こうなれば革命軍の兵士達も手を出すことはできない。それに仮にシャトルにとどくレーザー砲やミサイルを持っていたとしても、プロテクション・フロム・ミサイルの力場はまだ有効なのだ。

『よし、これで目的は達成したのじゃ。レイチェルこれで良いのじゃな?』

「アルテローゼ、ありがとう。おかげでシャトルを逃がすことができましたわ。後は私たちが逃げるだけですわ」

 レイチェルはそう言ってにっこりとモニターに微笑んだ。

『(おお、レイチェルの最高の笑顔じゃ~。記録するのじゃ~)』

 レイフは、どこから知ったのかRECボタンを押してレイチェルの笑顔を保存するのだった。

 二人が何となく和み、革命軍の兵士達は飛び去るシャトルを見て呆然としてた…その時だった、アルテローゼに通信が入ったのは。

『レイチェル、逃げるんだ。そこは危ない』

 通信を送ってきたのはレイチェルの父ヴィクターであった。

「えっ、お父様? はい、シャトルは飛び立ちましたわ。後は革命軍から逃げ出すだけですわ…」

『そんな事を言っているのではない。早くその場から逃げるんだ。早く…』

 ヴィクターの切羽詰まった通信に、レイチェルは戸惑っていた。

『一体、どうしたのじゃ』

 アルテローゼレイフは、ヴィクターが何を焦っているのかを確かめるべく、周囲を見回し、レーダー反応をチェックする。

『ん、何じゃこれは?』

 そこでレイフは、レーダーに妙な物体が映っていることに気づいた。大きさは10メートルほどの物体で、それは狙い澄ましたかのようにシャトルに向かって飛んで行くのが分かった。

『あれは…何じゃ?』

 アルテローゼレイフのカメラが捉えたのは、空を飛ぶ巨大な手だった。アルテローゼの胴体ほどの巨大な右手が、炎を吹き出しながらシャトルに向かっていく光景がモニターに映し出される。

「何なのあれは?」

 レイチェルはモニターに映った光景を見て、驚く。

 レイフとレイチェルが唖然と見守る中、右手はグーの形をとると、そのままシャトルに衝突する。まだプロテクション・フロム・ミサイルの力場は有効だが、レーザーやミサイルとは桁違いの質量なのだ、さすがに飛び道具を無効化する魔法といえども限界は存在する。いや、空飛ぶ手による攻撃は、飛び道具じゃないかもれしれない。

「お願い逃げて。逃げて…」

 レイチェルは、うなされたようにシャトルの機長に通信を送るが、ロケットエンジンで加速中のシャトルに、軌道変更などできるわけもなく。

 ズドーン

 シャトルは右手に貫かれ、バラバラに爆発四散してしまった。搭乗していた人達の運命は言わずもがなであり、助かる見込みは無かった。

「そんな…ありえま…せんわ」

 レイチェルのスティックを握る手がガタガタと震え、つい先ほどまで通信で話してた機長や副機長の顔がレイチェルの脳裏をよぎる。そしてスティックを握るその手にポタリと涙が零れ落ちた。

 突然の出来事に茫然自失状態のレイチェルに対し、レイフの方は別な理由で動けなくなっていた。

『(何じゃ、この魔力マナの高まりは。アルテローゼ魔力マナが流れ込んでくるのじゃ)』

 シャトルの爆発と同時に、アルテローゼレイフは膨大な魔力マナの流れに飲み込まれていた。人の目には見えないその流れは、シャトルの爆発地点からアルテローゼともう一つ別な場所に流れていた。

『(これだけの魔力マナが一体どうして発生したんじゃ。あの爆発した場所から発生しているようじゃが…まさか、あのシャトルとやらには大勢の人が乗っていた。それが死んだという事は…)』

 国家レベルで行う儀式魔法では大量の魔力マナが必要とされる。普通は複数の魔道士が共同作業をすることで魔力マナを確保する。しかし魔道士の数が足りず魔力マナが足りない場合、とある方法で魔力マナを得ることができるのだ。その方法は国家の間で禁忌とされ、使うことは禁止されていた。
 レイフは、帝国の筆頭魔道士としてその禁忌の方法をよく知っていた。

『ばかな、何ら下準備も無しでそんな事を起こせる訳がないのじゃ。アレを行うには、その場を固定する魔法陣が必要じゃ。一体何処にそんな物があるというのじゃ』

 アルテローゼレイフはきょろきょろと辺りを見回すが、レイフが探しているような魔法陣は何処にも見当たらなかった。




 その頃、革命軍の兵士達もシャトルが撃墜されたことに驚いていた。彼等の目標はシャトルに搭乗していた重要人物の殺害ではなく拉致して人質とすることだった。そう、殺してしまっては交渉には使えないのだ。それに非武装の政治家や民間人をあのような方法で殺してしまっては、地球連邦だけではなく月や金星、そしてマーズリアン火星人からも非難の目を向けられてしまうだろう。
 人民を味方に付けたい革命軍としては、シャトルの撃墜は悪手中の悪手だったのだ。

「…チャン、どうしてシャトルを撃墜したんだ」

 重傷を負って衛生兵から治療を受けている指揮官が、巨人に通信を送った。

「そりゃ、彼奴らを逃しちゃ駄目だからですよ。地球連邦の連中は皆殺しにしなきゃなー」

 チャンは、戻ってきた巨人の右腕を元に戻すと、格納庫を破壊しながら空港に乗り込んできた。

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