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第3話:巨人の慟哭
Bパート(1)
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『さて、この状況、どうやってシャトルとやらを護りきればよいのじゃ』
レイフによって施されたプロテクション・フロム・ミサイルによって、シャトルは射撃武器によって破壊されることはななくなった。だが、重機に接近されて攻撃されてしまえば、プロテクション・フロム・ミサイルの意味はない。つまり重機部隊をシャトルに近づけさせては駄目なのだ。
『問題なのは、数が多すぎることじゃ』
大型の重機4両は行動不能としたが、中型や小型の重機は、約100両ほど。とてもアルテローゼ一体で防ぎきれる数ではない。
『せめてゴーレムがいればの~』
レイフは、もう二度と手には戻らぬ、筆頭魔道士時代に指揮したゴーレム部隊に思いを寄せた。アイアン、ストーン、そしてアダマンタイトで作られたあのゴーレム達があれば、あの程度の敵は鎧袖一触で蹴散らせるだろう。
思わず0.5秒ほどゴーレム部隊を懐かしんだレイフは、そこでふと気がついた。
『そうじゃ、なければ作れば良いのじゃ』
確かに帝国時代に作ったゴーレム部隊のような精強なゴーレムを作るのは不可能だ。しかし、単純な動作を行うだけのゴーレムであれば、レイフであれば簡単に作成できる。そう世界最高峰のゴーレムマスターであるレイフに、それができないわけがないのだ。
…ただし、レイフにその魔力があればなのだが。
『ナレーションめ余計な心配じゃ。今の儂はなぜか魔力が満ちあふれている。これならクレイ・ゴーレムの百や二百程度作れるはずじゃ。ははは、素晴らしいぞ。栄光のゴーレム軍団を作り出してやるのだ』
アルテローゼが腰に手を当てて高笑いしていると、
「アルテローゼ、ナレーションとは誰なのですか? できれば、シャトルの機長さんにどうすれば良いのか、指示を出してほしいのですが」
先ほどからシャトルの機長と副機長に現在の状況を説明していたレイチェルが、レイフの高笑いを聞いて、あきれた顔をしていた。
彼女はシャトルの機長への状況説明をレイフに交代してほしかったみたいだったが、
『今は忙しいのじゃ。それにそういった説明はレイチェルの役目なのじゃ』
「また、嫁とおっしゃいましたわね。私はアルテローゼのパイロットであって、嫁ではありませんわ」
レイチェルがモニターに向かって何か叫んでいたが、レイフは無視して意識を機体の外に集中させた。
『(この滑走路とやらは破壊しない方が良いらしいの。では周りの土を使って作り出すのじゃ) さすがに印を結ばずに事をなすことはできぬか…。ふん、』
アルテローゼが気合いを込めて右手と左手をクロスさせ奇妙な印を結ぶと、滑走路脇の盛り土の部分に幾つもの魔法陣が浮かび上がった。
『土塊よ、形をなして我に従え…クリエイト・ゴーレムじゃ』
レイフの言葉が、モニターだけではなく外部スピーカーに出力される。その力ある言葉とともに魔法陣の中央の土が盛り上がると、全高3メートルほどのクレイ・ゴーレムが次々と立ち上がった。
アルテローゼのモニターには、友軍のロボット兵器として総数80体が表示された。
『うむ、なかなかの出来なのじゃ。これでようやく戦いになるのじゃ。…レイチェル、半数の指揮は預けるから、左側面の部隊を食い止めるのじゃ。儂は残りを率いて正面の敵を蹴散らすのじゃ』
「えっ、どうして突然味方が出現するの? アルテローゼ、貴方いったい何をしたの?」
『良いから、ゴーレムを指揮するのじゃ。それぐらい儂の嫁ならできるのじゃ』
「だから、嫁じゃありません。…ロボット兵器のオペレートなら任せてもらって結構ですわ」
レイチェルは、戸惑いながらもモニターに表示されたゴーレムのオペレートを始めた。
ロボット兵器のオペレートは、そのAIのレベルによって異なる。レイフが作り出したクレイ・ゴーレムは、最低レベルのAIが搭載している扱いで、細かな指示はできず、ゴーレムの移動と攻撃の目標を指定するだけであった。
そんなゴーレムと戦う革命軍の重機だが、数はほぼ同数で相手は射撃武装を持っており、クレイ・ゴーレムは格闘戦しかできない。普通に正面からぶつかれあっという間に負けてしまうのは明白だった。
「無理に戦う必要はありませんわ。シャトルに近づけさせなければ良いのです」
レイチェルはレーザー兵器がクレイ・ゴーレムに対して効き目が薄い事を見て取ると、防御に徹した方円陣を組ませグルグルと回転させることでシャトルへ近づけないようにオペレートしていた。
『(なかなかレイチェルもやるではないか。) 儂もがんばらないとな』
レイフはレイチェルのオペレーションを見て、なかなかやるなと感心する。そして彼自身は残りのクレイ・ゴーレムを引き連れ、滑走路正面に陣取る重機部隊に突撃していくのだった。
レイフによって施されたプロテクション・フロム・ミサイルによって、シャトルは射撃武器によって破壊されることはななくなった。だが、重機に接近されて攻撃されてしまえば、プロテクション・フロム・ミサイルの意味はない。つまり重機部隊をシャトルに近づけさせては駄目なのだ。
『問題なのは、数が多すぎることじゃ』
大型の重機4両は行動不能としたが、中型や小型の重機は、約100両ほど。とてもアルテローゼ一体で防ぎきれる数ではない。
『せめてゴーレムがいればの~』
レイフは、もう二度と手には戻らぬ、筆頭魔道士時代に指揮したゴーレム部隊に思いを寄せた。アイアン、ストーン、そしてアダマンタイトで作られたあのゴーレム達があれば、あの程度の敵は鎧袖一触で蹴散らせるだろう。
思わず0.5秒ほどゴーレム部隊を懐かしんだレイフは、そこでふと気がついた。
『そうじゃ、なければ作れば良いのじゃ』
確かに帝国時代に作ったゴーレム部隊のような精強なゴーレムを作るのは不可能だ。しかし、単純な動作を行うだけのゴーレムであれば、レイフであれば簡単に作成できる。そう世界最高峰のゴーレムマスターであるレイフに、それができないわけがないのだ。
…ただし、レイフにその魔力があればなのだが。
『ナレーションめ余計な心配じゃ。今の儂はなぜか魔力が満ちあふれている。これならクレイ・ゴーレムの百や二百程度作れるはずじゃ。ははは、素晴らしいぞ。栄光のゴーレム軍団を作り出してやるのだ』
アルテローゼが腰に手を当てて高笑いしていると、
「アルテローゼ、ナレーションとは誰なのですか? できれば、シャトルの機長さんにどうすれば良いのか、指示を出してほしいのですが」
先ほどからシャトルの機長と副機長に現在の状況を説明していたレイチェルが、レイフの高笑いを聞いて、あきれた顔をしていた。
彼女はシャトルの機長への状況説明をレイフに交代してほしかったみたいだったが、
『今は忙しいのじゃ。それにそういった説明はレイチェルの役目なのじゃ』
「また、嫁とおっしゃいましたわね。私はアルテローゼのパイロットであって、嫁ではありませんわ」
レイチェルがモニターに向かって何か叫んでいたが、レイフは無視して意識を機体の外に集中させた。
『(この滑走路とやらは破壊しない方が良いらしいの。では周りの土を使って作り出すのじゃ) さすがに印を結ばずに事をなすことはできぬか…。ふん、』
アルテローゼが気合いを込めて右手と左手をクロスさせ奇妙な印を結ぶと、滑走路脇の盛り土の部分に幾つもの魔法陣が浮かび上がった。
『土塊よ、形をなして我に従え…クリエイト・ゴーレムじゃ』
レイフの言葉が、モニターだけではなく外部スピーカーに出力される。その力ある言葉とともに魔法陣の中央の土が盛り上がると、全高3メートルほどのクレイ・ゴーレムが次々と立ち上がった。
アルテローゼのモニターには、友軍のロボット兵器として総数80体が表示された。
『うむ、なかなかの出来なのじゃ。これでようやく戦いになるのじゃ。…レイチェル、半数の指揮は預けるから、左側面の部隊を食い止めるのじゃ。儂は残りを率いて正面の敵を蹴散らすのじゃ』
「えっ、どうして突然味方が出現するの? アルテローゼ、貴方いったい何をしたの?」
『良いから、ゴーレムを指揮するのじゃ。それぐらい儂の嫁ならできるのじゃ』
「だから、嫁じゃありません。…ロボット兵器のオペレートなら任せてもらって結構ですわ」
レイチェルは、戸惑いながらもモニターに表示されたゴーレムのオペレートを始めた。
ロボット兵器のオペレートは、そのAIのレベルによって異なる。レイフが作り出したクレイ・ゴーレムは、最低レベルのAIが搭載している扱いで、細かな指示はできず、ゴーレムの移動と攻撃の目標を指定するだけであった。
そんなゴーレムと戦う革命軍の重機だが、数はほぼ同数で相手は射撃武装を持っており、クレイ・ゴーレムは格闘戦しかできない。普通に正面からぶつかれあっという間に負けてしまうのは明白だった。
「無理に戦う必要はありませんわ。シャトルに近づけさせなければ良いのです」
レイチェルはレーザー兵器がクレイ・ゴーレムに対して効き目が薄い事を見て取ると、防御に徹した方円陣を組ませグルグルと回転させることでシャトルへ近づけないようにオペレートしていた。
『(なかなかレイチェルもやるではないか。) 儂もがんばらないとな』
レイフはレイチェルのオペレーションを見て、なかなかやるなと感心する。そして彼自身は残りのクレイ・ゴーレムを引き連れ、滑走路正面に陣取る重機部隊に突撃していくのだった。
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