12 / 143
第2話:宣戦布告
エンディング
しおりを挟む
(エンディングが流れながら…)
火星革命戦線の司令室では、サトシがカメラを前に、放送を行っていた。
「我々火星革命戦線は、地球連邦政府の圧政に苦しむマーズリアンの解放と、真の自由を勝ち取るために、ここに地球連邦政府へ宣戦布告し、更に火星の独立を宣言する」
それは火星の独立を宣言し、地球連邦に宣戦戦布告する物だった。
そして火星各地のTVや街頭モニターに、サトシの演説が流れるとともに、各地で「独立万歳」や「火星革命戦線に俺も参加するぞ」との声が上がっていくのだった。
◇
シャトルの離陸を阻止すべく、滑走路を走る重機部隊。このままではシャトルの離陸が阻止されると思われたそのとき…。
「やらせませんわ」
若い女性の声とともに、巨大な人影が滑走路側の倉庫から飛び出す。
「アレは一体何なのだ?」
革命軍の重機パイロットが指さすのは、もちろんアルテローゼだった。中世の甲冑のような装甲を纏った純白の機体は、飛び出した勢いのまま先頭を走る重機を蹴り飛ばした。
全高18メートルの人型が繰り出す蹴りを受けたのは、速度に優れる5メートルほどの小型重機であった。突然のことに盾をかざす間もなく、重機はそのまま横転していき、動かなくなった。
「きゃあー」
もちろん蹴り繰り出したアルテローゼにもその反動が来るわけで、レイチェルはコクピット内で激しく揺さぶられ、悲鳴を上げていた。
『レイチェル! 大丈夫か?』
レイフは慌ててコクピットの様子を確認するが、レイチェルは衝撃で気絶していた。試作機レベルのアルテローゼのコクピットは、歩いたり走ったりする程度の衝撃に何とか耐えられる程度の耐G能力しか無かった。
そんな機体で重機を蹴飛ばせば、衝撃で悲惨なことになるのは当然だった。
『肉弾戦を続けるとレイチェルの身が持たないのじゃ。まさかゴーレム内に人を乗せるのに、こんな設計とは…これでは駄目なのじゃ』
レイフも様々なゴーレムを作ってきたが、人を体内に入れるという非常識なゴーレムを作ったことはない。なぜならゴーレムの激しい動きに人が付いてこれない事ぐらい普通に考えれば分かることなのだ。このゴーレムの設計者は愚かであるとレイフは思ったが、実際レイチェルが乗り込んでいる以上、対策を取る必要がある。
そして、世界最高のゴーレムマスターであるレイフにとって、その程度のことを解決するのは朝飯前のことであった。
『これなら振り回されても安全なのじゃ』
レイフは、コクピットの床に魔方陣を描いた。椅子の下に描かれたそれは、巨人のコクピットに描かれていた物と酷似していた。
『フォーリングコントロールは衝撃を和らげるのじゃ』
高い所から落ちたときに、その落下速度を和らげ安全に着地する魔法が『フォーリングコントロール』である。魔法使いなら誰でも使える魔法だが、実はこれは上下左右全ての動きに対応している。そしてその効果は突き飛ばされるといった衝撃も打ち消してしまう事をレイフはよく知っていた。
つまり、『フォーリングコントロール』の魔方陣として常時発動させておけば、その上にいる者はあらゆる衝撃から身を守ることができるのだ。
『もちろん、魔力の供給が途絶えなければじゃが…。しかし、これほどの魔力をどうして儂は持っているのじゃ?』
なぜか現在のレイフの体…いや、アルテローゼの機体には、あふれんばかりの魔力が満ちていた。『フォーリングコントロール』を維持する魔力など大した問題ではなかった。
レイフとしては、本当は今すぐにでも自分の機体を調査して、その原因を突き止めたかったが、今はそんな状況ではなかった。
先頭を走っていた重機がやられたため、重機部隊の動きはアルテローゼを取り囲むような形になっていた。
「新型のロボット兵器? いや、もしかして巨人なのか?」
指揮官は、最初アルテローゼを連邦軍の新型兵器と考えたが、その連邦軍の兵器とは異なる外観に、巨人と同一の兵器ではないかと考え直した。
「あれを無視していくのは被害が増えそうだな。…見たところ射撃武装はない。飛び道具でさっさと片付けるんだ」
革命軍の重機も飛び道具として、レーザートーチを改良したレーザー砲や犯罪組織から購入した歩兵携行式多目的ミサイルを装備していた。大シルチス高原の戦闘で多数使用したので残弾も少なく、購入した金額を考えるとなるべく使いたくはないのだが、今はコストより時間である。
指揮官の命令を受け、重機の背面にタンクデサント状態で搭乗していた兵士の何人かが滑走路に飛び降り、ランチャーを構えるとアルテローゼに向けてミサイルを放った。
『何じゃアレは…と、対戦車ミサイルじゃと?』
現代人ではないレイフには、当然のことながらミサイルの知識は無い。しかしアルテローゼのデータベースにはミサイルの諸元データが入っており、それにアクセスしたレイフはその威力を知ってしまった。
最初に飛び込んできたミサイルをレイフは右手で殴りつけて何とか撃墜した。しかしミサイルの爆発で、アルテローゼの右手は肘から先が消し飛んでしまった。
『バリスタどころの威力ではない。まるで炎の上級魔法並ではないか。こんな物を喰らっては…』
そして、右手を失ったアルテローゼに次々と対戦車ミサイルが襲いかかるのだった。
火星革命戦線の司令室では、サトシがカメラを前に、放送を行っていた。
「我々火星革命戦線は、地球連邦政府の圧政に苦しむマーズリアンの解放と、真の自由を勝ち取るために、ここに地球連邦政府へ宣戦布告し、更に火星の独立を宣言する」
それは火星の独立を宣言し、地球連邦に宣戦戦布告する物だった。
そして火星各地のTVや街頭モニターに、サトシの演説が流れるとともに、各地で「独立万歳」や「火星革命戦線に俺も参加するぞ」との声が上がっていくのだった。
◇
シャトルの離陸を阻止すべく、滑走路を走る重機部隊。このままではシャトルの離陸が阻止されると思われたそのとき…。
「やらせませんわ」
若い女性の声とともに、巨大な人影が滑走路側の倉庫から飛び出す。
「アレは一体何なのだ?」
革命軍の重機パイロットが指さすのは、もちろんアルテローゼだった。中世の甲冑のような装甲を纏った純白の機体は、飛び出した勢いのまま先頭を走る重機を蹴り飛ばした。
全高18メートルの人型が繰り出す蹴りを受けたのは、速度に優れる5メートルほどの小型重機であった。突然のことに盾をかざす間もなく、重機はそのまま横転していき、動かなくなった。
「きゃあー」
もちろん蹴り繰り出したアルテローゼにもその反動が来るわけで、レイチェルはコクピット内で激しく揺さぶられ、悲鳴を上げていた。
『レイチェル! 大丈夫か?』
レイフは慌ててコクピットの様子を確認するが、レイチェルは衝撃で気絶していた。試作機レベルのアルテローゼのコクピットは、歩いたり走ったりする程度の衝撃に何とか耐えられる程度の耐G能力しか無かった。
そんな機体で重機を蹴飛ばせば、衝撃で悲惨なことになるのは当然だった。
『肉弾戦を続けるとレイチェルの身が持たないのじゃ。まさかゴーレム内に人を乗せるのに、こんな設計とは…これでは駄目なのじゃ』
レイフも様々なゴーレムを作ってきたが、人を体内に入れるという非常識なゴーレムを作ったことはない。なぜならゴーレムの激しい動きに人が付いてこれない事ぐらい普通に考えれば分かることなのだ。このゴーレムの設計者は愚かであるとレイフは思ったが、実際レイチェルが乗り込んでいる以上、対策を取る必要がある。
そして、世界最高のゴーレムマスターであるレイフにとって、その程度のことを解決するのは朝飯前のことであった。
『これなら振り回されても安全なのじゃ』
レイフは、コクピットの床に魔方陣を描いた。椅子の下に描かれたそれは、巨人のコクピットに描かれていた物と酷似していた。
『フォーリングコントロールは衝撃を和らげるのじゃ』
高い所から落ちたときに、その落下速度を和らげ安全に着地する魔法が『フォーリングコントロール』である。魔法使いなら誰でも使える魔法だが、実はこれは上下左右全ての動きに対応している。そしてその効果は突き飛ばされるといった衝撃も打ち消してしまう事をレイフはよく知っていた。
つまり、『フォーリングコントロール』の魔方陣として常時発動させておけば、その上にいる者はあらゆる衝撃から身を守ることができるのだ。
『もちろん、魔力の供給が途絶えなければじゃが…。しかし、これほどの魔力をどうして儂は持っているのじゃ?』
なぜか現在のレイフの体…いや、アルテローゼの機体には、あふれんばかりの魔力が満ちていた。『フォーリングコントロール』を維持する魔力など大した問題ではなかった。
レイフとしては、本当は今すぐにでも自分の機体を調査して、その原因を突き止めたかったが、今はそんな状況ではなかった。
先頭を走っていた重機がやられたため、重機部隊の動きはアルテローゼを取り囲むような形になっていた。
「新型のロボット兵器? いや、もしかして巨人なのか?」
指揮官は、最初アルテローゼを連邦軍の新型兵器と考えたが、その連邦軍の兵器とは異なる外観に、巨人と同一の兵器ではないかと考え直した。
「あれを無視していくのは被害が増えそうだな。…見たところ射撃武装はない。飛び道具でさっさと片付けるんだ」
革命軍の重機も飛び道具として、レーザートーチを改良したレーザー砲や犯罪組織から購入した歩兵携行式多目的ミサイルを装備していた。大シルチス高原の戦闘で多数使用したので残弾も少なく、購入した金額を考えるとなるべく使いたくはないのだが、今はコストより時間である。
指揮官の命令を受け、重機の背面にタンクデサント状態で搭乗していた兵士の何人かが滑走路に飛び降り、ランチャーを構えるとアルテローゼに向けてミサイルを放った。
『何じゃアレは…と、対戦車ミサイルじゃと?』
現代人ではないレイフには、当然のことながらミサイルの知識は無い。しかしアルテローゼのデータベースにはミサイルの諸元データが入っており、それにアクセスしたレイフはその威力を知ってしまった。
最初に飛び込んできたミサイルをレイフは右手で殴りつけて何とか撃墜した。しかしミサイルの爆発で、アルテローゼの右手は肘から先が消し飛んでしまった。
『バリスタどころの威力ではない。まるで炎の上級魔法並ではないか。こんな物を喰らっては…』
そして、右手を失ったアルテローゼに次々と対戦車ミサイルが襲いかかるのだった。
0
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

貧弱の英雄
カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。
貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。
自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる――
※修正要請のコメントは対処後に削除します。
我ら新興文明保護艦隊
ビーデシオン
SF
もしも道行く野良猫が、百戦錬磨の獣戦士だったら?
もしも冴えないサラリーマンが、戦争上がりのアンドロイドだったら?
これは、実際にそんな空想めいた素性をもって、陰ながら地球を守っているエージェントたちのお話。
※表紙絵はひのたけきょー(@HinotakeDaYo)様より頂きました!

クラス転移したからクラスの奴に復讐します
wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。
ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。
だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。
クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。
まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。
閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。
追伸、
雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。
気になった方は是非読んでみてください。
英雄召喚〜帝国貴族の異世界統一戦記〜
駄作ハル
ファンタジー
異世界の大貴族レオ=ウィルフリードとして転生した平凡サラリーマン。
しかし、待っていたのは平和な日常などではなかった。急速な領土拡大を目論む帝国の貴族としての日々は、戦いの連続であった───
そんなレオに与えられたスキル『英雄召喚』。それは現世で英雄と呼ばれる人々を呼び出す能力。『鬼の副長』土方歳三、『臥龍』所轄孔明、『空の魔王』ハンス=ウルリッヒ・ルーデル、『革命の申し子』ナポレオン・ボナパルト、『万能人』レオナルド・ダ・ヴィンチ。
前世からの知識と英雄たちの逸話にまつわる能力を使い、大切な人を守るべく争いにまみれた異世界に平和をもたらす為の戦いが幕を開ける!
完結まで毎日投稿!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる