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第2話:宣戦布告
エンディング
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(エンディングが流れながら…)
火星革命戦線の司令室では、サトシがカメラを前に、放送を行っていた。
「我々火星革命戦線は、地球連邦政府の圧政に苦しむマーズリアンの解放と、真の自由を勝ち取るために、ここに地球連邦政府へ宣戦布告し、更に火星の独立を宣言する」
それは火星の独立を宣言し、地球連邦に宣戦戦布告する物だった。
そして火星各地のTVや街頭モニターに、サトシの演説が流れるとともに、各地で「独立万歳」や「火星革命戦線に俺も参加するぞ」との声が上がっていくのだった。
◇
シャトルの離陸を阻止すべく、滑走路を走る重機部隊。このままではシャトルの離陸が阻止されると思われたそのとき…。
「やらせませんわ」
若い女性の声とともに、巨大な人影が滑走路側の倉庫から飛び出す。
「アレは一体何なのだ?」
革命軍の重機パイロットが指さすのは、もちろんアルテローゼだった。中世の甲冑のような装甲を纏った純白の機体は、飛び出した勢いのまま先頭を走る重機を蹴り飛ばした。
全高18メートルの人型が繰り出す蹴りを受けたのは、速度に優れる5メートルほどの小型重機であった。突然のことに盾をかざす間もなく、重機はそのまま横転していき、動かなくなった。
「きゃあー」
もちろん蹴り繰り出したアルテローゼにもその反動が来るわけで、レイチェルはコクピット内で激しく揺さぶられ、悲鳴を上げていた。
『レイチェル! 大丈夫か?』
レイフは慌ててコクピットの様子を確認するが、レイチェルは衝撃で気絶していた。試作機レベルのアルテローゼのコクピットは、歩いたり走ったりする程度の衝撃に何とか耐えられる程度の耐G能力しか無かった。
そんな機体で重機を蹴飛ばせば、衝撃で悲惨なことになるのは当然だった。
『肉弾戦を続けるとレイチェルの身が持たないのじゃ。まさかゴーレム内に人を乗せるのに、こんな設計とは…これでは駄目なのじゃ』
レイフも様々なゴーレムを作ってきたが、人を体内に入れるという非常識なゴーレムを作ったことはない。なぜならゴーレムの激しい動きに人が付いてこれない事ぐらい普通に考えれば分かることなのだ。このゴーレムの設計者は愚かであるとレイフは思ったが、実際レイチェルが乗り込んでいる以上、対策を取る必要がある。
そして、世界最高のゴーレムマスターであるレイフにとって、その程度のことを解決するのは朝飯前のことであった。
『これなら振り回されても安全なのじゃ』
レイフは、コクピットの床に魔方陣を描いた。椅子の下に描かれたそれは、巨人のコクピットに描かれていた物と酷似していた。
『フォーリングコントロールは衝撃を和らげるのじゃ』
高い所から落ちたときに、その落下速度を和らげ安全に着地する魔法が『フォーリングコントロール』である。魔法使いなら誰でも使える魔法だが、実はこれは上下左右全ての動きに対応している。そしてその効果は突き飛ばされるといった衝撃も打ち消してしまう事をレイフはよく知っていた。
つまり、『フォーリングコントロール』の魔方陣として常時発動させておけば、その上にいる者はあらゆる衝撃から身を守ることができるのだ。
『もちろん、魔力の供給が途絶えなければじゃが…。しかし、これほどの魔力をどうして儂は持っているのじゃ?』
なぜか現在のレイフの体…いや、アルテローゼの機体には、あふれんばかりの魔力が満ちていた。『フォーリングコントロール』を維持する魔力など大した問題ではなかった。
レイフとしては、本当は今すぐにでも自分の機体を調査して、その原因を突き止めたかったが、今はそんな状況ではなかった。
先頭を走っていた重機がやられたため、重機部隊の動きはアルテローゼを取り囲むような形になっていた。
「新型のロボット兵器? いや、もしかして巨人なのか?」
指揮官は、最初アルテローゼを連邦軍の新型兵器と考えたが、その連邦軍の兵器とは異なる外観に、巨人と同一の兵器ではないかと考え直した。
「あれを無視していくのは被害が増えそうだな。…見たところ射撃武装はない。飛び道具でさっさと片付けるんだ」
革命軍の重機も飛び道具として、レーザートーチを改良したレーザー砲や犯罪組織から購入した歩兵携行式多目的ミサイルを装備していた。大シルチス高原の戦闘で多数使用したので残弾も少なく、購入した金額を考えるとなるべく使いたくはないのだが、今はコストより時間である。
指揮官の命令を受け、重機の背面にタンクデサント状態で搭乗していた兵士の何人かが滑走路に飛び降り、ランチャーを構えるとアルテローゼに向けてミサイルを放った。
『何じゃアレは…と、対戦車ミサイルじゃと?』
現代人ではないレイフには、当然のことながらミサイルの知識は無い。しかしアルテローゼのデータベースにはミサイルの諸元データが入っており、それにアクセスしたレイフはその威力を知ってしまった。
最初に飛び込んできたミサイルをレイフは右手で殴りつけて何とか撃墜した。しかしミサイルの爆発で、アルテローゼの右手は肘から先が消し飛んでしまった。
『バリスタどころの威力ではない。まるで炎の上級魔法並ではないか。こんな物を喰らっては…』
そして、右手を失ったアルテローゼに次々と対戦車ミサイルが襲いかかるのだった。
火星革命戦線の司令室では、サトシがカメラを前に、放送を行っていた。
「我々火星革命戦線は、地球連邦政府の圧政に苦しむマーズリアンの解放と、真の自由を勝ち取るために、ここに地球連邦政府へ宣戦布告し、更に火星の独立を宣言する」
それは火星の独立を宣言し、地球連邦に宣戦戦布告する物だった。
そして火星各地のTVや街頭モニターに、サトシの演説が流れるとともに、各地で「独立万歳」や「火星革命戦線に俺も参加するぞ」との声が上がっていくのだった。
◇
シャトルの離陸を阻止すべく、滑走路を走る重機部隊。このままではシャトルの離陸が阻止されると思われたそのとき…。
「やらせませんわ」
若い女性の声とともに、巨大な人影が滑走路側の倉庫から飛び出す。
「アレは一体何なのだ?」
革命軍の重機パイロットが指さすのは、もちろんアルテローゼだった。中世の甲冑のような装甲を纏った純白の機体は、飛び出した勢いのまま先頭を走る重機を蹴り飛ばした。
全高18メートルの人型が繰り出す蹴りを受けたのは、速度に優れる5メートルほどの小型重機であった。突然のことに盾をかざす間もなく、重機はそのまま横転していき、動かなくなった。
「きゃあー」
もちろん蹴り繰り出したアルテローゼにもその反動が来るわけで、レイチェルはコクピット内で激しく揺さぶられ、悲鳴を上げていた。
『レイチェル! 大丈夫か?』
レイフは慌ててコクピットの様子を確認するが、レイチェルは衝撃で気絶していた。試作機レベルのアルテローゼのコクピットは、歩いたり走ったりする程度の衝撃に何とか耐えられる程度の耐G能力しか無かった。
そんな機体で重機を蹴飛ばせば、衝撃で悲惨なことになるのは当然だった。
『肉弾戦を続けるとレイチェルの身が持たないのじゃ。まさかゴーレム内に人を乗せるのに、こんな設計とは…これでは駄目なのじゃ』
レイフも様々なゴーレムを作ってきたが、人を体内に入れるという非常識なゴーレムを作ったことはない。なぜならゴーレムの激しい動きに人が付いてこれない事ぐらい普通に考えれば分かることなのだ。このゴーレムの設計者は愚かであるとレイフは思ったが、実際レイチェルが乗り込んでいる以上、対策を取る必要がある。
そして、世界最高のゴーレムマスターであるレイフにとって、その程度のことを解決するのは朝飯前のことであった。
『これなら振り回されても安全なのじゃ』
レイフは、コクピットの床に魔方陣を描いた。椅子の下に描かれたそれは、巨人のコクピットに描かれていた物と酷似していた。
『フォーリングコントロールは衝撃を和らげるのじゃ』
高い所から落ちたときに、その落下速度を和らげ安全に着地する魔法が『フォーリングコントロール』である。魔法使いなら誰でも使える魔法だが、実はこれは上下左右全ての動きに対応している。そしてその効果は突き飛ばされるといった衝撃も打ち消してしまう事をレイフはよく知っていた。
つまり、『フォーリングコントロール』の魔方陣として常時発動させておけば、その上にいる者はあらゆる衝撃から身を守ることができるのだ。
『もちろん、魔力の供給が途絶えなければじゃが…。しかし、これほどの魔力をどうして儂は持っているのじゃ?』
なぜか現在のレイフの体…いや、アルテローゼの機体には、あふれんばかりの魔力が満ちていた。『フォーリングコントロール』を維持する魔力など大した問題ではなかった。
レイフとしては、本当は今すぐにでも自分の機体を調査して、その原因を突き止めたかったが、今はそんな状況ではなかった。
先頭を走っていた重機がやられたため、重機部隊の動きはアルテローゼを取り囲むような形になっていた。
「新型のロボット兵器? いや、もしかして巨人なのか?」
指揮官は、最初アルテローゼを連邦軍の新型兵器と考えたが、その連邦軍の兵器とは異なる外観に、巨人と同一の兵器ではないかと考え直した。
「あれを無視していくのは被害が増えそうだな。…見たところ射撃武装はない。飛び道具でさっさと片付けるんだ」
革命軍の重機も飛び道具として、レーザートーチを改良したレーザー砲や犯罪組織から購入した歩兵携行式多目的ミサイルを装備していた。大シルチス高原の戦闘で多数使用したので残弾も少なく、購入した金額を考えるとなるべく使いたくはないのだが、今はコストより時間である。
指揮官の命令を受け、重機の背面にタンクデサント状態で搭乗していた兵士の何人かが滑走路に飛び降り、ランチャーを構えるとアルテローゼに向けてミサイルを放った。
『何じゃアレは…と、対戦車ミサイルじゃと?』
現代人ではないレイフには、当然のことながらミサイルの知識は無い。しかしアルテローゼのデータベースにはミサイルの諸元データが入っており、それにアクセスしたレイフはその威力を知ってしまった。
最初に飛び込んできたミサイルをレイフは右手で殴りつけて何とか撃墜した。しかしミサイルの爆発で、アルテローゼの右手は肘から先が消し飛んでしまった。
『バリスタどころの威力ではない。まるで炎の上級魔法並ではないか。こんな物を喰らっては…』
そして、右手を失ったアルテローゼに次々と対戦車ミサイルが襲いかかるのだった。
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