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第2話:宣戦布告
Bパート(2)
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「あー、撤退だ撤退」
「こっちの攻撃が通じないんじゃな~。俺達じゃどうしようもないわ」
「「逃げようぜ」」
革命軍によって、装輪戦車と多脚装甲ロボットが全て破壊されたのを確認すると、指揮車両のオペレータ達はすぐに撤退の準備に取りかかった。
「(まて、徹底抗戦…)」
彼らの指揮官である中佐殿は、「ここで銃をとって徹底抗戦だ」と息巻いたのだが、四人によって素早く簀巻きにされ、猿轡を噛まされ床に転がされていた。
この行為は立派な敵前逃亡で下手すれば軍事裁判にかかれば極刑物だが、五人はここで無駄死にしたくは無かった。
彼等が中佐殿を戦闘中行方不明にしなかったのは、腐った兵士とはいえ、味方を自分の手で殺しくなかった為で、ここに放置することも考えたが、見捨てるのも忍びなかったのだ。
「出すぞ」
ドライバーのケイイチの声とともに、指揮車両はリアタイヤをスリップさせながら猛スピードで門をくぐっていった。その背後には革命軍の重機がすぐ間近まで迫っていたが、それも門の巨大な扉が閉まることで、すぐに見えなくなるのだった。
◇
「こっちはこれを乗り越えていくから、そっちは門を気張って壊しな」
チャンは、門を破壊しようと奮闘する重機を尻目に、巨人には壁を乗り越えさせようと考えた。本当は門を破壊するのがサトシの指示だったが、大通りを通らなかったため、門まで移動するのが面倒だったのと、40メートルの身長を持つ巨人なら壁を乗り越えるのも簡単と気づいたからである。
「よっこらせと…」
壁に手を掛けて巨人はその巨体を引っ張り上げる。強化コンクリートで作られた全高50メートルの壁は、軋みながらも崩れることはなかった。
「おー、眺めが良いな~」
器用にバランスを取りながら、壁の上に立ち上がった巨人。そこから見える光景は、背後の乱雑な住宅地とは異なり、空港と火星行政府ビルを中心にオフィスや商業ビル、高級マンションが建ち並ぶ都市だった。サトシが見れば、「この光景こそが我々マーズリアンと地球連邦政府との格差の証明だ」と一説ぶったであろうが、チャンにとっては、破壊すべき対象にしか見えなかった。
ここで、チャンにもう少し注意力があれば、市街地を走る道路やビルの配置、水をたたえた運河の配置がある物に酷似していたことに気づいただろうが、それについては誰も気がつかず、事態は進行していくのである。
「さて、ぶちかましましょうか」
チャンはそう叫ぶと、非常識にも壁から巨人を市街地に飛び降りさせたのだった。少しでも物理学を学んでいれば、そのようなことをすれば巨人に乗り込んでいる自分がどんな目に遭うか分かったのに、底辺の鉱山労働者であったチャンにはそんな知識は無かった。
ずしーーーん
商業ビルを踏みつぶし、激しい土煙を立てて巨人は地面に降り立った。首都の地盤はそれなりに固く整地されていたが、さすがに40メートルの巨人が飛び降りる衝撃には耐えきれず、大きく陥没してしまった。
そして最悪なことに、彼が踏み抜いたのは地盤だけではなく、首都の市民が非難している地下シェルターの天井も踏み抜いていた。天井を踏み抜かれたシェルターにいた六十数名は、巨人の足と瓦礫に押しつぶされて圧死するのだった。
「…ん、何か嫌な感じがした…かな?」
チャンは、何となく居心地の悪さを感じたが、それが一般市民を踏みつぶした為と気づくことはなく、巨人は足を地面から引き抜くと空港に向かって歩き始めるのだった。
そして、チャンが市民を踏みつぶしたちょうどその瞬間にレイフが目覚めたのだが、そのことに気づくものは誰もいなかった。
◇
レイチェルが火星にやって来たのは、一月前の地球~火星の定期便でだった。
レイチェルの父ヴィクターは、ロボット兵器のAI研究では名の通った研究者であり、連邦軍の依頼で一年前から火星の研究所でロボット兵器の研究・開発を行っていた。
ヴィクターは生活能力が皆無ではないが、研究にのめり込むと身の回りがおろそかになる傾向があり、本来ならレイチェルの母が火星にまで着いていくはずだったが、母は宇宙恐怖症であり、地球から離れられないとう事情があった。
そこで、飛び級で地球の大学を卒業したレイチェルが、成人となる18歳までの一年間、火星に行ってヴィクターの身の回りの世話をすることになったのだ。
父の世話を母にお願いされたレイチェルだが、地球~火星までの定期便に一般市民が乗る事はかなり難しかった。普通に客席を取れば、数百万単位のクレジット必要となる。つまり、政治家や軍人、企業、お金持ちの旅行や政府の保証がある火星移民と言った人達だけが乗れる物だった。
レイチェルの家は貧乏と言うよりセレブに近い経済状況だったが、さすがに一年間火星に向かうだけの為に数百万クレジットも出費するのは戸惑われた。
では地球連邦軍が旅費を出してくれるかというと、連邦軍の依頼で火星に向かった父のためと言っても、配偶者でもないレイチェルが火星に渡る旅費を軍が肩代わりする規則ががなかったのだ。
しかし、ヴィクターとしては、久しぶりにレイチェルに会いたいこともあり、何とかならないかと軍に掛け合った、
そこで軍の人事と総務が何とかならないかと知恵を絞り、規則の裏技を駆使して出した結論が、「レイチェル・エルゼレッドを士官候補生(仮)として火星に送る」とう裏技す」ぎる方法であった。
もう一つの方法として、学業優秀なレイチェルを研究員として送るという話もあったが、それでは就職先が火星となってしまうため、当然彼女の母の猛烈な反対にあった。
結局レイチェルは、軍人志願として火星に向かうことで、地球~火星の定期便に乗せて貰う事になったのだった。
三ヶ月に一度の定期便で、一ヶ月かけて火星に向かうレイチェルだが、船内で一応士官候補生として訓練を受けるのだった。そこで彼女は意外な適正を見いだされてしまった。レイチェルは、有人機動兵器のパイロットとして非常に優秀だったのだ。
名目としての軍人(仮)だったのに、宇宙軍に入らないかと勧誘されるレイチェルだったが、さすがに軍人になるつもりはなく断り続け、火星に降り立った
一ヶ月の宇宙旅行で火星に着いた彼女は、士官候補生(仮)として火星の研究所に出向という名目で常駐することになった。もちろん本業はヴィクターの身の回りの世話だが、軍隊からわずかとはいえ給料も出ているため、研究所で開発されている人型機動兵器…実はこの人型機動兵器が張りぼてで、ヴィクターの趣味の産物だとは彼女は気づいてなかったが…のテストパイロットを務めることになった。
「こっちの攻撃が通じないんじゃな~。俺達じゃどうしようもないわ」
「「逃げようぜ」」
革命軍によって、装輪戦車と多脚装甲ロボットが全て破壊されたのを確認すると、指揮車両のオペレータ達はすぐに撤退の準備に取りかかった。
「(まて、徹底抗戦…)」
彼らの指揮官である中佐殿は、「ここで銃をとって徹底抗戦だ」と息巻いたのだが、四人によって素早く簀巻きにされ、猿轡を噛まされ床に転がされていた。
この行為は立派な敵前逃亡で下手すれば軍事裁判にかかれば極刑物だが、五人はここで無駄死にしたくは無かった。
彼等が中佐殿を戦闘中行方不明にしなかったのは、腐った兵士とはいえ、味方を自分の手で殺しくなかった為で、ここに放置することも考えたが、見捨てるのも忍びなかったのだ。
「出すぞ」
ドライバーのケイイチの声とともに、指揮車両はリアタイヤをスリップさせながら猛スピードで門をくぐっていった。その背後には革命軍の重機がすぐ間近まで迫っていたが、それも門の巨大な扉が閉まることで、すぐに見えなくなるのだった。
◇
「こっちはこれを乗り越えていくから、そっちは門を気張って壊しな」
チャンは、門を破壊しようと奮闘する重機を尻目に、巨人には壁を乗り越えさせようと考えた。本当は門を破壊するのがサトシの指示だったが、大通りを通らなかったため、門まで移動するのが面倒だったのと、40メートルの身長を持つ巨人なら壁を乗り越えるのも簡単と気づいたからである。
「よっこらせと…」
壁に手を掛けて巨人はその巨体を引っ張り上げる。強化コンクリートで作られた全高50メートルの壁は、軋みながらも崩れることはなかった。
「おー、眺めが良いな~」
器用にバランスを取りながら、壁の上に立ち上がった巨人。そこから見える光景は、背後の乱雑な住宅地とは異なり、空港と火星行政府ビルを中心にオフィスや商業ビル、高級マンションが建ち並ぶ都市だった。サトシが見れば、「この光景こそが我々マーズリアンと地球連邦政府との格差の証明だ」と一説ぶったであろうが、チャンにとっては、破壊すべき対象にしか見えなかった。
ここで、チャンにもう少し注意力があれば、市街地を走る道路やビルの配置、水をたたえた運河の配置がある物に酷似していたことに気づいただろうが、それについては誰も気がつかず、事態は進行していくのである。
「さて、ぶちかましましょうか」
チャンはそう叫ぶと、非常識にも壁から巨人を市街地に飛び降りさせたのだった。少しでも物理学を学んでいれば、そのようなことをすれば巨人に乗り込んでいる自分がどんな目に遭うか分かったのに、底辺の鉱山労働者であったチャンにはそんな知識は無かった。
ずしーーーん
商業ビルを踏みつぶし、激しい土煙を立てて巨人は地面に降り立った。首都の地盤はそれなりに固く整地されていたが、さすがに40メートルの巨人が飛び降りる衝撃には耐えきれず、大きく陥没してしまった。
そして最悪なことに、彼が踏み抜いたのは地盤だけではなく、首都の市民が非難している地下シェルターの天井も踏み抜いていた。天井を踏み抜かれたシェルターにいた六十数名は、巨人の足と瓦礫に押しつぶされて圧死するのだった。
「…ん、何か嫌な感じがした…かな?」
チャンは、何となく居心地の悪さを感じたが、それが一般市民を踏みつぶした為と気づくことはなく、巨人は足を地面から引き抜くと空港に向かって歩き始めるのだった。
そして、チャンが市民を踏みつぶしたちょうどその瞬間にレイフが目覚めたのだが、そのことに気づくものは誰もいなかった。
◇
レイチェルが火星にやって来たのは、一月前の地球~火星の定期便でだった。
レイチェルの父ヴィクターは、ロボット兵器のAI研究では名の通った研究者であり、連邦軍の依頼で一年前から火星の研究所でロボット兵器の研究・開発を行っていた。
ヴィクターは生活能力が皆無ではないが、研究にのめり込むと身の回りがおろそかになる傾向があり、本来ならレイチェルの母が火星にまで着いていくはずだったが、母は宇宙恐怖症であり、地球から離れられないとう事情があった。
そこで、飛び級で地球の大学を卒業したレイチェルが、成人となる18歳までの一年間、火星に行ってヴィクターの身の回りの世話をすることになったのだ。
父の世話を母にお願いされたレイチェルだが、地球~火星までの定期便に一般市民が乗る事はかなり難しかった。普通に客席を取れば、数百万単位のクレジット必要となる。つまり、政治家や軍人、企業、お金持ちの旅行や政府の保証がある火星移民と言った人達だけが乗れる物だった。
レイチェルの家は貧乏と言うよりセレブに近い経済状況だったが、さすがに一年間火星に向かうだけの為に数百万クレジットも出費するのは戸惑われた。
では地球連邦軍が旅費を出してくれるかというと、連邦軍の依頼で火星に向かった父のためと言っても、配偶者でもないレイチェルが火星に渡る旅費を軍が肩代わりする規則ががなかったのだ。
しかし、ヴィクターとしては、久しぶりにレイチェルに会いたいこともあり、何とかならないかと軍に掛け合った、
そこで軍の人事と総務が何とかならないかと知恵を絞り、規則の裏技を駆使して出した結論が、「レイチェル・エルゼレッドを士官候補生(仮)として火星に送る」とう裏技す」ぎる方法であった。
もう一つの方法として、学業優秀なレイチェルを研究員として送るという話もあったが、それでは就職先が火星となってしまうため、当然彼女の母の猛烈な反対にあった。
結局レイチェルは、軍人志願として火星に向かうことで、地球~火星の定期便に乗せて貰う事になったのだった。
三ヶ月に一度の定期便で、一ヶ月かけて火星に向かうレイチェルだが、船内で一応士官候補生として訓練を受けるのだった。そこで彼女は意外な適正を見いだされてしまった。レイチェルは、有人機動兵器のパイロットとして非常に優秀だったのだ。
名目としての軍人(仮)だったのに、宇宙軍に入らないかと勧誘されるレイチェルだったが、さすがに軍人になるつもりはなく断り続け、火星に降り立った
一ヶ月の宇宙旅行で火星に着いた彼女は、士官候補生(仮)として火星の研究所に出向という名目で常駐することになった。もちろん本業はヴィクターの身の回りの世話だが、軍隊からわずかとはいえ給料も出ているため、研究所で開発されている人型機動兵器…実はこの人型機動兵器が張りぼてで、ヴィクターの趣味の産物だとは彼女は気づいてなかったが…のテストパイロットを務めることになった。
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